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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
209/301

201話(神サイド) セバスvsザックゲイン②


 ザックゲインの顔が燃える。

 だが『炎舞』はあくまで炎を操る『能力』。

 威力は全くないと言っても過言ではないため、ザックゲインはセバスを振り落とし『炎舞』に『適応』する。


「お似合いですよ」


「……言ってくれるねぇ」


 ザックゲインの顔は、原型を留めていなかった。

 傷や怪我は深ければ深いほど一秒でも早く回復系統の『能力』を施さなければ回復困難状態に陥る。

 それというのも、回復系統の『能力』が、その怪我をしている状態こそが、最大限回復している姿と誤認してしまうからである。

 つまり、これ以上戦いを続ける場合、ザックゲインの顔はもう──


「逃がしませんよ?」


「それはこっちのセリフだよ。顔なんて所詮飾り物だしね」


 ザックゲインが再度無数の雷を降らせようとするなか、セバスは駆け出す。

 カールが代わりに死んでから五分間、セバスは不死身ではない。

 ザックゲインはカールが死んでいる今はセバスは不死身ではないと察してはいるが、五分のインターバルについては知らないため急がず確実に殺すことを狙う。

 

 ──再度、無数の雷がセバスを襲う!


 だがセバスは『炎舞』を発動し、雷の軌道を晒した。

 『炎舞』は熱を支配する『能力』。

 雷にだってもちろん熱はあるため、カミノワザといえど若干の支配は可能だ。

 これが今回セバスが『能力』を『炎舞』にした理由。


 そして軌道をずらした先──ザックゲインの元に、雷が降り注ぐ!


「えげつな……!」


 ザックゲインは『サンドライトニング』を応用し、光の速さで悉く回避する。

 いくら自分の式神の能力であれど、直撃すれば即死だろう。

 ザックゲインは冷や汗をかきながらも、そのままセバスへ突っ込む。


「ッ!?」


 セバスはザックゲインのあまりの速さに目を瞬かせる。

 人間である以上、光の速度に追いつけることはない。

 しかし皮肉なことに、ザックゲインも人間である以上全力の速さを出せない。

 だが速いことに変わりはなく、セバスの体に浅くない傷が刻まれていく。


(……どうするべきか)


 セバスは取り敢えず五分間は致命傷を防ぐことだけをすることにして、思考する。

 次死んだ際に獲得する『能力』についてだが、これはザックゲインと戦闘している最中はずっと『炎舞』にすることを決める。

 ザックゲインには簡単に『適応』されているが、他の『能力』もあまり大差ないであろうことに加え、この式神の『能力』を封印出来るのはかなりのアドバンテージだ。

 だが新たな『能力』で『適応』される前に仕留めることも──


 途端、ザックゲインは呟いた。


「『クロスオーバー』!」


「──」


 気付くと、セバスの目の前にはザックゲインが。

 視線を下にやると──『勇者剣』に貫かれている、己の胸が。

 

「最期だし、遺言を聞いてあげるよ」


 ニコリと笑顔で言うザックゲインに、セバスもニコリと笑って答える。


「残念──もう、五分です」


 *


「なーんでセバスはそんな堅実的なんだよ」


 生存戦争が始まる前の、カナメのスペシャル特訓にて。

 カナメはセバスと戦い終わった後、意味がわからないというようにそう言った。


「……堅実的、です?」


「ああ。せっかくの不死性が台無しなくらいだよ。なに、死ぬの怖い?」


 カナメがおちょくりながら肘をうりうりとする。

 セバスは少しカチンとしながらも、敢えて正直に答える。


「もちろん怖いですよ。まあ慣れてはきましたが、僕死神取り込んだだけのただの人間ですからね?カナメくんみたいに人間辞めてないんですよ」


「いやいや、死神取り込んでる時点でただの人間じゃあないでしょ」


 カナメは引きながらセバスを見る。

 パッと見はセバスが言うようにただのひ弱な少年だが、その纏うオーラがやばい。

 はっきりと言って禍々しい。

 動物なんかセバスを見るだけで失神するのではないだろうか。


「まあともかく、セバスは限定的だけど死に放題なんだからもっと狡猾に戦っていいと思うよ。さもないと──ほんとに死んじゃうよ?」


 *


 セバスは背後でカールが目覚めたのを確信すると、『勇者剣』を更に胸に食い込ませる!


「なっ、また……!」


 ザックゲインの脳裏に、カナメの腹に『勇者剣』を指した時の記憶が蘇る。

 ザックゲインは瞬時に剣から手を放し、背後より襲いかかってきたカールと徒手空拳で戦う。


(今のセバスは死ぬことは確定だけど、まだ死ぬまで時間があるなぁ……。トドメを刺すのは難しくないけど、カールだって弱くないし、ここは耐えるべきかな)


 カールは異形の怪物だが、シルエットはあまり人と大差ない。

 そのため首と思われる部分もちゃんとあり、ザックゲインはそこに腕を絡んで締め上げる。


「〜〜!!!」


 カールから声にならない悲鳴が。

 だが死神の片割れというだけあり、ザックゲインの腕がみしりと軋む。

 

「ッ……!」


 このままでは握りつぶされると判断したザックゲインは後退し──その先には。


 ──鎌を振りかぶる、セバスが。


「──!」


 ザックゲインが油断したと感じる時には既に遅く、セバスの鎌がザックゲインの首を切断……しようとしたところで、手からカランと鎌が落ち、セバスは死んだ。

 すると、次の瞬間にはカールがセバスに。


「あはは……あんまり怖がらせないでよ」


「次は殺します」


 セバスはいつの間にか持っている鎌を回しながら、淡々とザックゲインの元に近付いてくる。

 ザックゲインはセバスに警戒しながら、ちらりと背後を見ると、勇者剣はカールの胸にざっくりと深く刺さったままだった。

 

 ……勇者剣は物理的に封印され、式神の能力も『炎舞』で封印され……敵はあと4分もすれば不死身になる。

 残る手段は『サンドライトニング』のなか、ザックゲインは──笑う。


「上等だ!」


 ザックゲインは雷の式神の『雷電』の名前を叫び、十柱の雷をセバスに降らす。

 セバスには簡単に『炎舞』で軌道を逸らされ、しかもこちらに撃ち返してくるが、気にせず雷を落とし続ける!


「さぁ、そろそろ終わりにしようかっ!」


 ザックゲインはそう叫ぶと共に、光の速度で縦横無尽に駆け巡る。

 撃ち返された雷すらも置いていく超スピードに、セバスに緊張が走る。

 

「ッ!?」


 瞬間、セバスの腹部にザックゲインの拳がめり込み──電撃!


「──!!!」


 セバスは気絶しないよう必死に意識を保ち、なんとか『炎舞』を発動し電撃の流れを逸らす。

 だがその隙にザックゲインは攻撃を叩き込む。

 勇者剣を奪えたことで幸い拳だが、それでも殴るスピードが桁違い。

 なんとか数分耐え凌ぐと、カールが起き上がった。


「よっし!」


 しかしそのことをザックゲインは悲観することなく、むしろ待っていましたとでも言わんばかりにカールに向かう。

 そう、カールに深く突き刺さった勇者剣は、復活する際に向け落ちていたのだ。

 ザックゲインは、再度勇者剣を手に──!


 その時。


 背後から、ザシュッと不快な音がした。

 ザックゲインはこの音を知ってる、人が斬られた時の音が。

 ザックゲインは思わず自分の体を見た。

 ……何もない。

 

 それも当たり前である。

 なにせセバスが斬ったのは──自分なのだから。


 ザックゲインが顔を上げると、そこにはカールではなく、セバスが。

 セバスは己の首を斬り、瞬時にカールと『存在』を交換したのだ。

 無表情のセバスの人差し指が、ザックゲインのこめかみに、とんっと触れる。


「あはは。嵌められたね」


「──『爆破』」


 *


 ──『雷撃豪雨』が崩れていく。

 崩壊する『世界』のなか、セバスはザックゲインが死んだと確信した。

 最後自害出来たのは、つい最近聞いたカナメの言葉のおかげだ。

 

『ほんとに死んじゃうよ?』


 確かに、あの時セバスが自殺するのを躊躇っていたら、負けるとは言わないが苦戦することになっていただろう。


「──!」


 そんな風に戦いを振り返っていると、カールが叫んだ。

 何事かと思った時には遅く、焼死体みたくなったザックゲインの勇者剣がセバスの首元に──!


「……あはは。残念」


 セバスの首を切断する前に、ザックゲインは倒れた。

 ハッと背後を見ると、既にカールは死んでいた。

 おそらく『アンデット』に『適応』したのだろう。

 いつのタイミングで『適応』したかは知らないが、次殺されていたら本当に死んでいた。

 カールについては問題ない。

 莫大だろうが、また『能力』を供給すれば復活する。


「……はは」


 セバスは思わず、小さく笑う。

 思ってもみなく、倒した相手には必ずトドメを刺さなければと学べた。

 学びは大切だ。

 戦いに於いて、人の命なんか軽いどころじゃないのだから。

 自分の身を守れるだけの力と、学びと、仲間が揃っていなければ、何も出来ずに野垂れ死ぬだけだ。


「最後ですし、遺言ぐらい聞きますよ」


 セバスは、既に虫の息のザックゲインに、先程言われた言葉を言い返した。

 それにザックゲインは力無く笑い──。


 それは、彼なりの反抗なのか。


 ザックゲインは、何も言わずに、地獄に帰っていった。


 ──ポンッと、セバスの頭に響く。


『『適応』を獲得しました』


 ……と。

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