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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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258話(神サイド) 約束


 カナメの『世界破滅』が、デウスを悉く破壊し尽くす!


 まるで全て塵芥だと言わんばかりに、カナメの前に立ち塞がる存在は等しくカナメの視覚情報通りにゴミと化す。

 菜緒と『神話掌握』が十柱のデウスに出した命令は、カナメを休ませることなく攻撃し続けろ、である。

 デウスは菜緒のカミノキョクチの『奥義』──『デウス・エクス・マキナ』によって生み出された最強の破壊神だ。


 だというのに。


「『線香花火』──!」


 カナメのその一言を最後に、十柱いたデウスは全滅することとなった。

 しかしそれは、『神話掌握』の想定内。

 

 そして──菜緒はデウスが稼いでくれた時間を使って構築した出力最大の『絶対零度』を繰り出す!

 刹那、『終末世界』が氷の大地へと変わった。

 だが直で攻撃したカナメは……無傷。

 未だカミノミワザの範疇とはいえ、『フリーズフローズン』から進化した『絶対零度』でも、カナメには傷一つ付けることが出来ないことに、さすがの『神話掌握』も絶句する。


「……ほんっとに、ヤになる」


「ハッ。アンタも大概イヤらしいな」


 カナメは目を細めてそう言う──なにせ。

 カナメが『絶対零度』を受け止めた隙に、菜緒はカナメが倒したデウスのエネルギーを余すことなく全て吸収したのだから。


「さて、これで私は十柱分のデウスの力を取り込んだわけだけど……通用してくれることを祈るしかないね」


 菜緒は小さく息を吐き、『神話掌握』と思考をリンク。

 そして駆け出す。

 デウスの異能は『アルティメットゴット』。

 己の肉体での攻撃が全て『カミノキョクチ』に変換されるという滅茶苦茶な異能だ。

 本来ならどんな存在でも殺し得る最強の権能。

 それを簡単にいなすカナメがおかしいのだ。

 案の定、菜緒の拳をカナメも拳で受け止める。

 

「ハッ!アンタが肉弾戦かよ。似合わねーな」


 刹那──カナメと菜緒の腕が爆発する。

 カナメは常に拳に『世界破滅』を付与しているのだ。

 そのためカナメも攻撃の一つ一つがカミノミワザの最上級レベルと言ってもいい。

 カミノミワザの最上位と、カミノキョクチの最下位。

 この微妙なラインを行き来する複雑な関係性のもと、両者の攻撃は相殺された。


「……ッ!」


 とはいえ菜緒の方は無傷では済まなかった。

 特に損傷は見られないとはいえ、腕に激痛が走る。

 だが止まることは出来ない。



 カナメの『生死尺玉』だけは、絶対に阻止しなければならないのだ。



「あぁもう、うるっさいなぁ!私だって別にやりたくてやってんじゃないから!」


「じゃあさっさと辞めてくれよ頼むから。アンタ無駄に強くて困るんだよね」


「あんたこそ何なのその強さ!?確かに『神話掌握』が一番警戒しろって言ってたけどさぁ……ここまでとは思わないじゃん!」


『当時は『世界真理』です』


「喧しいわっ!」



「おひとり様でお楽しみのところ悪いんだけどさぁ──ほい、王手」



 菜緒が再度仕掛けようとした瞬間、カナメが人差し指を向ける。

 その指の先に綺麗な赤色が煌めく。


「『万華鏡』」


「──!」


 菜緒は死ぬ気で両手でガード!

 次の瞬間、極太のビームが菜緒の両腕を破壊した。

 『神話掌握』による痛覚無効があるとはいえ、やはり幻肢痛は凄まじいものがある。

 菜緒は途切れそうになる意識を必死に繋ぎ止め、なんとか次の体勢を立て直す!



「『エレクティックバイオレンス』!」


「『打ち上げ花火』!」



 超神速でカナメに迫る菜緒の上空より、破滅の炎が降り注ぐ。

 それを菜緒は『神話掌握』に一任して止まらずカナメに攻撃を仕掛けた。

 菜緒の腕の修復は既に完了している。

 菜緒の超破壊力を秘めた拳がカナメを捉えるが、カナメの頬を咲くだけに終わった。

 カナメが受け流したのだ。

 そして胴がガラ空きになった菜緒の腹部をカナメの拳が破壊する──そのギリギリで菜緒はなんとかそれを受け止める。


 

「『『絶対零度』』!!」


「んな──!?」



 菜緒と『神話掌握』による超威力が込められた爆氷がカナメを飲み込む!

 だがカナメは全身から爆破を発動するだけで氷結地獄を軽々と突破。


 その一瞬の隙を菜緒の拳が炸裂!


 カナメはそれを受け止め──カナメの手が砕け散った。


「拳にデウスのと『絶対零度』乗せたのか。やるね」


「ムカつく。そろそろくたばれってんのよ」


 そう、菜緒の拳には今デウスの『アルティメットゴット』と『絶対零度』が付与されていた。

 カミノキョクチだけでなく、カミノミワザも合わせられた絶対破壊の拳。

 それは神人であるカナメの強度な肉体すら安易と破壊するに至る。

 よろけるカナメに菜緒は止まらず拳を振るう。


 

 その拳が──カナメの胸を貫く寸前。



「……あれ?」


 いつの間にか。

 時間の流れが、ゆっくりとなっていた。

 菜緒の額に、たらりと汗が滴る。


 これは、これは──!



「『ブラックホール』」



 カナメの権能の一つ、『ブラックホール』。

 その効果は──時の流れを緩ませる。

 『神話掌握』が、一番恐れていた展開が、遂に訪れることとなったのだった。


「アンタ割と真面目に強かったよ。ライザーと同じくらいか、それ以上」


「……!……くそっ」



 膝を屈した菜緒の目の前に、カナメは人差し指を添えた。


 その指先に破滅のエネルギーが収束していく──しかし。

 カナメは撃つことはせずに、菜緒に問いかけた。


「アンタは、何がしたかったんだよ」


「……早く殺しなさいよ」


「そうしたいのは山々なんだけどね。……ほら、俺ら、一応姉弟だろ?なんつーか、殺しにくいっつーか」


 カナメは照れたように後頭部をボリボリと掻きむしった。

 そんなカナメを見て……菜緒は笑う。

 楽しそうに、無邪気に──年相応のように。


「な、なんだよ」


「いや、ごめん、ツボっちゃった」


「あっそう。……で?何がしたかったんだよ」


「はぁ……まあ、もういいかな。この戦いに勝ったらさ、凪と約束してたんだよ」


「……約束?」


「うん。時を戻して──私を普通の人間の世界線にしてくれるっていう、約束」


「それは、なんというか……まあ」


 カナメは言葉を紡ごうとして……でも出来なくて。

 そんな自分に腹が立ったのか、唸り声を上げながら声を荒げて言葉を続けた。


「ああもう分かった!分かったよ。分かりました。確かに俺もそっちの方が都合が良いし、何よりそうしたら宏人が生き返るからな。……生き返るっつーか、死ななかったことになるっつーかってええいどっちでもいい!」


 カナメは収束させていた『生死尺玉』を霧散させ、菜緒に手を差し出した。

 そんなカナメの手を、菜緒が目を見開きながら恐る恐る掴もうとして──その菜緒の手をカナメがガシッと掴んだ。


「次からはそういうこと俺に言えよ。ったくめんどせー奴だな」


「……ごめん、なさい」


「急にしおらしくなってんじゃねーよ……」


 カナメは盛大なため息を吐いて、『世界』を解除しようとして──ハッと気付いた。

 見落としていた、致命的な違和感に。



 

 * * *




 少年は、その異能を駆使してこの地に降り立った。


 そして辺りを見渡し、何も異常がないことを確認する。


 見た感じ、計画に支障が出るような現象が起きていなかったからである。


 少々気になる気配や想定外の事態が起きていたようだが、目的さえ達成出来ればいいと考えている少年にとって過程などあってないようなものなのだ。


 なにせ目的さえ達成してしまえば、たとえどんなイレギュラーで凶悪な過程の産物が誕生しようと、何ら問題なく対処できる自身があるからだ。


 少年は、その目的のために長い時を生きてきた。


 それはヒトの寿命なんかとっくに超える年月を駆使してまで、追い求めてきた夢であり、理想であり……結果である。


 

 だから、少年は──両手を合わせた。



「──式神構築」



「なんだと!?」


 カナメは突如塗り替えられた『世界』に驚愕した。

 辺り一面が砂漠と化した、世紀末世界──『蟻地獄』。

 過去に発展していただろう近未来の建築物が砂に飲み込まれていく敗退した世界。

 崩壊したこの世界観は、どこかカナメの『終末世界』と似通っている雰囲気があった。


「……」


 後出しに加えて、しかも一瞬でカナメの『世界』を侵食したのだ。

 ここまでくると、実力や式神の練度よりも何らかの異能の効果だと考えるのが妥当だ。

 もちろんそんな強力な異能など全くない。

 

 だから、思い当たる人物は一人。


 カナメがその人物の名を呼ぶ前に、その少年は姿を現した。



 菜緒の背後から、胸を貫く形で。



「ガハッ……!」


 何が起きたのかすらも把握していなかった菜緒が白目を剥くと同時、その少年──凪は言った。



「『神話掌握』。俺のモノになれ」



 凪の両目には時計のように秒針が時を刻んでいた。

 その奥にある鋭く澄んだ綺麗で蒼い瞳に驚愕するカナメの顔が映る。



 止まっていた時が、再び動き出したのだ。


 

 

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