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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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246話(神サイド) 頂上決戦⑦


 突然出現した男と女。

 男の方は言わずもがな、アルベストの龍である清龍だ。

 そして女の方は、おそらく先程清龍が口にしていたメイナスだろう。

 ニュアンス的に冥龍で間違いない。

 残りのソクラノトスの天龍とダストルの魔龍が来るのではないか不安だ……と思っていたら、メイナスの手に何やら神剣が。

 

「菜緒様、魔龍をお持ちしました。本人曰く顕現する気はないようですが、剣は好きに使えとのことです。天龍の方は相変わらずです」


「了解しました。とはいえこれで過剰戦力と考えるため、問題ありません」


 ……まさかの上位純神のほぼ全員集合である。

 一番やばい天龍がいないのは救いだが、これは『世界真理』の言う通り過剰戦力にも程がある。

 どうやら魔龍は顕現する気がないようであるが、それを信用して行動するなど愚の骨頂に加えて、神剣だけでも十分に脅威だ。

 思わずため息が出る。

 

 クックックっと、清龍が嗤う。


「どうする向井宏人ぉ。僕の奴隷になるなら僕は手を引いてあげるけど」


 おそらく今一番厄介なのはコイツだ。

 どうやったかは知らないが、セバスに負けたのは清龍が手を抜いていたからだ。

 この尋常じゃないオーラは絶対的強者の特徴。

 ……まあ、それは三人ともなのだが。


 手がないと言うわけではない。


 ただその代償が……クソ、そんなこと考えてる場合じゃないな。

 神だろうが悪魔だろうが神人だろうが、使えるモノは全て使うのが俺のスタイルだ。

 今だってそれは変わらない。


 だから。

 

 俺は、俺に『変化』を施す──


 *



『あっはは。やっぱり来たね──宏人くん』


「……おまえはダクネス……じゃなくて、『変化』なのか?」



 俺の精神世界にて。

 俺はダクネスの姿形をした『変化』と対話していた。

 外見はダクネスであるが、中身はまったくの別物だ。

 なぜなら俺はダクネスを取り込んでないから。

 ダクネスは、俺の『神の代姿』が発動する前に別の『世界』へ逃げたから。


『そうだよ。私が『変化』。きみの異能だよ』


「大方、ダクネスの人格をコピーしたってとこか?我の能力ながらおそろしいな」


『それで、なんできみは私のとこに来たのかな?』


 ダクネスの鋭い目が俺を射抜く。

 

 ……これは『変化』が自我を持ち始めたということなのだろうか。

 当然だが、『能力』は自我を持たない。

 それは『呪い』や『カミノミワザ』、『奥義』も例外ではなく、俺で言えば『バースホーシャ』や『時空放射』からは何の反応もない。

 ただ、『変化』だけが、俺に語りかけてくる。

 

 『能力』という枠組みから変化したのだろうか。

 それも、主人である俺の命令も無しに。


「その前にはっきりさせてくれ。お前には、自我があるのか?」


『あるよ。だけどさすがに0から1を作るのは無理だったみたいだから、ダクネスという神人の人格を参照に形成したんだ!これで満足かな?』


 当然、満足なんかできない。

 本人は簡単そうに言っているがこれは異常事態だ。

 なにせ、『能力』を行使するだけでもこいつの許可が必要になるのだから。


「俺に、ダクネス並みの身体能力をくれ」


『……別にいいんだけどねぇ。あっ、対価とかもらってもいいかな?』


「あんまりふざけるなよ。俺が死ねばおまえも死ぬんだぞ?こっちはただでさえダクネスを見るだけでも吐き気がするんだ。これ以上余計なことを言うのはやめてくれ」


『大丈夫大丈夫。大したものでもないし、きみにも利点があることさ』


 そうして、奴はその対価の内容を言った。

 ……まったく、俺の中にはどれだけ住人がいるんだ。

 今となっては何も反応がないが、アルドノイズでさえも厄介だと言うのに今度は俺自身の『能力』か。

 アルドノイズみたく、体の主導権を握られないように祈るばかりだ。



「私に、『重力』を取り込む許可をちょうだい』



 *


 ──俺の体の構造が、人間のソレから変化していく。


 ふと、見る景色が変わった気がした。

 これがダクネスに見えていた世界……神人の世界。

 俺の『変化』は、見事神人の身体構造に変化することに成功したらしい。


 目の前には、龍の二柱と上位純神を取り込んだ神人が。


「……警告。突然向井宏人の危険度が跳ね上がりました。二人とも、決して油断されないように」


「はぁ?いくら向井宏人が人間やめていてもさすがにこの状況を覆すのは無理があるで──」


 『世界真理』に疑いの目を向けていた清龍の顔面に『変化』を乗せた拳を振る。

 さすが神人の体だ。

 目視できる範囲内なら、まるで瞬間移動のように行動できる。

 今までは『時空支配』を使えば出来たが、これを普通に出来るようになった以上『時空支配』の使い方の幅が広がるな。

 

 『世界真理』には俺の他対象の『変化』は効かなかったが、龍種は違う。

 驚きに目を見開く清龍の前に、冥龍が割って入る。


「──だから!菜緒様が油断するなと言っているでしょうクソ兄貴!」


 冥龍の黒い瘴気に包まれた手が俺の拳を止めた。

 ……こいつにも『変化』が効かない?

 いや、この感覚はそういう類いじゃないな。


「おまえの異能は他人の異能の効果を打ち消す異能、ってところか?」


「ご名答ですね。『カースド・ノエル』、大体なんでも消せるカミノミワザです」


「なーにくっちゃべってんのさ──凍っちゃえ!」


 刹那、清龍の手の内より吹雪が吹き荒れる。

 敵味方問わず巻き起こる範囲攻撃。

 思い切りが良すぎるのは置いといて、やはり剣の状態より厄介極まりないな。

 『世界真理』の方は冥龍に触れられて──『カースドノエル』で吹雪を打ち消してもらいながら俺を観察している。

 あまり手の内をばんばん晒す真似はやめたいな。

 

 この吹雪、もちろんただの吹雪じゃない。

 冷気に当てられるだけで肌が裂かれる。

 とんでもないな。

 呼吸すると肺がとんでもないことになりそうだ。

 俺は辺りに思いっきり『バースホーシャ』を乱舞。

 それでも吹雪の勢いは収まりそうにない。

 元凶を仕留める必要があるか。

 その元凶の気配が背後から。


 清龍の拳と俺の拳が激突する。


「……!拳を氷で纏って俺の『変化』から逃れているのか!」


「あっはは。セバスと同じ反応頂き」


 どうやら清龍は全身を氷で纏うことで俺の『変化』を凌いでいるようだ。

 このレベルの奴らとの戦いになると『変化』みたいな初見殺しは通用しないな……とはいえそれだけ警戒してくれているということだ。

 幸い『変化』は指を動かすレベルで簡単に出来るからな。

 清龍が空いた手の方で再度拳を振るい、俺も空いた手でそれを受け止める。

 それから同時にそれぞれ左右の足で蹴りを叩き込む!

 清龍の足が俺の右腕を氷で内包し一瞬で砕き、俺の足が清龍の左腕を氷ごと砕く。

 

「……ッ!?ちょ、やばいやばい!」


「はぁ、足止めすら満足に出来ないとは。菜緒様の役に立てるよう努力なさい」


「問題ありません。データ収集は既に完了しています」


 背後から冥龍の気配が。

 俺は『時空支配』で時を止め、逆に冥龍の背後に移動する。

 冥龍が驚きに固まるが、今度は俺の背後に『世界真理』が。

 

「言ったはずです。もう『時空支配』の座標演算は完璧である、と」


「だからって人間はそれに体が追いつかないはずなんだがな」


 俺も薄々対処予感されると予感していこともあり、『世界真理』の『サンドライトニング』を素手で掴み『変化』で打ち消す。

 

「ッ……!」


 やはりカミノミワザを『者』級とはいえただの『能力』で対処しているということもあり、反動がかなりキツイ。

 とはいて打ち消すことが出来ているのだ。


 一瞬の間、されど神人の脅威的な動体視力でまるで止まったように見えるこの時間──俺と『世界真理』は向き合う。

 

 『世界真理』には、俺の『変化』が効かない。

 それは、『世界真理』が俺ですら知らない俺の『変化』の対処法について知っているから。

 

 それならば。


 その対処法という存在ごと消してみせよう。

 アスファスの『ダーク・ナイトメア』を消し去ったように。



「──『変化』!」


「──!?緊急事態発生。ただちに最大警戒態勢に移行します」



 さて、これで準備は整った。

 

 冷や汗を垂らす『世界真理』、俺の一挙手一投足を警戒している冥龍、歯噛みする清龍。

 

 この『世界』で上位の実力を持つ彼らが俺を倒すべき敵として相手している。

 凌駕や凪と出会うまでは、こいつらからすればただのザコでしかなかった俺が。

 その事実に、俺は少なからず興奮する。

 

 ──『世界真理』の持つ神剣が、不気味なオーラを放った。

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