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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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204話(神サイド) 神人戦①


「ダクネスの殺し方ねぇ。物騒なもんだ」


 俺はカナメのスペシャル特訓が終わったあと、ふと思い出しカナメに聞いた。

 ダクネスの『能力』は未だはっきりしていないが、とにかく『旧世界』という『式神』を使うのは知っている。

 アスファスと戦った時に展開されていたあれだ。

 能力は『世界』内の『能力』の制限らしいが、あの時カナメとライザーは普通に『能力』を使用していた。


「『旧世界』はね、多分だけどダクネスが注ぎ込んだ『能力』量によって変わると思うよ。俺があの時『旧世界』で爆破が出来たのは、ただダクネスが宏人とアスファスを舐めていただけだよ。あとはゴリ押しでなんとか発動出来たからよく分かんないけど」


「……そう言えば私もダクネスの『能力』について全然知らないのよね。大分長い間近くにいたのに」


 アリウスクラウンがむむむと唸る。

 おそらくダクネスは力を隠しているのだろう。

 だがそれは俺たちの前では無意味だ。

 なんたって、うちには何回もこの『世界』をループしている奴がいる。


「創也」


「呼んだ宏人?話は聞かせてもらったよ。ついでにカナメにはライザーの『能力』も教えるね」


 *


 世界が塗り替えられ、やがて新たな『世界』──『旧世界』が出来上がる。

 平坦で、草木が全くない不毛の地。

 およそ神人の式神とは思えないほど現実味のないこの『世界』は、だからこその強さがある。

 現実味がないのは当たり前だ、これも一つの現実──過去の世界だ。

 

 完璧に過去を再現されたこの『世界』では、全ての『能力』の使用が禁止される。


 『超能力』も、『呪い』も、もちろん『カミノミワザ』も。

 ありとあらゆる『能力』が封印されるなか、この『世界』の支配者たるダクネスのみが行使を許されている。


 強風が吹き荒れ、砂が舞い服を汚す。


 神人との対決に緊張感が駆けるなか──俺はさっきからずっと思ってたことをポツリと口にした。


「さすがの神人も、服を再生する能力はないか……」


 ダクネスは、上半身がほぼ全裸だった……。

 正直、何も思わないわけではない。

 全裸の少女と戦うとか、傷付けるとかはさすがに気が引けるのもあるし……何より目のやり場に困る。


「あなた……ここで発情してる?」


「んなわけ……なくはない。うるさいぞアリウスクラウン」


「この際だしいっそ凝視しまくれば?なんなら戦ってる最中にちょんちょん触ったら?」


「うるさいぞカルマ。……うるさいぞカルマ、マジで」


「あなたたち宏人様に変なこと言わないでください!宏人様、この戦いが終わったら私が脱ぎますのでダクネスはちゃっちゃと殺しちゃってください!」


「うるさいぞ黒夜。あとそれ死亡フラグだからやめろ。……不思議とちょっとやる気が出るのが謎だな」


 俺は冷や汗を垂らしながらみんなに対し返答してると……額に血管を剥き出しにした満面の笑みのダクネスさんが。


「緊張感。緊張感だよ宏人くん」


「……俺は悪くない」

 

 *


「過去を引き摺る者は、未来を見据える者には勝てない……どうですかい?ダクネスにぴったりの言葉ではないですかぁ?」


「それはダクネスが負けた場合ね。ぴったりかどうかはその結果次第よ」


「それはそれは……それこそあなたにはぴったりの言葉ではありませんねぇ──菜緒様」


 神の間で、七録菜緒と藍津がのんびりと話していた。

 画面の向こうには『旧世界』の映像が。

 ダクネスと宏人たちが睨み合い、緊張感に満ちている。

 神の間が映し出す万里の映像は生存戦争内にある全てを余すことなく映し出せるが、その会話までは聞き取れない。

 宏人が冷や汗を垂らしていることから、おそらくとても高度な口舌戦、つまり戦いの前哨戦が行われているのだろう。

 そんななかアルベストと菜緒と藍津は、生存戦争、ライザーvsカナメの時のように、今回も例外なくくつろぎながら見ていた。


「藍津の言う通りだ菜緒。……なんでここにこいつがいるのは分からないけど。お前は未来も見通せるはずだろ?」


「私の『世界真理』はこの世界の全てが記されている本。本って買っても持っていても、読まなければ内容は分からないでしょ?そういうこと」


「もちろん知っているさ。僕が言いたいのは、なんでまだ読んでないのかってこと。察せよ」


 菜緒は宏人たちの映る画面を眺める。

 ダクネスがほぼ裸体なのが気になるところだが、まあ神人ならよくあることではないだろうか。

 菜緒はほぼほぼ戦ったことがないのでよく知らないが、人間なら死ぬ攻撃を受けても死なない神人は、普通の人が死ぬ攻撃を受けたらまず服がダメになるのだろう……とのほほんと考える。

 アルベストは、神とは思えないほど穏やかだが、いかんせん言葉遣いが悪い。

 本人にとっては全く責めるつもりがなくてもだ。

 穏やかなのは、現状生存している純神のトップにいるからだろうか。

 

 もしくは……ライザーが死んだ今、アルベストにとっての敵はカナメぐらいだからか。


「私が今『世界真理』を発動しない理由は、ただネタバレが嫌いなだけ。てことで今度は私の質問に答えてほしいかな。──なんで今、ダクネスみたいにカナメを殺しに行こうとしないの?」


「……答えなきゃだめか?」


「いや?ただの興味だから気になっただけ。だけど興味と言っても気になるものは気になるから、聞けなかったら機嫌が悪くなる可能性もあるってところ」


「それはそれは怖いですねぇ。でもそれってぇーと普段とあまり変わらないってことじゃあありません?」


「藍津。次変なこと口挟んだら追い出すから」


「……そいつぁほんとに怖いですね。はいはいー」


 藍津は後頭部を掻き、ぺこぺことお辞儀をした後黙る。

 菜緒は映像を操作してカナメがいる場面を映す。

 そこには倒れたカナメを守るように瑠璃と創也とセバスが立っている。


「藍津。私とあなたであの三人に勝てる?」


「ふむむ。どうでしょうねぇ。いつもなら菜緒様の『世界真理』で必勝法を検索、我々が実行し、後は俺の『必中』でどーとでもなるでしょうがぁ……今回はセバスがいます。制限付きとはいえ不死身であることに変わりないため特攻されたら……まあ、勝てるでしょうが、どっちかは死ぬでしょうねぇ」


「……一番大事だと思う部分が抜けてない?」


「おっほ。さすが菜緒様。『世界真理』を使わなくても鋭い。そうですねぇ、今の作戦だとまず菜緒様が『世界真理』を使わなくてはぁなりません。ですがですが、お相手さんの瑠璃の『能力』は『読心』。我々の作戦は筒抜けで、実質俺一人が三人を相手取る構図になりますねぇ。いやぁ、瑠璃はほんと相性が悪い」


 藍津はぺしっと自分の額を叩いておどける。

 実際藍津の言う通りで、瑠璃の『能力』は非常に危険だ。

 彼女が唯一戦闘系統の能力ではないのに生存戦争に選ばれただけあり、『読心』はそこらの『能力』とは一線を画す。

 しかし菜緒は鼻から奇襲をかけるつもりはないため、藍津の言ったことについては深く考えずアルベストを見る。


「私たちが動かないのはこういう理由。でもアルベスト、あなたは違うでしょ?ライザーと互角、もしくはそれ以上のあなたなら多少負傷はすれども余裕を持って勝てるはず」


「そうだね、僕なら余裕であいつらを蹴散らせる。今の僕の敵は七録カナメ、そしてあとはお前と言ったところだ、菜緒」


「……」


「だけど、僕にも目的がある。今カナメの優先順位はそこまで高くない。だから殺さない。それだけだよ。あとここの画像は音は拾えないから、カナメが気絶しているのか寝ているのか区別がつかない…….ってのもあるかな。負傷しているといえど『正四尺玉』の威力は常軌を逸している。警戒するに越したことはない」


「ふーん」


 菜緒は自分から聞いたというのに、アルベストの話を後半辺りから聞いていなかった。


 なにせ──ついにダクネスと宏人が動いたからだ。


「取り敢えず、悪巧みはこれくらいにして……ダクネスたちを応援しましょうか」


 *


「散開!」


 俺たちは四人に分かれ、それぞれ別方向からダクネスに駆け出す。

 ダクネスは余裕の笑みで、静かに俺たちを見ている。

 ……いや、俺だけか。

 ダクネスの目は、俺だけに向けられていた。

 

 だけど、それは油断だ。


 ダクネスは迫り来る黒夜たちの拳を無視し、俺に手を伸ばそうとし──!


「ッ!?」


 黒夜たちに、吹っ飛ばされた。

 ダクネスは鼻血を乱暴に拭きながら、俺を睨む。


「なるほどねぇ……宏人くんの『変化』でみんなの『能力』を体のなかで完結する能力に変更したんだ」


 そう、ダクネスの言う通り、俺はみんなの『能力』に『変化』を施した。

 『旧世界』は、過去の世界。

 過去の世界では、『能力』によって生み出される全ての現象が禁止されている──だが。

 それは世界に影響を及ぼす明らかな『能力』のことであり、自分の体のなかで完結する能力、『身体能力上昇』や『変化』は、『旧世界』でも使用可能なのだ。

 俺は黒夜たちの『能力』を体のなかでも完結させられるように調整した。

 だからこの『世界』でも、パンチという単純な攻撃のみとはいえ、黒夜たちもダクネスに攻撃を与えることが可能なのだ。


「……よく分かったな」


 ……だが、それでダクネスを倒せるなんて微塵も思っちゃいない。

 いくら再生能力が底をついたとはいえ、ダクネスが神人であることに変わりはない。


「あはは。これ絶対クソ狂弥が教えたことでしょ」


 ダクネスは、相も変わらず笑顔のまま、俺を見据えてそう言った。

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