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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十四章 続・生存戦争編
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222話(神サイド) 過去の遺者たち①


 雷鳴が轟き、土砂降りの雨に体を打たれながら──俺は上位七人と対峙する。

 

 ザックゲインが式神を展開する中、マルフィットは式神を顕現している。

 カルマはダクネス戦を思い返す『天使』を使い、花哉の手にはスリーアウトの異能が込められている。

 そして特に厄介なのが……シェリカ・バーネットによる、半永久的な超速再生。


 これは、俺も式神を展開して本気を出さなければ勝てない。

 だがしかし、ザックゲインの本来の式神である『無味無臭』の前では、どんな式神も展開することを許されない。

 

 だから俺は──!


「──こんな時に考え事かい?宏人」


 刹那、ザックゲインの鋭い一振りが俺の体を掠める。

 下手な攻撃は全て回復される以上、一撃で殺すことが絶対条件。

 四方八方より襲いかかってくる上位七人たち。

 囲まれた場合、『バースホーシャ』を散乱させることが最も効率的で、確実的な手段だ。

 だがそれではシェリカの完全回復圏内。


 なら──取捨選択だ。


「──はぁ!?」


 叫び声を上げるのは、カルマ。

 俺は花哉の『壊魂』とマルフィットの『創造』によって作られた銃、ザックゲインの剣舞をその身に受けながら── 一点集中。


「カルマ。お前は俺の中の記憶が綺麗なまま死んどけ──『バースホーシャ』」


 俺の手から放たれる最大火力の爆炎は、いとも容易くカルマを──!

 包み込む直前に、カルマの翼が鋼鉄と化す。

 しかしそれでも『バースホーシャ』は翼を貫通しカルマに届くが……瞬時にシェリカに回復された。

 俺は体を『変化』で直しながら、マルフィットを睨む。


「……お前の『創造』か」


「はい。私の『創造』は単純な構造の物質ならいくらでも創造可能ですからね。大丈夫ですか?カルマ」


「お陰様で……。ていうかちょっとこいつ、いきなりレディ焦がすとかどんな趣味してんの!?」


 カルマは怒りと共に、辺り一面に顕現させる──光の柱を。

 そしてカルマが俺を指差すと、それらは一斉に俺に向かって発射された。

 俺は『バースホーシャ』で薙ぎ払いそれに対処しながら、同タイミングで切り掛かってきたザックゲインに一閃。

 だがザックゲインは俺の剣を簡単に受け止める。

 しかし──それだけでは終わりではない。


「背中がガラ空き」


「──ッ!?」


 直後、背後より放たれる、マルフィットの『砲弾』──!

 砲弾は俺の背中に着弾し、俺は自分の骨が砕ける音を聞きながら地を転がる。

 

 そして──ザックゲインは紡ぐ。


「『雷神』」


 それは極犬や水妖の様な、純神が操る数の暴力──およそ十束はある雷が渦を巻き、一斉に俺に落ちてくる!

 俺は『バースホーシャ』をまとめて盾にして防いだが、やはり純神として上位に当たる神の、加えて式神の効力もあってか掻き消すことは叶わなかった。

 しかし、俺だって『変化』で半永久的に回復出来るのだ。

 

「あはは。ジリ貧ってやつだね」


「どうだかな。現にお前は今本気出してないだろ」


「そりゃそうだよ。ただでさえ五対一で宏人の勝ち筋が見えないってのに、そこで僕が本気出しちゃうともう勝負にすらならないっていうか?」


「そうか。なら先に俺が本気を出してやる」


 俺はそう宣言すると、さっそく準備に取り掛かる。


 

 ダクネスと戦った後、俺は必死で強さを求めた。

 創也ももういない以上、俺は『時空放射』を継がなきゃならない。

 時空移動には既に『時空放射』が結晶化されたものがあるらしいため必要ないのだが、それでも……創也が生きていた証くらいは、せめて俺の中には残したかったのだ。

 そして俺は、俺とアルドノイズの式神を融合して創った『極変廻在』の中でなら、俺の『眼』に宿る『時空放射』を制限なしに使用することを可能することに成功した。

 だがしかし、式神は展開出来なければ意味はない……。

 だから俺は何度も頭の中で思い描いた。

 何度も何度も何度も。


 

 カナメと戦った際にライザーが使っていた様な──『式神吸収』を。



「この初お披露目はアルベストに魅せる予定だったが……狂ったな──式神吸収」


「──ッ。おほっ。いいねぇ!」


 全身を包み込む万能感が全身を駆け巡る。

 当たり前だ。

 なにせ、一つの『世界』が俺の体に広がっているのだから。


 

「──『時空放射』」



 俺の『眼』に時間という概念が収束し──発射。

 

「──ッ!?」


 狙うは、マルフィット。

 だがマルフィットに直撃する寸前、やはりこの男が割って入る。


 『適応』──ザックゲインによって。


「……僕も本気出さなきゃね宏人。みんなも僕についてきて」


 ──次の瞬間、上位七人が一斉に動き出す。

 

 俺は『変化』を変更──異能を『重力』に切り替える。

 そして俺を中心に展開される超重力力馬。

 ザックゲインは今さっき『時空放射』に『適応』していたため、ラグがある適応は追いつかない!

 上位七人が地に横たわる中、俺はザックゲインの元へ駆け出す。


「あはは。宏人、うえうえ」


「は──?」


 瞬間──光の柱が降り注ぐ。

 俺は天に向け『バースホーシャ』を発動し相殺するが──直後に振り落とされるは『雷神』!


「──カハッ……!」


 ……油断した。

 カルマの『光の柱』とザックゲインの『雷神』の発動元は、どちらも使用者の位置に影響されない……!

 唯一救いだったのが、やはりそれでも威力が落ちていること。

 しかし感電により一瞬俺の意識が途切れたことにより、『重力』が切れる。

 そして動き出す上位七人。

 『変化』が使えない今、この状況はまずい……!


「来い──極犬・ケルベロス!」


「ガォォォォォォォォォン!」


 鼓膜を突き破る様な大音量で、三ツ首の狼が君臨する!

 暗黒龍のクールタイムまでもう少し、ケルベロスと共に蹂躙する。

 

 俺の使役するケルベロスと暗黒龍には、とある異能が付与されている。

 それは『呪い』を持つセバスと協力して実現に成功した、『呪い』の応用。


「ケルベロス。『リンク』」


 『リンク』により、俺とケルベロスは一心同体となる──そして限定的に獲得する、『エンチェンジ』。

 『変化』と『エンブレム』を犠牲にする事で、新たな異能が産声を上げる。


「──ッ!?」


 ケルベロスが、ザックゲイン以外の上位七人を吹き飛ばす。

 俺はなんとか立ち上がり、悠然と佇むザックゲインと目を合わせる。

 

「きみたちさ、ちょっと待ってて。ここからは僕一人で宏人と戦うよ」


「は、はぁ!?首魁であるあなたがいなくなったらこの組織は終わりでしょう!考え直すべきです」


 マルフィットはそう叫びながらザックゲインの肩を掴む。

 すると、ザックゲインの冷たい瞳がマルフィットに向けられた。


「マルフィット。お前は一つ勘違いをしている──僕らはただ世界から選ばれた上から七人の人間で、ただ一緒に蘇って、ただ共に居ただけだ。僕らには、肩書き以外は何の接点だってありゃしない」


 ザックゲインはそう言うと──俺に剣を向けた。


「そう言うわけだから。やろうか、宏人」


「後悔するなよ。後で全員で襲い掛かればよかったなんてほざいても遅いからな」


「冗談。僕ってほら、一人の方が強いじゃん?」


 ザックゲインがそう言い終わると同時、俺は『バースホーシャ』を発動する。

 本来これは目眩しのために使うような小技じゃないのだが……まあ戦ってる奴の次元が違うから仕方がない。

 幸いなことに、他の上位七人はケルベロスに監視させているため俺はザックゲイン一人に集中出来る。

 超高熱の『バースホーシャ』によって発生した煙が充満する。

 その間に蓄えるのは──『焔』。

 火力という点においては俺の持つ異能のトップに入る、アルドノイズの切り札。

 それを、ザックゲインがいた場所に放つ!

 『バースホーシャ』によって発生した炎を喰らい、『焔』は大爆発を発生。

 辺り一面に衝撃が走り、上位七人の面々も吹き飛んでいるくらいだ。

 

 煙すらも喰らい尽くす『焔』の一撃。


 だがしかし、視界の晴れた先にザックゲインはいない。

 なら、上。


「あっははははは!えっげつないねぇ宏人!」


「……」


 ザックゲインの瞬足も、未来視を手に入れた今となっては余裕で対応出来る。

 


 さあ、ザックゲイン。

 お前で、俺がどこまで強くなれたのかを、試させてくれ──!



 俺は油断すると笑ってしまいそうな頬を押さえつけながら、ザックゲインと対峙する。

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