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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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262話(神サイド) 頂上決戦⑱


 カナメが放った『打ち上げ花火』が、空いっぱいに火の花を咲かした。

 カナメの極限まで極められたその破壊力は空そのものすら破壊し、それが更に花火を幻想的に彩らせる。

 だがそれは紛れもない破滅の権化。

 凪は顔を顰めながら『絶対攻守』により最強の防壁を構築し、カナメの破壊から逃れる。

 そんな凪に向かって、カナメは更に爆破を畳み掛けた。


「いくら攻撃を重ねようが俺の防壁は突破できないぞ」


「ご忠告どーも!」


 凪は煩わしそうにしながらも永遠に爆破し続ける空間から抜け出し、カナメに向かう。

 そして残像を残すほどの鋭い一閃をお見舞いする。

 その剣がカナメの首を跳ね飛ばすが──それはカナメが用意した幻想。

 カナメの『世界破滅』の権能の一つ、『蜃気楼』だ。

 

 カナメは凪の背後に移動し、吐息を一つ。


 そして──放つ。


 

「『ブラックホール』」


「ッ──!」



 カナメは全てを無に帰す暗黒の穴を形成。

 その穴──『ブラックホール』は凪を……否全てを呑み込まんと吸収していく。

 これはかなりのタメを必要とするカナメの大技だが、『打ち上げ花火』からの立て続けの爆破の最中に形成していたのだ。

 地上にある生存戦争跡地の木々が根こそぎ吸い込まれていく中──凪も負けじと放った。



「『真なる太陽』」



 それは凪が初手に放ったものと同様の『太陽』。

 だが『太陽』はなすすべもなく『ブラックホール』に呑み込まれ……されどその圧倒的な内包された力によって『ブラックホール』を内側から消滅させた。

 カナメの切り札でもある『ブラックホール』を潰したことにより半ば勝利を確信する凪──そんな凪を、極太の光線が包み込んだ。


「なに──!?」


 『太陽』と『ブラックホール』が世界を包み込むほどの脚光を放つ中、カナメは目視せず、しかし違わず凪に撃ったのだ。


「……『万華鏡』」


 ニヤリと笑うカナメ。

 やがて光が晴れた頃には、傷一つないながらも、どこか疲弊した表情の凪がいた。


「お前、やっぱ『太陽』に『絶対攻撃』を付与してたのな」


「それがどうした……?」


「いんや。ただ──『絶対攻撃』と『絶対防御』は、どっちか片方ずつしか使えないって確信を得られただけだよ。かなりのインターバルもあるってこともな」


「……。そうだ。さすがだな」


 凪はそれだけ言うと、今度は自信に『絶対攻撃』を付与する。

 カナメの言う通りそうすると『絶対防御』の使用はできなくなるが、神人になったばかりである今、凪には十分なほどの回復能力があるのだ。

 凪は攻めることに重きを置き、静かに目を閉じる。

 

 この『世界』の『奥義』──それを、放つために。


 カナメはそれを敏感に感じ取った。

 感じ取って、しまった。


 凪の目が、ついに開けられる。



 その頃には──カナメの身体がズタズタに切り刻まれていた。



「ゴフッ……」


 浮遊する力を無くし、地に落下していくカナメ。

 

「……『奥義』、『戦乱百花』」


 この『暗黒世界』の『奥義』は最強の剣術。

 目にも見えぬ一瞬の間に、突きや裂きでの百回攻撃。

 それは凪が望んだ『奥義』の形。

 どんな存在でも、凪の前に立った時点でその命が絶たれる必滅の『奥義』であり、剣技。

 その上に『絶対攻撃』が乗せられているのだ。

 葬れない敵など存在しない。

 だが凪はもう油断しない。


 いつだってカナメは、前提を、常識を覆るイレギュラーなのだから。


 案の定カナメは復活していた。

 だから凪はいち早く己の身を守れたのだ。


 カナメの千切れた左腕を燃料にした超破滅爆破。 しかし凪は『絶対防御』にてそれを完璧に無効化していた。


 それこそが──カナメの狙い。


 バンッ!と、不完全で汚く、だがしかし小気味のいい音が鳴り響く。



「式神構築ッ!!──『終末世界』」


「バカな!?なぜ──!?」



 凪は驚愕に目を見開く。

 なにせ、いとも容易く、今度は凪の『世界』が塗り替えられたからだ。


「ハッ!なんてったって『奥義』は能力じゃなく『式神の強度』を利用して放つ大技だからなぁ!大して強度が下がらなかろうと、俺にはそれだけで十分なんだよ!」


 凪の目の前には左腕を失くし全身を真っ赤に染めながらも、ハイになって笑うカナメの姿が。

 式神構築の絶対的なルールは合唱をすることだ。

 だがしかし、今のカナメには左腕がない。

 だから凪は、気をつけながらも、無意識に油断してしまっていたのだ──七録カナメは、もう『式神』を失った、と。


「だけどなぁ!それはルールに縛られたお前の固定観念でしかねぇんだよ!モノホンの手なんかじゃなくったって、合唱なんていくらでも出来るわ」


 凪は目を見張った。

 カナメの左腕より先には、未だ腕があったのだ。

 しかしカナメの左腕は大爆発の燃料に使われていた。


 そう──今のカナメの左腕は、メラメラと燃え盛る腕の形をしただけの炎であった。


「はぁ……。常識の範囲内で戦ってくれ」


「お前にだけは言われたくないぜ凪──じゃ、さっそく」


 カナメの笑みが、深まる──!



「『奥義』……『生死尺玉』」



 刹那──『世界』が真っ白に染まる。

 それは光ではない。

 白色の姿をした終焉。

 万物を呑み込む破壊のベールは、カナメ諸共全てを包み込む。

 おそらく、カナメの『神風領域』はこの『奥義』を最大限活用できるようにと存在しているのだろう。

 ライザーすら跡形もなく吹き飛ばした破壊。



 それは凪の『絶対防御』を容易く突き破り、見るも無惨に凪の身体を壊し尽くした──それでも。

 凪は、耐えて魅せた。



「ハッ。そうでなくっちゃな」


「式神構築──『暗黒世界』ッ!」



 またもや塗り替えられる『世界』。

 同じことの繰り返し。


 だがしかし、先程までとは圧倒的に違うことがある。


 それは──『暗黒世界』が、不完全なこと。


「クソ……!」


「疲れてんのかよ凪ィ!」


 カナメは真下に思いっきり『線香花火』をぶち込んだ。

 本来ならまったく意味のない『世界』に向けての攻撃。


 本来なら。


 凪の『世界』が、あっという間に砕け散った。


「ッ──!デタラメにも程があるぞ!」


「さいっこうの褒め言葉だよ!」


「不完全とはいえ俺の、神人の、カミノキョクチの『世界』だぞ!普通破壊出来るかッ!」


「さいっこうの!褒め言葉だよ!!」


 カナメの拳が凪を襲う。

 だが凪はそれを無視してカナメを斬りつけようとしたが──凪の頬に、衝撃。

 そしてその瞬間、凪の頬は爆発すると共に、凪は彼方へと吹っ飛ばされた。

 その爆炎の拳が、『絶対防御』を突き破ったのだ。


(何が──何が起こっている!?)


 凪は心の奥底では分かっていた。

 これはただ『絶対防御』の絶対の領域を超えてきた『生死尺玉』によって『絶対防御』が破壊され、そのため一時的に脆くなっていただけなのだと。

 だが、でも、それでも──いくらなんでもそんな暴挙がまかり通っているという現実から目を逸らしたいだけなのだ。


 そんな凪に、カナメは容赦なくまたまた合唱!



「式神構築ゥ!」


「クッ!式神構築!」



 だが今は誰もモノでもない通常の『世界』。

 カナメに続いてほぼ同じタイミングで凪も合唱し──再度『世界』を押し合う形に。

 しかし──凪は絶句する。


 カナメの適応力を。

 カナメの戦闘センスを。


 カナメの──カミノキョクチに対抗できるほど、極められたカミノミワザを。



「──『終末世界』」



 打ち勝ったのは、やはり──七録カナメ。

 最強の、神人。


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