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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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235話(神サイド) 生存決戦⑤


 暗黒龍が翼を羽ばたくだけで、辺りに旋風が吹き荒れた。

 智也と祐雅が吹き飛ばされないよう踏ん張る中、アリウスクラウンは腰に手を置き悠然と二人を見据える。

 

「暗黒龍、あなたはあっちのキショいのをお願い」


「グギャァァァァァァァ」


「それって俺のこと?マジ勘弁なんだけど」


 暗黒龍は一瞬で──智也の元へ。

 智也は顔を引き攣らせながら、なんとか攻撃を受け流す。


「ちょっ……!祐雅!俺時間稼ぎしか出来ねぇからな!?」


「ははっ。そっちは任せた。俺の相手はお前か。アリウスクラウン」


「ええ。相手してあげる」


 祐雅は嬉々としてアリウスクラウンに勇者剣を一閃。

 アリウスクラウンは軽やかに回避し、『炎舞』で炎をばら撒く。

 アリウスクラウンと祐雅を囲むように、炎は天高く聳える。


「これは逃さないという意思表示か?面白い。ならば俺も──」


「いや?ただお花さんたちが楽に戦えるようによ」


 刹那──四方八方から爆炎が吹き荒れる!

 アリウスクラウンが展開した炎の土俵の外から、お花さんが『炎舞』で炎を放ち続ける。

 

「──ッ!?」


 祐雅は顔面を蒼白にしながら、超速度で一回転。

 なんでも斬れる勇者剣でもって、身の回りの炎を切断した。

 しかしお花さんたちはたまらない。

 炎の土俵の中にはアリウスクラウンもいるが、『炎舞』は炎を操る異能。

 自分だけ炎に当たらないようにするのは容易なのである。

 必死に剣を振り続ける祐雅に、アリウスクラウンは渾身の足蹴りを叩き込む。

 祐雅は瞬時に反応しそれを剣の腹でガードする……が、アリウスクラウンの重い一撃に耐えきれず、吹き飛んだ。

 炎の土俵を抜け、お花さんの炎に焼かれる祐雅。

 

 すると次の瞬間、周りのお花さんたちが散った。


「あはは……あっははははは!痛い!痛いよぉアリウスクラウンッ!」


「そうね。随分と痛そうね」


 全身に火傷を負う祐雅だが、未だ叫ぶ余裕がある。

 『炎舞』はあくまで炎を操作するだけのため、決定的な威力に欠けるのだ。

 祐雅は興奮し、楽しそうに高笑いする。

 

(前まで魔王剣持ってたって話だから、多分性格バグってるわね。一貫性がないというか)


 アリウスクラウンがそう思考していると、ついに祐雅が動き出した。

 瞬時に数回の斬撃がアリウスクラウンを襲う。

 しかしアリウスクラウンは難なくそれをいなし、祐雅の隙だらけの脇腹に拳を叩き込もうと──そこで、いつの間にか祐雅の手が空になっていることに気付いた。


「あはっ。バーカ」


 刹那、アリウスクラウンの右腕が深く抉られる。


「──ッ!?」


 アリウスクラウンは瞬時に後方に退がった。

 それを祐雅は面白そうに眺める。


「ほんとは背中貫くつもりだったんだがなぁ……背中に目ぇ付いてんのかよ」


「……いったぁ」


 アリウスクラウンはブラリと下がる手を見て苦笑いする。

 祐雅を殴る寸前、背後から危険を感じ咄嗟に避けたのだが……回避し切れず、勇者剣に斬られたのだ。

 

(勇者剣って遠隔操作出来るの……。めちゃくちゃ強いわね)


「……でも。二度目はないわよ?」


「はてさて、どうかなぁ!」


 祐雅は再度アリウスクラウンへ斬りかかる。

 お花さんたちが常時炎を噴出しているが、勇者剣はそれをものともしない。

 半分ほど智也に向けられていることも関係しているだろう。

 祐雅がまた鼻の先まで来た瞬間、アリウスクラウンは左腕を振り上げ──切断される。

 勝ち誇る祐雅──その顔面を左手でぶん殴る!


「は──!?」


「この『世界』の本質は、無限再生よ」


「はぁ!?無限再生って、お前──ごほぉ!?」


 祐雅は何が起きたのか分からないという表情で地を転がり……アリウスクラウンはそんな祐雅の腹に拳を叩き込む。

 あまりの威力に絶叫する祐雅。

 だがアリウスクラウンは止まらず追撃。

 祐雅の顔面を真上から潰し、歯がひしゃげる。

 すると、祐雅の手から勇者剣がすり抜け──アリウスクラウンを襲う。


「面倒な……!」


 勇者剣による一瞬の内の無数の斬撃。

 アリウスクラウンの全身から鮮血が舞う。

 だが『炎舞』による身体強化中のアリウスクラウンもまた光速。

 手が切れることを厭わず勇者剣の刀身を掴む。

 途端に襲いくる激痛、しかし無限再生が瞬時に傷を癒す……そしてついに勇者剣を捉え──それを祐雅の腹に突き刺した。


「ぐ──ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 響き渡る絶叫。

 だがアリウスクラウンは気にせず祐雅から勇者剣を抜き……再度押し込む。


「クソ……!クソクソクソ!まじで許さねぇからなアリウスクラウン!見てろよ!絶対に殺して──!」


「無理よ。これで──バイバイだから」


 そして──アリウスクラウンは祐雅の胸に勇者剣を入れた。


 既に焼けていた祐雅の体はとても脆く、命の灯火は瞬時に潰える。

 それと同時に、小刻みにアリウスクラウンの手の中で震えていた勇者剣がピタリと止まり……霧散した。


(これは一体……。そうか、私が勇者剣の所持者になったのね)


 すると、僅かにだが身体能力が向上した。

 勇者剣所持者の恩恵だ。


「……けほっ」


 途端、アリウスクラウンの全身を強烈な痛みが支配する。

 あまりの痛みに思わずアリウスクラウンは座り込んだ。

 これは『炎舞』の代償。

 『血花乱舞』が癒せるのは外傷だけ。

 

 激痛を我慢しながら、アリウスクラウンはふらふらと立ち上がる。


 同時に、背後から鼓膜をつんざく衝撃音が小玉した。


 アリウスクラウンは、嫌々振り返り──智也と対峙する。



「……あなたのお友達、死んだわよ」


「お前の相棒も、な。いや、こいつは宏人のか」


 

 そう言い、智也は暗黒龍の目玉を放り投げた。

 その巨大な目玉は、アリウスクラウンの足元でべちゃりと飛び散る。

 アリウスクラウンはそれを見るとはなしに見て……瞬間、智也に肉薄した。

 自慢の拳で智也の顔面に強烈な一撃。


 しかし……智也はそれを微動だにせず──口角を上げる。


「──!」


 アリウスクラウンは危険だと察知し咄嗟に後退。

 これは……おそらく。


「さっきより随分と強いわね……進化でもしたのかしら?」


「ああそうだ。おかげさまで今日から『者』級だ──あんま、舐めない方がいいかもだぜ?」


 刹那、智也の鋭いツメがアリウスクラウンの片頬を裂いた。

 人間を逸脱した超スピード。

 外見も先程より凶悪に変化しており、既に人間の原型を留めていない。

 これはアルドノイズの眷属ということも関係しているのだろう。

 何より、単独で暗黒龍を倒せるのだ。

 強いに決まっている。


 アリウスクラウンは智也の速度に目を見開きながらも、即座に適応する。


 しかしアリウスクラウンの徒手空拳は、ドス黒い鋼鉄のような硬さを誇る智也の体を傷付けるに至らない。

 智也は両手を激しく振り上げ、辺り一面を切り刻む。

 逃げ場のない広範囲攻撃。

 それはアリウスクラウンですら回避不可能なほどであり……無限再生で一瞬で回復したアリウスクラウンは、思わず笑う。


「めちゃくちゃね」


「俺めっちゃ強くない?これ上位純神レベルだと思うんだけど」


 智也はケラケラと笑いながら、その鋭いツメが生えている両手を抱き寄せ……勢いよく解く。

 それだけで斬撃が飛び、アリウスクラウンの片目を潰した。


「これが、今の俺だ」


「……」


 地獄に生える悪魔の花たちに囲まれる『世界』の中で。

 その悪魔は、卑しく笑う。

 

 アリウスクラウンは片目が再生すると共に、架空に手を伸ばす。

 顕現するは勇者剣。

 それを見て智也は──楽しそうに笑みを深めた。


「お互い、ちゃんと経験値稼げて良かったな」


「この剣の切れ味を確かめるのにちょうどいい体ね。感謝するわ」


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