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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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261話(神サイド) 頂上決戦⑰


 ──戦いの火蓋を切るのは、カナメによる合掌。



「式神構築」



 カナメは凪を見据えながら叫ぶ。

 現在は凪の『世界』──『蟻地獄』が展開されているが、カナメは十分後出しで『終末世界』を構築できると判断。

 先程急にカナメの『世界』が塗り替えられたのは、おそらく凪は他対象の『変化』を上手く活用したためだと考えている……それなら。

 

 凪が『変化』を使用する前に『終末世界』と『生死尺玉』のコンボ── 一撃必殺で決着をつけようとしたのだ。


 しかし凪もカナメと同時に合唱。



「式神構築──『暗黒世界』」


「ッ……。お前さぁ、いきなり色々進化し過ぎだろ」



 次の瞬間、カナメと凪の『世界』が激突する。

 『蟻地獄』はその衝撃で一瞬で破壊され、両者の頭上からはガラスの破片のような『世界』の欠片が降り注ぐ。

 出来上がるはまるで銀世界。

 だがそれすらも未だ巻き起こる『世界』の衝撃で吹き飛ばされ、やがて通常の『世界』が露わとなる。

 宏人たちと菜緒が戦い始めたのは正午辺り。

 しかしながら今はとっくに日は沈んでおり、辺りは静寂と暗黒に包まれている。



 まるでそれをなぞるように──凪の『暗黒世界』が、カナメの『終末世界』を喰らい尽くした。



「チッ。こんなあっさり押し負けたのはライザーぶりだよ」


「まず『世界』を構築させる異能の格が違うんだ。それなのに俺とやり合えただけでもお前はすごい」


「かぁー。一瞬でカミノキョクチとやらを手に入れた奴の言うことは違うねぇ」


 カナメはそれを言い終わると同時──両手を凪に突き出す。

 瞬時に凪を囲むように四後方からの大爆発。

 凪は『天照大神』を発動し、その権能の一つを駆使する。



「『烈日煉獄』」



 刹那──カナメの『世界破滅』によって生み出された爆発が蒸発する。

 それもそのはず、凪が手にするは『太陽』。

 正確には太陽を模しかつ縮小化したものだが、危険であることに変わりはなく──凪はそれを、投げた。

 だがカナメは冷静に対処する。

 なぜならカナメの周囲は常に『神風領域』で守られているからだ。

 それは『太陽』から発せられる有害物質なども防ぐに至る。

 そのためカナメは『太陽』に直で触れ──爆破。


 周囲を閃光が多い、『世界』が光に包まれる。


 だがしかし、両者は平然と地に足をつけながら敵を睨み続ける。


「よしっ、準備運動は十分だ。続けようか、凪」


「俺的には今ので仕留めるつもりだったんだがな。どうやらお前の『神風領域』は単純な火力での破壊は不可能らしいな。やはり最大の障害はお前だカナメ」


 凪はため息を吐きながらそう言うと、虚空に手を突っ込んだ。

 そして取り出すは翡翠色をした美しい短剣。



 その名は──神剣『翠龍』。



 純神が一柱、ニーラグラが使役する龍の結晶体。

 その刀身は鞘と同様翡翠色に輝いており、見るものを魅了する美しさを放っている。

 力強く、されど優しい色合いをしたその剣を見て、カナメは後頭部をガリガリと搔く。


「なんかふっつーにニーラグラの剣取り出したわけだけどさ。あいつは納得してんのかよ。お前のこんな暴挙を」


「しているわけがないだろう。ニーラグラは良くも悪くも甘い神だ。俺に完全に心を許していた──だから俺にこんな簡単に使役されるんだ。アスファスみたく、警戒は過剰なくらいがちょうどいい」


「なーに開き直ってんだよ。ぶっちゃけ忘れてたけどニーラグラも救出しなきゃなんだったな」


 カナメはそう言って、『忘れてたの!?なんかそんな予感はうすうすしてたけどひどいっ』という声が聞こえたがあえて無視する。


 そして、凪を見据えて宣言した。



「俺がお前をぶっ飛ばす。そしてニーラグラ助けて戦い終わらせて時戻すなりなんなりして宏人を蘇らせる。……ついでに姉貴も。これでハッピーエンドだ。こんな夢物語に付き合えよ、凪」


「自分で夢物語と言っているじゃないか。正直なところ、俺もそんなお前の夢物語には興味がある……が。俺にも俺なりの目的と考えがあるんでな。再三だが、これ以上の会話は意味をなさないと思ってくれ」



 秒針を刻む、凪の両目。

 凪はゆっくりと瞼を閉じる。

 そして目を開けた頃には、相も変わらず秒針を刻む右目と──紅く輝く左目が。


 

「行くぞ」



 凪はそう呟くと同時、カナメに斬りかかった。

 凪の近接戦はその鍛え抜かれた剣術だ。

 凪自身、元は他人の異能をコピーする異能だった以上、真似される行為を内心では極度に嫌っていた。

 だからこそ、誰にも真似できない自分だけの剣術──それを鍛えて鍛えて鍛え抜いてきたのだ。

 人の寿命をゆうに超える年月で。

 その抜刀術は神人の肉体と成ったことも相まって音速を超える。

 だがカナメは『神風領域』があるため特に気にすることなく攻撃を仕掛けようとしたが……そこでハッとする。


(さっき凪は俺の『神風領域』は単純な火力での破壊は無理だと学んでいた……そんなこいつが、また意味のない行動をするか?いや──さすがにしねぇだろ)


 カナメは咄嗟に回避しようとしたが間に合わないと確信──そのため己諸共爆破!

 爆発の衝撃で無理やり回避を試みたカナメだが、『神風領域』で守られているためダメージはない……はずなのだが、頬に鋭い痛みが。

 決して浅くない切り傷が、カナメの頬にできていた。

 噴出する血を押さえつけながら数秒固まり……はぁとため息を吐く。



「クック……さすがにこれは反則じゃね──回復不可能とか」


「『天照大神』の権能の一つ、『不可逆付与』だ。俺の攻撃は基本的に受けたら最後──その傷は生涯治癒することはない。ちなみにお前の『神風領域』を破る権能の名はそのままの『絶対攻守』だ。俺には常時全てを破壊する攻撃力と万物から守る防御力がある。防御に関しては『神風領域』と同様のものだと考えてもらって構わない」


「ペラペラと長尺の解説どーも。ライザーみたく舐めプか?」


「そんなわけないだろう。先程も言った通り俺は一番お前を警戒している。なに、どうせバレる力だ。そして俺の口から出た言葉をお前は絶対鵜呑みにしない。なら余計な情報を俺自ら与えて混乱させた方がいいという考えだ」



 カナメは頬を抑えながら再度深くため息を吐く。

 戦い始めてまだ数分。

 だというのに、たったこれだけの攻防でカナメの『式神』も、『神風領域』も、神人による回復能力も通用しないことが判明した。

 おそらく、というか絶対凪はまだまだ手札を隠し持っている。


 

「ほんと、嫌になっちゃうね」



 カナメが悪態を吐くのも無理はない。

 しかし──凪が手札を隠しているように、カナメだって、まだ奥の手はあるのだ。

 

 ライザーを下し、神人最強の称号をその手にした七録カナメ。

  


 そして『メンバーズ』のリーダーを務める男は──その称号の通り最強なのだ。

 


 太陽が沈み辺りが夕暮れに染まる、半壊した建物が密集する世紀末世界──『暗黒世界』にて。

 カナメはその空に花を咲かせた。




「『打ち上げ花火』」




 それが、カナメが本気を出す合図だった。


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