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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十四章 続・生存戦争編
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223話(神サイド) 過去の遺者たち②


 ザックゲインは雷を身に纏いながら疾く駆ける。

 確かに素早いが、『未来視』のお陰でザックゲインを正確に捉えられるのだ。

 俺はザックゲインの剣を『暗黒龍』で受け止める。


「めっちゃ進化したね宏人!」


「お前みたいに死化してないからな」


 俺はザックゲインを振り払い──それと同時に『バースホーシャ』を撃つ。

 ザックゲインは苦い顔をして勇者剣で『バースホーシャ』を斬り裂く。

 本来なら『適応』で対処出来るところなんだろうが、ザックゲインにはそれが出来ない事情がある。

 それというのも、俺が瞬時に『時空放射』を撃てるからだ。

 無論今回も例外なく撃ち込み、ザックゲインの『適応』が相殺する。


「めんどうだな」


 速度で翻弄してくるザックゲインを俺は追いかける。

 『バースホーシャ』を足元から噴射し瞬間的なスピードは出せるが、やはりそれではザックゲインに追いつくことは出来ないようだ。

 追いかけることを諦め、俺はゆっくりと地に降り立つ。

 スピードが今後の課題だな。


「……ねぇ宏人。やる気ある?」


 ザックゲインが落胆半分怒り半分でそう聞いてきた。

 まあ、そうだな。

 本音を言わせてもらうとすると。


「お前なんぞやる気出さなくても勝てる──『エンチェンジ』」


「──ッ!?」


 俺が唱えると──『変化』が渦を捲く。

 そう、これは『変化』と『エンブレム』を融合したカミノミワザ。

 『エンブレム』の様に噴出可能な『変化』が、ザックゲインを襲い──ザックゲインを捕らえる。

 上位七人たちが同様しながらも動き出す中、俺は最後にザックゲインと目を合わせた。


「遺言は?」


「あはは。それ、この前死んだ時も聞いたよ」


「そうか。それで?」


「うーんそうだなぁ。まあ取り敢えず──僕を舐め過ぎ」


 瞬間、『エンチェンジ』の効果が途切れる。

 これは……『適応』か。


「『時空放射』」


「『雷神』ッ!」


 カミノミワザ同士がお互いを喰らい尽くす。

 神人よりアルベストの方が格上なことから、ザックゲインの『雷神』は『契約』の産物だとしてもかなりの威力があるらしい。

 

「『サンドライトニング』」


「『バースホーシャ』」


 俺とザックゲインがカミノミワザを押収する中、再度上位七人が動き出す。


「ケルベロス。殺れ」


 俺が一言そう言うと、ケルベロスは咆哮を上げながら上位七人に牙を剥く。


「ちょ、ちょっと待て──!」


 すると一瞬で花哉を喰い殺した。

 やはり、俺のケルベロスのレベルはかなりのものだ。

 そして既に、もう一体のインターバルも終了している。



「解放──暗黒龍」



 ケルベロスとはまた違う、この世のものとは思えない異色の咆哮音を轟かせながら、この地に降り立つは黒き龍。


 ザックゲインと上位七人が、ケルベロスと暗黒龍の目を掻い潜って一斉に俺の元へ。

 ……以前までの俺だったら、この状況は詰んでいただろうに──今なら、負ける未来が見えない。


「暗黒龍──『リンク』」


 俺と暗黒龍が、異能という楔で繋がれる。

 『エンチェンジ』を単体必殺攻撃というのなら──これは、全てを無に帰す全体必殺攻撃。


「『黒焔』」


 アルドノイズの必滅の業である『焔』と、神剣『暗龍』に宿るソウマトウの残穢の融合能力。

 俺が淡々とそれを発動すると、途端に『世界』が暗く黒くなる。


「シェリカァ!絶対に私を最優先で救えぇ!」


「はぁ!?何言ってのよマルフィット!こんなの……こんなの回復したって意味ないじゃない!」


「あー死んだ。『天使』が泣いてる……」


「あっはははははは!宏人すげぇよ!マジで勝てないや!」


 ドス黒い焔が全てを呑み込み──上位七人たちは呆気なく消滅した。

 途端、『世界』が崩壊する。

 その皮肉な程綺麗な景色を楽しみながら、俺はケルベロスを仕舞い、暗黒龍を剣に戻した。

 ……アルベストと戦う前にアルベストの『式神』を体験出来たのは僥倖だな。

 そう思いながら、俺はカルマの元へ歩む。

 最後に話したかったため、生かしたのだ。


「……カルマ。お前、記憶は?」


「は、はぁ!?え、私生かしてもらえるならなんでもする!ねぇ、私何すればいい!?何をしたら──え?」


 カルマの胸に、暗黒龍を突き刺した。

 口から垂れる血を他人事の様に眺めるカルマに、俺は淡々と一言。


「カルマを、穢すな」


 俺が暗黒龍を捻ると、カルマは一瞬で絶命した。

 俺の知ってるカルマは、こんな、醜くない。



「……そうは思わないか?──ザックゲイン」



「あはは……あちゃーバレちゃってたかぁ。このまま逃げようと思ってたんだけどねぇ」


 そうぼやきながら、ザックゲインが姿を現す。

 

「嘘こけ。気配隠す気なかったろ」


「まあ本来なら隠すつもりだったんだけどねぇ……ほら、宏人に見られてたから」


 ……ああ、見ていたよ。

 俺がカルマを敢えて生かすために開いた『黒焔』の隙を、ザックゲインも割り込んで助かっていたことを。

 

「……俺とお前の差が分からないか?大体他人のモノで、式神を使わないと大半の能力が使用できないが俺はもう神人クラスだぞ。お前如きが相手になるわけないだろ」


「おっと、それはちょっと早計過ぎない?だって僕アルベストと『契約』してるし」


「……お前。まさか」


 ──ザックゲインの気配が変わる。

 いや、これはザックゲインのではない。

 ザックゲイン自体の存在が、ナニかに変貌しようとしている──!



「アルベストに──『適応』」



「──ッ!?」


 ザックゲインの姿が、遂にはアルベストに──そう思った時には、俺の体は雷で焼かれていた。


「『雷神』」


 いつの間にか再度展開されている『雷撃豪雨』。

 俺は『変化』で体を修復しながら立ち上がる。


「さぁ、本気といこうか──宏人ォ!」


 ザックゲインは、楽しそうにそう叫ぶ。

 ……ザックゲインのアルベスト化は、おそらく『契約』で手に入れたアルベストのカミノミワザを利用して、『適応』により一時的に完全なアルベストとしてこの肉体を手に入れたのだろう。

 だが、あくまで一時的。

 これは初期の頃の俺の『変化』と同じ原理で、この状態を長続きする事は不可能。

 瞬間的で絶対的なアルベストの力。


 ──自然と、笑みが溢れる。


「そうだな。アルベスト戦の練習といこうか」


 俺も再度極犬・ケルベロスと暗黒龍を顕現。

 俺の体を、やっと己の全力を出せるという爽快感が駆け巡る。

 ケルベロスと暗黒龍の咆哮と共に、俺とザックゲインは動き出した。


「サンドライトニング」


「──ッ!」


 ギリギリ視認は出来るが、回避が追いつかないほど一瞬のザックゲインの斬撃。

 俺の体に、いくつもの切り傷が生まれる。


「はっえー!アルベストはっえー!」


「……いつかを思い出すな」


 俺は苦笑いをしながら、『焔』を発動。

 辺り一面を爆炎の地獄と化すが、ザックゲインは全身から放電。

 不快な電撃音と共に、地獄が塗り替えられる──!


「──『輝』」


 それは、アルベストの必滅のカミノミワザ。

 ソウマトウの『闇』、アルドノイズの『焔』、アスファスの『凪』と同等の、アルベストだけの絶対的異能。

 

「宏人。せっかくだしアドバイス──アルベストの異能じゃ、アルベストには通用しないよ?」


 ザックゲインは、アルベストの姿で俺を見下す。

 俺は手を上げ、ケルベロスと黒龍に命令する。


「殺すぞ」


 ……これは、アルドノイズのだろうか。

 それとも、アルドノイズを下に見られた俺のだろうか。

 怒りの衝動と共に、俺は再度繋がる──ケルベロス、暗黒龍と。


「『リンク』」



「はっはー。お互い、これでやっと本気を出せるってものだね」



 嵐吹き荒れる神の『世界』の中、ザックゲインは、相変わらず楽しそうにそう言った。




 

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