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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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199話(神サイド) カナメvsライザー④


「──おい。さすがにこれはないだろ」


 俺はカナメとライザーの戦いから目を離さずに立ち上がった。

 

「ダメだ。宏人が行くことは許さない」


 だがアルベストは一瞬で俺の背後に移動し、肩を掴んで諫めた。

 

「なんでだよ。これはカナメとライザーの戦いのはずだろ。ザックゲインがライザーに加担するのはカナメに不利すぎる。今すぐ中止させるか誰かがカナメにも加担するべきだろ」


「きみは今生きるか死ぬかの瀬戸際だってことを忘れちゃ駄目だよ?それも僕の一存でだ。あまり僕の期限を損なわせない方がいい」


「そこのきみたちもだよ。宏人くんと一緒にここに来た以上、私たちは結果次第ではきみたちも殺すつもりだから、大人しくしててね?」


 立ち上がる黒夜たちを、ダクネスの眼光か射抜く。

 ……ここで暴れても意味がないだろう。

 なにせここにはアルベスト、ダクネス、七録菜緒、そしてこの空間の奥にも奇妙な気配がある。

 

 ……もう、あとはカナメに任せるしかない状況が歯痒い。


 そんな俺を、ダクネスが嘲笑う。


 *


 『サンドライトニング』を応用し高速で飛び回るザックゲインと、ライザーの『空間支配』をカナメは冷静に対処しながら、『世界花火』を撃つ。


「ッ」


 見た目は『爆破』の規模を大きくしただけ。

 だが威力は絶大であり、直撃したライザーをズタズタにした。


「……空間を割って回避したはずだが。クク、お前のそれ、なんでも破壊する能力といったところか?」


「そうだよ。相性悪いな、お前」


「そうとも限らんさ」


 ライザーはカナメの至るところの空間を割り、カナメはそれを悉く破壊する。

 その隙にザックゲインに体の隅々を切り裂かれるが、これは無視。

 致命傷以外は神人の再生能力に一任することにして、焦点をライザーに絞る。


「たはは。さすがに凹むよ。相手してくれるんじゃなかったの?」


 ザックゲインは苦笑いで、しかし攻撃は止めない。

 だがカナメはそれでもザックゲインを相手にしない。

 空間が割れ、その空間自体を破壊することを繰り返す。

 おもしろいことに、『世界』は『割れた空間が破壊されたモノ』を記憶しない。

 ライザーとカナメの攻防が繰り返される度に『世界』は修復を繰り返し、元通りとなる。


 それを繰り返す内に──ドスッと、ザックゲインの剣がカナメの腹部を貫いた。


 カナメは──笑う。


「クク。死んだな」


 ライザーのその言葉を皮切りに──カナメはザックゲインを捉える!


「遅れてごめんな──今から相手してやるよ」


「ッ!」


 ザックゲインはカナメから剣を抜こうとするも、カナメは再生能力をフルに回し抜かせない。

 カナメの拳がザックゲインに炸裂。

 『爆破』と『衝撃』が付与された拳はザックゲインの頬を抉るが、瞬時に回復され、剣が無くなったザックゲインも徒手空拳で立ち向かう。

 『適応』のためザックゲインはカナメに十分に対応出来るが、カナメの拳の威力は異常。

 ザックゲインの蹴りがカナメの脇腹に命中するが、カナメは気にせずザックゲインの顔面を貫く。

 

「──!」


 ザックゲインは血反吐を撒き散らしながら急降下。

 『適応』とシェリカの『全快』があるのにも関わらず、意識が刈り取られる。

 そんなザックゲインに、カナメは『世界花火』の追い討ち!


「ガ────……!」


 『適応』で『世界花火』を無効化してはいるが、『世界花火』の破壊力が『適応』を上回る。

 そしてトドメに──!


「『線香花火』」


 ザックゲインは思わず目を固く瞑る。

 ……だが、自分に振ってくる気配はない。

 

 そう──カナメの『線香花火』は、シェリカのいる場所に投下されていた──!


「ッ!シェリカ!」


 その間にもザックゲインはシェリカの『全快』によって体が完全に再生し──『サンドライトニング』で駆けつける!


 その頃には既に──!


「え──」


 ザックゲインの目の前で、シェリカは悲鳴をあげる間も無く消し炭になった。

いつの間にか、背後にはカナメが。

ザックゲインは、力なく笑う。

 

「……あっははは。容赦ないね」


「……」


 カナメは何も答えず──ザックゲインの顔面を殴った。


「──!?」


 『サンドライトニング』を駆使してやっとおいつける速度。

 ザックゲインの体は空を舞い──カナメは更に叩き込む。

 ライザーは笑っているだけで動く気配はない。

 ザックゲインはなんとか体制を整え、カナメに反撃しようと──!


「──『万華鏡』」


「あっははは。むりげー」


 光の奔流に呑み込まれ──ザックゲインの姿が消失した。


 カナメはそこでやっと腹部に突き刺さったままだった剣を抜き、へし折って地に落とした。

 その際に腹部から多量の血が舞うが、お馴染みの再生で以って傷を塞ぐ。


 そして、カナメは無言でライザーに向き直る。


「いいのか?おそらく奴はまだ生きてるぞ」


「別にいいでしょ。敵じゃない」


「ああ、確かにそうだな」


「ところでお前は良かったのか?ザックゲイン助けなくて」


「別にいいさ。あいつがいなくても勝てる。負けても二体一を挟んだからと言ってくれるなよ?」


「当たり前じゃん。負けねーし」



「そうか。なら──耐えてくれよ?」



 そして、ライザーは遂に式神の権能を発動した。

 『虚構蒼穹』は、どこまでも続く晴天の青空の『世界』。

 その青空には終わりが見えなく、まるでどこまでも続いていて──。

 この『世界』の能力、それは。


「『虚構蒼穹』自体の『世界』は存在しない。ただ『能力』が、その空間だけをどこにでも繋げられるというものだ」


 ライザーが不敵に笑いながら見下す視線の先──そこには、宇宙空間に生身で漂うカナメの姿が。


 これが、ライザーが最強と謳われる必殺技。

 他人の式神を制限し、絶対に自分の最強の式神を展開出来る神の御業。

 ダクネスや菜緒といった同世代の他の神人では全く歯が立たない、最強の神人──それがライザー。


「さあ、魅せてみろ七録カナメ。──ここから、どうする?」


 カナメの意識が、途切れ──


 *


「ハハ……あはははは。つえー」


 ザックゲインは地面に仰向けで寝そべりながら笑う。

 だがその笑い声にはいつもの様な覇気はなく、疲労が透けて見える。


 シェリカが死んだ。


 純粋な彼女に、「傷つくたびに回復してほしい」、「宏人たちがシェリカを探すことになるだろうからその時は隠れてね」と命令したため、シェリカは死んだ。

 正直、ザックゲインはシェリカなんてどうでもいい。

 問題は回復手段がなくなったことだ。

 カナメの猛攻にて急所はなるべく避け、いなしたりしたが、ただでさえ威力が異次元なあのパンチ。

 ザックゲインは全身痛むなか、よろよろと立ち上がる。

 ふと上を見上げると、未だカナメとライザーは戦っている。

 そのためこの森は現在大炎上中。

 疲れているのに、おかげで息すらままならない。

 しかしそれでもザックゲインは油断はしない。


 こちらに向かって歩いてくる小さな足跡を、決して聞き逃したりしなかった。


「お久しぶりです。ザックゲイン」


「……えー。きみ、まだ生きてたの?──セバス」


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