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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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249話(神サイド) 頂上決戦⑨


 ──宏人が光の奔流に包み込まれた直後。

 

 セバス、智也、星哉、流音、そしてカールと極犬・ケルベロス。

 この四人と二体が、戦場に降り立った。

 宏人の安否はともかく、明らかに現状を維持できない状況になったらセバスたちが戦闘を引き継ぐ流れになっていたのだ。


 確かに、宏人が単独で挑む方が勝率が高い。

 だがしかし、それが達成出来なかった現状……。


(正直このメンバーは不安だなぁ。アリスさんは宏人くんを撃った犯人の所に行っちゃったから、僕たちだけでか……。星哉くんと流音さんが陽動隊員な以上、まともに戦えるのは僕と智也くんと人外二体……やるしかないか)


 セバスはそう覚悟を決め、菜緒──『世界真理』に切り掛かる。

 『世界真理』の姿はもう外側だけのアルベストではなく菜緒の状態。

 宏人はトドメを刺す寸前だったが、それは宏人の『変化』が一撃必殺だからだ。

 ということはつまり、まだ超速再生に余裕がある菜緒の相手をすることになる。

 

 幸いなことに、宏人がかなりダメージを与えてくれたからか、『世界真理』の顔に余裕はない。


「──ハアッ!」


 智也の『悪魔』が発動──その全身が悪魔と化す。

 そしてセバスはその背に生えた一対の翼を自在に操り、『世界真理』に猛攻をしかける。


 セバスの現在の異能は清龍戦から変わらず『随伴』で宏人の力をそのまま扱う。

 他対象の『変化』も使用可能な以上、セバスだって一撃必殺を狙えるのだ。


 智也に続いて、セバスは『バースホーシャ』を放つ。

 『世界真理』はそれに対し『サンドライトニング』を器用に駆使し、無難に弾き返す対処をする。

 ……セバスを、違和感が襲う。

 先程まで宏人との戦いを見ていたが、『世界真理』は毎度殺すつもりで攻撃、最適解の対処をしていた。

 だが今の『世界真理』は、まるで最小限のギリギリの対応をしているようにしか見えず……!


「──ッ!まさか……!」


 そこで、セバスは思い至った。


 『世界真理』の狙いは──瑠璃。


 *


「……アンタたちが、宏人を倒した犯人ね」


 目視するのも苦労する暗さの森林の中。

 アリウスクラウンは、二つの人影に向かってそう言った。

 やがて姿を現すは、やはり瑠璃から聞いていた人物。

 

 生神と、モルル・ヘーゲル。


「……生神。この人危険。鎌になって」


「……大丈夫なんだろうな。おまえのせいで私が死ぬことになったら──」


 そう言って渋る生神に……モルルは眉を顰めた。


「めんどくさいや……おまえ」


 モルルは強引に生神を『生神の鎌』へと変形させ、己の手中に収めた。

 そして発動する──生神の権能を。


「式神顕現──『生神』」


 現れるは先程と同じ生神…‥なのだが、その表情は虚ろ。

 『顕現』で呼び出される『生神』は、『生神』であって生神ではないのだ。


 その一部始終を見て……アリウスクラウンははぁと息を吐いた。

 

 くだらない。


 アリウスクラウンはそう思いながら、ゆっくりと歩き出す。

 モルルもアリウスクラウンを警戒しつつ歩みよる。

 それは互いに近接線を主と置くからこそ持つ自信の表れ。

 如何なる攻撃もその場で対処してみせるという絶対の自信。

 両者堂々と、あと一歩踏み出せばぶつかる距離にまで移動する。


 刹那。

 アリウスクラウンが、笑った。



『──モルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!』



 モルルの頭の中で、生神が叫んだ。

 なんのことだろう──とモルルが思考した頃には……モルルの頭は飛んでいた。

 『生神』が動く間もなく、一瞬で。


 アリウスクラウンの目に見えぬ速さの一撃──それが、モルルの首から上を千切ったのだ。


「……」


 あっという間の、あっけない決着。

 何も出来なかった『生神』は、主人の死と同時に霧散した。


 アリウスクラウンは、再度はぁとため息を吐く。

 こんなつまらない奴らに宏人は不意打ちされてしまったのか……と、武闘家らしいことを思いながら。

 というより今は宏人の安否確認をしたい。

 そう考えアリウスクラウンは走り出そうとしたが……背後より物音がしたのを聞きつけ踏み留まった。

 

 その鋭利な目が、さらに細められる。


「……まあ、名前からしてそんな気はしてたけれどね」


「……ほ、ほんとに死んだかと思った。あなた……危険……!」


『おいモルル逃げろ!貴様じゃ無理だって分かっただろう!』


 それは生神の権能──『ライフ・メモリアム』。

 己の全ての権能を一時的に捧げる代わりに、一度だけ潰えた生命の灯火を再熱させるカミノミワザ。

 今現在生神はモルルに『憑依』しているため運命共同体なのだ。

 モルルが死ねば、生神も死ぬ。

 だからこそ、生神は焦っていた──なんとしてでも、この目の前の女から逃げねば、と。


 瞬間──アリウスクラウンの二本の指がモルルの目の前に。

 文字通り、目潰し。


「……こわっ!」


 距離がそれなりに離れていたこともあり、モルルはそれをなんとか回避。

 モルルはその勢いのままアリウスクラウンに鎌を振う。

 しかしアリウスクラウンは鎌を足蹴り──モルルの手からぶっ飛ばす。



『──ッ!この女は、化物かァァァァァ!』



 己の命が脅かされている状況だからこそ、生に執着する生神が恐慌状態で叫ぶ。

 モルルも自分の体の内で狂う生神に困惑する──そんなあからさまな隙を、アリウスクラウンが見逃すはずもなく。


「──なんで、宏人を殺そうとしたの?」


「……それは当たり前だよ。だって、あいつはライオを殺したから」


 アリウスクラウンの手がモルルに迫る一瞬の時間。

 アリウスクラウンの問いに、モルルはうっとりとした表情で答えた。

 それは、復讐を果たしたからなのか。


 それとも、今からそのライオとやらが行ってしまったところに行けるからか。


 アリウスクラウンは、またため息を一つ。



「くっだらない」



 刹那、アリウスクラウンの『炎舞』がモルルを燃やし尽くした。

 

 *

 

 ──セバスは『世界真理』の狙いを見抜き、全身全霊で以ってさらに攻撃を畳み掛ける。

 『世界真理』の狙いは瑠璃──つまり、『読心』の対処。

 

 今現在、セバスたちがなんとか『世界真理』に対抗出来ているのは、その権能が制限されているからにある。


 七録菜緒が『世界真理』でセバスたちに勝てる必勝法を『検索』したとしても、瑠璃の『読心』がそれを見抜き、セバスたちに伝えることで『世界真理』の意味を無くす。

 

 これが実現できているからこその今だ。

 しかし、それは瑠璃がいなくなった途端に崩壊する個人頼りすぎている綱渡りもいいところな作戦。

 

 セバスが『世界真理』の思惑に気付いたのは、宏人と戦っている時よりも、攻撃の対処が最低限だったからである。

 特に攻撃を仕掛けるわけでもなく、反撃をすふわけでもない。

 

 つまり、今『世界真理』は膨大な数の検索を行なっているのだ──!


 『検索』をすればするほど瑠璃の負担は大きくなる。

 なにせ瑠璃は『世界真理』の『検索』する情報を全て読み解かなければならないからだ。


 それが『世界真理』の罠だと分かっていても、その中にある本命を見逃さないためにも、瑠璃は全てを『読心』してしまう。

 

 ……もう、残り時間は僅か。


 セバスはそのことを皆にイヤホンで伝え──全力で『世界真理』に『焔』を放つ!


「……向井宏人の『黒焔』の劣化異能と確認。対処は容易です」


「そうですか。それは残念です──カール」


 『世界真理』が容易く『焔』を払い除けると同時──セバスの背後から、カールが姿を現す。

 その口元に、膨大なエネルギーを収縮しながら。


 『世界真理』の目が驚きで見開かれた。



「カール──『アンダーテイカー』」


「ハッ!了解だ──『アンダーテイカー』ァァァァァ!」



 極太のレーザー光線が、『世界真理』を包み込む──!

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