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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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236話(神サイド) 生存決戦⑥


 アリウスクラウンの勇者剣と、智也のツメがぶつかる。

 耳をつんざく金属音を響かせながら、両者一歩も譲らない攻防を繰り広げる。

 アリウスクラウンは『炎舞』で極限まで身体能力を向上しているのにも関わらず、智也はそれを絶大なパワーでもって相殺。

 拳だと話にもならなかったが、かと言って勇者剣でもやっと対処できる……それ程の力を智也は有していた。


「『炎舞』」


 アリウスクラウンは鍔迫り合いの直後に炎を撒き散らす。

 お花さんたちと一斉射撃。

 しかし智也の鋼の肉体はそれをものともせず、『炎舞』を発動することでアリウスクラウンに生まれた隙を智也はめざとく見つけ──右足を切断した。


「あ──ッ!?」


 アリウスクラウンは激痛に動きが止まり──智也の笑みが、深まる。


(しまっ──!)


「ヒャッハー!」


 智也は心底楽しそうに笑いながら、両手を振り上げる!

 その鋭いツメを薙ぐだけで──辺り一面がスパッと切断された。

 まるで周り全てが湯豆腐のように。

 いとも容易く、全てが真っ二つになる。


「一、撃、ひっさーつ!」


 それはアリウスクラウンも例外ではなく……アリウスクラウンの四肢が、バラバラに弾け飛んだ。


「──ッ!?」


 そんなアリウスクラウンに回復の隙を与えず、智也は更に横に一閃。

 だがアリウスクラウンは文字通り死ぬ気で一瞬で完全再生!

 智也のツメを勇者剣でガードし、全力の拳を顔面に叩き込む!

 しかしそれでも智也に外傷はない……が、よろけた智也に勇者剣で追撃。

 なんでも斬れるとはよく言ったもので、見事智也の右腕を切り裂いた。


 ──智也が、笑う。


 気付いた時には既に遅く……世界が、割れた。


「……へ?」


 アリウスクラウンの、下半身が……消えていた。

 智也は叫ぶように笑い、笑い、笑い──全てを切り裂く。

 アリウスクラウンを、木っ端微塵に殺し尽くす。

 再生させる暇を与えないのではなく、そもそも再生する以前に、八つ裂きにして無くそう──智也はこれを実行に移し、見事達成した。


 『血花乱舞』が、崩壊する──!

 

 そして、智也は両手を合わせた。


 神に祈るように……否!

 アルドノイズに、捧げて──!


「式神構築ッ!『極廻界』ー!」


 やがて完成するは、アルドノイズの『世界』── 『極廻界』。

 全てを無に帰す灰燼の炎に支配された、灼熱の地獄。

 そんな中、アリウスクラウンはゴクリと唾を呑む。

 『血花乱舞』を展開していなければ、アリウスクラウンの命は潰えていた。

 

 もう、失敗は許されない。


「アルドノイズの『世界』……。いいよなぁ、数の暴力って」


 智也が両手を挙げると同時、至る影から膨大な数の極犬が姿を現す。

 純神の得意とする、弱式神の無限生産。

 

「全然よ。もう宏人ので見飽きてるわ。最近だとケルベロスに相手してもらっていたことだし……いくわよ」


「ははっ!あんま簡単に死ぬなよ?つまんねぇから」



 ── 智也は勝利を確信し、笑う。


 最初から敗北など想定していないが、アリウスクラウンが強者であることは事実。

 そして── 智也が『悪魔』を使い切れていないことも、また事実であった。


 智也の『能力』── 『悪魔』。


 己の『人間』という法則を書き換え、『悪魔』に変換する超級異能。

 無論これは生存戦争の強制参加対象なのだが……。


 *


「智也。お前の力が欲しい」


 生存戦争の一日前。

 突然凪が智也の部屋に来て、開口一番にそう言った。

 

「……はぁ?」


「はぁじゃない。俺が欲しい返事ははいだ」


「いやマイペースかよ。そうじゃなくて、どう言う事だよ?俺、今の力をお前に見せたことねぇだろ」


「そりゃあな。お前のその『悪魔』は、今のお前じゃ扱えないだろうな」


 凪の言葉の意味が分からず、智也は再度問い詰めようとしたが……そこでハッとした。

 凪は、時を、『世界』を渡っているのだ。

 智也の『能力』事情を把握していても何ら不思議はない。

 

 そう、智也は『悪魔』を使えないのだ。


 一度も使用したことがない……そのため明日の生存戦争に参加することはないだろう。


「俺と手を組んでくれるのなら、『悪魔』を使えるようにしてやる」


「……ハッ。大半はお前のためだろ。俺の力を使って、何をするつもりだ?」


 凪は、嗤う。

 ……智也は、ずっと気になっていた。

 凪が、まるで普通の人間を演じているようで。

 だが今ここで確信する。

 

 凪は、既に、壊れている。


「この『世界』を、手に入れよう」


 凪は嗤いながら、続ける。


「俺はもううんざりなんだよ……。狂弥と何度も何度も何度も何度もループして……そして『世界』崩壊の根源の七録菜緒と、その他の神人も殺して『世界』を救って。そして何になる?何を得る?答えは簡単だ──何もない。何も得ない。……ここまで頑張ったんだ。ハハッ。最後のループくらい、好きに暴れようぜ?」


 獰猛な笑みを浮かべる凪を見て──智也も、嗤う。

 

 別に智也は『世界』になんて興味はない。

 ただただ、面白そうだと思っただけだ。

 

 凪はともかく、智也の目的は変わらない。


 ──アルドノイズの復活。


 様々な思惑が交差する中、最終目的地は違えどその過程が似たような者たちの集まり──それが凪の組織なのだ。


 *


 アリウスクラウンの戦闘形態は、その身一つによる強力無比な威力を誇る徒手空間。

 しかしその真価を発揮するのは一対一の勝負のみであり……無数の極犬相手には、通用しない。

 智也は楽しそうに笑いながら、極犬に命令を下す──!


「奴を、殺せ」


 耳をつんざく遠吠えが『世界に児玉すると共に、極犬は駆け出した。

 その鋭い牙が、アリウスクラウンに襲いかかる。

 だがアリウスクラウンはそれを冷静に対処していく。

 人間の域を超えた超スピードで以って、悉く極犬を駆逐していく。

 

 しかし──余裕はない。


 少し遅れて、智也もアリウスクラウンのもとへ。

 極犬を相手にしているアリウスクラウンを、智也は鋭いツメで切り裂く。

 それをアリウスクラウンは瞬時に虚空より取り出した剣で止める──それは、勇者剣。

 

「──ッ。裕駕のか。死体漁りは引くぜ?」


「勝手に懐いてきたのよ。しょうがないでしょ」


 鍔迫り合いをしているアリウスクラウンに、極犬は容赦なく襲いかかる。

 そんな状況で、アリウスクラウンは──!


 勇者剣を、投げ捨てた。


「?」


 智也が疑問に思うのも束の間。


 次の瞬間──勇者剣はが、辺り一面を切り裂いた。


「──なッ!?」


 アリウスクラウンを除いて、反応出来たのは智也のみ。

 周りの極犬は全て一太刀の元切り捨てられた。

 だが極犬は無制限の不死身。

 次の瞬間には、再度無数に沸く。


 しかしその度に、勇者剣はフルオートで全てを切り捨てた。


 智也の顔から、冷や汗が垂れる。


「……さすが裕駕の剣と言ったところか?」


 アリウスクラウンは、それを無視して、再度虚空に手を伸ばす。

 そして取り出すは神剣『暗黒龍』。

 宏人から預かった、暗黒龍を宿す神剣。


 刹那。


 再度アリウスクラウンの剣と、智也のツメが衝突する。


 だが、先程までとは決定的な違いがある。

 両者鍔迫り合いになるのではなく…….智也のツメが、割れた。


「──マジかよ」


「マジもマジ。大マジよ──さようなら」


 アリウスクラウンの剣が、智也の胸を貫く──その瞬間!


 智也の背中から、生まれる。


「……できれば、もう二度と見たくなかったわね」


 智也は、嗤う。


 智也の背から生まれしは──両翼の羽。


 ダクネスの綿のような天使の羽と違い、その翼は鋭利。

 全てを切り裂く、悪魔の翼。


 漆黒のその翼が、ギラリと煌めく。


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