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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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238話(神サイド) 生存決戦⑧


 ──不意打ちの『時空放射』を浴びて、凪が彼方へ吹っ飛んだ。

 『世界』の中心で俺はじっと待つ。

 すると次の瞬間、遠方から青白い光線が放たれた。

 俺は手を前に突き出す。


 青白い光線──『時空放射』は、俺の『変化』で消え失せた。


「他人の真似事……。なんか最近多くて困るぜ」


「バカ言うな。俺以外のぽっと出たちに多かっただけだろ」


 凪は煙をかき分けて姿を現した。

 凪の『能力』──『模倣者』。

 一度見た異能を完全にコピー出来る超級異能。

 とはいえ、コピー系統は今までに何度も戦ってきた。

 ダクネスの『旧世界』もそうだったし、ライオの『千里眼』もそうだったのだ。

 今更、遅れは取らない。


「『サンドライトニング』」.

 

 カミノミワザによって作り出される電撃。

 凪はそれを攻撃にではなく、自身の速度を上昇させるために発動。

 文字通り光速の凪が俺に肉薄する。

 だが見飽きた異能でもある。

 ザックゲインしかり、アルベストしかり。


「『焔』」


 いくら速かろうが、人間である以上炎のカミノミワザの中にはいられない。

 俺は『焔』を周りにばら撒き、俺を中心に爆炎が円形に展開された。

 これで襲撃の心配はなくなる──そう思っていた俺の背後から、殺気が。


「──ッ」


 刹那、俺の横腹が抉られる。

 凪はいつの間にか俺の背後にいた。

 もちろん『焔』のサークルの中だ。

 ありえない──『サンドライトニング』の速さは体験しているはずなのに。

 しかし、そこでハッと気付いた。


 凪の異能は、『模倣者』のみではない。


「なるほどニーラグラのか。きっと今頃泣いてるぜ?」


「だろうな。だからなんだと言わせてもらうが」


 俺は横腹を『変化』で修復しながら今の攻撃について思考を巡らせる。

 まあ、十中八九『凪』だ。

 それもアスファスと同じ本来の『凪』を、命中率を上げるために分散させたタイプの。

 逆に本来の『凪』が出来ない可能性の方が濃い。

 アスファスは常に堅実な戦い方をしていたため、本来の『凪』なんか滅多に使わないからだ。

 そしてその『凪』を『サンドライトニング』の身体強化で当てられたのは、ニーラグラの風系統のカミノミワザが関係しているのだろう。


「音速風速光速とか欲張りかよ」

 

 凪は今度は黒い円球を辺りに不均等に浮遊させた。

 不思議なことに、まるで凶悪性を感じない。


 だが、どこかで見たことあるような……。


 すると、黒い球同士が結びつくように、これもまた黒い線で紡がれた。

 それらは段々とスピードを速くしながら、また一個、さらに一個と繋がって行く。

 このまま行くと、逃げ場が消えそうな勢いで。

 俺は嫌な予感がしたためとりあえずカオスを召喚してみた。


「よっ」


「……おい。どういう要件だテメェ。軽々しく召喚すんなよ」


「別に大したことないお願いなんだが、その黒いの触ってみてくんないか?なんか怖くて」


 俺がそう言うと、カオスは吹き出し、大声で笑う。

 そして俺を煽りながら黒い球に手を伸ばす。


「おいおいおい!こぉんななんの威力のない玉怖がっちゃってんのかよ。やっぱ大したことねぇクソ野郎だな。いいぜ、触ってやるよ。ほら、これでどう──」


 すると、死んだ。


「……凪。これ、ソウマトウのだな?」


「さすがに気付くのが遅すぎるな」


 瞬間──先程までとは段違いのペースで黒い線が紡がれていく!

 俺はとにかく再度『焔』で安全圏を構築。

 俺の周りの黒い球──『闇』を破壊する。

 この当たれば即死のソウマトウのカミノミワザの欠点は、それ自体の威力耐久力が全くないということ。

 

 『焔』で『闇』を対処した俺を、またもや無数の『凪』が襲う。

 浅くない傷を刻まれながら、俺も負けじと特大の『バースホーシャ』を発動。

 分散型にしているためか、それで『凪』は消え去った。


 濃い水蒸気が発生し、目が遮られる。

 そんな俺を、凪は襲う──。


 俺の右腕が、落ちた。


「ッ……!容赦ねぇな」


 背後を見ると、凪が背を向けて立っていた。

 おそらく『サンドライトニング』だろう。

 光速で俺の腕を飛ばしたのだ。

 そんな凪に俺は『焔』を発射する。

 凪はそれを、『世界爆破』で撒き散らした。

 これはカナメのカミノミワザ。

 近距離での大爆発により、俺と凪に致死レベルの熱風が降り注ぐ。

 俺は『時空放射』で常時一秒前に時を操ることにより何事もなく乗り越えたが、凪は『旋』で全ての風を収束、さらに威力を高めて俺に投げつけてくる。


 本当に、容赦ねぇな……。

 『時空放射』で伸ばした体感時間でこの風をよく観察してみると、どうやら『焔』もブランドされている。

 真顔でこんな凶悪なことするのマジで勘弁。

 まあともかく、しかしながら、とりあえず。


 俺はそれを、手で掴んだ。


「──『変化』」


 まるで何もなかったかのように、俺の手は虚空を掴んでいた。

 俺の『変化』は万物を飲み込む空腹の神。

 たとえ神であろうと、俺の手は全てを喰らい尽くす。


 両者一歩も引かない攻防……なのだが、実際はそんなことはない。

 

「まるで今までの総復習だな……」


 狂弥の『時空放射』に、アルベストの『サンドライトニング』、アスファスの『凪』、アラドノイズの『焔』、ニーラグラの『旋』、カナメの『世界爆破』……。

 どれも強力なカミノミワザ。

 多様な神の力を一人で扱える少年……なんて言ったら聞こえはいいが。


「でもな、足りないよ。凪」


「……」


「どれもこれも、超強い。いやめっちゃ強い。理不尽なくらいにな。だけどな、おまえのはどこまでいってもニセモノだよ──アイツらの『カミノミワザ』とじゃあ、全然違えよ」


「黙れよ──俺が一番知っている」


 凪が叫ぶと同時──『世界』にヒビが入る。

 一瞬まるで意味が分からなかったが……それはライザーの『空間支配』。

 俺の『世界』が、割れようとしている。

 無論そんなことをさせるつもりなんてない。

 

 その前に、決着をつける。


 俺は凪に手を向ける。

 そして──唱える。



「『奥義』──『ヴォルケーノ・マキシマム』」


 

 それは、破滅を齎す終わりの始まり。

 全てを無に帰す破壊の権化。

 

「……」


 『ヴォルケーノ・マキシマム』が着弾する迄の数瞬。

 俺は凪と目があった。

 この『奥義』をなかなか使わなかったのは、心の準備をしていたからだ。

 『ヴォルケーノ・マキシマム』は、全てを破壊する。

 凪だって、殺す。


 それが分かっているのかどうなのか、今となっては定かではないが、凪は特に抵抗する素振りを見せず俺を見据えていた。

 

 俺も凪を見る。


 ──だから、気付けた。



 凪の手に、狂弥の『時空放射』が詰められた石──『ループ』に必要な石があることを。



「──ッ!」


 俺は駆け出す。

 あれは──まずいッ!!


 また、凪と目が合う。

 『ヴォルケーノ・マキシマム』の脚光が目を焼く。


 そんな中、凪は呟いた。



「時を──戻せ」


「待て……待ってくれ──凪!」



 俺は手を伸ばす。

 でも、届かないッ……!

 いつもそうだ。

 いつもいつもいつもいつも、いつも!

 俺の足裏から爆炎が噴出される。

 『バースホーシャ』の応用だ、だが届かない。


「ニーラグラ──今だけ、貸してくれ──!」


 思わず叫んだ俺の声が届いたのか。

 俺を、風のベールが包み込む。

 凪によって封印されたニーラグラの風が、『ホリズンブレイク』が俺を更に加速させる!

 あと一歩、これで凪に──!



「おまえじゃ俺を止められない──そろそろ理解しろ。宏人」



 俺の手は、虚空を掴んだ。



 やはり俺の手は、届かなかった。

 あと一歩のところで、『ループ』が発動した。


 俺の前から凪が消えた。


 

 果たして、それが意味することとは。



 ただ立ち尽くす俺に、行き場を失った『ヴォルケーノ・マキシマム』が降り注いだ。









                  第十五章『最終決戦・前編』──完

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