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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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200話(神サイド) セバスvsザックゲイン①


「僕は──セバスだと思うな」


 時は少し遡り、カナメとライザーが戦うよりも前のこと。

 神の間にて、アルベストは生存戦争にて一番の強者だと考える人物の名を口にした。

 だがセバスは既にザックゲインに敗れている上に敗北している。

 セバスの『能力』を知るカナメと、知れる菜緒以外の二人が怪訝そうな顔をする。

 ダクネスとライザーである。

 ダクネスは首を傾げた。


「あれ?そういえばセバスくんの『能力』ってなんだっけ。この前ちょっと戦った時は鎌振られただけだから知らないや」


「オマエはセバスの大元である死神を殺したんだろう?死神の『能力』はなんだ」


「あれぇ?ライザー知らなかったの?強い人探してたのに意外ー」


「ハッ。日本の神などつまらんからな。で?奴はどんな力を持っている?」


「死神はえげつない鎌降ってただけだよ?多分私が殺した時にはもうセバスくんに力分けてたみたいだったし。それでカナメくんとアルベスト、セバスくんの『能力』はなに?」


「いや言うかよ。ンなもん教えたら──」


「『アンデット』の『呪い』だよ」


 カナメの声に被せてアルベストは答えた。

 カナメは何か言いたげな顔でアルベストを睨む。

 しかしアルベストはそれさえ気にせず続けた。


「しかもしかも、これまた彼の『能力』の件がおもしろくてさ──」


 *


「──ええ。お陰で一命を取り留めました」


 息も絶え絶えのザックゲインの前に、殺したはずのセバスが姿を現した。

 ザックゲインはシェリカの『全快』もあって満身創痍というわけではないが、万全の状態とは程遠い。

 何よりも一番の問題は剣だ。

 ザックゲインが常に肌身離さず所持していた、『勇者剣』。

 手をかざすだけで一瞬で手元に戻ってはくるが、セバスにそんな隙は見せられない。


「……もしかして『不死』とかだったりする?そうなら早く言ってほしかったな。ほしいや、『不死』」


「まあそんな感じですよ。あ、もう会話はいいですか?前回もかなり喋ったから十分なんですよね、あなたとの会話」


 セバスはそう言うと、さっそく背から鎌をとりだす。

 

 回復、蘇生の一切を禁じる最強の鎌──『死神の鎌』。


 対するザックゲインは丸腰。


 ここからどうするか……!

 

 ザックゲインが頭を悩ませていると──ふと、先程の光景がフラッシュバックする。


「そうだ……あはは。ありがとうカナメ。教えてくれて」


「ふっ──」


 セバスは無言で一人呟くザックゲインに鎌を振る。

 避けられることは分かりきっているため、セバスは振り切った後返す手でもう一閃繰り出すことを決め──。


「え?」


 ザックゲインは、避けなかった。

 首を狙った一閃は、ザックゲインの左手によって塞がれていた。

 回復不可の一撃、これでもうザックゲインは左手を使えない。

 だというのに──ザックゲインの手元に、『勇者剣』が収まった。


 カナメはライザーに対処する間、ザックゲインの急所以外の攻撃を全て受けてライザーに専念していた。

 ザックゲインは、それに倣ったのだ。

 

「式神展開──『雷撃豪雨』」


 そして──『世界』を広げた。


 大雨が降る砂漠の大地の上空には、真っ黒な雷雲がいくつも浮遊している。

 地面の砂は瞬時に濁った水に姿を変え、遠くの方で何発もの落雷が。

 セバスはびしょ濡れになりながら小さく呟いた。


「これは……アルベストの」


「あはは。セバスは式神持ってないの?一応これ神の式神だよ?」


「問題ないよ──来て、カール」


 刹那、セバスの背後に真っ黒な円形の穴が出現。

 そしてその穴から、異形の怪物が姿を現した。


「それは式神……じゃないね。まさか死神?」


「の、成れの果てだね。ダクネスが死神の本体を殺したのに加えて、一度龍に踏み潰されたからね。色々バグって変な風に分離しちゃったんだ」


「それはそれは。色々大変そうだ」


 ザックゲインの左手から大量の血が噴き続ける。

 『適応』で鎌の回復不可能力を無効化出来るが、まず回復手段がないためする必要がない。

 だがその代償に、右手に『勇者剣』を掴んだザックゲインの顔は先ほどより晴れていて──。

 大雨の中、両者は動いた。


「『サンドライトニング』」


「──『爆破』」


 高速でセバスの元へ駆け出すザックゲインに、『爆破』が命中。

 

「!?」


 ザックゲインは驚きながらも冷静に対処し、体制を立て直す。

 幸いにもそこまで威力はなく、瞬時に『適応』の対象を『爆破』に設定。

 七録カナメと同じ『能力』というのが恐ろしいが、ザックゲインは止まらずセバスに肉薄。

 ザックゲインとセバスの剣と鎌がぶつかり、鍔迫り合いになる。

 そしてガラ空きになったザックゲインの背中を、カールが容赦なく殴り、ザックゲインは地べたを転がった。

 

(あのカールとかいうの……もしかしてそこまで強くない?)


 その巨大のためかパンチの威力はあったが、だからといってどうにも強いとは思えない。

 ザックゲインがそう思考してる内に、セバスとカールが口を開く。


「「『爆破』」」


「ッ」


 セバスとカールの同時『爆破』。

 それは七録カナメが作り出す『花火』と酷似していたが、ザックゲインの『適応』はものともせずにダメージを無効化する。

 

 カールはセバスから力を引き出しているため、必然的に『能力』はセバスのものとなる。

 そのためセバスが死んだ場合カールの供給はなくなるため──。


 ザックゲインは『サンドライトニング』を駆使し高速でセバスとカールを同時に相手する。

 セバスの鎌に特に気をつけ、『勇者剣』で防ぎながらカールを割れた左手と足で対処。


「あはははは!セバスさぁ、なんでこの前は力隠してたの?普通に強いじゃん」


「──ッ」


 ザックゲインの足蹴りを、セバスは鎌の持ち手で塞ぐが、威力を殺しきれずぶっ飛ばされる。

 カールがセバスの元へ駆け出したが、ザックゲインはカールの首を切断。

 だがカールは高速で再生し、今度はザックゲインに襲いかかる。


「まあ──もう手遅れなんだけどね」


 カールがザックゲインに馬乗りになったが、ザックゲインがとある神と同じように指を鳴らした瞬間──


 無数の雷が、セバスに落ちた。


 その数はおよそ十本。

 人間の致死量を遥かに超えた電撃の柱は、振った後もピリピリと空気を震撼させていた。

 死体すらも残さない、この『世界』の力。

 ただ死神の鎌だけが、虚しく転がっていた。

 

 ──神の式神は、数の暴力。

 

 アルベストの式神『雷撃豪雨』は、自在に降らせる無数の雷を操る『世界』。

 アスファスやアルドノイズといった成長し切っていない神々とは一線を画す、最強の異能。

 

 だがセバスの異能は──。


 ザックゲインは読み間違えていた。

 セバスが蘇生に成功したのは、まだ死体が原形を十分に保っていたためであったからと。

 そうでなければ、無制限の復活なんてカミノワザを超えている、と。


 ザックゲインの予想通り、セバスの『アンデット』は無条件ではない。

 

 それは。


「へ?」


 ザックゲインの目の前には、セバスがいた。

 先ほどまでザックゲインに馬乗りになっていたのはカールだったというのに──。


「ッ!」


 そこで、ザックゲインは理解した。

 セバスの蘇生条件、それは──カール!


「おはよう。そしておやすみ」


 セバスの人差し指が、ザックゲインに向けられる。

 これは『爆破』の前兆。

 ザックゲインは『適応』があるため何も対策せず、剣をセバスの首に目掛けて──!


「──『炎舞』」


 『アンデット』の成功条件は、カールが生存していること。

 カールは不死身だが、それはセバスが生きている間だけのこと。

 カールの存在も能力も全てセバスにあるため、セバスが死ねばカールは不死身ではなくなる。

 つまり、セバスを殺すには、セバスを殺したあと瞬時にカールを殺さなければならないことになる。

 だが供給源であるセバスがいないカールに力はない。

 そのため、セバスは『自分』と『死神』の存在を明確に区分し、セバスが死んだ際にカールをセバスにするという離業を生み出した。

 その際はもちろん死んだセバスがカールとなり、カールが復活する五分間のインターバルが過ぎた後二人は完全復活する。

 

 まとめると、セバスを殺すには、セバスを殺した後、カールがセバスになるため、セバスがカールとなったカールが復活するまでの5分の間に、もう一度カールがセバスになったセバスを殺さなくてはならないのだ。

 

 これはその副産物に過ぎないが、セバスは復活の際、『能力』の変更が可能になった。

 人は産まれる際に無数にある『能力』の内どれか一つをランダムに手に入れる。

 それは赤子には知能がないため、結果的に適当な『能力』を獲得することになる。


 死から蘇るのと、新たな命が誕生するのは、産まれる際に同じ道を通う。

 

 そのためセバスは──復活する際に『能力』を自由に選択出来るのだ!


 アリウスクラウンと同じ炎が、ザックゲインを包んだ。

 

 

お久しぶりです。遂に200話に到達しました。正直今回の話は書くのがとても難しかったです……。セバスについて今まで全く説明していなかったのが仇となりました。そのため今回はかなりめんどくさく分かりづらい説明を長々とすることになってしまいました。……まあ、完結まであと50話ぐらいですので、とにもかくにも頑張ります!

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