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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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241話(神サイド) 頂上決戦②


 セバスと菜緒の『世界』が混ざり合いつつ未だ現世と直結した『世界』にて。

 戦闘の余波から発生した煙を掻き分けながら、セバスが姿を現した。

 セバスが式神の維持から外れることができたのは瑠璃のハッキングが成功したおかげだ。

 とはいえ瑠璃はただの異能者。

 さすがに長時間カミノミワザ、しかも神人の『世界』を抑えるのは不可能だろう。

 だから早々に決着をつける予定だったのだが……想定外の事態が起きた。


「──ははっ。きみが向井宏人か。『者』級とはいえただの人間の身でありながら、擬似的にも神人級の力を手にしたガキは」


 清龍──その強さは、アルベストを超える。

 おそらく菜緒と同格かそれ以上。

 菜緒だって化け物だというのに、それ以上の化け物が出てくる始末。

 必死に対処法に頭を巡らせる俺の肩を、セバスは優しくポンポンと叩く。


「宏人くん。あいつは僕が片付けますので、宏人くんは菜緒に集中してください」


「な、お前一人で倒せるわけないだろ!」


「勘違いしないでください。僕は、宏人くんより強いですよ」


 セバスはそう言い残し、悠然と清龍のもとへ歩む。

 引き止めようとしたが、アリウスクラウンが俺の手を掴んで首を振った。

 確かにセバスの実力は異常だが、それでも純神レベル。

 とても清龍を一人で相手どれるとは思えないのだが……とりあえず今はセバスを信じるしかない。


「……任せた」


「いえいえ。しぶとさには定評がありますので」


「向井宏人じゃなくてきみか。誰過ぎる」


「それは僕のセリフですよ。ポッと出がでしゃばらないでください」


 さて、ひとまず今は菜緒だ。

 菜緒の次の行動など、『世界真理』のない俺ですら察しがつく。

 菜緒はニヤリと笑ったあと──瑠璃のもとへ空を駆ける!

 『世界』が不完全なのがここで裏目に出る。

 とはいえ予想していたことだ。

 菜緒よりも一足早くアリウスクラウンが瑠璃を守るように立ち塞がる。

 やはり俺の欠点は身体能力にある。

 人間としての動きには百点の自信があるが、それでは神々の驚異的な身体能力には及ばない。

 その欠点をアリウスクラウンに補ってもらってはいるが、アリウスクラウンにはそもそもカミノミワザがない。

 そのため現在神人として最高峰の力を持つ菜緒に単独で挑むにはあまりにも実力不足であり──!


「『サンドライトニング』!」


「──ッ」


 菜緒の発動速度発射速度到達速度が異常の電撃がアリウスクラウンを襲う。

 アリウスクラウンは冷や汗をかきながらも神人レベルの動体視力でなんとか回避──そこを菜緒はさらに『サンドライトニング』。

 アリウスクラウンは左腕でガードするが、『サンドライトニング』は難なくそれを貫通。

 アリウスクラウンの腕を吹っ飛ばし肩を抉る。

 俺は足元に『バースホーシャ』を噴出することにより飛行し落下するアリウスクラウンを受け止めた。

 

「宏人!」


「ッ……!分かった──星哉!流音!」


 俺はアリウスクラウンを地上にいる二人に投げ、瞬時に高台へ移動して菜緒と瑠璃の間に割って入る。

 目の前に菜緒が来ても尚瑠璃は体の至る所から血を垂らしながらも『世界真理』に抗っている。

 俺はクンネルと傀羅に瑠璃を連れてここから離れるように命令し、菜緒と向き合った。


「宏人くん。きみ、さっきからなんも活躍してないねぇ」


「うるさいな。俺が一番分かってんだよそんなこと──だから。ここで魅せてやるよ」


 菜緒には『変化』が効かない。

 だがそれがなんだというのか。

 俺には、アルドノイズと狂弥の力がある。


「『バースホーシャ』」


「『サンドライトニング』」


 まずは小手調べというように互いのカミノミワザが衝突する。

 本来ならこれですらかなりの大技なのだが……本当に勘弁願いたい。

 俺は顔を引き攣らせながらも『バースホーシャ』を十個同時展開。

 菜緒は化物だが、それは俺も負けていない。

 

「やるねぇ」


 そう言う菜緒も『サンドライトニング』を同時十個展開。

 確実に『世界真理』が関与しているとはいえ人の努力を簡単に追い越すのはやめていただきたい。

 これは俺がずっと『バースホーシャ』を使い続けてきたからこそ出来た大技なのだが。

 世界を揺るがすほどの威力を持つカミノミワザが一気に激突する。

 炎が吹き荒れ、空気がピリつく。

 爆発の余波で黒煙が舞う。

 そして、突然菜緒の手が黒煙を破って出現する。


「──『輝』」


「──ッ!」


 それは超ボルトの圧縮砲弾。

 俺は瞬時に暗黒龍と『リンク』を接続。

 俺の手から出ずる『エンチェンジ』が『輝』を飲み込んだ。


「いいの?確かそれって、暗黒龍が死ぬまでそのままなんじゃなかったっけ?」


「……よく調べていることで」


 『エンチェンジ』は殺傷に重きを置いた殺意の塊の『変化』だ。

 そしてその『エンチェンジ』に必要な材料は『変化』と『エンブレム』。

 今となっては『エンブレム』はもう使わないため必要ないが、『変化』は違う。

 要するに、『エンチェンジ』を使っている最中は『変化』が使えないのだ。

 

 菜緒はここぞとばかりに攻めてくる。

 そりゃ当然だな、HP高いボスをワンチャン一撃で殺せる大チャンスなんだから。

 だが俺だって考えなしではない。


 俺の背後に、アリウスクラウンと暗黒龍が現れる。


「やっとかよ」


「うるさいわね。あなたが乱暴に投げ捨てるからでしょ?」


「ぐぎゃあ……」


 アリウスクラウンは偉そうに帰ってきたが、暗黒龍はどこか気まずげだ。

 まあ兄弟でもある清龍に手も足も出てなかったからな。


「ここが挽回のチャンスだぞ、暗黒龍」


「グギャァァァァァァァ!」


 俺はここで極犬・ケルベロスも召喚する。

 耳をつんざく遠吠えを上げながらケルベロスが姿を現す。

 そして俺はすぐに『リンク』を発動──『焔』が『黒焔』に姿を変える。


「やっと本気になったね。宏人くん」


「ああ。おまえもそろそろ頃合いじゃないか?本気出すの」


 菜緒には、まだ『世界真理』が残っている。

 『世界』の構築と常時発動型の権能は瑠璃が阻止してくれてはいるが、おそらく異能はそれだけではないだろう。

 カナメの『世界破滅』に様々な種類があるように、ダクネスに『新世界』があったように。

 神人のカミノミワザは、どれも馬鹿げている。


「もっと頑張ってくれないと見せられないよ」


「あっそう。なら一生見せないでもらいたいわね!」


 アリウスクラウンは瞬きの合間に菜緒の目の前で跳び膝蹴りをお見舞いする。

 しかし菜緒も瞬時に身の回りに電撃バリアを構築。

 おそらくカナメの常時爆風バリアをパクって作ったのだろう。

 展開があまりにも早すぎる。

 アリウスクラウンの蹴りが菜緒に届く前に、電気で痺れたアリウスクラウンが倒れる。

 二人がそんなやり取りを行なっている間に暗黒龍が菜緒に向けてブレスを放つ。

 漆黒の禍々しいそれが菜緒の体を蝕む……はずなのだが。

 菜緒は『世界真理』でもってブレスの毒効果を分解。

 そして暗黒龍に向けて『輝』を放つ。

 アリウスクラウンに引き続き暗黒龍も他に伏せる。

 

 だがそれは計画通り。



「ありがとう二人とも──『黒焔』」



 ドス黒い焔が高台諸共破壊し尽くす。

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