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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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205話(神サイド) 神人戦②


 俺たちは再度ダクネスを取り囲み、それぞれ殴りかかる。

 怖いのが、狂弥もダクネスが毎度『旧世界』──つまり式神で戦っている姿しか見たことがないところだ。

 ダクネスの『カミノミワザ』が未だ分からない以上、有効手段を何回も打ってでも、はっきりさせるしかない。

 それで倒せるのなら尚良いが。

 俺はそう考えつつ、ダクネスに──そこで気付く。


 ダクネスは、いつの間にか俺を見ずに、カルマを見ていた。

 

 そしてさらに結びつく──先程ダクネスをぶっ飛ばしたのが、カルマだということを。


「カルマッ!」


「もう遅いよー」


 瞬間、ダクネスは俺に背を向け、アリウスクラウンと黒夜を力任せに振り払い──カルマの拳を掴んだ。


「なッ……!」


「あははは。つーかまーえたっ」


 ダクネスはカルマの首を掴み、締め上げた。

 カルマの顔が苦痛に歪み、ダクネスは笑いながら俺たちを見る。


 まるで来いとでも言わんばかりに。


「……上等だ」


 俺とアリウスクラウンと黒夜は再度ダクネスの元に。

 だが、今度はアリウスクラウンの顔が青ざめる。


「退がりなさい!」


 意味が分からないながらも、アリウスクラウンの掛け声に従いニーラグラの『ホリズンブレイク』で一気に後退し──ようとしたのだが。


「は──?」


「宏人様ッ!」


 刹那、ダクネスの周りから火が吹き荒れる。

 アリウスクラウンの咄嗟の呼びかけに俺は反応出来ず、黒夜に突き飛ばされても尚なすすべなく炎を浴びる。


 灼熱の炎、これは──『バースホーシャ』に匹敵する!?


 火は容赦なく肌を焼き、肉を炙る。


「ッ──!」


 俺は『変化』で体を治し、よろよろと立ち上がる。

 俺が火を対処していた時間はおよそ1分。

 実際、体感時間はもっとずっと長ったが、経った時間はそれだけ。

 だが──景色は大きく変わっていた。


 カルマの顔が、おかしな方向を向いていた。


 黒夜が……俺の足元で倒れていた。


 そしてそれを見て笑っている──ダクネス。


 反応が遅れた俺を黒夜が庇ってくれたから、俺は『変化』を使用する余裕があったのだ。

 自分の不甲斐なさに、頭が真っ白になる。

 『ホリズンブレイク』は発動しなかった。

 ニーラグラの身に何かあったのか、なんて考える暇はない。


 ……俺はダクネスは油断していると思っていた。

 だが実際に油断していたのは俺たちだった……なんて、お笑いだ。

 『時空放射』を当てる作戦が成功して、あとは回復機能を失ったダクネスを相手取るだけ。


 それがいかに無謀で難しいことなのか、今、やっと分かった。


「宏人……!良かった生きてて。カルマと黒夜は……!」


「いい。カルマはともかく、黒夜はまだ生きてる。黒夜を頼む」


「いや、私も戦うわ。黒夜には悪いけれど、私まで死にたくはないもの」


 俺は答えず、アリウスクラウンと共にダクネスに立ち向かう。

 ダクネスは相変わらず笑っている。


「あと……二人だね」


「おお、そいつはよかった。俺らはあと一人なんでね」


「あははは。宏人くんてば大分成長したね。昔なら仲間、特に黒夜ちゃん辺りが殺されれば怒り狂ってただろうに」


 俺は『黒龍』を呼び出し、『変化』で作り出した神剣『白龍』を取り出す。

 『白龍』をアリウスクラウンに渡し、俺は『未来視』を極限まで発動する。

 狂弥から貰った十回限りの『時空支配』は、その権能だけでなく、俺の目に時間の歪みを作った。


 俺はそのおかげで、約2秒先の未来を予測出来るようになったのだ。


「アリウスクラウン、あの炎って」


「ええ。私の『炎舞』よ。なんで彼女が使えるのか知らないけど……神人ということもあって威力は私の比にならないくらい強いわ」


「いや、多分『炎舞』で操作した『バースホーシャ』だ。威力が異次元過ぎる。『変化』がなければ今頃俺は死んでいた。黒夜が無事なのは炎に適正を付けた『魔弾』を自分に撃ったからだ……と思う」


「だったら完全に『魔弾』の許容範囲超えてる威力ってわけじゃない……ともかくダクネスは私たちの能力をコピーしているということかしら」


 それがダクネスの『能力』……なんて甘い考えはしない。

 なによりも、アリウスクラウンもとっくに気づいてあろう、ダクネスの異能がコピーだと仮定した際に起きる問題──それは。

 ダクネスが『バースホーシャ』を使いこなし、『焔』を行使すること──その前に、叩き潰す!

 俺ですらまだかなりのタメが必要な『焔』をダクネスに使われると思うと……とにかく、俺は行動を起こした。


「グォォォォォォォォン!」


 黒龍の叫びを合図に、俺は拳で、アリウスクラウンは白龍でダクネスに仕掛ける。

 加えて黒龍がダクネスを狙う。

 それに対しダクネスは再度炎をばら撒く。

 火を操る異能──『炎舞』。

 だがアリウスクラウンも体内で『炎舞』を発動し、俺とアリウスクラウンに当たらない方向にずらされた。

 やはりダクネスが使用している俺たちの『能力』は特段威力、効力等に影響はない。

 黒龍は上空に旋回し避け、アリウスクラウンの剣がダクネスの腕を掠める。

 鮮血が飛ぶなか、俺は本命の『変化』をダクネスに叩き込む。

 

「……やっぱ、効かないわな」


「はは。分かってるのに試したんだ。無謀だね」


 俺とアリウスクラウンは再度後退した。

 俺の一撃必殺の他対象型『変化』で決着がつけばよかったのだが、ダクネスも『変化』を持っている以上相殺されてしまう。

 だが安心したことに、ダクネスは他対象の『変化』は使えない。

 俺の他対象は『変化』の異能ではなく俺の技術のため、能力をコピーしただけでは使用が出来ない。

 

「休ませないよ?」


 今度はダクネスが俺たちのもとへ。


 その目線は──アリアスクラウン。


 まあ妥当だ。

 アリウスクラウンが『炎舞』でダクネスの『炎舞』と『バースホーシャ』を制限している以上、今もっとも厄介なのはアリウスクラウンだ。

 ダクネスの能力がコピーの部類だと仮定すると、ダクネスが現状使用してくる能力は『変化』、『バースホーシャ』、『炎舞』、『魔弾』、『天使』。

 そうなると、ここにセバスがいないのはよかった。

 ダクネスが何かを発動する前に、黒龍が間に割って入る。

 龍種は攻撃力が凄まじいが、防御力は非常に低い。

 その巨大もあって、いかに黒龍を殺されないかも重要だ。


「あっはははははは!『魔弾』!」


 ダクネスは叫びながら、両手に二つの『魔弾』を作り出し、黒龍に放つ。

 『魔弾』は自由自在に効果を変えられる超級異能。

 どんな効果か毎度分からないダクネスにしか分からない以上、迂闊に受けるのは非常に危険だ。

 そのため今度は俺がダクネスと黒龍の間に滑り込み、両手から『バースホーシャ』を放ち相殺する。


「……!」


 さすがは神人、込められている『能力』量が段違いだ。

 ダクネスの一つの『魔弾』は、俺の『バースホーシャ』に匹敵する。


「黒龍ッ!」


 俺が叫ぶと、黒龍は背後から俺もろともダクネスを飲み込む!

 俺と黒龍は思念で連絡を取り合えるため、これは俺が命令したこと。

 ダクネスは『魔弾』を放ち脱出しようとするが、俺はダクネスに抱きつき──黒龍のデカい喉へ飛び込む!


「ちょ、正気!?」


 凄まじい勢いで2人で黒龍のなかを落下していく。

 このまま黒龍の胃液でダクネスを溶かす!

 俺は『変化』でなんとかするからいいとして、既に回復制限のダクネスはそれには耐えられない!……はず!

 

「なかなか面白い作戦だね!」


「……そりゃどうも。いいのか?もうそろそろ終着点だぜ?」


「もちろんよくないよ。とても堅実的で良い作戦だと思う──けど、宏人くんたちは上位七人のこと、ちょっと舐めすぎじゃないかな?」


 ──刹那。

 ダクネスの背中から羽が生えた。

 それだけならいい。

 だが……その羽が、触れたありとあらゆるものを切り刻んだ。


「──ッ!」


 それは俺も例外ではなく──!


 黒龍の腹が引き裂かれ、鼓膜を突き破ってくる黒龍の悲鳴が木霊し血の雨が降る。

 アリウスクラウンの綺麗な金髪が、ドス黒い赤色に染まる。

 広大な荒れた大地、『旧世界』──その上空には。


 まるで天使のような、背に両翼の純白の翼を生やしたダクネスが、慈愛に満ちた目で地上を見下ろしていた。


 これは、上位七人であるカルマの異能、『天使』。

 その能力は──!


「『終末天使』」


 ダクネスがそう呟くと同時──紫色の不気味な柱が、地上にいくつも降り注いだ。

 

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