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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十四章 続・生存戦争編
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218話(神サイド) 生者の行進⑥


 モルルが黒龍と戦っている中、ライオは向井宏人と対峙する。


「見たところ、お前の『能力』は遠視の類だろ」


「お、おう。よく分かったな……」


「そりゃあな。あんだけ距離離れてんのに視線を感じたのは正直ビビった。お前の『能力』は、仲間になればすごく役に立つだろうな」


「……それでもお前自身には仲間にする気はないんだろ?俺とモルルは大いに賛成なんだけど」


「ああ。お前たちを仲間にするより、殺した方がメリットがあるんでな。改めて言うよ──すまないな」


 そして、宏人は手を淡く輝かせる。


「……!」


 ライオは全神経を宏人の手に集中する。

 あの手に捕まれば、一瞬でゲームオーバー。


 潰れた左目に触れ──『千里眼』を右目に全て移行する。


 ライオの右目が、爛々と鮮やかな緑色に輝く。


「──ッ!?」


 『目』の異能者であるライオだから見えた、宏人のスピード。

 ライオはギリギリのところで宏人の手を回避。

 そして避けた勢いでそのままに放つ──!


「『光線』!」


「ッ」


 ライオの目から、至近距離で宏人に『光線』が炸裂。

 だが宏人もそれをギリギリで交わし、後ろに飛んで距離を取った。

 

(この距離で回避はあり得ない……。絶対何かしらの『能力』だ)


 ライオはごくりと唾を飲み込む。

 宏人の『目』も、鮮やかな蒼色に輝いている──!


「……俺のこの『眼』は未来が見える。といっても、本気出しても精々三秒後辺りまでだが」


 十分反則だよという言葉を呑み込み、ライオは苦笑いする。

 今のはライオなりにかなり自信のあった一撃だったのだ。


 昨日戦ったプライネットのレーザービーム。


 確かに昨日は一度しか撃てなかったが、今はいくらでも撃てる気がする。

 おそらく、ライオの『千里眼』は戦っている時にのみ効果を発動する特殊異能。

 

 これは直感だが──保有出来る『能力』は、千を超える。


 ──ライオの『眼』が、半分だけ蒼色に染まる。


「『時空放射』……?か、カミノミワザ!?」


 ライオは宏人の『眼』をコピーし、自分の目にも数秒先の未来が見えるようにする。

 

「お前、大分危険だな」


 宏人は再度手に『能力』を込め、ライオを殺そうとする──直前。

 危険を察知し頭を下げる。

 すると、頭の上をブンッ!と鎌が駆け抜けていった。


「モルル!」


「ん。ライオ、大丈夫そうで良かった」


 モルルの背後で、黒龍が衝撃音と共に倒れる。

 宏人は剣に戻った黒龍を引き寄せ、虚空に戻した。

 警戒するライオとモルル。

 宏人の片手が、上がる──!


「『重力』」


「「──!?」」


 刹那、二人とも地面に強く叩き落とされた。

 モルルは体中に力を込めなんとか立ち上がろうとするが、ビクともしない。

 だが、まだ宏人からの攻撃がこない。

 モルルは恐る恐る顔を上げると──ライオの『光線』が、宏人を吹っ飛ばした。


「え──ライオ!?」


 そう──ライオは、立っていた。

 この重力の中、モルルを庇う様にして。

 付近の木に打ち付けられた宏人が、よろよろと立ち上がる。

 そして、みるみると傷が塞がっていく。

 これが、向井宏人の手の『能力』──!


「お前、『重力』をコピッたか」


「おう。次はあんたのその手の『能力』ももらってやんよ」


 ライオはモルルにも『重力』を施し、モルルから『重力』の効果を打ち消す。

 

 ──対象に状態異常を施す『能力』は、同じ『能力』で相殺出来る。


 ライオはそう確信する。

 実際まったくその通りで、ライオは何も間違っていない。

 ただ一つ、ライオが勘違いしている事といえば──これで勝利を確信したことである。


「式神展開」


 宏人が両手をパンッと併せる。

 戦闘経験が浅く、かつ体験したことのないライオには分からない仕草と言葉。

 モルルの顔が、悲痛に染まる。


「『変極廻在』」


 地獄の様な真っ赤な大地に、どこまでも続いてそうな蒼い宇宙が広がる、何にでも成れて、何でも出来る地獄──『変極廻在』。


 これは、ダクネス戦が終わった後に宏人が創り出した新しい『世界』。

 

 宏人の『変化自在』とアルドノイズの『極廻界』を併さった、異質な『世界』。

 その中央で宏人は悠然と佇む。


「お、おいモルル……なんだよこれ!?」


 まず『式神』の存在自体を知らなかったライオは、本能的に恐怖を覚えるこの『世界』に震え上がる。

 

「……」


 そんなライオを見て……モルルは一歩踏み出す。

 鎌を背に掛け、宏人を睨む。


「も、モルル……?」


 それはいつかも見た光景。

 ライオの目の前には、いつになく真剣な表情のモルルが。

 モルルを守るために強くなることを誓った自分が、強敵を前にモルルに守られている。

 この状況は、堪らなく悔しい。


 だが──ライオは知っている。


 モルルは、一人の時が一番強い。


「ライオ。いってくる」


 ──モルルの背後に、光の精霊が顕現する。

 これは『生神の鎌』の異能である、『生神顕現』。

 光の精霊──生神は、顕現するなり背後からモルルを抱きしめ、一体化する。

 そして跳ね上がる、モルルのオーラ。

 神を纏いし巫女たる少女の、本来の強さが顕となる。


「──生神……死神の対の神か」


「あなた……アルドノイズを取り込んでる?生神がすごくそう叫んでる」


「ああ、その通りだ。どうする?降参するか」


「ううん。ちゃんと殺す」


 モルルはそう言い──両手を併せる。


「──ッ」


 それに、宏人は少なからず驚く。

 展開ではなく、顕現。

 宏人も未だ到達していない、式神の応用。


「式神顕現──『生神』」


「────!」


 生神は顕現すると同時に声にならない叫びを上げる。

 その叫びは体中を震撼させ、この『世界』に反響した。


 ──そして、モルルと生神は同時に向井宏人に襲い掛かった。

 生神もモルルの鎌とまったく同じのを手にしており、二本の鎌が宏人に繰り出される。

 

 両方向からの回避不能の一撃。


 そんな中宏人は、何も持っていない両手でそれを迎え撃つ!


「ふんっ!」


 無謀な宏人を嘲笑うかの様な、モルルと生神による強烈な一撃。


 しかし──その一撃は、二人とも弾かれて終わる。


 宏人の両手には、いつの間にかそれぞれ武器が。


 右手に神剣『黒龍』。

 左手に神剣『暗龍』。

 

 宏人は、楽しそうに笑う。


「いくぞ」


 刹那、宏人の剣とモルルの鎌が激突する。

 辺りに振動のインパクトを撒き散らしながら、二人は互いの技を繰り出す。

 入る余地のない二人の戦いを眺める生神に向かって、宏人は神剣『暗龍』を投げつける。


 ──避けろと叫ぶモルル。


 だがもう叫んだ頃には遅く、生神はモルルの避けろの意味を分からないまま暗龍に踏み潰される。

 ノータイムでの龍の顕現。

 宏人は、神の力を神以上に引き出していた。


「……!」


 宏人の手に持つ得物が神剣『暗龍』だけになったとはいえ、モルルは顔を苦痛に歪ませながら防御に集中する。

 防戦一方で、攻め入る隙がまったくない。

 そして背後に忍び寄る、暗龍の存在。


 ──モルルは、覚悟を決めた。


 モルルを不安げに見つめる、ライオの視線をその身に受けて。


 モルルの『眼』が、紅く輝く──!


「『破壊光線』」


「──ッ!?」


 モルルから繰り出される極太ビームは、目の前の宏人だけでなく、背後にいた暗龍でさえも消し飛ばした。

 

 これが、モルル・ヘーゲルの『能力』。


 全ての『能力』を消費し一つに収束し放つ『破壊光線』は、一度撃ったら一週間の冷却期間がある。

 そのコスパの悪さは他の『能力』とは群を抜いているが、その分威力はとんでもない。

 いくら宏人の様な超級異能者でも、掠るだけでも木っ端微塵になってしまう──そんな『能力』。

 

 煙が晴れ、目の前が見える。


 ──そこには、無傷でモルルを見据える宏人の姿が。


「な、なんで……!」


 困惑するモルルをよそに、宏人は唱えた。

 宏人の中に眠る、地獄の王との秘技を。



「『奥義』──『ヴォルケーノ・マキシマム』」



 宏人の背後に出現する、五つの玉。

 それらが一斉にモルルに打ち出される。

 無論それらは容易く全て命中し、モルルは血飛沫をあげながら空を回った。


 ──ライオの顔に、ねっとりとした、生々しい血の雨が降る。


 ライオにとっては、何度も身に受け慣れたもの。

 だがこの血は、今朝まで笑顔でライオと話してくれていたモルルのもので──!


「ああああああああああああ!」


 ライオの中で、なにかが壊れる。

 


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