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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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232話(神サイド) 生存決戦③


 生存戦争跡地前に着いた俺たちは、森に入る前に一度立ち止まる。

 隊列を変えるのだ。

 森という視界が遮られた世界では、何よりも警戒すべきは奇襲。

 凪たちの戦力が把握し切れていない以上、警戒するに越したことはないのだ。

 だから『読心』を持つ瑠璃を中心で進み、後手に回らぬよう気をつける。


「瑠璃、少しでも違和感があれば言ってほしい。凪はともかく、少なくとも菜緒はお前を警戒しているからな」


「ええ。分かってるわ。私は重要な役割を持っているからね、死ぬ気で守りなさい」


 陣形は瑠璃を中心に、俺と傀羅が先頭、アリウスクラウンとクンネルが後方に位置する形で進む。

 

「セバスは大丈夫かしら」


 アリウスクラウンは、油断することなく辺りを警戒しながらそう呟く。

 

「大丈夫だろ。あいつリミッター解除すればバカ強いし。それにクンネルがいて『能力』の共有が可能な今、あいつが負ける方が難しいよ」


 俺たちが生存戦争で戦っていた間、クンネルは何もしていなかったわけじゃない。

 『吸収』という、曖昧な判定で効果が発揮されるこの異能を、どうにか役立てることは出来ないかと探っていたのである。

 そして、クンネルは発見した──『吸収』の本質を。

 それは『能力』残量譲渡。

 他人の『能力』残量を『吸収』し、それを自分や他人に移す。

 そんな使い道を発見したのである。

 これで、俺たちはアルベストか菜緒……はたまた両方と戦うことを想定して『能力』残量を減らさないことを重きに置く戦闘をしないで済むようになったのだ。

 どうやらアリウスクラウンがクンネルに助言したらしい。

 なんでも、神魔大戦でカナメと戦った時から着想を得たらしい。


『──宏人。そこを右曲がってくれ。そしたらしばらく直進だ』


「了解だ、カナメ」


 俺たちが今からすべきはカナメの救出だ。

 敵は神人と、神人をも超える上位神。

 俺は強くなった──が。

 ……それでも、さすがに神人レベルを二人なんか相手出来ない。

 『メンバーズ』の最高戦力がカナメである以上、なんとしてでもカナメの封印を解かなければならないのだ。

 カナメからの指示のもと俺たちが前進していると、瑠璃は急に立ち止まり、ぽつりと言った。


「……二人。『読心』に引っかかったわ」


 瑠璃の言葉の数瞬後、その二人は向こうから姿を現した。

 後方から、攻撃と共に──。


「おおー!すげーなアリウスクラウン!今の止めるか」


「……。一度お前と手合わせしたいと思っていた。ちょうどいいな」


「久しぶりね──智也、祐雅」


 アリウスクラウンが一人で、智也のナイフと、祐雅の勇者剣からの攻撃を防いだ。

 俺は、そのまま二人に向けて『バースホーシャ』を……!


「──『読心』の対処法は、至極簡単だ」


 まるで、水面の凪のように。

 凪は静かに、いつの間にか俺の背後にいた。


「──ッ!」


「何も、考えなければいい」


 凪の手から、旋風が巻き起こる。

 これは、ニーラグラのカミノミワザ──『旋』。

 俺はそれを、既に起動用意していた『バースホーシャ』で相殺した。


「……まさかお前が、前座で出てくるとはな」


「面白いことを言うな宏人。俺は勝てる見込みのない戦いはしない主義だぞ」


 アリウスクラウンが智也と祐雅、俺が凪と対面している中、さらに二つの気配が接近した。

 ……まずいな。

 『メンバーズ』の主な戦闘員である俺とカナメ、セバス、アリウスクラウンが対応出来ないとなると、残るは瑠璃とクンネルと傀羅しか……。

 ……そういえば傀羅の実力を知らないのだが。

 俺がそんなことを考えていると、その二人は智也と祐雅みたく奇襲してくるのではなく、堂々と姿を現した。

 

「──久しぶりっす。ここで会ったが百年目……まじ許さねえっすからな向井宏人ぉ!」


「……お久しぶりです、宏人様。アスファス様は健在ですか?」


 こ、この二人は……!


「……誰だ??」


「流音っすよぉ!あなたが罠に嵌めた可哀想な女の子っすよぉ!」


「……星哉ですが、お忘れですか……?」


 まずいな。

 星哉はともかく、女の方はまじで分からん。

 取り敢えず、瑠璃たちの方を見る。

 すると、傀羅とクンネルが前に出た。


「……お前ら、死ぬなよ?」


「問題ない。そもそもこの体は那種のだ。余計慎重になるというもの」


「私だって一応戦闘系異能だからな。もちろん、最重要任務である『能力』調整も忘れてはいない。この役割がある以上、お前たちに迷惑をかけぬよう、死なないよう注意する」


 そのまま傀羅は星哉に、クンネルは流音のもとへ歩む。

 俺は、思わずため息が出た。


「あいつら、一体どこからあんな自身湧いてるんだろうな」


 俺の呟きに、真正面の凪が答えた。


「お前はもっと酷かったぞ。自分のことは棚に上げるのか?」


「……お互い、組織のリーダーの立場になると物事がままならないものだな」


「いつから俺がこの寄せ集め組織のリーダーになったんだ。お前こそ違うだろ。『メンバーズ』のリーダーはカナメのはずだ」


「まあいいじゃねぇか。──お互い、体の中に神入れてる同士さ」


 凪の表情が、固くなる。

 ここのところ会話していないせいか、凪の喜怒哀楽の変化が分からない。

 常に無表情の凪の感情の波は、今まではひと目見ただけで分かったのだが……。


「──もう、会話は終わりだ。殺すぞ、向井宏人」


 突如、凪の冷酷な瞳が俺を見据える。

 

「お遊びは終わりだ」


 そして、凪は両手を合わせた。

 それは式神を構築する祈り。

 俺も、凪と同時に両手を合わせる。


「……凪」


「なんだ」


「お前──なんで一人で俺の相手になると思ってんだ?」


 刹那──凪の式神は、跡形もなく呑み込まれた。

 やがて完成するは、『変極廻在』。

 それは、白色の地獄──俺の『変幻自在』と、アルドノイズの『極廻界』を『変化』で融合した、異端な『世界』。

 そんな『世界』は、いともたやすく凪の『世界』を破壊する。


「──ッ!」


 常に無表情の凪の顔が、驚愕に染まる。

 そうだ、そういえば俺はまだ凪の前で本気を見せたことがない。

 ちょうどいい。

 この機会に、はっきりさせてやろう。


「──『時空放射』」


 *


「……セリウスブラウンさんたちは、本当に僕たちに勝てると思っていますか?」


「どういうことー?」


 セバスはフィヨルドの腹から勢いよく手を抜く。

 鮮血が、セリウスブラウンの顔に盛大にかかった。

 

「……おじさんの血、まずっ。まあおじさんは関係ないだろうけど」


「カナメくんを封印したら勝てると思っていたりしますか?それはさすがに浅はかだと思って」


 セリウスブラウンは「ふーん」と言い、フィヨルドをつんつんとつつく。

 当然、フィヨルドは動かない。

 そんなことより、セバスはセリウスブラウンの腹部に目をやった。


「……。あなた、回復系統の異能持ってましたっけ」


 セリウスブラウンの『能力』は『無効』。

 『無効』……。

 セバスは、無効の対象について今一度思考する。


(てっきり『適応』と同じ類いと思ったけど……もしこれじゃああっちの方が断然格上の異能だ)


 セバスは考察した『無効』の本質を考え……その手に力を込めた。

 セリウスブラウンは、楽しそうに目を細める。


「私は別にどっちが勝てるとかそんなのどうでもよくて……もう一度きみと戦いたいって思ったからここにいるんだよ?」


「傍迷惑な話ですね。──カール。復活遅い」


「カカカ!我が死んだのは貴様のせいだろう!」


 セリウスブラウンの笑みが深まる──


「鎌、探す時間あげようか?」


「結構ですよ。あなたを殺してからゆっくり回収しますので」

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