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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十四章 続・生存戦争編
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215話(神サイド) 生者の行進③


「きみから見て、アリスちゃんってどんな感じ?」


 揺蕩う海を眺めながら、セリウスブラウンはそう聞いてきた。

 心地の良いニセモノの太陽を浴びながら、セバスは首を傾げる。


「別になんとも。戦ったら手強そうだな、ぐらいですね」


「ふーん。仲間とはいえ、そんな接点はないってところ?」


「そうですね。ですが、僕たちの仲間の中でトップクラスの実力者である以上、死なれたら悲しみます」


「そっかそっか。じゃあ最後にもう一個だけ質問させて?──きみが死んだら、アリスちゃんは悲しむかな」


「そうですね──絶対有り得ないとだけ言っておきます」


「そっか」


 ──刹那。

 セリウスブラウンの小太刀がセバスを襲う。

 セバスはギリギリで回避するが、避けきれず頬から鮮血が舞う。

 かなり深く抉られたのか、頬というのに血が止まらない。


「……」


「アリスちゃんが悲しまないなら、ここできみを殺しておいた方が今後のためだね」


「同感です。僕は危険ですからね」


 セバスはシャツを半分破り、布で頭から頬を斜め横に覆う。

 瞬時に布に血が染みるのを感じながら、セバスは再度気を引き締める。

 今はいつもと違い、回復手段は一切ないのだ、と。


「──『シーサイド・ルミナス』」


 セリウスブラウンが手を払うと、海が意志を持った様に動き出す。

 そして海が、セバスを襲う。


「……」


 迫り来る海の攻撃を鎌で弾き返しながら、セバスは思った。


(……弱過ぎない?)


「フッ。気付いたようだね──そう!なんとこの式神、特にこれといった異能がないんだよ」


「……はぁ。まあ、こっちとしては都合がいいですね」


 セバスはそうは言いながらも、警戒を怠らずセリウスブラウンに鎌を振る。

 セリウスブラウンは器用に小太刀でいなし、返す手でカウンター。

 それをセバスも難なく鎌の持ち手でいなす──それと同時に、背後から迫り来る『海』。

 だがそれさえも、セバスは鎌で斬り裂き無力化した。

 それというとのも、セバスが近接線にめっぽう強いというわけではない。

 セリウスブラウンの戦い方が、アリウスクラウンと非常に酷似していたからだ。


(つくづく思うけど……。カナメくんの特訓、すごく役に立ってるなぁ)


 セバスは思わず苦笑する。

 その隙をセリウスブラウンと『海』が狙うが、セバスは簡単に凌いだ。


「ほっほー。やっぱめっちゃ強いなきみぃ。よければ私たちの仲間にならない?」


「結構です。あ、別に僕はあなたなんかいりませんよ?面倒な性格してるので」


「おぅ……きみ、シンプルに口悪くない?」


「まあ敵ですからね。それじゃ、殺しますよ」


 セバスはため息を吐き、セリウスブラウンの元に歩く。

 セバスとしても、蘇りで若返っているとはいえ、仲間であるアリウスクラウンの実母であるセリウスブラウンを殺すのは乗り気じゃない。

 しかし、セリウスブラウンは強すぎるのだ。

 

(さっきのレーザービームをものともしてなかった様子からして、『能力』自体は相当強い。殺せる時に殺さないと、後々手をつけられなくなる可能性がある)


 セバスが無言で鎌を振り下げると、案の定セリウスブラウンは小太刀で防いだ。


「……もう、そろそろ諦めてもらえませんか?一回死んでるんでしょ?ならもう僕たちに関わらないでください。迷惑です」


「ひっどいなぁ。別に私はなんも悪いことしてないのにさ。だからこれは正当防衛──私は私の身を守るために、きみを殺すよ」


 刹那──『海原蒼水』が崩壊した。


 セバスは驚くが、『世界』が崩壊する際に怒る破片が降っていないことに気付く。

 

 そして、理解した。


 セリウスブラウンに、『世界』が吸い込まれたのだと。


「……ライザーの物真似ですか?」


「ん?誰それぇ。じゃあ逆だね。そいつが私のマネをしたんだよ」


「そうですか。まあ、正直何でもいいですけど」


 セバスは先手必須とばかりにセリウスブラウンの首へと鎌を振る。

 

「──えっ」


 空振り。

 セリウスブラウンは、既にそこにいなかった。

 明らかに先程より速くなっている──セバスがそう思う頃には、セリウスブラウンはセバスの背を背後から貫く。

 短剣は見事貫通し、セバスの胸から生える。


「──ッ。これは……まずいですね」


「ふふ。ごめんなさいね?」


 セリウスブラウンはセバスを蹴飛ばし、勢いよく短剣を抜き取る。

 セバスは白目を剥きながら、俯向きに倒れ込んだ。

 だが止まらない。

 大量に出血しているに加え、既に致命傷を負っているセバスに、続けて二本の短剣を振り下ろす!

 だがセバスは腕を後ろに回し、両手で短剣を掴む。


「まぁだそんな元気あるんだ。そごいね」


 セリウスブラウンはセバスの両手を斬り裂き、バラバラにする。

 万事休す──セリウスブラウンはそう確信するが、セバスの血だらけの腕から放たれる。


「──『爆破』」


「うっそ──!?」


 近距離での最大出力『爆破』。

 高火力の『爆破』がセバス諸共巻き込み大爆発。

 セバスの背にいたセリウスブラウンももちろん例外ではなく、後に残ったのはセバスただ一人。

 セバスはこの状況を狙うため、今の今まで『能力』は使わなかったのだ。


(でも……これはまずいなぁ)


 セバスは仰向けになり、息を整える。

 背中から胸を貫かれ、両手が裂かれたのだ。

 既に血は致死量を垂れ流しており、セバスの目の焦点が合わなくなる。

 セバスはどうにか、『能力』を駆使して──!


 そんなセバスの首から響く、ドスッという音。


「はぁ……あんま怖がらせないでよぉ。割とビビっちゃった」


 セリウスブラウンの短剣が、セバスの首を刺したのだ。

 セリウスブラウンは『爆破』で吹き飛んだ際に捻った手を乱暴に振った後、セバスの死体から踵を返した。


 *


「……で?負けて帰ってきたの?──セバス」


 瑠璃がため息を吐くその視線の先にいるのは、ついさっき突然隠れ基地に現れたセバス。

 外傷こそないものの、その『能力』残量はもうないに等しい。


「酷いなぁ。僕なりに頑張ってきたんですよ?」

 

 セバスは苦笑いでそう言った。

 

 セバスは首を刺される寸前に、やっとカールの修復に成功したのだ。

 それも奇跡的なタイミングというか、ギリギリの賭けが良い方に転がったというべきか。

 カールの蘇生は『能力』の配給で行われるのだが、セバスはあの一瞬で一気に全ての『能力』をカールに譲渡したのだ。

 それでカールが隠れ基地で蘇り──それと同時にセバスと成った、という流れである。


「まあ、半分くらい何言ってるのか分からないけれど……。生きてて良かったわ」


「セリウスブラウンという──」


「──お母さま!?」

 

 セバスがセリウスブラウンの名前を出した瞬間、ダクネス戦以降目覚めたいなかったアリウスクラウンが急に起き上がった。

 唖然とする瑠璃とセバスを置き去りに、アリウスクラウンはガシッとセバスの肩を掴む。


「お母さまもこの戦争に参加しているのか!?」


「ええ。まあ……」


「ッ!それはまずいわね……」


 アリウスクラウンは頭を抱え疼くまる。

 案外元気そうとセバスは思った。

 

「それで、セリウスブラウンの『能力』は一体なんなんですか?分かりませんでした」


「『無効』……よ」


「『無効』?またザックゲインみたいな『能力』ね」


「手で触れた『能力』を無効化する『能力』……。ようは、発動条件は宏人の『変化』みたいなものと思ってもらっても問題ないわ」


「それは……宏人くんの天敵タイプじゃありませんか?『変化』が効かないって」


「そうね。でも、今宏人で気にするところはそこじゃなくて──」


 瑠璃は言葉を続けようとして……やめた。

 凪の件もあり、宏人の心は不安定だ。

 

(凪は対応出来る神人が七録菜緒しかいなくなったタイミングでルールを破り、なんらかの形で七録菜緒を説得。そして外に出た……宏人が今それをする事は不可能。じゃあ生存戦争が終わるまで待つ?二週間も?それは絶対あり得ない……)


 頭を悩ます瑠璃の肩に、ポンッと手が置かれた。

 その手の主は──。


「……またあなた?」


「はぁい。瑠璃様より、俺から欲しい情報があるという匂いがしましたのでぇ」


 藍津は、相変わらずの胡散臭い笑みでニヤリと笑った。



 

 

 

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