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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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243話(神サイド) 頂上決戦④


 セバスは清龍と相対しながら、はぁと深くため息を吐いた。

 

「なんだ?今更僕に怖気付いたのか?」


 清龍はそう言って鼻で笑う。

 確かに、今のセバスでは清龍に手も足も出ないだろう。


 今の、セバスでは。

 

 だがしかし、とある覚悟を決めればそれを覆す方法があるのだ。

 欠点としては、まず前提である『能力』の所有者だった人物が嫌いな点とデメリットによりセバスの目的が達成不可能となってしまうつまり──我慢すればいいだけの話である。

 

「きみから来ないならこっちから行くよ?」


 清龍の手より出ずるは『フリーズフローズン』。

 それは最高峰の龍により生み出される氷結地獄。

 セバスはそれを『爆破』で対処するが、氷は勢いを止めずセバスを包み込んだ。

 一瞬の出来事。

 この刹那の間だけで、清龍はセバスの生殺与奪の権利を握ったのだ。


「大したことないね、きみ」


 清龍はその一言とともに拳を握る。

 それと同時に、セバスを氷漬けにしていた氷が破裂する。

 呆気ないほど即座に終了した戦闘。

 数々の修羅場を乗り越えてきたセバスでさえも、初見殺しとはいえここまで一方的に敗れたのだ。


 セバスはカールの肉体を依代に、『アンデット』で以って復活する。

 今の死を経験して、セバスは確信した。


 やはり、覚悟を決めるべきだ──と。


「いいねその異能。どんな仕組みだよ」


「……」


「ねえきみさっきから無視しないでくれないかなー?……まあいいや。殺そっ」


 清龍はそう呟くと共に足をトンッと鳴らす。

 すると清龍の半径20メートル範囲が途端に凍った。

 それはセバスさえも巻き込み、足元から段々とセバスの体を蝕むように凍っていく。

 これが上位純神に仕える龍種の力。

 カールの死後からまだ一分も経っていない現在、セバスは今度こそ死ぬ。

 

 つまり、もう二度とアルドノイズと会えなくなる。


 死神が死んだこともあって、今のセバスの魂は死神とセバスを足して割ったようなものだ。

 アルドノイズを信仰していたのはセバスのみで、死神は少なくとも味方ではなかった。

 そのため、実を言うと今のセバス自身はそこまでアルドノイズに執着していない。

 だがしかし、昔の「僕」が未だ叫び続ける──アルドノイズ様を助けて、と。

 今のセバスは、アルドノイズよりも宏人の方が大切だ。

 それは自分でも分かっている……分かってはいるが、深層心理の「僕」がそれを否定している。


 だから──エラメスの『随伴』を発動することを躊躇っていた。


 だが今発動しなければセバスが死ぬ。

 つまり、深層心理の「僕」の目的も、今のセバスの目的もどちらも叶わず終焉を迎えることになる。

 

『僕は、アルドノイズ様を助けられなくなってもいいの?』


 昔の「僕」がそう問うてくる。

 エラメスの『随伴』は、主人と決めた者に絶対の忠誠を誓うことにより、その主人の『能力』全てを行使できるようになる超級異能。

 エラメスの『随伴者』は主人よりも強くなるといった異能だったが、『随伴』でも主人と同じレベルになれるといった能力なのだ。


 ただし、これには欠点がある。

 

 それは裏切った際に起こるペナルティーだ。

 今度は逆に、主人に己の能力の全てが捧げられることになる。

 これが、用心深いアスファスが常に身近にエラメスを置いていた理由。

 なにせ自分よりも強い存在が絶対に裏切れない縛りを結んでいるからである。

 

 セバスは死ぬたび新たな能力を獲得し、過去の能力を捨てる。

 それでも『随伴』のペナルティーは追ってくる。

 つまり、一度使えばもう宏人を裏切ることができない──アルドノイズを助けることが、できない。

 それでも。


「安心してください、僕。アルドノイズもちゃんと助けてあげますよ──それは、宏人くんもね」


 心の中で、心の中の自分にそう返す。

 そして──発動する。


「『随伴』」


「ほう……!ほうほうほう!おまえ、おもしろい奴だな!」


 セバスのオーラが爆発的に高まる。

 宏人の権能の全てが、セバスの魂に刻まれたのだ。

 

「──『変化』」


 セバスがそう唱えると、セバスの体を覆っていた氷が砕け散る。

 それと同時に響く清龍の笑い声。

 両者絶大なオーラをその身に纏いながら、互いに目と鼻の先まで歩み寄った。

 

「大したことないと言って悪かったね!存分に楽しめそうだよ、きみ!」


「別にいいですよ。これから死ぬ人の言動なんてどうでもいいですから」


 刹那、セバスの鎌が清龍の手当を受け止める。

 だが受け止めた清龍の手から氷が噴出。

 セバスはあまりの冷気に顔を顰めながらバックステップで距離を取る。

 しかし清龍はそれを許さず追撃。

 瞬時に氷で形作った剣でセバスに切り掛かる。

 セバスはあえてそれを受け、強引に『変化』で回復しながら、今度は逆にセバスが清龍に距離を詰めた。


「──イカレてるねぇ……!」


 引き攣った顔をする清龍に向かって『バースホーシャ』。

 清龍はギリギリで氷の壁を作っていたが、その全身が火傷で爛れるに至る。

 人の姿になっても龍種には回復手段がないらしい。

 主人である純神がいれば違うらしいが、いない今は生命活動を維持することに全てをつぎ込んでいるため常時回復する手段を持ち合わせていないのだ。

 だというのに清龍は引かずに再度セバスのもとへ駆け出す。

 セバスは手に『変化』を込めた。

 このまま接近戦に持ち込み一撃必殺を叩き込もうとしたためだ。

 だがそれは清龍もお見通し──だというのに、清龍はセバスに生身で殴りかかった。

 これにはさすがのセバスも驚くが、冷静に対処し清龍の手を受け止める。

 これで『変化』を使用すれば──そこでセバスは気付いた。

 

 清龍の手が、氷で覆われていた。


 『変化』が発動し、清龍の手の氷が破壊される。

 しかし清龍自体には何のダメージはない。


 つまり、ワンテンポ逃したセバスの目の前には、既に次の行動の準備を完了している清龍が──!


「──『フリーズフローズン』」


 再度、セバスの全身が氷漬けにされる。

 しかし清龍はそのままトドメを刺すのではなく、先程コソコソと復活していたカールも続けて凍らせる。

 これでセバスが生き返ったと同時に始末できる──そう考えてセバスの方を振り返った瞬間──背後の、つまりカールの氷が砕け散った。


「……きみは、常に僕の予想外を行ってくれるね」


 清龍の背中に、トンッと手が置かれる。


 セバスは氷漬けにされると同時に『バースホーシャ』を発動し、己諸共燃やし尽くし自殺。

 そしてカールの肉体に乗り移ると今度は『エンブレム』でその身を焼いたのだ。

 

 今のセバスは清龍よりも火傷で痛々しい状態。

 だがしかし──セバスの手が淡く輝く。


「──『変化』」


 そして、清龍は神剣へと戻った。



 さて、早く宏人たちのもとへ行かないと──そう考えたセバスの背中を、神剣が貫いた。



「……え?」


「きみ僕が剣に戻ったからって油断しちゃだめでしょ。ほら『フリーズフローズン』」


 未だセバスの腹に突き刺さったままの清龍が、今度は異能を行使。

 セバスの右腕が凍り──砕ける。

 

「──ッ!」


 セバスは激痛でうずくまる。

 だがそれでも空いた左手で『バースホーシャ』を放つ。

 清龍はひらひらと浮遊しながらそれを簡単に回避し、荒い呼吸を繰り返すセバスを見て大声で笑う。


「あとでまた人の姿で来るからそれまで死なないでね?今度はちゃんと本気出してやんよ」


 清龍はそれだけ言うと、光の粒子と成って姿を消した。

 これは……神の間へと行く時の現象だ。

 おそらく他の龍種を呼びに行ったのだろう。

 これ以上敵の戦力が増えるのはさすがにまずい。

 セバスはカールが復活するとともに自害し、傷を治して宏人たちのもとへ駆け出す。


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