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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十六章 最終決戦・中編
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239話(神サイド) 戦いの前に


 宏人たちがそれぞれ戦っている最中、七録菜緒は退屈にしていた。

 ここはカナメを封印している原因である転送地の結界の前。

 凪に言われた通り、誰がカナメの封印を解きにきてもいいようここで待機しているのだ。

 宏人たちの目的がカナメの奪還、菜緒の討伐である以上ここに来ることは必然。

 

「はぁ……」


 思わず、ため息が出る。

 通常なら『世界』の過去も現在も未来すらも確認出来る『世界真理』でこの戦いの結末を確認したいところなのだが……どういう訳か、ことこと戦いに関しての未来が見えない。

 こういう事態は滅多にないとはいえ、特段気にするものではない。

 

 数ある無数の『能力』には、時に世界改変系統能力というものが存在する。

 

 一部の『カミノミワザ』や、宏人の『変化』、セバスの『アンデット』もこの内と言える。

 世界改変系統というのは、その『能力』一つで『世界』に影響を与えることが出来ると認定された能力のことである。

 その中でも宏人の『変化』は顕著だ。

 今は『者』級にあるとはいえ、それ以前にも『有』を『無』にしていた。

 『世界』からすればこれほどの脅威はないだろう。


 なにせ、成長次第で、地に手を置くだけでこの『世界』を消すことすら可能になるやもしれないからだ──。


 話を戻すと、菜緒の『世界真理』は世界改変系統能力がより効果を発揮している最中、また未来に発揮する可能性、さらに同様の異能が密集している場合は観測できない。


 このことから、宏人の『変化』が未来で何かしらの変化が起こった可能性もあるわけで……。


「まあ、なんとかなるでしょ」


 そんな状況でも、菜緒は揺らがない。

 絶対の自信があるからだ。

 『世界真理』は今、未来が見えないだけであり、それは戦いにおいては何の影響もない。

 

 ふと、『世界』に異変が生じた。


「……凪、もう使ったんだ」


 それは、時空の歪み。

 おそらく凪が時を渡ったのだろう。


 菜緒は軽くストレッチをしてから洞窟を出る。

 カナメの封印場所で戦った方が封印が解かれる可能性を下げられるが、背後に弱点を晒したまま戦うのもおかしな話だろう。

 

 菜緒はニヤリと笑いながら、虚空より一冊の本を出す。


「──『世界真理』」


 最後の戦いが、始まる。


 *


 俺が『変極廻在』から出てくる時には、既に前哨戦は全て終わっていたらしい。

 アリウスクラウン、セバス、傀羅、クンネル、瑠璃が笑顔で迎えてくれた。

 

 俺は開口一番に凪を取り逃したことを謝罪する。

 だがそれよりも重大なことがあるのか、適当に水に流されてセバスが話しだす。

 ……俺としては、ちょっとは責めてほしかったのだが。

 それはともかく。


「なるほどな……つまり敵は七録菜緒一人ってわけか」


「これを好気と捉えるかは微妙なラインですね。なにせ七録菜緒には残機が二つもあります」


「加えて、『世界真理』とアルベストのカミノミワザを持っている……これ、まずくない?」


 アリウスクラウンが少し顔を青ざめるのを見て俺も唸る。

 それに持っている異能だけでなく、セバスの言う通り残機がかなり問題だ。

 ただでさえ強いのに、二回殺さなければ死なない……アスファスも使っていた、『神の代姿』か。

 それを神人である菜緒が出来るのは、『世界真理』の異能が絡んでいることは間違いない。

 瑠璃も言葉を発さず真剣に思考していることから、ことの重大さが増す。

 そんな中、クンネルが手を挙げる。

 

「ともかく、私の『吸収』で能力残量の調整をしよう。まずはセバスからだ」


「え、僕からですか?限定的とはいえ不死なんですから優先順位低いと思ってたんですけど」


「『能力』を使い過ぎだ。半分の能力残量で七録菜緒に挑むつもりか?」


 クンネルの言葉を受け、セバスは素直に従った。

 クンネルには謎の迫力があるからな。

 『吸収』による能力残量調整は、クンネルが自分の、または他者から能力残量を『吸収』して、俺の『変化』によって軌道を弄り、逆に他者に能力残量を譲渡するという仕組みだ。

 クンネルの逆『吸収』を受けて、セバスの能力残量は全回復した。

 だがそれでクンネルの能力残量が尽きる。

 今回七録菜緒と戦うのは俺とセバス、アリウスクラウンだ。

 そのため俺とアリウスクラウンは非戦闘員である瑠璃と傀羅から能力残量を頂戴する。


 これで、戦いの準備は整った……はずなのだが。


「次はこの捕虜たちをどうするか決めましょう」


 瑠璃はそう言って、智也、星哉……そして謎の女を指す。


「謎の女ってなんすかー!流音っすよ流音!まさか本気で忘れたんすか!?」


「……えーっと?」


「えーっとじゃねぇーっす!ほら、能力が睡魔と疑われてた女っす!」


「……?……あ、あぁ!思い出した。俺がせっかく『メンバーズ』に誘ったのにバックれた奴!」


「ふざけんじゃねえええええええ!っす。あの後ダクネスとかいう女にぼっこぼこにされたんすよ!?おかげで今でもダクネスとかいう女に怯える日々っす」


「なら大丈夫だぞ。殺したから、ダクネス」


「絶対に敵対しないさいっこうの仲間になりましょうっすー!」


 流音は高速手のひら返しで俺に擦り寄ってきた。

 まあぶっちゃけこの小物はなんでもいい。

 俺は無言で星哉の元へ。

 星哉はおそるおそるといった様子で顔を上げた。


「あ、あの……宏人様──!」


「謝罪とかいいからさ。おまえも一緒に戦ってくれないか?」


「はい!」


 星哉は打って変わって満面の笑みでそう言った。

 こっちもこっちで手のひら返すの早いな。

 もう少し葛藤とかあると思っていたからか、なんか納得いかない。

 まあそれもいいだろう。

 最後に、一番の問題児の元へ。


「三日ぶりだな、向井宏人」


「……智也」


 拘束された智也を見ながら、思う。

 こいつは『NoS』を裏切り、『メンバーズ』を裏切り……今は、凪の組織を裏切ろうとしている。

 正直、俺はこいつが仲間になるのは反対だ。

 だが、今はそんなことを言っていられる事態ではないこともまた事実。

 俺は智也の拘束を解き、はっきりと言う。


「次裏切ったら、分かるな?」


「ああ。裏切る時は、ちゃんと報告することにしてやる」


 ……まあ、今はそれでもいいだろう。


 智也との会話を終え、俺は改めてセバス、アリウスクラウン、瑠璃を見る。


「アリウスクラウン。旅館の時ははぐらかされたからな、良い機会だ。死なないって約束してくれ」


「ええ。約束するわ」


「瑠璃。おまえが今回の戦いの鍵と言ってもいい。重圧を押し付けてしまってすまない。この埋め合わせはいつか絶対する」


「そうしてもらわないと困るからね。いいわ、存分に暴れて帰ってきなさい」


「セバス。……おまえは、今でも俺を殺してアルドノイズを蘇らせようと考えているか?」


「はい。もちろん、宏人くんを殺さずにアルドノイズ様を復活させられる方法があるなら、そっちを優先したいと思っていますよ」


「そうか……。なら尚更だな。この戦いが終わったら、相手してやる。だから死ぬな」


「無論です。約束ですよ?」


 さて、準備は整った。

 瑠璃たち非戦闘員をすぐに離れた場所に行くよう指示を出し、その時ちゃっかり非戦闘員たちと一緒に逃げようとしていた流音の首根っこを掴む。


「はぇ……?私も、戦うんすか?」


「当たり前だろ。死んでも『変化』で直してやるから、存分に戦ってくれ」


「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!たった今からダクネスよりも宏人の方が嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「流音さん、唯一の個性の語尾が抜けてますよ。宏人様!見ててください!華々しく散ってみせます!」


「おう星哉……。その、ほどほどにな?」


「宏人。俺も生き残ったらセバス同様おまえを殺す機会をくれ」


「別にいいが。智也、おまえはこの機会に死んでくれてもいいんだぞ?」


「ハッ!寝言は寝てから言えよ。めちゃくちゃ強くなった俺を魅せてやる」


 刹那──『世界』が、変わる。

 俺たちの前に突然現れた菜緒が、瞬時に式神を展開したのだ。

 だが、俺たちに焦りはない。

 ……背後で泣き叫ぶ流音の声が聞こえるが。


 

「さぁ、最終決戦ってやつだよ!気張っていきな?」


「言われずともだ、七録菜緒」


 

 アルベストの姿をした七録菜緒が、楽しげに笑う。



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