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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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254話(神サイド) 頂上決戦⑬


 菜緒は、『世界真理』が焦っていることに気付いていた。

 おそらく向井宏人の想定以上の強さと想定外なカナメの参戦に戸惑っているのだろう。

 

 それでも、菜緒は高揚していた。


 全知全能たる『世界真理』と、最高峰のカミノミワザを複数保有するアルベストの異能。

 今体の主導権は菜緒にあるが『世界真理』のオートモードを切ったわけではない。

 確かにカナメは強いが所詮神人。


 最強の純神を取り込んだ菜緒の、敵ではない。


「『サンドライトニング』」


 まずは小手調べ。

 菜緒は神速のカミノミワザで以って飛び回りカナメを翻弄する。

 だがカナメはつまらなそうにため息を吐くのみ。

 

「いつまでそんな余裕でいられるか見ものだね」


 菜緒の神速の突きがカナメを襲う。

 その拳には膨大な電流が流れており、たとえ神人であってもダメージは入らずとも感電はする一撃だ。

 しかしその拳はカナメに届くことなく阻まれる。


 

 カナメの絶対防御──『神風領域』。



 これは常時カナメの体から発せられる爆風が収束され、カナメに近づくものを迎撃する領域だ。

 相手にダメージを与えない、最小限の護り。

 だからこそ、常に一定の結界の維持を可能とし何者にも破ることの出来ない不可侵の領域が発生しているのである。

 

 無論、これを知らない菜緒ではない。


 何せライザーとの戦いを観戦していたのだ。

 その視覚情報からカナメの『神風領域』の対策を立てることは、全知を司る『世界真理』からすれば容易いことなのである。

 

 ──その瞬間。

 カナメの『神風領域』が、破壊された。

 

 菜緒の笑みが深まる。

 『神風領域』が崩れると、その勢いで菜緒の拳がカナメを捉えた。


 そんな菜緒の拳を、カナメは片手で防いだ。


 ただのパンチとはいえとてつもない速さで繰り出されたものだ。

 止められるのは驚きだったが、何も結果が変わったわけではない。

 菜緒の目的はカナメの感電。

 そのため触れることが目的だったというのに、まさかカナメ自ら触れてくるとは。

 好都合──と電撃をカナメに流す。


「姉貴」


 続けて『輝』で行動不能に……と思考していた菜緒に、カナメは語りかける。


「つまんねぇよ」


「──がッ……!」


 刹那、腹部に凄まじい衝撃が走る。

 それは菜緒と同じカナメのパンチ。

 だがしかしその威力はまるで別物。

 菜緒と違い異能を纏っていないのに、だ。


「菜緒様!」


「きみが新しい神人くんか。お手柔らかに頼むよ」


 衝撃で遠方に飛ばされる菜緒とカナメの間に冥龍と清龍が割って入る。

 同時に迫り来るは冥龍の『カースドノエル』と清龍の『フリーズフローズン』。

 狙いは明白、『カースドノエル』でカナメの『神風領域』を消去し『フリーズフローズン』でカナメを攻撃するつもりだ。

 しかし、それは失敗に終わることとなる。


「──なんですって……?」


 いつの間にか、カナメは背後から冥龍の首を掴んでいた。


「俺お前みたいな奴嫌いなんだよね。なんて言おうかな……上手く使えば異様に強いサブキャラ?」


 ゴキッと、冥龍の首が折れる。

 冥龍は光の粒子と成り、カナメの手に収束──神剣『冥龍』となった。

 その一部始終を見ていた清龍は苦笑いだ。


 あの異常に強かった宏人と同格──否、それ以上だと……!


「清龍!あんたはもう死なないでね!」


 菜緒は清龍の隣に帰還すると同時にそう言った。

 清龍の顔が引き攣るが、菜緒は見なかったことにする。


「僕とメイナスの攻撃効かなかった以上、僕にすることある?」


「バカ言わないで。あんたとマイナスの攻撃は無効化されたんだよ。カナメの『神風領域』でね」


「だからさ、それを消すためにメイナスが『カースドノエル』撃ったんじゃん。なに?カナメの『神風領域』はカミノミワザを超える権能だって言いたいの?」


「そうじゃないよ。あれは『神風領域』の応用……拡張しただけだよ。ふっつーに爆風放って『カースドノエル』吹き飛ばしただけ。だからあんたの『フリーズフローズン』は『神風領域』に阻まれたの」


「なあ姉貴。宏人の時みたいに本気出せよ。それとも何か?やっぱそこの龍モドキいると全力出せないか?」


 カナメが人差し指を上下させて挑発してくる。

 だが菜緒はその誘いには乗らない。


 なぜなら──先ほどより『世界真理』が危険だと騒いでいるからである。


 今さっきの攻防で『世界真理』は菜緒とカナメの力の差を演算したらしい。

 宏人との戦いを経て、『世界真理』はより慎重になったのだ。


 菜緒は、それが酷く苛立たしい。


「ねえ『世界真理』。私じゃ、カナメに勝てない?」


『……そういえわけでは。しかし勝算が低いのは事実であり──!』


「なら、私が勝つように全力でサポートして」


 『世界真理』が微かに呻く。

 およそカミノミワザというただの権能を超えて、『世界真理』は独立した自我を確立しているのだ。

 本来なら菜緒が選択した結果を生み出すだけの異能。

 それが、今、悩んでいるのだ。


 菜緒のために。


 菜緒を護るために。


 菜緒を、死なせないために。


「全力で、ね?」


 だが、主人の命令は絶対で。

 だがら『世界真理』は苦渋の決断をする。

 厳しい道ながらも、可能性はあるのだ。



『了解しました。これより菜緒様が七録カナメに勝つ最善の方法を『検索』します!』



 『世界真理』がそう叫ぶと同時──カナメがふぅ、と息を吐いた。

 

 菜緒の真横を、暴風が通り過ぎた。


「……な」


 菜緒の頬が抉れ鮮血が舞う。

 これにはさすがの菜緒も顔を引き攣らせた。


「俺はさ、神人に成って風も操れるようになったんだよね。ニーラグラの上位互換だと思ってくれればいいさ」


「こんの化物め……!」


 清龍は悪態を吐きながら空中の至る所から水分を凝縮──氷の大地を形成する。

 先程より当然のように空中で戦闘を繰り広げているが、カナメ相手に浮遊という無駄なリソースを割きたくないのだ。

 これは『世界真理』の指示だ。

 宏人の『変化』や、カナメの『神風領域』さえも無効化出来たのだ。

 カナメを相手に勝利する方法も、時間さえあれば『世界真理』なら生み出せるだろう。

 菜緒はそう考え、一歩踏み出した。


 冷風吹き荒れる氷の大地にて、菜緒とカナメは相対する。



「──『世界破滅』」



 カナメは言葉もなく破壊を撒き散らした。

 菜緒は己の周囲に強力な磁場を形成、磁界を作り出す。

 それにより爆発から逃れ、そのままカナメのもとへ駆け出した。

 それはアルベストの異能を完全に掌握した亜音速での移動。

 菜緒は『世界破滅』と宏人の戦いを安全な立ち位置から冷静に分析し、『世界真理』の補助もあってアルベストの異能を完全に使いこなしていたのである。

 今思えばカナメとの戦いの前にアリウスクラウンとセバスと手合わせ出来たのも暁光だった。

 

 カナメの周囲には破壊の権化が花を咲かす。

 されどもその花火は美しい。

 飛んで火に入る夏の虫の気持ちが理解できるほど、身を包まれたくなるような温かい色。


 その中に、菜緒は飛び入る。


(──!やばい!なんかわかんないけどとてもやばい。でもアルベストのカミノミワザと同格だからギリギリ耐えられる!)


 やがて。

 目の前には冷徹な目を向けるカナメの顔が。


 菜緒の手に、膨大なエネルギーが収束する。


 これは、菜緒がカナメの間合いに飛び込んでから僅か一瞬の出来事。

 アルベストのカミノミワザを極限まで行使することのできる菜緒と『世界真理』だからこそ可能な、時間さえも置き去りにする超スピードの世界。

 

 そして放つは、単体攻撃最強異能。



「──『輝』」



 光り輝く破壊の光線が、カナメを包み込む。

 


 


 

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