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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十五章 最終決戦・前編
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225話(神サイド) 敵対


「──なあ、アンタは何がしたいんだよ」


 生存戦争の様子がリアルタイムで映し出されている神の間にて。

 カナメは、菜緒にそう問うた。

 元々五つあった席にはもう二つ空きがある。

 菜緒は二つの席を横目に見ながら口を開いた。


「別にぃ。私は私のやりたい様に状況を操作しているだけ。あんたには関係ない」


 菜緒はため息を吐き、目を細めてカナメを見る。


「なに?私があんたたちの邪魔したら殺す?」


「ああ。そのつもりだ」


「ほんっと、可愛げがないこと。まあいいんだけどね」


 すると菜緒はカナメから視線を外して生存戦争の様子を眺め出した。

 カナメも深いため息を吐き、横目で生存戦争の様子を見る。

 すると、そこには生存戦争のラインを越える宏人の姿が。


「げっ。あいつ突っ走り過ぎだろ!あと四日あんなら瑠璃たちと作戦組んで、その後俺とも一緒に凪に突撃できるだろうが……。ったく」


 カナメがぶつぶつそう言ってると、音を立てて席を立ち上がる──アルベスト。

 アルベストは二人の視線を引きつけながら、堂々と転移門へと歩む。


「……おいアルベスト。何する気?」


「ほんとだよ、アルベスト。私たちは生存戦争の監視役でしょ」


「ハハ。わざと言ってるだろ。監視役はきみら神人で、僕はただのまとめ役に過ぎない。そういうことだ。二人はちゃんと仕事しとけよ?」


 次の瞬間には、アルベストは消えていた。

 

「……あいつ、絶対なんかやるだろ」


「そうだろうねぇ。でもどーでもいいかな。私なんでも知れるし」


「教えろ」


「いやですー。あ、力ずくは無駄だよ?この本私しか読めないからね」


「そんなこともないぜ?うちには人の心を読める奴がいるからな」


「……池井瑠璃、ねぇ。大丈夫だよ──そろそろ殺すから」


 途端、カナメは人差し指を菜緒の頭に添えた。

 カナメは静かに、冷徹な目で菜緒を見下す。


「……あんた、俺に勝てる気?」


「そんなわけないでしょ──神人最強さん」


 カナメと菜緒の視線が交差する──その頃には、既に宏人は『メンバーズ』の本拠地に辿り着いていた。


 *

 

 ──心臓の音がうるさい。

 なんだか、嫌な予感がする。

 凪の居場所は分からない。

 だけど、なんとなく察しはつく。


 裏を返せば、そこに凪がいなければ凪の裏切りは嘘だったことになると言ってもいい。


 そして、着いた。

 俺の、俺たちの帰る場所に。


「……良かった」


 『メンバーズ』の本拠地は、ちゃんとあった。

 凪は、裏切ってなかった。

 焦る気持ちを抑え、俺は建物の中に入る。

 するとそこには、見慣れたみんなの姿が──!



「随分、早かったな──宏人」



 ……リビングに、クンネルの頭を鷲掴みにした、凪が。

 無表情の凪と、苦しんでいるクンネル。


 凪を中心に、リビングは血色で染まっていた。


 ……頭の処理が追いつかない。


 いや、これは違う、理解しないように俺が努めているだけだ。

 思考が、渦を巻く──。


 だって凪は味方でなんでいるここまで一人で?いやありえないだってここには智也や裕雅だって──現実逃避する俺に、視覚情報は正確に現状を教えてくれた。


 飛鳥が死んでいる。

 華も、傀羅も……死んでいる。

 

 言葉が、出ない。

 心臓が、うるさい──!


「……藍津がお前を生存戦争から解放したのか。つくづくあいつはムカつくことをしてくれる」


 凪は手を下ろし、クンネルを投げ捨てる。

 クンネルの出血がひどい。

 今手当しなければ、死んでしまう。

 だけど──体が動かない。

 凪と戦うことを、体が拒んでいる。


「宏人。さすがにお前は邪魔過ぎだ。見逃す事も考えていたが、仕方がない」


 凪が、俺に近付いてくる。

 ──殺気を纏って。

 それでも、体は動かない……!

 なにか、なにかないのか──そこで、ハッと気付いた。


 意図せず『能力』と共に奪い取った、あいつの性格が。


「──『重力』」


「な──」


 凪は驚きに目を見開きながら、地に叩きつけられた。

 

 俺の中の、ニカイキが目を覚ます──!


 *


 凪は必死で体を起こそうとするが、『重力』が強すぎてとてもじゃないが出来そうにない。

 だが、凪に焦りはない。


 なにせ、凪の異能は──!


「『模倣者』」


 凪は『重力』を真似て、平然と立ち上がった。

 そして、浮遊する宏人を見上げる。


「おおー!すっげぇな凪!お前なら出来ると思ってたぜ?」


「……誰だよ、お前は」


 凪は思い出す──ダクネスを。


「『旧世界』」


 途端。

 ここら一帯で『能力』が制限される──!

 宏人はそのまま地に落下した。

 だが墜落の直前に『バースホーシャ』を放ち、勢いを完全に殺して悠然と立つ。

 

 凪と宏人は同時に片手を突き出す。


 凪は思い出す──カナメを。


「『世界花火』」


「『焔』ァッ!」


 ──瞬間、大爆発が巻き起こる。

 『メンバーズ』の屋敷はもちろん、周辺一帯を消し炭に吹き飛ばした。

 

 凪は、ライザーを思い出していた。


「……『空間支配』」


 隔絶された擬似空間の中で爆発から免れたいた凪は、黒い煙を掻き分け宏人の元へ。

 宏人は、クンネルを抱えていた。

 宏人の手が淡く輝いている。


 それは、『変化』。


「……元に戻ったか、宏人。さっきまでのお前はなんだったんだ」


「……うるせーよ。俺だってよく分かってねぇよ。──それよりも!」


 宏人は怒りのままに叫ぼうとし……辞めた。

 そして、泣きそうな顔で問うた。


「なんで、俺たちを……俺を、裏切ったんだ?凪」


「……」


 凪の目が、細まる。


 *


 俺が問うても、凪は答えない。

 少しの沈黙の後、凪は片手を上げた。

 

「……凪?」


 凪は答えない。

 そんな凪に近づいて問い詰めようとしたところ──背後に人の気配が。

 それもこれも一人や二人じゃない……!

 俺は瞬時に振り返った。

 

 するとそこにいたのは──!


 フィヨルドと。


「……アスファスという塵よりソウマトウ様の魂を救済する事を約束してもらったからな。なあ?凪少年」


「もちろんだ。早急に片付けよう」


 智也と。


「おおー宏人ジャン!あれ、この状況って勧誘に失敗したかんじ?凪さんよぉ」


「そうだ。予想通りだ。何も問題はない」


 裕雅と。


「また勇者剣が貰えるとは思わなかったから嬉しいよ凪。俺は、この勇者剣がある限りお前に尽くそう」


「そうしてくれ。セバスの目を盗んでザックゲインの死体から頂戴してきた労力の分は働いてもらわなきゃ困る」


 そして──アルベスト……!


「やあ宏人。ダクネスが生きてた振りだね」


「……おい、凪。これはどういうことだ」


 俺は、震える声でそう言った。

 凪はそれすらも無視して、俺の横を通り抜けアルベストたちの元へ。

 そんな凪の背中に、叫ぶ。


「どういうことだよ──凪ッ!」


 すると凪は振り返らずに、一言。


「お前ら──こいつを殺せ」


 *


「ところで、創也にこの『世界』はバッドエンドだって言ってたらしいけど。どうなの?」


 カナメはもう誰も戦っていない生存戦争の映像を見ながら、菜緒の顔を見ずにそう問うた。

 菜緒は小さく笑う。


「そうね。それはもう着々と。あ、そうだ、ところでなんだけど」


「……?」


「誰が、次の『世界』もあるなんて言ったの?バッドエンドって──最終回のことを指すんだよ?」

 

 カナメの背筋が、凍る。


 *


「藍津のミッション……七録菜緒を殺せ、ねぇ。まったく、無茶言ってくれるわ」


 瑠璃は顔を引き攣らせながら──外と生存戦争の境界へ来た。

 ここを一歩踏み越えれば、神人が姿を現す。

 震える瑠璃の肩を、セバスとアリウスクラウンがそれぞれ掴む。


「大丈夫だよ。菜緒が来ても僕たちがいるし、カナメが来たらそのまま強行突破で抜け出せる」


「なんか胸騒ぎもするし。私もセバスに賛成。さっさとやっちゃいましょ」


「……そうね。やりましょうか」


 瑠璃は、セバスとアリウスクラウンに背中を押されて決意を固める。

 そして、一歩踏み出す──その瞬間。



 七録菜緒が、天より舞い降りた。



 刹那、セバスは両手を合わせ、アリウスクラウンは『炎舞』で身体能力を向上させる。

 まさに一瞬の出来事。

 だがそれは、菜緒たちも同様で──!


 セバスの『世界』が菜緒を包み込む寸前、突然藍津が姿を現した。


「──ッ!」



「セバス様、瑠璃様、アリウスクラウン様。すみませぇん──これ、罠です」



 藍津はそう言うと同時に菜緒の胸部に手を置き──力一杯後方に吹っ飛ばす!

 菜緒の顔が、笑みに染まる。


 七録菜緒が、逃げる──!


「ま、待ちなさい七録菜緒!」


「瑠璃ちゃん、だっけ?早く死んでね」


 そうして、セバスの『世界』は藍津を呑み込んだ。

 隔絶された『世界』の中で、瑠璃は歯噛みする。



「さぁ──始めましょうかぁ、御三方」



 そんな瑠璃たちを嘲笑うかのように、藍津は楽しそうにそう言った。

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