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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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209話(神サイド) 神人戦⑥


 眩い閃光が目を焼いた次の瞬間には、その光が形と成って襲いかかってくる。

 神々しい神殿すらも厭わず破壊するその様は、まさに神の使い──天使。


「創也ッ!」


「分かってる──『止眼』」


 創也の『能力』である『魔眼』は、黒夜の『魔弾』と同じ様に、ある程度の自由が効く利便性の高い異能。

 創也の『眼』が淡く輝き、俺たちに直撃する寸前だった『光柱』を停止させた。

 一方で、俺たちに当たらなかった『光柱』は消滅することなく、実体化し更に神殿が出来上がる。


「破壊と再生──まさに神人の私に相応しい『能力』だと思わない?おまえら」


 悠然と空中に佇み見下ろしてくるダクネスが、頬を赤らめてそう言う。

 自分に酔っているのか、うっとりとした表情で『世界』を見渡している。


「……正直キツいねこれ。迂闊に近づけないや」


「そうね。カルマも言ってたけど、この柱熱含んでないから私の『炎舞』も期待出来ないし」


「関係ない。今のダクネスは俺の『変化』を持ってない。触れたら勝ちだ」


「それが難しいって言っているのだけれど。……まあいいわ。私が『炎舞』で柱をカバーする」


「僕はアリウスクラウンが狙わなかった、実体化した邪魔な柱を切り捨てようかな」


「俺は──障害物はお前らに任せて突き進む。」


 俺が駆け出すと同時、再度ダクネスも動き出す。

 先程と同じように無数の『光柱』が顕現──俺たちを狙って降り注ぐ。

 だが俺は構わず走り続ける。

 作戦通り、カルマの『炎舞』が俺たちに直撃する『光柱』を燃やし尽くす。

 しかし『光柱』はそれだけでは終わらない。

 『炎舞』が着弾しなかったそれは、やがて本物の光の柱と成って俺の征く道を阻む。


「とりゃさっ」


 それを、俺が対処する前に創也が切り裂き、道を開ける。

 だがその数は凄まじく、斬っても斬っても柱が積み重なり、天まで聳え立ちダクネスの姿を隠す。

 創也の勇者剣がジリ貧だ。

 なら、手は一つ。


「宏人」


「ああ──『変化』」


 柱を無数ではなく、一つとして捉える。

 そうする事で、俺の『変化』は、それだけで全てを破壊する。

 そして──ダクネス。

 俺の頭上には、未だ微笑むダクネスが。


「来たぞ、コスプレ女」


「来んな、ストーカー野郎」


 俺は足元から『バースホーシャ』を噴射、その勢いで空を駆け、ダクネスの目と鼻の先で拳を固く握る。

 両手に、『存在』をぐちゃぐちゃに壊す『変化』を込めるッ!

 

「死ね──!」


 俺は拳を振り上げ、ダクネスの顔面目掛けて全力で振るう。

 だがダクネスは、両翼の翼で以ってそれをガードする──そんなことは分かりきっている!

 予想通りダクネスが翼で身を隠すと同時、俺は拳をダクネスに当てず、その勢いのまま体を反転──全力の蹴りを叩き込む。

 人間の蹴り如きじゃ、神人様には何の傷も与える事は出来ないだろう。

 だがここは空中──俺の足からは、常に『バースホーシャ』が噴出されている。


「──ッ!」


 ダクネスの翼が、燃える。

 神の、地獄の、アルドノイズの炎は、天使の翼をみるみると焼いていく。

 そんなダクネスに追撃を入れようとしたところで、背中を何かにガッと掴まれた。


 これは──やばい……!

 

 そして次の瞬間──俺はいつの間にか地に叩きつけられていた。


「──カハッ……!」


「宏人ッ!」


 肺から酸素が抜け、体から血が飛ぶ。

 創也の叫び声で意識を取り戻しながら、首だけでなんとか辺りを見渡す。


 すると、目の前にはおよそ10体近くの巨人が。


「守護天使──ガーディアン構築。やっちゃえ!ガーディアンちゃん♡」


 ダクネスのその一言で──ガーディアンたちは踊る。

 手当たり次第に付近の物を破壊し、ただただ暴力に身を任せるおよそ20mの巨人たち。


「すっごいね。これがこの『式神』の権能か。純神みたいな『式神』だね」


「ちょ、危な!てか言ってる場合!?こいつらどうするの!」


 創也とアリウスクラウンが走って俺を回収し、ギリギリでガーディアンの暴力を回避する。


 そして俺は目撃する──ダクネスの翼が、回復している!?


「創也!あ、れは……」


「大丈夫。あれは『天使』の権能だから自己修復が可能なだけで、別にダクネスが再生能力を取り戻したとかじゃない。ダクネスもかなり無理をしているからね。本来なら宏人の『時空放射』で消し飛んでるはずなんだけど……」


「そう言えばダクネスが──

『あははは。よかった死神の隠し玉持ってて。それ犠牲にしなかったら今頃私死んでたよー』

──って」


「あぁなるほど。彼女もよく考えるねぇ」


「意味分かるのか?」


「もちろん。でも今は関係ないよ」


 創也は急に体を反転し勇者剣を一閃──すぐそこまで迫ってきていたガーディアンを切り裂いた。

 そして降る、『光柱』。

 それはアリウスクラウンが『炎舞』で消し飛ばした。


 『炎舞』の炎の煙の中から、更にもう一体のガーディアンの拳が!


「『バースホーシャ』!」


 俺は創也の手元から飛び出し、右手に炎を収束──解き放つ!

 『バースホーシャ』を浴びたガーディアンは見事溶け、煙が晴れる。


 その先には、無数の柱に囲まれたかなりの数のガーディアン──その更に奥に、ダクネス。


「あっはははははは!踊って!狂って!死んで!」


 そして放たれる──この『世界』の。


「『奥義』──」


 *


「セバス、カナメ。今のところは順調……と言ったところか?」


「そうですね。もっとも、きみも協力してくれると確実なんだろうけどね──凪くん」


 セバスの前に現れたのは、凪。

 凪はフンと鼻を鳴らしてセバスを観察する。


「一時的にとはいえ不死性のないお前にカナメを任せる……それくらい切羽詰まってるのか」


「創也くんも凪くんがいる前提で作戦を立ててたと思うからね。こればっかりはきみが悪いよ。今まで何してたの?生存戦争中、誰もきみを見ていないらしいけど」


「その内分かることだ……。それより、カナメは任せてもいいんだな?」


 凪の目が、セバスを射抜く。

 逆にセバスは、凪の目を見てふと思った。


 凪はもう、心が──


「──問題ないですよ。ただ『アンデット』が無くなっただけだからね。戦いに何も影響はない」


「そうか。そうだと祈るばかりだ」


 凪はそう言うと、踵を返して歩み始める。

 しばらくして、歩くスピードを緩めながら凪は顔だけセバスを向き、口を開いた。


「……止めないのか」


「止めてほしかったんですか?止めませんよ。僕はきみのことをよく知らないので──でも」


 セバスは、優しい顔付きで凪を見つめる。

 その瞳の中に映る凪は──顔から、正気が失われていた。

 だがセバスは構わず、中指を立てる。


「僕らの邪魔したら、殺します」


「……そうか。お前と最後に話せて、良かったよ」


 凪はそれだけ言うと、再度歩きだす──そんな凪の前に、一人の少女が立ちはだかった。


「行かせると思う?」


 ──瑠璃は、『読心』を発動した。


 *


「──『カースド・ヘルエンジェル』!」


 天より、黒い光がダクネスに注がれる。

 一部の人しか扱えない『式神』の中で、さらに一部の人にしか扱えない究極業──『奥義』。

 やがて光が晴れ、その先には。


 先ほどまでとは打って変わって、真っ黒なドレスに身を包んだダクネスが。


「堕天使……ってか?」


「そうだよ!可愛いでしょ?」


 ──次の瞬間。


「──は?」


「あっははは。やぁっと、殴れた♡」


 ダクネスの拳が、俺の腹に突き刺さっていた。

 腹を殴られたのではない──腹を、貫通された。

 

 ダクネスの背中まで到達した手が、一気に抜かれる。


 腹部から血が舞い膝から崩れ落ちる俺をよそに、創也とアリウスクラウンが左右よりダクネスを攻撃する──が。


 勢いよく両腕を払ったダクネスに、何の抵抗もできずに吹き飛ばされた。


「あはは。舐めてっから。『新世界』は『能力』を『カミノミワザ』に昇格する力だからね。存在しない『カミノミワザ』を作るんだからある程度の自由は効く。だから私は近接戦に優れた『奥義』を開発した……ってワケ!」


 ダクネスは嬉しそうに満面の笑顔でそう言う。

 

 背後から、ガーディアンが迫りつつある。

 上空より、『光柱』が発動されつつある。


 そして目の前には──唯一の弱点だった近接戦闘を克服した、堕天使が。


「……さて」


 絶望的な状況の中、常に貼り付けられていた創也の笑みが、剥がれる──。

 

 


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