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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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198話(神サイド) カナメvsライザー③


 ──血流が早まり、心臓がどくんどくんと五月蝿い。

 鳥肌が立ち、アドレナリンがどくどくと溢れる。


 ここで、やっとカナメは気付いた。


 ──俺は今、ライザーとの戦いを楽しんでいるッ!


「クク。死相が出てるぞ」


「んなわけねぇだろ。元気いっぱいだ」


 カナメは体を伸ばし、軽くストレッチをする。

 

 左半身を潰されたカナメであったが、再生能力を全開にしてなんとか命を繋ぎ止めた。

 ここまで損傷している状態から初めて回復してみたが、どうにもかなりの負荷がかかっていた。

 だから、これは確信だ。

 ライザーの再生能力は、かなり効力が弱まってきている。


 ライザーが、自分のいる空間を割る。


「さて、続けよう」


「ああ。ここからはノンストップでいこうぜ」


 刹那──ライザーの姿が消える。

 そして次の瞬間には、カナメの背後に。


「俺のパクリじゃん」


「クク。意外と心臓に悪いだろう?」


 カナメはライザーの蹴りを最低限の動きで躱し、更にバックステップで後退する。

 すると、カナメがいたところの空間が砕け散った。


「起動を理解したのか……!」


 ライザーは笑いながらカナメに何発も『空間圧縮』を打ち込む!

 だがカナメは冷静に気配を察知しながら避け、時には爆破し回避する。

 

(慣れたけど、発動の早さが以上だな……。万華鏡はもう無理かな。警戒されてる)


 そう思考し、カナメは無難にライザーに近付き接近戦に持ち込もうと──。


 カナメはそこでハッとした。


 ──いつから俺は、ライザーに『爆破』が効かないと決めつけていた?


 ゼロ距離爆破か接近戦しか攻撃手段がない?

 正攻法が効かない?


(ざけんな)


 カナメは自分に舌打ちし──決めた。

 

(今までの威力でダメならさ、それ以上のキメればいいじゃん。最大出力の『万華鏡』を撃ち込むか)


「ッ」


 ライザーが立て続けに『空間圧縮』を発動していると、突然カナメが辺りに『爆破』を展開した。

 ライザーに『爆破』が効かないと確信してから一向に発動していなかった『爆破』が、吹っ切れたようにあちらこちらに出現する。


「ごめんなライザー!ちょっと勘違いしてたよ。やっぱツエーな──俺」


 カナメは楽しげに更に『爆破』を増やしていく。

 それはまるで──!


「『花火』」


 いたるところで大爆発が吹き荒れる。

 

「ハハッ。やってくれる」


 ライザーは無難に自分の周りの空間を壊し、隔絶された世界の中、安全圏から『花火』を見る。

 大量の『花火』は隙間なく空に埋め尽くされ、火花が落下し森が燃えていく。

 そんな中カナメは──ライザーがいるであろう方向に、人差し指を向ける。

 炎は炎を喰らい、更に威力を増す。


「『万華鏡』」


 カナメがそう呟いた頃には既に──ライザーに直撃していた。

 

 *


『あなたへのミッション──それは、ライザー・エルバックの死守です。この生存戦争期間中、決してライザーを殺させないでくださいねぇ?』


 それは、ザックゲインが藍津から情報を購入した際に言われた言葉。

 ザックゲインからしたら藍津など何も怖くないため約束なんぞいくらでも破っていいのだが……それを藍津の優秀さが邪魔をする。

 今後も取引する機会を残しておくために、きちんと義理を返さなければならない。

 

「……だから、きみが相手でも立ち向かうさ。ねえ──カナメ?」


「……ザックゲインか」


 カナメの『万華鏡』に直撃したのは、ライザーではなくザックゲインだった。

 最大出力の『万華鏡』は見事ライザーの空間を割ったが、直撃の寸前にザックゲインがその身を呈してライザーを庇ったのだ。

 

「めちゃくちゃ痛いんだけど……僕『適応』したはずなんだけどこんな喰らうのおかしくない?最大ダメージ限界突破してるじゃん」


 ザックゲインは真剣な表情になり、カナメを見据える。


「俺と戦うのか?お前が?」


「僕はきみの『能力』に『適応』してるからね。もちろんガードも突破出来るさ」


「……オイ、ザックゲイン。オレがいつ共に戦えと言った」


 ザックゲインの頭を、ライザーが掴んだ。

 だがザックゲインはその手を気にせず、あっけらかんと言う。


「それはライザーが今負けそうだったからだよ。困るんだよね。きみに簡単に死なれると」


 瞬間──ライザーはザックゲインの頭の空間を壊した。

 しかしその直前にザックゲインは『適応』の対象を『空間支配』に変更していたため、何の被害もなくライザーの手から逃れる。

 もちろんその後すぐに『爆破』に『適応』することを忘れない。

 それを見て、カナメは楽しそうに人差し指をクイクイして挑発した。


「いいぜ?二人纏めてかかってこいよ」


「ありがとうカナメ!さっそく殺すね」


「……白けた。すまんなカナメ、さっさと殺すことにする。その次はオマエだザックゲイン」


 刹那──三者が同時に動き出した。

 

「『花火』」


「『空間支配』」


「『サンドライトニング』!」


 カナメは『空間支配』を毎度の様に回避しようとするが、『サンドライトニング』が邪魔をする。

 

(避けようがないな。再生能力もまだ余裕あるし、カウンターの姿勢でいこう)


 カナメは『空間支配』の回避をそこそこに、『サンドライトニング』を『花火』で打ち消す。

 避けきれなかった『空間支配』がカナメの腹に穴を開けるが、一瞬で治癒する。

 

「ゴホッ」


 腹に大穴と再生能力のフルスピードは体に負担が重かったのか、血反吐に加え鼻血が出る。

 だがカナメは適当に血を払い止まらず突進──ザックゲインへ。


「ッ!?はやっ……」


「喰らえ」


 カナメは拳をザックゲインの腹に突き刺す。

 ザックゲインは咄嗟に剣でガードしたが、カナメは空いた手で再度腹に──直撃。


「ガハッ……!」


「お前は釣り合ってねぇよ」


 『爆破』と『衝撃』を乗せた拳は、見事ザックゲインの腹を貫いた。

 だが──カナメが手を抜いた瞬間、ザックゲインの腹は一瞬で再生する。

 ……その時、カナメは聞き逃さなかった。

 程よく離れた場所にて、誰かが『全快』と唱えたのを。


「……そこか」


 瞬間、カナメは一瞬でシェリカのもとへ。

 『衝撃』の応用の瞬間移動。

 超能力者時代では体が保てないため封印していたが、神人と成ったことでそれを可能にしていた。

 だがその前に、ライザーがカナメの上半身を斜めに切り裂いた。


「ッ」


「行かせないよ?」


 カナメから血飛沫が舞うが、一瞬で回復する。

 対するザックゲインはまだ腹の不快感が消えていない様子で、肩で息をしている。

 そして、今度はライザーの『空間支配』が襲いかかってきた。


「少々邪魔が入っているが……問題あるか?」


「ないね。二人纏めて相手してやるよって言ってんだろ」


「クク。強がりは短命の元だぞ」


 ライザーはニヤニヤしながらカナメを見る。

 神人の再生能力で体、つまり外見は上手く何でもない様に取り繕ってはいるが、能力残量はそろそろ限界に近いだろう。

 ライザーとしては、正直ザックゲインの加勢は心強い。

 一人の勝負師としては一対一を邪魔された件について怒ってはいるが、ライザーも現界に近い。

 カナメとの戦闘が終わり次第、ザックゲインも殺すつもりだ。

 そんなことをライザーが考えていると、カナメがクツクツと笑い出す。


「……遂におかしくなったか?」


「いやいや、楽しくなってきたと思ってね。じゃあ──本気魅せるぜ?」


 ──刹那、カナメの纏うオーラが変わった。


「どういう状況……?」


「さてな。クク。カナメめ、まだオレ相手にに切り札を残していたか」


 ──神人には、この『世界』に影響を及ぼす力がある。


 例えば吐夢狂弥の『時空支配』はこの『世界』の時間に影響を。


 例えばダクネスの『旧世界』はこの『世界』の秩序に影響を。


 例えば七録菜緒の『世界真理』はこの『世界』の未来に影響を。


 例えばライザーの『空間支配』はこの『世界』の空間に影響を。


 例えば七録カナメの──『世界花火』は、この『世界』の存在に影響を。


「なるほど、今までの『極爆破』はただの『超能力』か」


「そゆこと。じゃあ行くぜ?まずは──ザックゲイン。お前からだ」


「怖い怖い。お手柔らかにお願いするよ」


 三者が上空にて、不敵に笑い合う。


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