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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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231話(神サイド) 生存決戦②


 カールにフィヨルドを抑えさせ、セバスはセリウスブラウンと激突する。

 セバスの鎌を、セリウスブラウンは器用に短剣で弾く。

 

 式神吸収を行ったセリウスブラウンは、驚異的な身体能力でもってセバスを追い込んでいく。


「……ッ。カナメくんが言っていた、幸太って人もこんな感じなんですかね。やはり戦いは身体能力がモノを言う時もありますね」


「知らないけど、あの化け物と一緒に戦った方がいいんじゃなぁい?」


 セリウスブラウンは楽しそうに、セバスの腹部に拳を叩き込んだ。

 セバスはそのままセリウスブラウンの腕を掴み──直で放つ。


「『光線』」


 しかし、まるでダメージがない。

 セバスの脳裏に、アリウスクラウンの言葉が流れる。


『手で触れた『能力』を無効化する『能力』……。ようは、発動条件は宏人の『変化』みたいなものと思ってもらっても問題ないわ』


(『能力』を無効化する『無効』……。そして驚異的な身体能力。厄介だなぁ)


 セバスは『光線』を放った反動に身を任せ、そのままセリウスブラウンと距離を取る。

 しかし、それをセリウスブラウンは許さない。

 後ろに退がるセバスに、追撃を仕掛ける。


「なかなか面倒くさいですね」


「きみこそね。ほんとうに、しぶとい」


 セリウスブラウンの短剣がセバスの脇腹を深く抉る。


 セバスは自己蘇生出来るとはいえ、回復能力は持っていないのだ。

 五分のインターバルという制限がある以上、そう簡単に死ぬことも出来ない。

 それにカールという味方を失うと、数的不利に陥ってしまう。

 

 セバスはそのことを危惧しているからこそ、溢れる血を素早く簡単に止血する。

 

(まずは、あの短剣だ)


 セバスは迫り来るセリウスブラウンの攻撃を逃げに徹し、なんとか致命傷は避ける。

 もちろん反撃は忘れず、鎌を駆使するがセリウスブラウンは掠ることなく完璧に見切り回避した。

 純粋な身体能力が、セバスを翻弄する。


「カカカ!楽しそうではないか!」


 そんなセバスに、カールが助太刀する。

 それと同時、やはりフィヨルドも介入してきた。

 再び始まる混戦。

 だが、セバスはこの状況を利用することに決める。

 セバスが死ねばカールも死ぬのだ。

 当然、セリウスブラウンとフィヨルドはセバスを狙い、カールには最低限の防御のみで対処している。


 セバスはこれを好奇と捉え──瞬時に作戦を立て、実行する。


「──む!?」


 セバスはフィヨルドに、自慢の武器である鎌を投げつけた。

 それは意識の想定外をいく攻撃──弧を描いて飛んで行った鎌は、見事フィヨルドに命中。

 フィヨルド本体にダメージが届く前に『ネクロマンサー』で作り上げた鎧に阻まれるが、フィヨルドと鎌は共に彼方へと吹っ飛んでいく。

 これで、セバスは少しの間だけ多対一の状況を作り上げた。

 

 ──だがしかし、丸腰のセバスにやられるセリウスブラウンではない。


 セリウスブラウンは、これこそ好奇と言わんばかりにセバスに襲い掛かる。

 背後のカールを気にしていない点から、ダメージを受ける覚悟でセバスの息の根を止めるつもりなのだろう。

 なにせ今なら、セリウスブラウンはセバスに対して何一つ警戒することがないのだから。


 セリウスブラウンは、『光線』を『無効』するだけで、何の苦労もなくセバスを殺せるのだから。


 ──それこそ、セバスの狙い。


 警戒していないセリウスブラウンの腹部に、セバスの両手が添えられ──!



「──『光線』」


「──ッ!?嘘でしょ……!」



 セバスの『光線』は、見事セリウスブラウンの腹部に穴を開けた。

 なぜ『光線』が『無効』を貫通したのか意味が分からず、セリウスブラウンは大きく目を見開くが──歯を食いしばり、セバスの顔面を足蹴り。

 セバスもフィヨルドと同様彼方へと吹っ飛ばされ、またセリウスブラウンも背後より襲い掛かるカールの『アンダー・テイカー』で遠方へ消えた。

 セバスは空中で自害、カールの肉体と意識をチェンジする。



 ──すると目の前には、再度死体の鎧を構成し着込んでいるフィヨルドが。



「……フィヨルド、さんでしたっけ?会うのはこれが初めてですね。僕たちに保護されていたくせして、恩を仇で返すとはまさにこのことですよ」


「当然、悪いと思っている。だが、私を助けたのは山﨑智也だ。彼も同様、我々の組織へと寝返った」


「だからなんですか?あと、あなたを助けたのは智也くんだけじゃなく、火絶傀羅くんものはずです。彼は、僕たちの組織に所属していますよ」


「……だからなに……か。貴様の言う通りだ。今私が言ったことは、全て言い訳だ。──だからなんだ?私は、こちらの組織で私の夢が叶うと思っているからこそ、こちら側に立っているのだ」


「そうですか。この年にもなって、未だ夢を追い続ける……。なんでしょうか、言葉だけならまだしも、現実にそんなジジイがいるのはただただウザいだけじゃないですか?」


「そうだな、すまない──未だに、少年心を忘れられないものでね」


 そう言いつつ、フィヨルドは駆け出す。


「そうですか──ぜひ、この機会に成長してください。まあ、今から僕に殺されるんでその必要性はあるかどうか知りませんが」


 そう言いつつ、セバスはフィヨルドの攻撃を迎え撃つ。

 死後硬直という自然現象に加え、フィヨルドの『ネクロマンサー』によって少なからず構成を弄られている死体の鎧。

 硬いだけではなく、攻撃力も合わせ持っているようだ。

 それにセバスは──生身で対抗する。


「ほう──それが噂に聞く、『炎舞』による身体強化か?」


 セバスは答えず、フィヨルドの腕を掴み、地に叩きつける。

 背中部分の鎧にヒビが入るが、本体のフィヨルドには届かない。


「死神の復活まで、残り三分強といったところか。それまでに殺さなければな」


(セリウスブラウンの復活もそれぐらいだろうなぁ……。かなりダメージを与えたつもりだけど、あの人体術は多分『炎舞』使ってないアリスさんよりも上だから、絶対そろそろ戻ってきそうだ。それまでに、このおっさんは倒したい)


 フィヨルドの拳を、セバスは紙一重で回避する。

 狙われたのは顔面、頬に一筋の傷が生まれ、鮮血が飛ぶ。

 拳の威力は絶大。

 受けたら一発アウトと思って避けに徹する。

 そんな中、死角からのフィヨルドの足蹴り。

 セバスは『炎舞』を放つが、それでは威力を殺しきれず、受け流そうとするが──それでも尚衰えない威力で、セバスの腕が悲鳴を上げた。


「ッ──!」


 チラリと辺りを見渡しても、当然のように死神の鎌はない。

 おそらく、目を離している隙に更に遠くに飛ばされたのだろう。

 死神の鎌、カールといった武器がない状態で、今ここでフィヨルドを倒さなければならない。


(そんなの──簡単だ)


 セバスはフィヨルドの徒手空拳を、同じく徒手空拳でもって対抗し続ける。

 『炎舞』による身体能力向上と、カナメとの特訓で得た体術で、やっとフィヨルドの重い攻撃に張り合える。

 腰の入ったフィヨルドの重い一撃をなんとか躱し、セバスはフィヨルドの腹に手を添え──『炎舞』!


「ッ──!やはり炎は相性が悪いな」


 フィヨルドの腹部の鎧に穴が空く。

 セバスはそれだけでは止まらず、続けてもう片方の手でその穴に拳を入れる!

 内臓が損傷し、大きく目を見開くフィヨルド。

 当然だ、なにせ今のセバスは『炎舞』で極限まで身体能力が向上している。

 そんな身体の拳だ。

 しかし、フィヨルドは歯を食いしばり、躱された腕を横に薙ぎ払う。

 それはセバスの脇腹に見事命中し──セバスの助骨がバラバラに砕け散る。

 

「──ガ……!ァァァァァァァァァァァァァァ!」


 セバスは文字通り死ぬ気で堪え、セバスらしからぬ雄叫びを上げながら意識を保ち──フィヨルドに反撃する。

 

 フィヨルドの腹部は、追撃を加えたことで露わになっていた。


 そこに、セバスは再度腕を振り上げる!


 ──だが、腹部はフィヨルドも警戒していた。

 腕を振り払ったことで防御体制を取る時間が取れなくなってしまったが、もちろん対策している。


 『ネクロマンサー』。


 これはただ死体を操る異能だ──当然、それでもって攻撃することもできる。


「私にもソウマトウ様を蘇らせるという目的があるのでな──『ネクロマンサー』ァ!」


 それは、螺旋状に渦を巻く死体の濁流。

 それが、今フィヨルドに王手をかけようとするセバスに降り注ぐ。

 物量による、原初的な超攻撃。

 

 『ネクロマンサー』が、セバスを呑み込む──が。



「──『適応』」



 セバスは、『ネクロマンサー』に『適応』した。

 『ネクロマンサー』は、セバスにダメージを与えることなく霧散する。



「ふっ──ここまでか」


「思ったより、強かったと褒めてあげます」



 そして──セバスの拳がフィヨルドの腹を貫いた。



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