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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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206話(神サイド) 神人戦③


「ねぇアリスちゃん、また神仰教の幹部会邪魔しにいこーよー」


 アスファス親衛隊本拠地の広間にあるでかいソファにてダラけるアリウスクラウンの顔を弄りながら、ダクネスが言った。


「……やめてください」


 ダクネスはさらに顔を弄る。


「えーじゃあ何するー?暇じゃん」


「いえ幹部会はともかく顔をやめてください……!普通に痛いです」


 アリウスクラウンはぼさぼさした髪を掻きむしりながら怠そうに体を起こす。

 ダクネスはこう見えても神人なのだ。

 彼女にとっての普通の力が、アリウスクラウンたち人間にとっては脅威でしかない。

 アリウスクラウンはため息を吐き、目の前でニッコリ笑っているダクネスの顔を見て……またため息を吐いた。


 *


 ──今思えば、ダクネスは基本、どんな時でも笑っている。

 実際今もそうだ。

 ダクネスと仲良い……というか悪友?みたいな関係だったアリウスクラウンにとっては、現状は好ましくはなかった。


「ダクネス……和解は?」


「ないね。ばいばいアリスちゃん!──『終末天使』」


 上空にいくつもの円形の黒い物体が湧き出た次の瞬間──それらは地に降り注ぎ、天まで聳え立ついくつもの柱が出来上がる。


「黒夜!カルマ!」


 アリアスクラウンとともに、名前を呼ばれた二人も咄嗟に回避。

 宏人がダクネスとともに黒龍に飲み込まれている間、黒夜もカルマも前戦復帰していた。

 それというのも、二人の能力が命を繋げることに役立ったおかげだ。

 黒夜は『魔弾』で回復能力を付与し、己に放つことで火傷を治療することに成功した。

 『バースホーシャ』を浴びる前、自分に火傷しない『魔弾』を撃っていたのも幸いだった。

 『魔弾』は便利に応用が利くだけで、何でもかんでも完全に出来るわけではないのだ。

 カルマは己の中の『天使』を犠牲にすることで命を取り留めたらしい。

 それではダクネスも『天使』で回復出来るのかと問うと、ダクネスはあくまで『天使』の能力をコピーしているだけで、体のなかに本物の天使はいないため出来ないのだそうだ。

 なにはともあれ、二人が無事だったのはいいことだ。


(だけど……問題は黒夜の『魔弾』)


 微量とはいえ、回復出来るのは事実。

 さすがに神人の回復能力の回復は次元が別なので出来ることはなさそうだが、それでも能力にモノを言わせたゴリ押しで回復されるのも困る。

 

「天使、やめて!」


 ダクネスの『終末天使』を必死で回避するなか、カルマは大声でそう呼びかける。

 効果があるのかアリウスクラウンも黒夜も不安だったが、少量ながらも柱が減りはした。

 だがそれでも『天使』の勢いは止まらない──!


「カルマ!この柱って熱含んでないかしら!?」


「含んでない!」


「ですよね……」


 アリウスクラウンは『炎舞』で操作出来るのではと考えたが、やはり無理らしい。

 

 これが、ダクネス──『旧世界』の力。


 侵入者には力を使わせず、己のみがその力を行使し撲滅する。

 今は宏人の『変化』の力があるお陰で一部分でも力を使えているが、これは異例だ。


 今のところ『天使』を知り尽くしているカルマの先導のもと悉く回避には成功してはいるが、これも長くは続かない。

 そして何より。


「怖いのは慣れですね」


「ええ。今回避出来てるのも多分ダクネスが『天使』を完璧に扱いきれていないから……だと思う。まずいわね……!」


「ともかく向井宏人はどうしたー!?あたしたちの『能力』じゃ全く太刀打ち出来ないでしょ……!」


 カルマは半分泣きながら辺りを見渡す。

 だが宏人の姿はなく、今度は黒夜が不安そうに宏人を探す。


(これは……まずい)


 アリウスクラウンは、二人の集中がダクネスから宏人に向かっていることを察した。

 そのため注意しようと、黒夜たちに呼びかけようとした──次の瞬間には、背後にダクネスが。


「だめだよーアリスちゃん。隙が生まれちゃってる」


「あなたはいつも油断してるわね。それって傲慢よ?」


 ダクネスの『魔弾』がアリウスクラウンの背を撃ち抜くと同時──宏人は剣で、ダクネスを切り裂いた。


 *


 ダクネスの翼は、俺の全身を切り刻んだ。

 死の間際の黒龍が着地を庇ってくれたのもあって『変化』で修復可能な攻撃だったが、治すのに時間がかかった。

 ダクネスがアリウスクラウンたちに気を取られているうちに、気付かれぬようこそこそ行動していた結果、目の前でアリウスクラウンがやられた。


 ここからじゃ傷の具合は分からないが──彼女がせっかく作ってくれた隙を、逃すわけにはいかないッ!


「ッ!」


「あっははは。あぶなー」


 首を狙った一閃は、またもや翼によって遮られた。

 アルドノイズが使役する黒龍の剣、神剣『黒龍』で斬ったのは、首ではなく翼だった。

 だが斬れたのは2対ある翼のうち一枚。

 まだあと一枚残って──!


「はァァァァァァァ!」


 血だらけのアリウスクラウンが、神剣『白龍』レプリカでダクネスの残りの翼を斬り裂いた!


「……なかなか根性あるね、アリスちゃん」


 そう言いながらも、ダクネスの顔が苦痛に歪む。


 ──今しかない!


 アリウスクラウンは斬った勢いのまま地面に転がり、そのまま気絶。

 だが俺は止まらずダクネスに斬りかかる!

 ダクネスは素手で神剣『黒龍』を防ぐが、鮮血が飛び散る。


「『変化』」


 だがダクネスは手が切断される瞬間に『変化』し治療。

 ダクネスの『変化』は他対象が使えないだけで、己自身の『変化』はなんの制限もなく行使出来るのだ。


 ダクネスの空いた手に、『魔弾』が貯まる。


「──ッ!」


「ここまでだよ宏人くん!」


 ダクネスは満面の笑みを俺に見せつけ──『魔弾』が炸裂。

 神剣で身を守りながらも、至近距離で浴びた俺は地に叩きつけられる。

 剣が手から抜け、カランカランと大きな音を立てた。

 肺から一気に酸素が抜け、呼吸が荒くなる。


 途端に無防備になった俺に、ダクネスの攻撃が──迫る前に、黒夜とカルマがダクネスの背中を切り裂く!


「イッ──たぁ……!」


 黒夜が神剣『黒龍』で、カルマが神剣『白龍』レプリカを払い、ダクネスの背を両方からクロスの形で斬った。

 ダクネスの背中から、夥しい量の血が噴出される。


「ゴフッ……」


 俺はというと、吐血しながらもふらふらと立ち上がる。

 先程の『魔弾』は即席ということもあってかそこまで威力はなく、かつ能力も付与されていなかった。

 若干即席の回復阻害系統はあったが、俺の『変化』の前ではないに等しい。


 だがそれは、ダクネスも同じ。


「──『変化』」


 ダクネスの背中が、何事もなかったかのように修復されていく。


「……」


「ひ、宏人様……。すみません、私にはここからどうすればいいのか検討もつきません……!」


 黒夜は若干涙目になりながら、後ろ足でダクネスから徐々に後退していく。

 

 どうすればいいのか、ね……。


 正直、俺はもうその答えを持っている。

 問題はそれを使うタイミング。

 だが肝心の果たしてどこまで通用するのか、がまだ分かっていない以上、確実に通用するタイミングでなければならない。

 それを少しでも察せられたくない以上、俺は黒夜に返答せず、虚空よりもう一本の剣を取り出す。




 ──ニカイキの件のあと、アスファスからアリウスクラウンを渡してもらった時のこと。


『アスファス様が、これを渡せって』


 アリウスクラウンと共に創也の元へ走っている最中、アリウスクラウンは俺にポイッと剣を投げた。

 紫色に輝く、どこか神剣『黒龍』、『白龍』と似ている剣を──。


『それは神剣『暗龍』。『黒龍』と『白龍』と同じ、純神の龍よ』


 

 

 俺が虚空より取り出したのは、アスファスから受け取った神剣『暗龍』。

 ダクネスは小さく舌打ちしながらも、笑顔で俺を見据える。

 

 そして──同時に動いた。


「『殲滅天使』」


「来い──暗龍ッ!」


 この『世界』に、いくつもの柱と巨大な龍が生まれる。


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