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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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256話(神サイド) 頂上決戦⑮


 本来、式神構築は後出しが不利な必殺技である。


 ただしそれは同じ格同士での話であり、生物上における最上位存在である神人および純神は絶対的なアドバンテージを持つ。

 しかし、神人同士となると、より式神の精度が高い方が押し合いでの勝者となる。

 ライザー・エルバックがカナメに『世界』の押し合いで完敗したように、存在力や強さにかかわらず、精度が重視されるのだ。

 

 だがしかし。


 いくら精度に差があろうが、同じ格同士の押し合いにおいて後出しされた『世界』が押し合いで勝つのは不可能に近い。



 そんな中──菜緒の『世界』が、カナメの『世界』を侵食していく──!



「ッ──!『神話掌握』だっけ?これ全部そいつの力だろ」


「正解よ。だから私は、何不自由なくアンタを嬲れるワケ」


 カナメが『世界』の維持に力の大半を割く中、菜緒は一切の制限に縛られずに、『世界』を展開したままカナメに襲いかかる。

 これは菜緒と『神話掌握』それぞれに独立した意識があるからこそ可能な正に神の真業。

 加えて『神話掌握』には凶悪な権能もある。

 それは『検索』──の進化した異能、『確率操作』。

 望みの結果への方法を調べる『検索』から、望んでいる結果に至る確率を強制的に底上げする『確率操作』へと進化したのだ。

 これにより、菜緒に『世界』の押し合いで勝てる存在などほぼいなくなったと言ってもいいだろう。

 まさに理不尽。


 しかし、理不尽なのは七録菜緒だけでなく──それは相対しているカナメも同じで。


「『エレクティックバイオレンス』!」


「『世界破滅』ッ!」


 それは先程繰り広げられた異能の応酬と同じ光景。

 だが、結果は違う。

 空すらも割る凶悪な大爆発と、己の姿の痕跡さえも残さない凶悪な速度で敵に向かう一筋の閃光。

 


 本来ならカナメの命に王手をかけるはずだった菜緒の手が、ピタリと止まった。



「……へ?──ガッ!?」


 止まった菜緒の顔面にカナメは膝を叩き込む!

 足元から爆炎と爆風を大噴射しながらの威力は想像を絶し、菜緒の顔面は沈没する。

 しかし菜緒は神人であると共に純神最高位であるアルベストをその身に宿す者。

 その超再生能力により一瞬でダメージは回復するが──やはり隙は生まれてしまうもので。


 カナメは、そんな隙を逃したらする男ではない。


 先程までは、カナメはあまり本気ではなかった。

 それはカナメと菜緒とは隔絶した実力差があったからだ。

 だからカナメは適当にいなして戦闘不能状態に追い込み、宏人を殺した罰を受けさせるつもりだった。


 だがしかし、菜緒は突然理不尽な強さを手に入れた。


 それはカナメに匹敵するほどで。

 だからカナメは方針を変え──全力で叩き潰すことに。

 もう、妥協はしない。


『──菜緒様ッ!』


 『神話掌握』が悲鳴を上げる。

 しかし菜緒は反応できずカナメの大爆発に飲み込まれた。


「……!」


 脳を傷つけられても、神人の再生は止まらない。

 しかし物事を考える器官が無くなるのは変わりなく、再生が完了するまでは屍と変わらない──だから、カナメは菜緒を破壊し続ける。

 その身から再生能力が消え去るまで、何度も何度も。


 そんな中、『神話掌握』は必死に思考する──。


 カナメの体術と異能のコンボが休む間もなく菜緒を破壊していく。

 いくら菜緒に膨大な再生能力があろうと、このままでは、カナメの破壊の前に屈することとなる。

 

 だから。


「──!」


 カナメが更に大爆発を菜緒に叩き込もうとした瞬間、菜緒が消えた。

 もうカナメは『神話掌握』にも独立した意識があることを把握しているため動じず気配を探り──大爆発を叩き込む。


「……!異常。七録カナメ──あなたは異常です!」


「初めましてだなぁ『神話掌握』とやら。精々抗ってろ」


 『神話掌握』は『エレクティックバイオレンス』を見に纏うのでなく、放出する。

 それは超高密度の光の奔流。

 しかしそれはカナメに到達する直前に──止まる。

 先程菜緒が囚われたのと、同様に。


「……理解。ライザー・エルバックと同じ原理ですね」


「おお、正解だよ。あいつと同じように、空間を割ったんだ。『空間支配』は言葉通り空間弄ってそんな現象作り出したんだろうけどさ、俺の『世界破滅』はそんなことできないからね。ただ、普通に破壊しただけだよ」


「……空間が無いところに、生物は到達できない」


「そう。だからどんなにアンタが早くても、『神風領域』を突き抜けることが出来ても、俺には届かないってわけ。ライザーの野郎の真似事なんざしたくなかったけど、そうも言ってられないくらいあんたは速いからな」


「……!やはり、異常」


 『神話掌握』は悔し気にカナメを睨む。

 既にアルベストの異能は全て進化を終えているが、カナメに到達できない以上どれを使っても変わりはない。

 どんなに威力が高い異能であろうと、空間が無ければそこに到達することはできない。

 『確率操作』なら可能だろうが、これ以上容量を割きたくないのだ。

 先程カナメの凶悪な攻撃のコンボから、菜緒の身体の主導権を乗っ取り『神話掌握』が抜け出せたのも『確率操作』で結果を改竄したからだ。

 これは強大な権能なだけあり能力消費も尋常ではない。

 いくら膨大な能力を所持している菜緒も能力残量は無限ではないのだ。

 加えてカナメによって回復に能力を使い過ぎた。


 ……もう、どうしようも──!


「『神話掌握』、ありがと。もう戻っていいよ」


 菜緒の、意識が戻った。

 それと同時に菜緒は『神話掌握』から身体の主導権を取り戻す。


『菜緒様……。私は一体どうすれば──』


「アンタ、進化してもあんま変わんないねー。まあいいけど。後は私に任せて。アンタは式神なり回復なりとにかく裏方に徹して」


『──!はい!』


「余裕そうで何よりだよッ!」


 刹那、カナメの高速の蹴りが菜緒を襲う。

 菜緒はそれを『神話掌握』の権能の一つ、『無限思考』にて到達地点を把握し回避。

 『無限思考』はその名の通り時が止まったかのような状態で、脳だけを動かすことのできる権能である。

 実際に時が止まっているわけではなく、かつ決して己が速くなったわけではないため万能とは言い難いが、今回のような体術戦においては重宝するのだ。

 

 だが──それこそがカナメの狙い。


 菜緒が回避した先には、カナメが時間差で発動するよう仕掛けた『世界破滅』が──!


『問題ありません』


 そうとは知らない菜緒の頭に、そんな『神話掌握』の声が。

 次の瞬間、菜緒自身は意図せず全身から極大な電流を放出──『世界破滅』による大爆発の軌道を逸らすことに成功した。


「あらら。その異能便利だねぇ」


「あっぶなぁ……。そ、そうでしょう!?現に今、『神話掌握』ちいなかったら大変だったんだから!」


 カナメと、『神話掌握』と作業を分担する菜緒。

 二人の攻防は、今のところは互角。

 

 だからこそ、両者は知っている。


 ──『世界』を構築した方が、この戦いにおける絶対的なアドバンテージだと。


 戦闘面は全て菜緒に任せ、『神話掌握』はそのサポートを重視する。

 ……たった今『神話掌握』自ら放電のサポートを行ったが、そういうアクシデント程度なら問題ない──そのため『神話掌握』は、割れた空間すらも無視する、というとんでもない理を絶対とした。

 

 たった今より、菜緒の攻撃は全てカナメに届くこととなる。


 だから、菜緒は唱える──最強を超えた先の、絶対の権能を。



「『奥義』──『デウス・エクス・マキナ』」



 コトワリを操る神が、動き出す。

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