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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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245話(神サイド) 頂上決戦⑥


 『時空放射』が菜緒に直撃──だがその圧倒的な回復力で以って、菜緒は何事もないように無傷の姿を現した。

 思わず、ため息が出る。


 菜緒には残機があと一つある。

 それはアスファス戦の時と同様、菜緒は『世界真理』で純神の権能である『神の代姿』を行使したからだ。

 ガワのアルベストの体を倒しても、まだ中身の菜緒は無事なのだ。

 

 だから、ガワはみんなで倒す手筈となっていた。


 それは後半戦に俺という戦力を万全の状態で残しておくため。

 だがそうも言っていられなくなってきた。

 今俺たちが戦っているのは菜緒でもアルベストでもなく、『世界真理』だ。

 その異能行使の演算速度は人間、神、神人のどれもを超えている。

 正直言って、アリウスクラウンやセバスが相手取れる敵じゃない。


「『世界真理』、俺とおまえが一対一で戦えば、どっちが勝つと計算する?」


「……私が6割で勝利するかと。とはいえ計画は万全です。それを加味するのならば、私の勝率は100%です」


 計画……気になるところだが、問い詰めるだけ無駄だろう。

 そう考え──俺は火蓋を切った。

 手中に『黒焔』を宿す。

 最初っから本気も本気。

 ケルベロスはアリウスクラウンたちとともに一旦退避させているため気にすることなく存分に戦えるというものだ。

 『世界真理』は『黒焔』に目を細めるが──問題ないとばかりに『雷楽滅堕』を展開、そして手中に『輝』を三個作成した。

 全てを破壊するまで止まらない『雷楽滅堕』……究極のカミノミワザにして、絶対の『奥義』。


 目には目を、歯には歯を──『奥義』には、『奥義』を。



「『奥義』──『ヴォルケーノ・マキシマム』」



「──!……想定以上のエネルギーを確認。ただちに対処案を作成します」


 俺の背後に銃の弾倉のような、六つの穴が円の形で展開された。

 そこに嵌め込まれるは究極の焔の塊。

 

 直後、『雷楽滅堕』と『ヴォルケーノマキシマム』が激突する。

 

 特大威力のエネルギー同士がぶつかり相殺する。

 しかし行き場をなくしたエネルギーが暴発。

 辺り一面を眩い破壊の光が覆う。

 『世界真理』はそれから先ほど作成した『輝』で身を守る。

 

 そんな『世界真理』に、俺の『黒焔』が襲いかかった。


「──ッ!?『時空支配』の解析を急ぎます」


 俺は『奥義』が相殺されたエネルギーから『時空支配』で時を止めて安全地帯まで退避、そしてそこから『黒焔』を放ったのだ。

 『世界真理』は一度『黒焔』に焼かれて消滅するが、やはり再生してしまう。

 本来なら今ので残機は削れたはずなのだが……やはり『世界真理』は不気味だな。

 今ので『世界真理』は『奥義』の衝突の危険性を鑑みてか『奥義』の発動をやめたようだ。

 エネルギーの爆発で断続的にダメージを与えていく作戦でもよかったのだが、いかんせんリスキーすぎるためこれでいいだろう。

 無理に『奥義』を使わせて死んだら目も当てられないからな。

 『世界真理』はまたもや背後に『輝』を十個作成。

 その速度は相変わらず異常だ。

 俺も対抗して『バースホーシャ』を十個作成するが……異能としての格が違いすぎる。

 『輝』は『バースホーシャ』をいともたやすく霧散させ、容赦なく全て俺に襲いかかる。

 俺はそれを『時空支配』で回避、そのまま『世界真理』のもとへ駆け出していく。

 この回復力の化け物を倒すには直接高火力の異能を叩き込んだ方が効果的だ。

 俺の接近に警戒を強めた『世界真理』は大きくバックステップ。

 しかし俺は『時空支配』で時を止め── 一気に距離を詰めた。

 『世界真理』の目が見開かれる。

 その顔面に俺は『バースホーシャ』をぶちかました。

 菜緒の顔面が焼け爛れ──瞬時にもとに戻る。


 そして『世界真理』は神剣『清龍』で、俺が首に向けて振った神剣『暗黒龍』を受け止めた。


 ……こっちが本命だったんだがな。

 いくら回復力がえげつないとはいえ、一撃で殺してしまえば問題ないのだ。

 だから首を刎ねようと思ったが……やはり『世界真理』が一番警戒しているのはそこらしい。

 『清龍』から、異常なほど冷たい冷気が漏れ出る。

 

「ッ──!?」


 刹那、瞬く間にここら一帯が氷の大地と化した。

 いくら氷結を操る龍の剣とはいえここまでの権能なのか……!?

 俺が関心していると、いつの間にか俺の体も氷に埋まっていた。

 いくらなんでも無茶苦茶すぎる。

 俺は『変化』で体の構造を変化し、質量で無理やり氷を砕いた。

 

 俺の体を最大限戦闘に適した構造に書き換えたのだ。


 体が一回りほど大きくなり、申し訳程度にあった悪魔の部分が肥大化、まるで漆黒の鎧を着ているような風貌となる。

 俺は一度その構造にした後、すぐに『変化』でもとの姿に戻した。

 性能は変わらないため問題ない。

 普通の俺に、悪魔の外郭を少し露出している姿の方が戦いやすいのだ。


 氷から飛び出した俺は、そのまま『世界真理』に斬りかかる。

 『世界真理』は難なくそれに対処したが、剣を受け止められると俺は足で思いっきり『世界真理』の顔面を叩く。

 よろめく『世界真理』に俺は渾身の拳の一撃を入れる。

 『世界真理』の右腕が飛び──その隙に俺は指先にエネルギーを収束させた。


 発動するは、『黒焔』。


 『世界真理』は瞬時にに『フリーズフローズン』で盾を構築するが、抵抗虚しく『黒焔』は全てを飲み込んだ。

 やはりというかなんというか、それでも『世界真理』は『黒焔』から飛び出し、俺に斬りかかる。

 油断せず警戒していたこともあり、俺はそれを受け止めるに成功した。

 神剣『暗黒龍』と神剣『清龍』が交差する。

 鍔迫り合いを制したのは『世界真理』。

 そのあまりにも絶大な腕力でもって、俺の剣を弾いたのだ。

 とはいえ俺は大きく後ろに飛んで次の攻撃を回避。

 

 ……したはずなのだが、右肩より先が無くなっていた。


「『フリーズフローズン』の応用か」


「正解です。微小な冷気を気づかれぬようあなたの腕にまとわり付かせ、一気に威力を高めて粉砕させていただきました」


「ご丁寧にどーも。よくもまあそんな親切に教えてくれるな」


 俺は『変化』で右腕を修復しながらそう言う。

 少々疑問に思ったからだ。

 合理的なことしかしなさそうの『世界真理』が、まさか俺に攻撃の種明かしをしてくれるとは。


「別に親切ではありませんよ。あなたとの会話を通して、あなたの口調から少したりとも苦痛の感覚が無かったと推測できました。つまり、あなたは一部の神経を遮断している。違いますか?」


「……そうだよ。おかげで腹の探り合いの勉強になったよ」


 別に大した情報ではない……と思っていたが、指摘されてその重要さに気付く。

 確かに腕がもげても足が取れても痛みを感じずに戦闘を継続できるのは利点ではあるが……それ故に、気付かぬうちに破壊されていたということもあるのだ。

 先ほどの俺のように。

 つまり『世界真理』は、俺を倒す選択肢が広がったということになる。

 だからなんだとは思うが、相手は量子コンピュータを軽く凌ぐ化け物である。

 警戒しないなんて選択肢は存在しない。

 そんなことを思考していると、さらに悪いニュースが菜緒の口から出てきた。


「……『時空支配』の操作演算の万全化完了。これより、向井宏人がどう『時空支配』を行使しようと直前に内容を把握できます」


 ……はぁ、と深くため息を吐く。

 まだまだ、決着はつかなそうだ。



「それじゃあさっそく遠慮なく──『時空放射』」


「無駄ですよ──『フリーズフローズン』」



 またもや溶けることのない氷結が大地を支配する。

 それは神剣『清龍』によるもの──ではなく。


 『時空放射』と『フリーズフローズン』が激突した先には、三人の影が。

 

 やはり、『世界真理』が事前に言っていた通り『時空支配』については完璧に威力、地点、速度を計算できるようになったらしく、とても効いている気配はなかった。


 それはともかく。


 煙の向こうには三人の影が。

 『世界真理』が先陣を切って先に姿を現す。

 その背後には、見知った男と、見知らぬ女性が。



「さっきぶりだねー宏人。セバスに負けたのはたまたまだから、勘違いはしないでね?」


「……私は菜緒様の命令に従うのみです」



 俺は手に『変化』を込めて──目の前の二柱を見つめる。


 純神が二柱目であるアルベストの龍、清龍。


 純神が三柱目であるマトモテリオの龍、冥龍。


 そして、神人にして、純神の力を引き継ぐもの──『世界真理』。


 俺の『変化』が、光り輝く。

 


 


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