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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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255話(神サイド) 頂上決戦⑭


 菜緒の文字通り死ぬ気の特攻。

 その手中から放たれた『輝』が──放たれる直前!

 カナメは左手で、『輝』を生成していた菜緒の手を掴んだ。


「は、はぁ!?」


 困惑する菜緒をよそに、カナメはその手を握り潰す。

 肉が裂け骨が砕かれる不快な音の一瞬後、菜緒が絶叫する。

 そして暴発する『輝』未満のエネルギーの収束体。


 それは皮肉にも『輝』より眩い光を放ち──カナメの『世界破滅』よりも強力な爆発が発生した。


 もちろん、『世界真理』によって『神風領域』を限定解除されているカナメも無事では済まない。

 この結果を生み出したカナメの左手は消滅し、右目が割れ、全身に負傷を負う大怪我となった。

 

 神人の超回復を前提とした我が身を顧みない大胆な対応。

 そんなカナメの頭上より──清龍の一撃が降りかかる!


 カナメは清龍の殺気に感づきながらも『神風領域』で難なく対処──しようとした直前、背中に悪寒が走る。


「──!」


「惜しいなぁ……!後少しで真っ二つだったのに」


 カナメは全ての回復能力を左手に収束し、左手を瞬間再生させると同時に清龍の攻撃を受け止めた。

 そして破壊される、カナメの左腕。


「神剣……『冥龍』か。厄介だな」


 神剣『冥龍』に付与されている異能は『カースドノエル』。

 異能を無効化する異能だ。

 これにより菜緒も清龍もカナメの『神風領域』を無効化する手段を持ち合わせたこととなる。

 決して『神風領域』が無意味になるわけではないが、これでカナメのアドバンテージが消え去る。

 とはいえそれは防御手段。


 七録カナメの異能の真骨頂は──その攻撃力。


 カナメは左腕を爆破。

 自分は『神風領域』で守りながら、至近距離にいた清龍に大ダメージを与える。

 しかし神剣『冥龍』を持つ清龍への被害は少ない。


「まずはその剣をへし折ってやるよ」


「……ッ!それは困るよ。いや、ほんとに。それよりせっかく作った足場が粉々ー!」


 対峙するカナメと半泣きの清龍の横目に、天に向かって伸びる光線が映る。



「『奥義』──『雷楽滅堕』!」



 そこには既に回復し切っている菜緒の姿が。

 カナメは無理に左手を修復したことが祟り一時的に回復能力回路が故障──回復が困難な状態に陥ってしまっている。

 

 そんなカナメに、無数のイカヅチが降り注ぐ。


 天が光り輝くその瞬間。

 閃光がカナメを包み込むように踊り狂う。

 しかしカナメは動じない。


 カナメが手を横に薙ぐだけで、大爆発がイカヅチを飲み込み、エネルギーを収束──更なる大爆発が、菜緒と清龍に襲い掛かる!


「『サンドライトニング』ッ!」


「ちょちょ──冥龍ほんと頼む!」


 菜緒は『サンドライトニング』を応用し自信を閃光に変え大爆発の範囲外に逃げ込み、清龍は己の能力を死ぬ気で神剣『冥龍』に流し込み、その権能で以ってどうにか凌いだ。

 

 菜緒は空中を疾く駆けながらカナメへの対処に思考を巡らす。

 『世界真理』がカナメの対処法を『検索』している以上、その結果が出るまでは菜緒自身でカナメをどうにかしなければならないのだ。

 

 そんな菜緒の前に、カナメが姿を現す。



「……へ?」


「逃げてんじゃねぇよ──はい、バイバイ」



 カナメは菜緒の腕を掴み──『世界破滅』。

 

 腕だけではなく、菜緒そのものが粉々に粉砕された。

 いくら凄まじい回復能力があれど、その身が粉砕されれば死は訪れる。


 だがしかし。


 本来なら死んでいたこの攻撃は、『世界真理』によって塞がれていた。

 さすがの菜緒も、冷や汗が止まらない。



「ナイスファインプレーだよ『世界真理』ちゃん……!ギリッギリだね」


『間に合って何よりです……!結果報告です。今の今まで七録カナメの確実な対処法を『検索』していましたが──不可能でした!』


「うん!使えないね!」


『ですので代替案として、菜緒様の全体的な強化を『検索』し──成功しました!これより菜緒様の全ての異能の進化を開始──完了しました』



 『世界真理』の言葉通り、段々と菜緒に力が漲ってくる。

 『世界真理』の『検索』が不可能と告げた以上、先程までの菜緒ではどう足掻いたところでカナメへの勝利は不可能だった。

 しかし、たった今、菜緒は進化したのだ。


 

 『世界真理』は己をも強化し──『神話掌握』へと至る。



 これは、カミノミワザの究極形態──『カミノキョクチ』。


 『世界真理』では、同格の神人であるカナメへの勝率の『検索』は不可能であった……しかし、『神話掌握』に進化した今、その前提は覆された。



 七録カナメへの勝率──100%



 これが『神話掌握』が出した結論。

 一切の不可能を許さない、確定した確実な未来。

 

 まるで世界が止まったと錯覚するほど、思考が加速された世界にて、『神話掌握』は七録菜緒を完成させた。


 ──だから、カナメにとっては突然の出来事で。


「……あんた、今一体何をした?」


「うふふ。ひーみーつ」


 カナメは思わずと言ったふうに目を見開き、警戒している。

 菜緒はそんなカナメを見て笑みを浮かべ──ハッと、イイコトを思いついた。


「清龍。来て」


「えっと……なんか、強くなった?七録菜緒」


「うん。実はね、もっと強くなれる秘策があるんだけど──協力してくれる?」

 

「当たり前だ。だってカナメへの対処は──えっ?」


 刹那──菜緒が、清龍の胸を貫いた。


 清龍の手から、神剣『冥龍』が落ちていく。

 それを見てカナメは、小さく舌打ちした。



「うふふふふふ。んーーーー!いいね、これ!なんか、今までの私とはぜんっぜん違う気がする!」



 清龍は、一瞬にして姿を消した。

 否──菜緒に、取り込まれたのだ。


「『世界──じゃなかった。『神話掌握』、『フリーズフローズン』の進化もお願いね」


『了解です!』


「何一人でぶつぶつ言ってんだよ。気持ちわりぃ」


「ごめんねー?よしっ、じゃあ再開しよっか」


 再び向かい合う両者。

 だがしかし、二人の顔には緊張感などない。

 絶対的な強者、それよえの余裕。

 とはいえ、お互いに実力を評価し合っているのだ。

 それは慢心ではなく、勝てるという絶対的自信。

 

 しかしながら。

 『神話掌握』が導き出した「菜緒の勝率100%」は──何人にも、覆すことはできない。


「死に晒せ!『エレクティックバイオレンス』!」


「──!『世界破滅』」


 カナメの周囲を花火が囲う。

 その計り知れない威力が込められた爆発は、この世の理から逸脱しており、空間が破壊されていく。

 どんな存在でも立ち入ることの出来ない破滅の空間。

 

 だというのに。

 いつの間にか、カナメの腹部に菜緒の腕が突き刺さっていた。


「──!?『サンドライトニング』の進化、か……!」


 カナメは込み上げてきた血を吐き出し──己諸共『世界破滅』。

 菜緒はニヤリと笑い……!


 気がつけば、菜緒はカナメが『世界破滅』を発動する前の場所に浮遊していた。


「……」


「『エレクティックバイオレンス』はね、カミノミワザを超えた、カミノキョクチって言うんだよ。能力者が超能力者に太刀打ちできないように。超能力者がカミノミワザに太刀打ちできないように。カミノミワザじゃ、カミノキョクチには太刀打ちできないんだよ」


 菜緒のその言葉に、嘘偽りなどない。

 それくらい、カミノキョクチは圧倒的な力なのだ。

 それにはもちろんカナメも気付いている。

 しかし、そんな中でもカナメの態度は変わらない。


 カナメはめんどくさそうに、ガリガリと後頭部を掻きながらため息を吐いた。


「そうかよ。どーでもいいな」


「そう?このままじゃ死ぬよ、アンタ」


「死なねーよ。死ぬとしても、あんたには殺されねーだろ」


「へぇ。なんでなんで?お姉ちゃん気になっちゃうよ」



「だってさ──『式神構築』」



 次の瞬間、『世界』が一変する。

 空は荒れ、建造物は朽ち、大地は荒れ──燃え盛る爆炎。


「……へぇ。生意気」


 焦土に満ちた終焉の世界。


 その名を、『終末世界』。


 『消炎都市』の比ではない破壊力を込めた、カナメだけの『世界』。

 しかし、そんな中でも菜緒は笑う。



「式神構築──『万世ノ理』」



 それは、『全知全能』を超えた究極の『世界』──アカシックレコードの眠る完全な『世界』。

 本来なら、悪手。

 式神構築は先に展開した方が圧倒的な有利性を誇る。

 なぜなら展開した以上、強く『世界』が固定されるからだ。

 せめて同時、展開された後に展開など以ての外──しかし。


 『神話掌握』は、その理すらも、覆す。



 ──カナメの『世界』が、段々と押し返されていく──!



 先程までのカナメの圧倒的な戦力差はどこへやら。

 七録菜緒は、『世界真理』は。

 カナメという最強を観察し、成し遂げた。



 『神話掌握』は、まだまだ止まらない。

 



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