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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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251話(神サイド) 頂上決戦⑪


 ──先程まで戦闘音の絶えない戦場は、不気味なほどに静まり返っていた。


 『世界真理』と清龍、冥龍を目の前に、満身創痍のセバスが鎌を持つ手にグッと力を込める。

 突然、まるで別人のように『世界真理』の力が上昇したのだ。

 そして途絶えた瑠璃からの指令。

 これが意味することは……。


 ちらりと背後の智也、星哉、流音を見てみる。

 まだ息はあるようだが、外傷が酷い。

 この三人がまだ生きているのは智也のおかげだ。

 智也自身も瀕死であったのにもかかわらず、なんとかこれまた死にそうな星哉と流音を回収してくれたのだ。

 ケルベロスも瀕死とはいえまだ死んでいない。


 まだ、『リンク』は残っている。


 

「『バースホーシャ』!」



 セバスは全員を囲むように『バースホーシャ』を展開。

 戦場の範囲を作ってしまえば思わぬ角度からの奇襲を限りなく狭めることが可能だからだ。

 しかしそれすらも──途端、『バースホーシャ』の炎の輪を巨大な氷が包み込んだ。

 清龍の嫌らしい笑い声が響き渡る。


「ごめんなぁセバス」


 清龍はそのままセバスに向けて『フリーズフローズン』。

 清龍が触れた地を中心に凄まじい勢いで氷が地面を侵食し──やがてセバスを食らうかのように襲い掛かってくる。

 セバスは氷を『変化』で破壊していきまっすぐに突き進む。

 

 そんなセバスの背後から冥龍が『カースドノエル』を放ち、セバスの『変化』を強制オフ。

 そのままセバスは氷に囚われていき──自分で首を掻っ切った。

 セバスは万全の状態でカールに憑依。

 冥龍に切り掛かる。


「……!おもしろい戦い方をしますね」


 冥龍の右腕を切り裂くに至るが、清龍の横槍でトドメを刺せずに後退した。

 冥龍は戦闘を得意としていないようで、一対一なら勝機はあるのだが……いかんせん集団戦となると厄介極まりない。

 

 セバスは今度は清龍に斬りかかろうとしたが──いつの間にか、目の前に『世界真理』が。


「やば──!」


 『世界真理』が放つは『サンドライトニング』。

 異能においてのトップクラスの速度を誇るカミノミワザにして、『世界真理』によって細かく上方修正された最凶異能。

 それが、カールがいない状態のセバスに迫る──!



「──ギッリギリ!間に合ったようで何よりだわ」



 だが、『世界真理』は『サンドライトニング』を放つことなく背後に拳を薙いだ。


 『世界真理』と、アリウスクラウンの拳が衝突した。

 とても少女同士の拳の威力ではない衝撃波が巻き起こる。


「──ッ!?」


 アリウスクラウンは顔を驚愕に染め、大きく後退した。

 そして自分の手を見て顔を顰める。


「アリスさん、どうしました?」


「なんで私よりもあっちの方が力強いワケ!?『炎舞魔人』で神人レベルまで強化してるからおかしいのだけれど!」


「私は回復能力を駆使すれば菜緒様の体のリミッターを外し限界まで酷使することが可能なためです。前提とするルールが違うんですよ」


 『世界真理』はそう言い終わった頃には──既にセバスとアリウスクラウンの間にいた。

 

「「──ッ!?!?」」


「それは体全てに適用されます。それに『サンドライトニング』を併せた結果が、これです」


 『世界真理』はセバスとアリウスクラウンの首に超スピードで手刀を叩き込む!

 その手に纏うは膨大な電流。

 ただえさえその手刀の威力は絶大だというのに、さらに『サンドライトニング』を付与した理由。

 それは──この攻撃が避けられることを前提としているため。

 セバスとアリウスクラウンは必死の一撃をなんとか回避してみせたが、その手が纏う電流によって少なくないダメージを受ける。


「……!『検索』ですか。デタラメですね」


「ちょっ、これマジでやばくないかしら。てか、あいつらは何やってんの──藍津と莉子は!」



 * * *



 ──数日前。


 もう三月だというのに降り続ける雪を窓を挟んで横目で見ながら。


 宏人、瑠璃、セバス、アリウスクラウンは拘束される藍津を囲っていた。

 現在藍津は拠点にしているアパートの一部屋に拘束されている。

 丸一日飲まず食わず動かずだったせいか、藍津の顔から人を舐めた笑顔が消えている。

 とても藍津らしくない……からこそ、宏人は面白く思った。


「もう一生このままでいいんじゃないか?」


「ひ、宏人様ぁ……?出来れば解放してもらいたいなと思うのですがぁいかがでしょうかぁ?」


 無慈悲なことを言う宏人に、藍津は目を血走らせながらそう言った。

 宏人と共に来ていた瑠璃が、そんな藍津の目に指を突っ込む。

 血も涙もないとはまさにこのこと。

 とはいけ捕虜の末路なんてそんなもんである。


「いってぇぇぇぇぇぇ!な、なにするんだこのクソザコ!」


「あら普通に喋れるじゃないの。ムカついてたのよね、今までの喋り方」


 瑠璃は藍津のアイデンティティの口調が余程嫌いだったらしい。

 地べたに這いつくばっているのもあって、瑠璃はとても楽しそうだ。

 宏人としてはなんだか藍津が可哀想になってきた。

 藍津は味方ではなかったが敵でもない。

 そのため寄ってたかって足蹴りする必要はないと思ったのだ。


「おい……。にしても容赦無さすぎないか?こいつって、別にそんな悪いことしてないんだろ?」


「そうね。七録菜緒に足止めを任されたから、それを実行しただけね。で?それで七録菜緒を自由にさせて?カナメを封印されました?そうね、こいつは一番悪いわ」


「確かにそうだな。すまんやっぱお前悪いわ。処刑」


「宏人様まで!?ひどいですぅ……」


 藍津は涙を垂れ流しながら泣く。

 キャラ崩壊にも程があるな。

 というより、男がこれをやると無性にイラつくのはなぜだろうか。

 やはりこれが許されるのはニーラグラぐらいか。


「宏人。どうする?」


「戦力増強のために仲間にしたらいいんじゃないかしら。こいつ式神も使えるし」


「アリスさんの言うことも一理ありますが……いかんせんこの人は頭が回ります。無駄に。だから自由にさせておくのは危険だと思いますよ」


「セバス様までひどい」


「そうだよなぁ。つーかまず戦闘に関してもあんま強くないだろ。セバスがなんも苦労せずに倒せたんだろ?ならリスク背負ってまで仲間にする必要なくないか」


「宏人様はもっと酷い!」


 藍津が本気で泣きそうな顔をしている。

 さすがに年齢不詳のダンディーの泣く姿なんて勘弁である。

 宏人ははぁとため息を吐き、藍津の目を見据えた。

 あーだこーだ言っていたが、なんだかんだ言って藍津は優秀な男だ。

 藍津に適任な仕事はないか……と宏人が悩んでいると、瑠璃が名案が浮かんだとばかりに手を叩いた。


「何か思いついたのか?」


「ええ。それも重大任務よ。莉子!」


「えっ、なになになに!?私なんかするの……?」


「当たり前でしょう?働かざるもの生きるべからずよ」


 莉子は涙目で「はいぃ……」と声を漏らした。

 まだ内容も聞いていないというのにこんな哀愁漂ってくるのはニーラグラに通ずるものがあるな……と宏人は思いながら海木莉子という人間の異能について考える。

 

  ──『瞬足者』。


 名前の通り、めちゃくちゃ早いのである。

 ……ただ、それだけ。

 いや『者』級ということもあり人間としては規格外の部類なのだが……宏人たちが戦っているレベルの世界ではなんの脅威でもない異能なわけで。

 とはいえ持続力はかなりのものらしく、海を横断できるらしい。

 

 そんな莉子に、藍津と一体何をさせるつもりなのだろうか。

 

 宏人がそう問うと、瑠璃はいやらしく笑った。



「私たちの最終兵器を、ね──」



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