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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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226話(神サイド) 決別


──セバスの式神、『死屍累々』。

 

 その名の通り腐敗し切った人骨が散乱する、異臭漂う最悪の『世界』。

 無論この『世界』はセバス自信も嫌悪しており、滅多に展開することなどないのだが……その分異能が強いのだ。

 七録菜緒を見据えていたからこそ展開した『世界』。

 その異能は──カールの覚醒。


「いくよ、カール」


 セバスがそう言うと、カールが出現し──笑う。

 そしてみるみる通常時のカールよりも二回りほどの巨躯へ肥大化し……声を上げて叫ぶ。


「カカカ!我はカールデス・デスエンド!皆殺しにしてくれるわっ」


 普段の死んでいるように虚な状態のカールとは明らかに違う。

 そんなカールを背後に侍らせ、セバスは敵を見据える。

 

「カール。殺すのは目の前の奴だけだよ」


「──はは!は、はははははは!」


 笑うは藍津。

 壊れた人形みたく、小刻みに、されど大声で笑う。


(藍津の『能力』は『必中』……。どんな異能か知らないんだよね。瑠璃さんはアリウスクラウンさんに守ってもらうとして、僕とカールでどう攻めるか……?)


「おやおやぁ?セバス様であろうお方が、俺如き相手を怖がるんですかぃ?」


 セバスの思考を見透かしたようなカールの言葉と同時に──セバスは藍津の首を狙った。

 すると藍津は直前に背後に左手を伸ばし、一言。


「『必中』ぅ!」


「──!」


 セバスの鎌が藍津の首ではなく、後方に伸ばした左手を切断した。

 『必中』は、当てる方だけでなく、強制的に受ける部位の選択も可能!?

 吸い寄せられるかのように藍津の後方にあった手を切断したセバスの腹部が、ガラ空きになる──!


「『必中』ゥ!」


 藍津の腰を入れたアッパー。

 セバスは鳩尾を突かれ、バランスを崩し──そんなセバスの手から、藍津は死神の鎌を奪い取った。


「あひひひひひ。悪く思わないでぇくだせぇ」


 藍津はそのまま死神の鎌で横に一閃。

 セバスの首を狙った攻撃──だが、直前でセバスは後方に飛ばされる。

 

 カールがセバスの襟首を掴み、吹っ飛ばしたのだ。



「待ってカール!ここできみは力を出すんじゃない

!」



 セバスの声を無視して、カールは藍津の正面まで歩む。

 藍津とカールの視線が交差する。


「おやおやぁ?いいんですか、残機如きがしゃしゃりでてぇ」


「──いいわよ。だって背後から奇襲できるからね」


 刹那、アリウスクラウンの回し蹴りが藍津の後頭部に直撃。


「──ごほっ……」


 藍津は白眼を剥き、バタンと倒れた。

 セバスは死神の鎌を拾い上げ、そのまま矛先を藍津の首に添える。


「どうします?」


「どうしますって言われてもね……。瑠璃はどうする?」


「殺さないで。七録菜緒が何を企んでいるのか気になるわ」


 瑠璃はそう言いながら藍津の左手の血止めをする。

 セバスははぁとため息を吐き、『世界』を崩壊させた。

 パラパラと幻想的な『世界』の破片が降る中、セバスは顔を顰める。


(七録菜緒が、藍津を捨ててまで神の間から出た理由はなんだろう)


 菜緒が地上に降り立った瞬間、セバスが『式神』を構築することはおそらく『世界真理』で読まれていた。

 なのにどうして、藍津を捨ててまで時間を稼いだのだろうか。

 人数的にも力量的にも、藍津が勝てる見込みなんて皆無だったのは明らかだ。

 だとしたらなんでわざわざ……。


「まあ、考えても仕方ないか」


 セバスは取り敢えずカナメと合流することにする。

 生存戦争期間中、神人は神の間にて生存戦争参加者たちの監督役として自由を制限されている。

 しかし、七録菜緒を呼び出したように、再度生存戦争のラインを越えることでルール5が適用され、神人が残り一名の以上確実にカナメを連れてくることが出来る。


「てかセバス。なんでさっきカールを止めたの?私が動く必要なかったじゃない」


「ああ、アリスさん。あれは念のためです。創也くんが言ってまして、七録カナメの弱点は、情報は知れるけど実体は知れない、ところだそうです。仮にアリスさんが『世界真理』を持っていて魚を調べたとしたら、水の中で暮らす脊椎動物、的なことしか知れないそうです。だから僕も一応カールの能力は隠しておきました。藍津さんと菜緒さんは繋がってる節がありますしね」


「っへー。なるほどねぇ。……って、いつの間に私はあなたにアリスさん呼びされているのかしら……?」


「ダメですか?実は本名妙に長くて面倒で」


「……別にいいけれど。あなた、嘘を知らないの……?」


「──はい。茶番は終わりよ。行きましょう──カナメを呼びに」


 瑠璃のその一言と共に、セバスたちはラインを超えた。


 *


 凪の一言で、智也と祐雅、フィヨルドが動き出す。

 

「やろうぜ宏人!退屈してたんだよ俺!」


 まずは智也による『バースホーシャ』。

 そうか、こいつはアルドノイズと『契約』しているのか……!

 それに対し俺も両手から『バースホーシャ』を噴出、智也の『バースホーシャ』が掻き消されるだけでなく、智也もろとも炎に包まれる。

 続いて祐雅の剣舞。

 俺は瞬時に虚空より神剣『暗黒龍』を取り出して抑える。

 そんな俺の背後からフィヨルドの掌底打ち。


 ──こいつ、接近戦出来るのか。


 俺は『時空支配』で一瞬時間を止め──フィヨルドの背後から『バースホーシャ』。

 だが『バースホーシャ』はフィヨルドに到達する前に祐雅の勇者剣にて切断、霧散した。



「──いっやー。強いね宏人」



 それを見て、アルベストはパチパチと手を鳴らした。

 その次の瞬間。

 

 俺の右足が切断された。


「──ッ!?」


 今、何が起きた……!?

 動揺する俺の真横に、いつの間にかアルベストが。


「お前、今日二回式神使ってるでしょ?ごめんねー時と場所考えなくて」


 今度はアルベストの手から『サンドライトニング』が打ち出される。

 俺は暗黒龍で切り裂こうとしたが……斬れない!?

 ザックゲインのよりも遥かに重い攻撃に苦戦している間に、俺は背中を切り裂かれた。

 アルベストは、目の前にいる。


「……智也!」


「すまんね。俺の目標ってアルドノイズの解放だからね」


 智也は苦戦する俺を面白そうに笑う。

 本当に、つくづくムカつく。

 俺は『変化』で全身を直し、後退して距離を取る。

 ……だが、まだ足に違和感が──


「ボンッ」


「──ッ!?」


 アルベストが言葉を発した瞬間、俺は膝から崩れ落ちた。

 地を舐める俺を見下し、アルベストは笑う。


「お前の『変化』ってチートだからさ。これはその対処法ってやつ。効くこと分かってよかったよ──じゃあ、さよなら」


 アルベストは、ニコニコと笑いながら俺の元へ歩む。

 俺は立ちあがろうと足に力を入れるが──足が動かない……ッ!?   

 痺れが、体を支配する。

 ……痺れ──電気。


 どうやら、『サンドライトニング』で発生する電気は、『変化』如きじゃ掻き消さないらしい……。


 なら。


「──『バースホーシャ』」


 俺は足の関節から『バースホーシャ』を発射!

 膝下の脚を焼却、そして『変化』で生やすを一瞬で実行──自由に成った身で、そのまま。


「『変化』ァ!」


「──へっ!?」


 俺はアルベストに突っ込む!

 『変化』を宿した俺の手が、アルベストの胸に伸ばされる──!

 

 だがしかし、事はそう上手くはいかない。

 俺の『変化』を知り尽くし、俺の『変化』を育てた男の前じゃ、やはり『変化』じゃ決定打を得ることが出来ないようだ。


「──『模倣』」


「……凪ッ!」


 俺の右手は、アルベストの前に割って入ってきた凪の手によって抑えられた。

 

「アルベスト。無事か?」


「お、おお……。ありがとう凪。いや、マジで。死ぬとこだった」


「お前はまだやるべきことがあるだろ。宏人の件は失敗だ。次行くぞ」


 凪は俺と向かい合いながら、アルベストとそう連絡し合う。


 ……俺の手に、力が篭る。


「……凪。最後に一つだけいいか?」


「……。なんだ」



「お前は、敵か?」


「ああ。敵だ」



 凪は、真っ直ぐに俺を見てそう言った。

 俺は手の『変化』を取り消し、ノータイムで『バースホーシャ』を放つ。

 

 凪の左手が燃え尽き、背後のアルベストまでをも巻き込んだ。


「な……!つくづくやってくれるねぇ向井宏人。このアルベストさん、かなりお前にイラついているぞ?……だが、今日はもう終いだ。僕らにはやるべきことがあるんでね」


 アルベストは無理やり作った笑みのまま俺を睨み……踵を返した。

 それに、智也、裕雅、フィヨルド……そして片手を失った凪が続く。

 智也は笑顔で、裕雅は真剣で、フィヨルドは無表情で俺を一瞥し……アルベストと共に姿を消した。

 

 凪だけは、立ち止まった。


「……俺たちを追わないのか」


「追いたいよ。お前が仲間だったらな。だけどお前──敵だろ?じゃあ、またの機会に殺してやるよ」


 俺の言葉に、凪は小さく笑った。

 それは俺の強がりがバレたからだろうか。


「ああ、そうだな。次会う時が、お前の最期だ──『模倣』」


 凪は再度歩き出し、手を生やした。

 そしてその手を軽く振り姿を消す。



 それを見届けて──俺は倒れた。




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