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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十七章 最終決戦・後編
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268話(神サイド) 頂上決戦⑳


 カミノキョクチ──『森羅万象』。

 

 これは『変化』が進化した、カミノミワザ『千変万化』が更に進化した異能だ。

 この力を手に入れることができたのは狂弥の力があったからこそ。


「カミノキョクチには、カミノキョクチでしか対抗できない──だから宏人には、カミノキョクチを獲得してもらう。そうしなきゃ凪には勝てないからね」


「とはいえどうやるんだ。那種の身体で神人の『資格』を手に入れて『変化』がカミノミワザに進化……これ以上出来るのか?」


「いや、だからこそだね。『変化』が『千変万化』になった今だからこそ、きみはカミノキョクチへと至れるんだ」


「だからこそ──?」


 俺の問いかけに、狂弥がニヤリと笑う。

 

「きみの持つ全ての異能を『千変万化』に収束させるんだ。アルドノイズのカミノミワザも、『時空支配』も──全てを」


 

 * * *



「お前が、宏人──?」


 俺が凪に向けて名乗ると、凪は顔を困惑色に染めながらそう言った。

 ……まあ、無理もない。

 なにせ今の俺の姿は栗樹那種そのものだからだ。

 俺は傀羅に『魂』を保護された状態で、那種の『サタノファニ』を経由して『森羅万象』の権能の一つ、『変化』で那種の身体と一体化したのだ。

 その『変化』の際に容姿も好きなように変えられたのだが……那種にいつか身体を返すと約束した以上それは躊躇われたのだった。

 

 とはいえ今は俺なのだ。

 那種には悪いが、今は女の子やっている場合じゃないのでね。

 俺は不敵に笑って答える。


「ああ。さっきぶりだな凪。あのまま尻尾巻いて逃げてたら見逃してやったんだけどな」


「ふっ。確かに、お前は宏人だな。那種の異能……『サタノファニ』か。となると、今のお前は本物のお前の複製体か。つまらんな」


「安心しろ。確かに『サタノファニ』使いはしたが、俺はちゃんと本物だ」


「笑わせてくれるな。そうなると那種は死ぬこととなる……甘いお前なら、その決断は絶対にしない」


 凪は確信に満ちた声音でそう言う。

 さすがとしか言いようがないくらい、凪の考えは正確だ。

 身近で俺を観察していたからこそ、俺の性格をよく把握している。


「確かに、俺だけだったらこんなことはしなかっただろうな……でも。傀羅に、那種に──狂弥に背中を押してもらったんだ。逃げるわけにはいかないだろ?なにせ俺には、お前を倒した後にも仕事が残ってんだから」


「……そうか。狂弥が」


 凪はそう呟き顔を伏せた。

 しかしそれは一瞬のことで。

 凪は迷いを断ち切るように、その鋭い眼光を俺に注ぐ。


「俺も理解した。お前は向井宏人だ。──だが、そんなことはどうでもいい。俺の前に立ち塞がる敵は、誰であろうと始末する」


「俺だって、お前が神人になろうがどうだっていい。お前はお前──新野凪、俺の相棒だ。相棒がやらかしたなら、その後片付けをするのは相棒の仕事だろ?」


「……。そうか、お前は一つ勘違いをしている」


「勘違い?」


 俺の疑問の声に反応するように、凪の纏うただでさえ強烈なオーラがさらにその苛烈さを増す。

 ……なんだか不穏だぞ。

 なぜか脂汗が垂れる俺に、さっきからずっと黙ってたカナメの姿を模したセバスが叫ぶ。


「宏人くん!……だよね?ともかく!凪は神人から更に進化して──神ノーズに成ったんだよ……!」


「……はい?」


 思わず素っ頓狂な声が出る。

 ンなわけあるかっ!……と俺が叫ぼうとする前に、確かに見るからに神人の域を超えちゃってる凪さんが。



「神ノーズの一柱──新野凪。向井宏人、俺の全力で以って、お前を殺す」


 

 * * *



 セバスが発った後、アリウスクラウンはその一部始終を見ていた。

 カナメが死に……セバスにその力の一部が渡り、セバスが必死に一人で凪の相手をしているところを。

 アリウスクラウンは智也たちの静止を振り切ってセバスの援護に向かおうとしたが……その気力が失せるくらい、あの二人の力は別次元だった。

 七録菜緒相手になんとか粘り切ったという自信があったアリウスクラウンだが、それは菜緒の異能が戦闘向きではなかったことと、菜緒が全力を出していなかっただけというのを実感した。

 

 あとはセバスを見守るだけ──そんなわけがない。


 アリウスクラウンは、そんな理由だけで諦める人間じゃない。

 

 だから──アリウスクラウンは、この男のもとに戻ってきた。


「どうやら、あなたを殺さなくて正解だったらしいわね」


「クッ……!身を弁えろよ人間風情が。私は生神──神の一柱なのだぞ!そんな私に、こんな、こんな無礼を働いて許されると思っているのかッ!」


 アリウスクラウンの見下す先には、悪態を吐きながら恨みがましい瞳を向ける生神が。

 アリウスクラウンはモルルを倒したあと、とりあえず生神だけにはトドメを刺さなかったのだ。

 理由としては、セバスの存在が脳裏にチラついたからだ。

 死神の力を上手く扱い、今では頭上にて神人の凪とやり合っている……いつの間にかカナメの姿になっているが。

 空中にて行われる神人の戦い。

 それを見て、生神が顔を青褪める。


「私は、私はキサマらになど絶対協力しないぞ!七録カナメが死んだ今、キサマらに勝ち目など万に一つもないからなぁ!」


「セバスがカナメの力使って頑張ってるみたいだけれど?」


「確かにそれでセバス・ブレスレットは善戦できるだろう……だが所詮は偽物!紛い物だ。長くは続かん。ゆえに私は絶対にここから動かんぞ!」


 生神は唾を撒き散らしながら必死にそう言う。

 アリウスクラウンは「こいつアスファスよりうざいわね……」とため息を吐きながら、生神の顔面を鷲掴んだ。


「な、何をする!」


「ここで私に殺されるか、私に力を貸して一緒に凪の野郎をぶっ飛ばすか、二つに一つよ。答えなさい」


「はぁ!?ふ、ふざけるな。私は生神、この世の──」


「ごー、よん、さん、にー──」


 カウント毎にアリウスクラウンは手の力を強めていった。

 すると生神はしばらくごちゃごちゃ騒ぎ……ついには屈した。


「分かった、協力しよう……」


「よろしい」


 アリウスクラウンは雑に手を離すと、生神は尻もちを付きアリウスクラウンを睨んだ。


「ただし!今回限りだからな……!?この戦いが終わったら、私は自由にさせてもらう。絶対だぞ!」


「ええ、十分よ」


 アリウスクラウンは実に良い笑顔でそう言った。

 


 * * *



 おい狂弥一体どういうこった。


 俺は泣きそうな気分で、心の中で今は亡き狂弥に愚痴る。

 どうやら凪は、神人から更に進化して神ノーズに成ったらしい……いやどういうことだよ。

 確かに、今思えば凪の火力は馬鹿みたいに強烈な威力だった。

 俺の異能も進化しているからよく分からなかったが、おそらく『変化』のままだったらあのまま俺ごと消滅していた気がしなくもない……。


「ッ──!めっちゃヤバいやつだろこれ……!」


 俺は半泣きで凪の攻撃に身構える。

 凪がその手より出すは太陽……比喩でもなんでもなく。

 さすがに実物の太陽よりかなりコンパクトサイズで、かつ自然影響をかなり削ぎ落としてくれているみたいだ。

 まあ、そのまんま太陽なんぞ出したら行使してる凪自身も無事じゃ済まないだろうから当たり前だが。


「『真なる太陽』」


 狂弥によると、凪の異能はカミノキョクチ『天照大神』。

 太陽を司る神の名を冠する異能らしく、攻撃には太陽を用いる……と聞かされていたが、まさかまさか太陽そのもので攻撃してくるとは予想外過ぎた。

 比喩でもなんでもなく、なんの捻りもないというか。


 ……とは言うが、凪がデタラメなように、俺だって大概デタラメだ。


「──『森羅万象』」


「……それが『変化』の極致、か」


 凪のその冷徹な瞳の中で、『真なる太陽』が霧散する。

 俺が触れただけで、カミノキョクチ『天照大神』の権能の一つが消失したのだ。

 

 森羅万象とは宇宙に存在する一切のもののこと。


 そんな名前の由来を持つ俺の異能は、その意味のまま、全てを掌握し、無に帰す。

 また記憶している物ならいくらでも再現可能といった、破壊と再生を併せ持つ、まさにカミノキョクチ──それが『森羅万象』。


 『変化』の、真の姿。


 無論神ノーズだって、森羅万象の一つに過ぎない。


「……すまん凪、取り乱した。そうだったな。お前が神人だろうが神ノーズだろうが関係ない──俺は、新野凪を止めに来たんだ」



「……神ノーズが一柱、新野凪」



 俺の言葉を無視し、凪はそう言った。

 それに俺もニヤリと笑って答える。



「神人が一柱、向井宏人──決着をつけようか、凪」



 正真正銘の、最後の戦いが幕を開ける。

 

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