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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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197話(神サイド) カナメvsライザー②


 生存戦争上空にて、カナメとライザーが悠然と佇んでいた。

 およそ数秒の間、カナメは冷静に状況を整理する。


 まず、ライザーの『能力』は『空間支配』。

 空間を操る能力だというのは分かるが、範囲、威力、仕方については未だ分かっていない。

 極めつけは『空間支配』による式神の封印。

 これにより、カナメはどう足掻こうと式神を展開することは不可能となる。

 そしてライザーの式神、『虚構蒼穹』。

 これについては一切情報がないが、これをライザーは取り込んだ。

 

 つまり──ライザーは常時この式神の権能を自在に操れるようになるということ。


 ……無意識に、カナメの口角が上がる。


(いいね、おもしろい)


 エラメスとの戦闘で掴んだ、『爆破』の真髄。


 ──やっと、試せる。


「『極爆破』」


 カナメは容赦なくライザーに何発も打ち込む。

 だがライザーが横に手を払うと、空間が割れ、爆破もろとも、世界を壊した。


「おう……」


「続けよう」


 ライザーは顔を笑みに染め、拳に『能力』を付与する。


「殴り合おうか」


「いいね。シンプルだ」


 カナメも拳に『爆破』を練り込み、加えて『衝撃』も乗せる。

 超能力者時代には既に、『爆破』と『衝撃』を使い分けていた。


 カナメが付与し終わった瞬間、ライザーは殴りかかってきた。

 カナメは敢えてライザーの拳を受ける。

 カナメの異能の中には、自分以外の存在を寄せ付けない絶対防御が含まれている。

 案の定、ライザーの拳はカナメに直撃する寸前で止まった。

 

「お前のこれ……割れるな」


 ライザーがそう呟いた瞬間──ライザーの拳がどんどんとバリアにめり込んでくる。


「ッ。やべっ」


 カナメは顔を引き攣らせてバックステップの要領で後退する。

 ライザーは手を閉じたり開いたりを繰り返し──ニヤリと笑う。


「その原理は知らんが……すまんな、解析は済んだ。二回目はつまらん」


「マジックの種が分かったってさ。騙されたふりをしなきゃいけないんだよ」


 今度はカナメからライザーに徒手空拳で立ち向かう。

 ライザーが腕でガードすると、凄まじい衝撃、爆発が起こった。

 ライザーの右腕が宙を舞う。

 だがライザーは止まらず左手をカナメの方へ──ガードを、抜けた。


「ッ──」


「ハハッ!」


 ライザーの拳が、カナメの腹に突き刺さった。

 一切『能力』を乗せていないただの拳。

 そのためカナメは気にせずもう一発拳をぶち込むと同時に、ライザーの頭部にかかとを振りかざした。

 もちろん足にも『爆破』と『衝撃』は備わっている。

 まともに喰らえばタダでは済まない。


「ハッ。すまんな、まさかオレが先にルールを破ることになるとは」


 ライザーの頭部の空間が、無くなっていた。

 カナメの足は、その無くなった空間を掠り、空振りに終わる。

 だが拳は命中し、ライザーは左手も失っていた。


「別にいいよ。逆にやっと本気でやり合えそうで嬉しいね。お前せっかく式神取り込んだのにまだ使ってないし」


「クク。楽しい勝負は長引かせたいものだからな。カナメ、お前は強いが、オレとの相性はとても悪い。どのように逃げるか考えておくことだな」


 ライザーの両腕が、再生する。

 神人も純神と同様の再生能力を有しているためだ。

 同様と言っても、その速度は下位四柱を遥かに凌駕する速度。

 

 そして──カナメとライザーはほぼ同時に動き出した。


「『極爆破』」


「『空間放射』」


 カナメのどんな存在も爆破させる『能力』と、空間という概念そのものを放射したダークマターが激突し、互いに消滅する。

 膨大なエネルギー同士の衝突で、『爆破』とは関係なく大爆発が起きた。

 煙により、互いの姿が見えなくなる。


 次の瞬間──。


 カナメの左腕と右足が、潰れた。


「!?」


 大量の血が噴き出し、ここら一帯に血の雨が降り注いだ。

 カナメは目を見開き、だが冷静にその場を離脱。

 取り敢えず、腕と足を再生することに専念する。


(これは……おそらく、じゃなくて十中八九式神だな。さっきまでのライザーの『空間支配』は、空間を割るだけで、割られたところには何の被害もなかった。でも今のは完全に空間を壊していた……。やっべぇな)


 カナメの考え通り、ライザーの『空間支配』は空間を割る『能力』。

 カナメの『爆破』を防いだ時や、カナメのかかと落としを回避した際の様に、指定した空間に穴を開けるだけであり、開けられた空間に滞在している人や者には何の効果もない。

 この『能力』は空間を支配するため、必ず他人の式神を壊すことが可能で、絶対に己の式神を展開することが可能なのだ。

 

「?惜しいな。煙で見えにくかったとはいえ腕と足か。クク、存命したな」


 やがて煙を切り裂き、ライザーが目の前に姿を現した。

 そこには、ライザーの想像通り、負傷した腕と足の再生に専念するカナメの姿が……。


 ただ一つだけ違ったのは、カナメの右手の人差し指が、こちらを指していることだけで。


「消し飛べ── 『万華鏡』」


「──ッ!?」


 刹那、ライザーを赤色の光線が呑み込んだ。

 『時空放射』や『空間放射』と同じ様に、その『能力』の概念を込めたエネルギー砲。

 ただその二つと違うのは──全てを破壊する、その威力。


「ハハハッ!さすがだな七録カナメ!」


「げぇっ、まだ生きてんのかよ」


 ライザーは一瞬粉々になったが、再生能力をフルスロットル。

 肉体を全回復し、手を横に薙ぐ。

 二回目のためカナメは直感で分かる──これは、式神。


「チッ……」


 再生したばかりの右腕が深く抉られたが、なんとか避けきることに成功する。

 これだけでも十分強過ぎるくらいだが、式神の以上ライザーはまだ隠している手があるだろう。

 カナメの遠距離爆破は空間を割られて避けられる以上、ゼロ距離で打ち込むか殴り合うしか攻撃手段がない。

 どちらにせよ、カナメはライザーに近づかなければ触れることさえ叶わない。


「気分はどうだ。立場が逆転しただろう?」


「いいね、新鮮だ。超能力者時代を思い出すよ。まあめちゃ最近のことだけど」


 カナメは辺り一面に爆破を展開。

 そしてそれらを一つに凝縮し──撃つッ!


「『花火』」


 目を焼くほどの光が広がり、巨大な花火がライザーに降り注ぐ。

 しかしライザーには届かない。

 ライザーは容易にインパクトの寸前に空間を割ることに成功していた。

 

 だが、ライザーは警戒を解かない。

 

「戦法が全く同じだな」


「しょうがねぇだろ。正攻法が効かないんだから」


 カナメはライザーの背後から殴りかかったが、ライザーはカナメの拳の部分の空間を割り回避する。

 続けてライザーは式神を発動し、カナメのその拳をひしゃげた。

 しかしカナメは止まらず、鈍い顔をしながらも空いた拳でライザーの腹部をぶん殴る!


「がはッ……!」


 インパクトと同時に大爆発と、とてつもない衝撃。

 ライザーは白目を剥き、吐血した。

 カナメは好機とばかりに、続けて掌底打ちで顔面を殴り飛ばす。

 またもや爆破、衝撃のダブルパンチ。

 

 だが奇しくもそれが、ライザーの意識を取り戻させた。


「『空間圧縮』」


 カナメの左半身が、まるで紙をくしゃくしゃに丸めるかの様に、潰れた。

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