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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十四章 続・生存戦争編
220/301

212話(神サイド) 再始動


「──やあ、藍津さん」


「おぉ、セバス様じゃないですかぁ」


 さっそく生存戦争で活発的に行動していたセバスは、笑顔で手を振りながらたまたま見かけた藍津に近寄った。

 藍津は基本人には用がある際にしかなるべく接触しないようにしているため、これは紛れもなく意図的な偶然なのだが。


「もう復帰している様ですがぁ、『アンデット』の方は大丈夫なんですかぃ?ここはカールといいましょうか」


「ああ、それはまだですね。まあその内復活しますので気になさらず。それより、ちゃんとザックゲインを殺しましたよ?確認は大丈夫ですか?」


「はいはいぃ。もちろん確認済みですよセバス様。さすがです。ところで私と契約する方の中では珍しく前払いでしたが、私に聞きたいことは決まりましたですかい?」


 藍津の問いに、セバスは深く頷く。

 そう、セバスと藍津も、以前『契約』したのである。


「普通に現状生存戦争で生きてる人を教えてもらえれば十分です。──初期からいる、『ニセモノ』の参加者についても聞きたいですが、まあ、これについては大体見当はついてますので」


「なるほどぉ。了解しました。ではでは、さっそく──」


 そして、藍津は答える──『生存戦争』の、生存者を。



 『生存戦争』生存者一覧


・幅木夜門

・向井宏人

・微睡翠華

・ライオ・セット

・セバス・ブレスレット

・藍津

・羅閣

・プライネット・グローバル

・池井瑠璃

・モルル・ヘーゲル

・海木莉孤

・田柄風魔

・アリウスクラウン・カシャ・ミラー

・セリウスブラウン・カシャ・ミラー


 

 ──セバスはこれらを聞き、ニヤリと笑みを深める。


「なるほど……これはなかなか、面倒そうですね」


 『生存戦争』のルール4 ──ゲーム終了後、生存者が10人以上の場合、全体人数が10人になる様神人が調整する。


 つまりあと4人殺せば、実質的にだが『生存戦争』は終了する。

 現在の日付は2月21日。

 

 ラストスパートともいえるこの期間──間違いなく、『生存戦争』は荒れるだろう。


「ですがここまでくるともうルール6の夢は潰えましたねぇ。改めておめでとうございますぅセバス様。あなたが最初で最後の『能力』の略奪者です」


「ええ、遠慮なく『適応』は頂きました」


「それってぇと、つまり?セバス様は仮死状態から復活すると好きな『能力』を2個選べるってことになりませんかぁ?」


「いや、それ僕も思ったんですけど無理っぽいですね。この『適応』は無理やり貼り付けられたものみたいな感じでして、一度剥がすと消滅しますね。確信です」


 それからセバスは藍津と別れを告げ、獣道を進む。

 といっても、『生存戦争』の会場であるこの森はかなり足場は良い。

 歩きながら、セバスは思考する。


 ──『生存戦争』の現時点での生存者について。


(気になるのは羅閣とセリウスブラウンといったところ。……さて、どうなるものやら)


 セバスは未だ万全の状態でないのにも関わらず、楽しそうに、敵を探す。


 *


「──昨日で神人が二人も死んだそうだ。ライザー・エルバックはともかく、俺らの知らないところで何が起きてるんだか。上位七人の仕業だろうか」


「えぇ。すいか上位七人は世界に認められた『能力』を持ってる人って聞いたよ?だから別に強いわけじゃなさそうだよぉ」


「確かにそうだな。だけど、これは自信を持って言える。ザックゲインだけは本物だ」


 気の強そうな端正な顔立ちをしている少年──田柄風魔と、穏やかで間延びした口調が特徴の可愛らしい少女──微睡翠華は、並んで森の中を歩く。

 やがて丘陵地に出来た洞窟……というか穴の前に着くと、突然中から人が飛び出し、風魔に抱きついた。


「やめてください──セリス」


「いやーん!フウちゃんがつめーたーいー!」


 風魔に抱きついた女性──名をセリウスブラウン。

 アリウスクラウンの実の母にして、時を超え収集された生存戦争の参加者。

 だがその見た目は20代前半の様に若々しく、子であるアリウスクラウンと同年齢にしか見えない。

 生存戦争の参加者は、ニカイキの様に希望する年齢で蘇る事が出来るのだ。

 

 風魔は鬱陶しそうにセリウスブラウンの顔を押し除ける。


「たっだいまーセリス!すいかが戻ったよー!」


 逆に翠華は帰還してすぐにセリウスブラウンに飛びついた。

 風魔は二人に潰されながら、至って真面目に口を開く。


「セリス。知っての通り、上空で戦っていたライザーと七録カナメの戦いは後者の勝利で終わった。だがそれだけじゃない。どうやらダクネスも死んだようだ」


「……へぇ。どこの誰が、そんなことをねぇ」


 セリウスブラウンは興味深そうに顎を撫でる。

 頭の片隅にアリウスクラウンの顔が浮かぶが……そんなわけないと首を振る。


「さて。じゃあこれで見張りの神人は七録菜緒だけかな?ならなんとかこの戦場から逃げられるだろうけど──どうする?二人とも」


 *


「……ザックゲインっつー脅威がいなくなった途端、急に動き始めたなぁ」


 ライオははぁとため息を吐き、そう呟いた。

 モルルは相変わらず無表情だが、心配そうにライオの頭を撫でる。

 ライオは『千里眼』を解除し、視覚を戻した。

 今遠視したのは風魔と翠華の二人。

 この二人組でも十分に強いのに、なぜかセリウスブラウンなる女性と手を組んでいる。

 ライオはどうせそいつも強いんだろうなぁ……と、うんざりしながら歩みを進めた。

 モルルは未だ頭を撫でている。


「なあモルル。おれたち知らん間にこんな地獄に連れ込まれたわけだけどさ──通用するかな?おれらの力」


「──もちろん」


 ライオの言葉に、モルルは食い気味で答えた。


「わたしたちは、絶対に負けない」


 *


「……で。あなたはソウマトウ側だったわよね?」


「はいはーい。超能力者の莉孤ちゃんですっ。よろしくねー」


 海木莉孤は、抑揚のない間延びした声でそう言った。

 瑠璃は目を細めながら、どうしようかと迷う。

 

 現在宏人たち一行は、カルマやシェリカといった上位七人と共に二週間滞在していた基地で潜伏していた。

 それもこれも、アリウスクラウンの回復を待つため。

 アリウスクラウンはダクネス戦にて『翼』に串刺しにされたが、なんとか意識を保っていたため、宏人の『変化』で強制回復。

 外傷と『炎舞魔人』の効果を無理やり『変化』で打ち消したらしいのだが、あれ以降、未だ目を覚ましていない。

 皆が『生存戦争』で戦う理由は、ルール4 ──ゲーム終了時に生存者が10人以上いる場合、神人がそれ以下になる様に調整する、というものがあるから。

 仲間で唯一現在行動しているセバスによると、10人以下になるまであと4人。

 期間は残り一週間と少し。

 残り4人については他の参加者にどうにかしてもらうとして、ゲーム終了までこの基地の守りを固めておこうとしたところ──莉孤が訪ねてきたのだ。


「はいはーいじゃなくて……。いいの?ここはアルファブルーム陣営みたいなものなのだけど」


「別に気にしなくていいよー。死んじゃったし、ソウマトウちゃん」


 莉孤の声は相変わらず間延びした声だが──僅かに怒りが混じっている。

 口調で分かるのに加え、『読心』を発動している瑠璃はハッキリとそう感じた。

 

「うちにはたまにアスファスもいるけれど」


「だからいいってー。確かに前まではぶっ殺してやりたい!とは思ってたけど……私じゃ無理だろうし。私の一番の目的は、ずばり生き残ること。それ以外のことは、なあなあで大丈夫だから」


「そう。なら歓迎するわ。よろしくね?莉孤」


 瑠璃がそう言うと、莉孤は不思議そうに顔を傾げる。


「あれっ?ここの指揮系統瑠璃ちゃんなの?てっきり新野凪かと思ったんだけど」


「……凪は、私たちを──」


「──おっ邪魔しますぅー」


 瑠璃が口を開くと同時、何者かが独特の声と共に入り口の扉を開けた。

 その男──藍津は、面白そうに莉孤を見る。


「ほっへぇー。今回はあなたもここに加わるんですねぇ。意外や意外ですよぉ」


「……瑠璃ちゃん。この不審者は知り合いなの?」


「不審者じゃないわ変人よ。一応ね。それで?今回は何の用かしら」


「えっへぇー。それがですね、俺は呼ばれた側でしてぇ」


「──よく来てくれた。藍津」


 三者が声がした方向を見ると──そこには宏人が。

 宏人は無言で藍津に詰め寄り、睨みを利かせて口を開く。



「凪に何があった?なぜ凪は今生存戦争にいない!?」



 ライザーやダクネスという強大な敵を撃ち倒しても尚続く、殺し合い──生存戦争。

 加えて現る、新たな問題。

 宏人は先の見えない不安の中でも、無理やりもがいて進み続ける。


 それもこれも──凪がいたから。


 凪という心の支えがあったから、とうの昔に壊れ切った心を『変化』出来て──!


「──俺がその質問に答える義理があるとでも思いますか?」


 藍津は珍しく真剣な表情と共に、普通の声でそう言った。

 藍津のあまりの変貌ぶりに、さすがの宏人も唾を呑んだ。


「……じゃあ俺は何をしたらいい?」


「何もする必要はありませんよ。宏人様には十分役目を果たしてもらいました。これ以上俺が願う事はなにも」


 宏人は藍津の胸ぐらを掴む。

 瑠璃と莉孤があたふたしているが、当の藍津はどこ吹く風だ。


「無理やりと言ったら?」


「どうぞご自由に。ぶっちゃけますと、俺は菜緒様からの情報をそのまま口に出してる言伝役なのでねぇ。俺個人はあなたの欲しい情報を持ってやいません」


「……。そうか」


 宏人が胸ぐらを離すと、藍津はドサっと地に落ちた。

 藍津は痛たたたと笑いながら尻の汚れを払い、この基地から出ていこうとし──口を開いた。


「まあ、俺もそこまで人が悪くないのでぇ……せっかくですのでチャンスを。ダクネスを殺すというミッションを達成する代わりに俺の『必中』で創也様の手伝いをしろ、というのは宏人様から言い出した事ですが、あまりに報酬が足りていないと思っておりましたのでぇ。その代わりと言ってはなんですが、やっぱミッションを授けます」


 藍津は振り返り、いやらしい笑みを顔に貼り付けて言う。



「生存戦争にて蘇った過去の怪物を、全員殺せぇ──報酬は、新野凪の元までの直行便」



 宏人の──俺の『変化』が、疼いた。



 

 たったこれより、生存戦争は苛烈を極めることになる。

 上位七人がいた頃より、深く、残酷に。




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