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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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250話(神サイド) 頂上決戦⑩


 カールの『アンダーテイカー』が『世界真理』に直撃──粉塵が舞い、視界が遮られる。


(……今のは完全にモロに当てたから、回復するとはいえ重症だったらいいんだけど……。『アンダーテイカー』が全く効かなかったらさすがに凹む)


 セバスは苦笑いをしながらも決して警戒を怠らず砂埃の向こうを見つめる。

 ……やがて浮き出てくるは三つの影。


 

「やぁセバス。さっきぶりー。約束通りまた来ちゃったよ」



 姿を現したのは『世界真理』だけでなく……清龍と冥龍がその両脇に控えながら、砂埃を掻き分けてきた。

 『世界真理』は、相変わらず超速再生で戦う前と変わらない姿を保っている。

 

「……智也くん、あなたは清龍を。星哉くん、流音さんの二人はケルベロスとともに冥龍をお願いします……!」


「お前一人であの化物と戦う気かよセバス。まあ止めないけどな」


「了解した。宏人様が復活した時のために、龍ぐらいは倒しておきたいしね」


「……まあ、比較的難易度は低そぉ……かなぁ!?そうなのかなぁ!?なんかどいつもこいつもめっちゃ強そうだけど!?」


 セバスは龍の二柱を他の三人に任せ、カールとともにまっすぐ『世界真理』に突っ込む。

 鎌で切り掛かりつつ、合間合間に『バースホーシャ』を連発する。

 まだ宏人の力を自分のモノに出来ていないセバスには『焔』の難易度は高すぎるのだ。

 ……それは『リンク』も同じ。

 『黒焔』か、『エンチェンジ』。

 ケルベロスが戦闘不能になる前に、どちらか決断しなければならない。


 セバスとカールは同時に『バースホーシャ』を『世界真理』に撃つ。

 しかしそれは『世界真理』に直撃する直前で霧散する。

 『世界真理』は『サンドライトニング』の扱いを完全にしており、威力の減少を最大限に控えた微小の『サンドライトニング』を己の周囲に展開し、常に一定レベルの攻撃を防いでいるのだ。

 

(『電撃バリア』が進化してるし……。一定レベルって言っても『バースホーシャ』ってカミノミワザなんだけど……)


 ──今、セバスが『世界真理』に一人で相手取れているのは、偏に『世界真理』がセバスに集中していないからだ。


 セバスはその事実を今一度自覚して、はぁとため息を吐き──怒りに燃える。


「あんま、舐めないでください」


 セバスはカールに、カールはセバスに『バースホーシャ』を放った。

 セバスとカールは異能を介さずに遠距離でも意思疎通が可能なため互いにその行動に迷いはない。

 カミノミワザ同士が衝突し、周囲一帯に大爆発が巻き起こる。

 大威力の爆炎と爆風がセバス、カール、『世界真理』を遅うだけでなく、息をするのにも困難を強いられる黒煙が漂う。

 

「──ッ。考えますね」


 『世界真理』は嫌そうに顔を顰め、『輝』で黒煙を一気に吹き飛ばす。

 最上位のカミノミワザにより黒煙はまるで最初から無かったかのように掻き消された。

 

 すると目の前には──手に『焔』を宿したセバスが。


 『世界真理』は一瞬動揺したが……それはセバスの不死生を前提とした攻撃であることに気づく。

 『世界真理』の超速再生をもってすれば、『焔』を直で当てられたところで何も問題はない。

 たからこそ、本来であればわざわざ目の前に来てまで『焔』で攻撃しようとするのは愚策。

 当てられるとしても、『世界真理』は十分に反撃が可能──殺せるからだ。


 結果は『世界真理』の予想通り『世界真理』は爆炎に身を包み込まれるが、反撃の『輝』でセバスを殺害することに成功する。


「『黒焔』を使わないのは向井宏人のように『リンク』の接続先を自由に変更出来ないからですか」


「そうですね。やっぱタイミングって大事なので」


 カールの肉体にセバスが受肉する。

 

 一見すると、今のセバスの捨て身の攻撃は失敗に終わったかのようだ。

 しかしセバスは不敵に笑う。

 それは引き攣っているわけでも負け惜しみでもない。


 『世界真理』は今現在瑠璃と我慢比べの真っ最中だ。


 瑠璃のためにも、そして自分たちのためにも瑠璃が耐えている内に決着をつけなければならないが……セバスはそれは単独では難しいと判断。

 そのため捨て身でもなんでもして──とにかく『世界真理』にダメージを与えようとしているのだ。

 

 この不死のインターバルの五分をなんとか耐え抜き、カールが復活すると同時にまた捨て身の攻撃……地味で地道だが、これは確実に『世界真理』にダメージを与えられる方法なのだ。



「……嫌らしいことこの上ありませんね」


「あなたが強すぎるのが悪いんですよ」



 セバスの攻撃が激化する──はずだった。


 *


 瑠璃の目から、耳から、鼻から、口から。

 溢れんばかりに大量の血が漏れ出てきた。


「瑠璃!」


 クンネルは泣きながら瑠璃に抱きつき『読心』をやめさせようとする。

 だが瑠璃は止まらない。

 宏人がいなくなった今、セバスたちだけで神人を超越した存在を相手取っているのだ。

 しかも先程までの倍以上の情報が交錯している現在、おそらく『世界真理』は今瑠璃の『読心』に集中している。

 『世界真理』の目がこちらに向いている間を、一秒でも長く引き伸ばさなければ……!

 瑠璃は一瞬意識が途切れることを何回も繰り返しながらも、決して完全に意識を手放したりはしない。

 ここが正念場なのだ。

 

「瑠璃、もう止めろ!死んでしまうぞ!」


 クンネルが叫び続ける。

 傀羅がいない今、『世界真理』の式神の構築を邪魔する術はない。

 おそらく『世界真理』が式神を展開する気になれば今からでも容易く可能だろう。

 瑠璃がいる現状でもそんな危うい状況なのだ。

 瑠璃は皆に言った。


 これが、最後の戦いなのだと。


 瑠璃は今まで皆を戦場に送り出す立場だった。

 今でもそれは変わらない……しかし、こうして自分も戦えている。

 このことがたまらなく嬉しいのだ。


 だから、絶対に『世界真理』の解析の手は止めない──!



『あなたは、向井宏人と同様ヒトの可能性の塊ですね』



 ふと、そんな声が聞こえてきた。

 自分の血で紅く染まっていた世界が、いつの間にか鮮明に戻っている。

 この声は……菜緒、いや『世界真理』か。



「それはどうかしら。今戦場であなたと戦っているセバスや、生神と戦っているダクネス……それに何よりあなたに王手をかけた宏人の方が、私よりもよっぽど人類の希望を具現化した存在だと思うわ」



『確かに向井宏人はそうですが、他二名はあなたに及びませんよ。アリウスクラウンなる人物には少々興味がありますが、今戦っている少年──セバスには可能性を感じませんね。この戦いが始まる前まではともかく、今は向井宏人の劣化コピーに過ぎないただの人間兵器ですよ』



「それでも、あなたみたいな理不尽な存在を前にして、その身一つで立ち向かっている。それはもちろん、セバスだけでなく、智也も、あの二人も。私はそんな彼らを、心から尊敬しているの……って、なんの話だったかしらこれ」



『単なる私の興味に付き合ってもらっただけですよ。常に確実性を求める身としてはあまり空想話を口にしたくありませんが……菜緒様よりも、あなたの方が私を使いこなせるかもしれませんね』



 『世界真理』が朗らかに笑う。

 ……宏人を倒した──殺したきっかけになった憎むべき敵。

 そのはずなのに……正直、瑠璃は『世界真理』のことが嫌いではなく、なんなら好ましく思っていた。

 『読心』と『世界真理』の勝負は、辛いながらも楽しかったからだ。


 『読心』で『世界真理』を覗き込むたび、未知なる情報にその身を任せられる……そんな、まるでアカシックレコードを覗き込んでいるかのようなひと時は、瑠璃の探究心を大いに刺激したのだった。



 だから、瑠璃も笑う。

 満面に──安らかに。



「──瑠璃?」


 突然、瑠璃が倒れた。

 クンネルはそんな瑠璃に、おそるおそるそう問うた。

 それから瑠璃が返事をすることはなく──でも。



 瑠璃の寝顔は、とても楽しそうで。



 ──たった今、『世界真理』を止める術が消え去った。

 『世界真理』は情報を遮る弊害がいなくなったことによりその全ての権能の行使が可能となったのだ。



 

 これより戦闘は、さらに激化することになる。


 

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