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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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234話(神サイド) 生存決戦④


 アリウスクラウンと智也は、同タイミングで『式神』を発動する──!


「『血花乱舞』」


「『極廻界』ィ!」


(ッ──!宏人と同じ……アルドノイズの『世界』。そういえば智也はアルドノイズと『契約』してたんだっけ。厄介ね……)


 アリウスクラウンと智也の『世界』は拮抗し、やがては濁った『世界』が完成する。

 不完全な『世界』。

 

 少しでも『世界』の維持の精度を欠いた方の『世界』が食われる状況。


 そんな中、涼しい顔の裕雅がアリウスクラウンに一閃──それをアリウスクラウンは平然と回避する。


「『炎舞』──身体強化」


 それは、ダクネスとも渡り合えた炎の舞。

 最終的に宏人の助けを必要とする、命を燃やす奥義。

 得物を使わない近接戦闘を不得手とするセバスですらフィヨルドに勝てた、身体能力を底上げする異能。


 裕雅は、楽しげに笑う。


「はは!いいねいいね!やっぱフィジカル鍛え上げた奴が一番おもしろいよ!」


 裕雅の剣──『勇者剣』が神々しい光を放つ。

 それはまるで、夜空に煌めく星々のようで──その光が、アリウスクラウンに弾け飛んだ。

 アリウスクラウンは驚異的な動体視力と身体能力で光の悉くを回避、そして智也の元へ駆け出す。

 今のアリウスクラウンの身体能力は親であり師でもあるセリウスブラウンを遥かに超えているのだ。


「──ちょっ!?」


 そんなアリウスクラウンに、智也は目を見開く。

 そして──発動する。


 智也の、『能力』を──!


「『悪魔』」


 智也がそう呟いた瞬間、辺り一面にドス黒いオーラが吹き荒れる!

 その異質なオーラに、思わずアリウスクラウンも目を細めて立ち止まった。

 

 これは、まるでダクネスのような……。


「──!」


 それは、堕天使。

 智也の背から鋭い二対の漆黒の翼が生え、体中が暗く、黒く染まっていく。

 やがて顕現するは、醜いバケモノ。


 もはや神々しさすら感じるその暗黒の体で、智也は高笑いする。


「……よく、生存戦争呼ばれなかったわね」


「ほんとになぁ!俺もよく分かんねぇよ」


 そう言いながら智也は上空は飛翔し──発動する。


「──『ジェノ・エンゲイル』ゥッ!ハハッ!」


(──それはダクネスの──!?)


 アリウスクラウンが気付いた頃には、空いっぱいに『闇の柱』が展開されていて──それらは一斉に地上に降り注いだ。

 アリウスクラウンは顔を顰めながら必死に回避、回避、回避!

 避け切れなかった『闇の柱』は極限まで強化した体で粉砕──だが反動のダメージがデカすぎるッ!

 アリウスクラウンは回復手段を持ち合わせていない。

 そのため極力回避を優先的に──そう思考した途端、アリウスクラウンの背中が切り裂かれた。


「──ッ!なんで……!」


「ははっ!智也の繊細な操作のおかげだろうな。俺だけは自由に動ける」


 笑うは裕雅。

 裕雅の剣が、アリウスクラウンの背を斬ったのだ。

 しかし幸いなことに傷は浅い。

 アリウスクラウンは熱を調整し、簡単な応急処置を一瞬で済ませる。

 その間にも降り続ける『闇の柱』。


(まずは智也からなんとかしないとこれ死ぬわよこれマジ……!)


 アリウスクラウンは顔を引き攣らせながら上を見上げる。

 そこには、悠然と浮遊する智也の姿が。

 アリウスクラウンは無数に出現する闇の柱を足場に空を駆けていく。


「おお!すっげーな」


 段々と近づいてくるアリウスクラウンをものともせず、智也は高笑いを続ける。

 そしてついにアリウスクラウンは智也の元まで──!


「はい、ざんねん」


 最後の一歩のところで……闇の柱が、止んだ。


「──ッ!」


 それは突然。

 空一面を覆う闇の柱は一瞬にして霧散し、混ざり合い濁った『世界』の歪な空が展開される。

 智也の笑顔を最後に、アリウスクラウンは落ちていく。

 アリウスクラウンには、飛行能力がない……この高さから落下すれば、死は必然。

 

「……でも、それは落ちたらの話」


 アリウスクラウンは思わず──笑う。


 そして、解き放つ。


「顕現──『暗黒龍』」


 *


「アリウスクラウン、これ持っとけ」


「へっ」


 宏人から突然何かを投げられ慌ててキャッチすると……禍々しい剣だった。

 アリウスクラウンは一瞬それが何か分からず咄嗟に地に叩きつける。

 なんか『グギャッ』とか聞こえた。


「暗黒龍ーッ!」


 宏人は涙目で剣を拾い、ポケットから出したハンカチで拭う。

 剣から『ホギャ〜』と気持ち良さげな声が聞こえる。

 不気味。


「ごめんて……。それ、神剣よね?いいの私持ってて?ゴキブリかと思って投げ捨てちゃったわ」


「おいさすがにその間違えは嘘だろ。……いやなに。正直お前が一番心配なんだよ。今回の戦い」


 宏人はため息を吐きながら、理由を話す。

 なんでも、宏人やセバスと違い、その身一つで戦うアリウスクラウンは見ていて心配になるのだとか。


「だから、取り敢えずこれもっとけ。持ってないのとじゃ全然違うだろ」


「……いいの?暗黒龍って宏人の切り札でもあるわよね?」


「暗黒龍よりお前の方が強いよ。これ以上戦力減らすわけにはいかないしな」


 剣から『パギャッ!?』と聞こえる。

 アリウスクラウンは段々と愛着が湧いてきた。

 

 そして宏人、悪い笑みを浮かべながら。


「小型化に成功したからさ──いきなり出してそのまま勝っちゃえ」


 *


「──なっ……!」


 アリウスクラウンは顕現した暗黒龍の背中に着地──そのまま智也に突っ込む!

 智也は暗黒龍に驚きながらも冷静に『能力』を構成、一瞬でアリウスクラウンとの間に無数の闇の柱を再度展開する。

 それらは黒く輝くと同時── 一斉にアリウスクラウンに放たれる。

 

 そんな状況の中、アリウスクラウンは暗黒龍の背の上に悠然と立つ。


 アリウスクラウンは、拳に力を込める──!


「ただの──パンチ!」


 アリウスクラウンが放つは、拳!

 その衝撃波のみで、闇の柱の悉くを粉砕した。


「デタラメだろぉ!」


「大いに結構よ!」


 暗黒龍はそのまま智也に直行!

 そして──アリウスクラウンと智也の視線が交差する。


「ダクネスに比べたら、全然ね」


「本物のデタラメと比べてくれるなよ……!」


 アリウスクラウンは智也に渾身の足蹴り!

 智也は咄嗟に両腕で抑えるが……バキバキと骨から鳴っちゃいけない音が響く。

 智也の顔が苦痛に歪むと同時、暗黒龍の尾がアリウスクラウンの足と反対方向から智也を叩いた。


 白目を剥きながらぶっ飛ぶ智也が完成すると共に、この『世界』が主人を決定する──!



「式神構築──『血花乱舞』」



 そして、『世界』は完成する。

 暗黒龍は急降下し、地面に降り立つ。

 アリウスクラウンも地に飛び降り──目を細めた。


 智也が、既に復活していたのだ。


「いってぇよこれ。人間のままだったら死んでたわ」


「ははっ!俺は飛べないから見ていることしかできなかったが、すごいなアリウスクラウン。惚れ惚れしたよ」


「……あっそう。まあ、なに?──お花さんたち」


 アリウスクラウンがその名を呼ぶと、辺り一面に一斉に花が咲き乱れた。

 以前カナメと戦った時よりも段違いなほど、大量の花が満開する。

 まるで血のような、赤黒い色を放つお花たち。


 その花の中央部に──目が生まれた。


 そして放たれるは炎。

 この『世界』のお花さんたちが、それぞれ空に一筋の炎を描いた。



 熱風に揺れる髪を押さえながら、アリウスクラウンは笑う──



「私の地獄へ、ようこそ」

 

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