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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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244話(神サイド) 頂上決戦⑤


 智也の背から禍々しい翼が生えた。

 それはダクネスのような……嫌な記憶が掘り返されるほど似ている。

 智也はそれで以って遠距離から菜緒に攻撃していく。

 俺は神剣『暗黒龍』を、アリウスクラウンは『勇者剣』を取り出す。

 菜緒の身体能力は大したことないが、とにもかくにも格闘技術がすごい。

 これも『世界真理』の効果なのだろう。

 こんな万能のカミノミワザの権能の一部を封じてくれている瑠璃には感謝してもしきれない。

 とはいえ安心してなどいられない。

 先ほど瑠璃を見たがパッと見ただけでも分かる。

 あの状態で長続きは無理だ。

 

 だから──ここで決着をつけないと後がない。


 奥の手はあるにはあるのだが……あいつはあまり信用出来ないからな。

 それはできない前提で戦うしかないのだ。


 智也の『魔羽乱舞』が菜緒の体を切り刻む。

 おそらく智也の『悪魔』は超能力の中でもトップクラスに強力な異能だ。

 上位七人のカルマの『天使』と酷似していることから間違いない。

 だがしかし、それは神人である菜緒の前には力が及ばないのか、容易く受け流されている。

 とはいえ隙さえ出来れば上出来だ。

 俺とアリウスクラウンが菜緒に切り掛かった。

 菜緒は生身の両手でそれぞれの剣を受け止める。

 しかしこれらは普通の剣ではない。

 神剣と、勇者剣だ。

 菜緒の素手に食い込むだけでなく、そのまま両肩とも叩き落とす!


「──引っかかってやんの」


「──ッ!?」


 それでも菜緒の両手は一瞬で生え、菜緒は腕を切った動作のままの俺とアリウスクラウンの頭を掴んだ。


 やばい──!?


 次の瞬間、頭に電撃が駆け巡る。

 直接『サンドライトニング』をぶち込まれたのだ。

 だが直前に『変化』をフル回転させていたこともありなんとか意識は保つ。

 おそらく一瞬俺の脳髄はぶちまけられただろうが……『変化』の頼もしさを今一度自覚する。

 安心したことにアリウスクラウンも無事なようだ。

 『炎舞』で己ごと焼いて電撃の威力を制限したらしい。

 俺とアリウスクラウンは再度刀を振って菜緒の手を切断し、バックステップで後退した。

 俺はアリウスクラウンに触れて『変化』で治療する。

 

 突然、菜緒の背中から血飛沫が舞う。


「遅れてすみません宏人様!」


「もぉいやああああああ!でも頑張るよぉ!」


 星哉と流音が菜緒を背後からクロスの形で切り裂いたのだ。

 二人の異能である『身体能力・特大』は決して弱くはない。

 アリウスクラウンの『炎舞』よりは劣るものの、それに次ぐ身体能力を得られるのだ。

 

 ──菜緒の顔が、楽しげに歪む。



「『世界真理』──出番だよ」


 

 菜緒がそう呟くと同時──菜緒の顔から表情が消えた。

 これはおそらく──!


「フルオートか……!」


 突如、無表情の菜緒が俺たちのもとへ駆け出してきた。

 その動きには一切の無駄がなく、先ほどまでの動きとは一転している。

 アリウスクラウンの勇者剣と智也のツメが菜緒を迎撃する。

 しかし菜緒は突然しゃがみ込み、大地に向かって『サンドライトニング』を放つ──!

 途端に亀裂が入り、そこから七色の光が輝く。

 すると大地は崩壊し、アリウスクラウンと智也の攻撃が空振りに終わる。

 俺はそれを見越して跳躍し、菜緒の目前で目を蒼く輝かせる──そして、放つ。


「『時空放射』」


「ッ──」


 菜緒はそれを静かに見つめて、片手を『時空放射』に向ける。



「出力最大──『輝』」



 世界が白色に染まり見る者の目を灼く。

 それはカミノミワザが衝突した際に起こる軌跡。

 その光の中から、菜緒が片手を構えて飛び出してくる。


 俺は咄嗟に防御体制を取るが、菜緒が放つは『サンドライトニング』。

 それを『変化』を宿した手で受け止める。

 『エンチェンジ』ほど楽ではないが、『変化』は対象を無に変化させられるのだ。

 カミノミワザだって例外ではない。

 空中にて俺と菜緒は徒手空間で戦う。

 しかし相手は菜緒の体をした『世界真理』だ。

 そこに判断ミスという言葉はなく、俺が段々と後手に回っていってしまう。

 そんな中、突如菜緒の肩に剣が突き刺さった。

 アリウスクラウンが勇者剣をオートで操作してくれたのだ。

 俺はアリウスクラウンが作ってくれた隙に感謝しつつ、手に『焔』を込め──その瞬間、視界の隅で光が輝いた。


 これは──!?


「──『輝』」


 それは俺の体を電撃で燃やしながら、先ほど壊した大地の底の奈落へ突き落とした。

 

 地にぶつかる直前、星哉によって受け止めてもらった。

 アリウスクラウンと智也もどうやら無事のようで安心する。

 ……ここは、円形のそれなりに広い、しかし逃げ道のない空間だった。

 そこに上から菜緒が降ってくる。

 

「……眷属召喚──獄犬・ケルベロス」


「ぐおおおおおお ──ン!!!」


 遠吠えをあげながら、再度ケルベロスが姿を現す。

 発動するは『リンク』。

 これで俺は『黒焔』を発動可能となった。


 ──空を見上げると、具現化した無数の雷が俺たちにその矛先を向けていた。


 どうやら俺たちが呑気にここに落とされていた間に、菜緒な『雷楽滅堕』の準備を終わらせていたらしい。

 

 空から来たる雷を、俺は手を天に向かって広げ──放つ!


「『雷楽滅堕』」


「『黒焔』ッ!」


 ドス黒い焔が天に撒き散らし、雷をも食い尽くす。

 しかし『雷楽滅堕』の攻撃範囲は絶大。

 あぶれた雷たちが俺たちに牙を剥く。

 俺はそれを全て『変化』で壊す──その直前、その間に割って入ってくる者が。



「──カール!」



 刹那、雷は全て異形の怪物に吸い込まれていった。

 無数の雷をその身に受けたと言うのに、その化物は平然としている。

 当たり前だ。

 なにせ、不死身のカールなのだから。


「ごめん。遅れた」


 そう言ってセバスは笑う。

 さて、これで戦力は整った。

 俺も存分に暴れられるというものだ。


 菜緒の手に突然神剣『清龍』が出現する。

 セバスが清龍を倒してくれた証拠だ。

 ……とはいえ、龍種は剣の状態でもかなり強いのがネックだ。

 

 だが泣き言を言っている暇など存在しない。

 菜緒が再度『雷楽滅堕』を発動する。

 ……は?


「ちょっ、いくらなんでも早すぎるだろ!」


「慣れちゃってるわね……。多分、『世界真理』様は一度使った異能なら連発出来るんじゃないかしら?だって演算速度やばいんでしょ?」


「僕もアリスさんの言う通りだと思います。とはいえ困りましたねぇ……。とりあえずカールを盾にし続ける方針でいきましょう。これもう僕死ねないな……」


 刹那──天に雷、地上に氷が同時に発生する。

 

 天からは無数の雷が。

 地上からは溶けることのない氷が生き物のように這い寄ってくる。

 

 どうやらあの神剣、龍の姿をしなくてもその権能を使えるらしい。

 本当に、つくづくデタラメだ。

 とはいえ、デタラメさには俺も負けていない自信がある。


「『黒焔』」


 俺の『黒焔』と『フリーズフローズン』が激突する。

 だが『黒焔』の方がカミノミワザとしての格が高い。

 『黒焔』はそのまま菜緒のもとへ突き進んでいく。

 それを菜緒は『輝』を十個展開し──発射。

 『黒焔』だけでは飽き足らず、俺たちにまでその権能が突き刺さる。

 なるほど今度は『輝』を十個展開か──てハァ!?


「まずいまずいまずい!演算速度えげつなくなってきてるぞ!」


「これ瑠璃やばいんじゃないの!?あの子自分の脳で『世界真理』と演算勝負してるんじゃなかったっけ!?」


「さすがにそれはないと思いますがやばいのは事実だと思います!もうほんとに後がありませんよ!」


「……準備が完了しました。ただ今より速やかな対象の殲滅を実行します」


 菜緒の口からそんな声が漏れる。

 ……『世界真理』、なんて厄介なカミノミワザなのだろうか。

 でも、俺だって。


 菜緒が今度は『雷楽滅堕』、『輝』、『フリーズフローズン』、『サンドライトニング』を同時に展開する。

 わんぱくセットにもほどがあるだろう……。

 だから、俺もせいぜい好きに戦わせてもらうとしよう。


 突然、菜緒の背後の異能が全て霧散する。


「──ッ!?」


 そして背後に現れる俺に、菜緒が──『世界真理』が目を見開く。



「『時空支配』……対象時間設定の予測演算を強化します」



「やってみろ。悪いがもう時間がないんでな……ここからはノンストップでいこう」



 俺の目が蒼く輝き──『時空放射』が放たれる。

 

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