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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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196話(神サイド) カナメvsライザー①


 アルベストが俺たちを呼んだ理由。

 それはもちろん、本人が言っていた様にゲームをするためだが、観客が少ないため賑やかにしたいという思いもあるのだろう。

 ようするに暇潰し。

 まあ、俺たちからしてもカナメとライザーが戦っている間は生存戦争への参加が免除されるわけだし、悪い話ではない。

 そんなわけで、俺たちは神の間へと通された。

 

「これが」


 一言で言って、神秘的だ。

 淡い青色の粒子が辺りに漂い、ほのかに照らされた向こうにはいくつもの巨大な水晶が浮遊している。

 そこには生存戦争の至る所が映されており、なるほど確かに神人は監督者だと納得させられる。

 

「取り敢えず、座って座って」


 アルベストにそう促され、俺たちは円卓の椅子に適当な順番で座る。

 一席にはカナメの姉である七録菜緒が目を閉じ静かに座っていたため、皆そこから少し離れた位置に座った。

 俺も適当な椅子に座ると、背もたれをダクネスが掴んだ。


「ほぉんと……つくづくムカつくなぁ」


「ここお前のか?席なんかどこでもいいだろ」


「はいはいそうですね〜。……じゃあテメェがどけやって話なんですけど」


 ダクネスはぶつくさ言いながら俺の隣の席に座った。

 ……さっきから大きく見栄を張ってはいるが、ダクネスは一応神人なわけで。

 落ち着かないから隣に座るのは非常にご勘弁願いたい。


「さて。今回集まってもらった発端は他でもない、そこの向井宏人にある」


「……ああ」


「でもそれだけじゃ疑問が募るだろう。そのまま神人に殺させちゃえばいいじゃんーって思うよね?」


 アルベストの問いに、当然ながら黒夜たちは無反応。

 それをアルベストは特に気にせず続ける。


「だが自体は複雑だ。なにせ、向井宏人には七録カナメがついている。そのためこのままではルールを破った者に何も制裁出来なくなってしまう──そこで、だ。予定していたカナメとライザーの戦いを早め、カナメを候補から外した。だからダクネスがフリーになったわけだが……」


「でも私はそれを延期することにしたんだー。だってカナメくんが怖いしね。この前までただの超能力者で成り上がり風情とはいえ、神人に変わりはない。神人はもう本当に死ぬ気で力をばら撒けばライザーと私をぶっ飛ばせるぐらいは出来ると思うんだよね。まあさすがにそれで死ぬなんてことはないけどさ、私痛いの嫌いだし」


 アルベストの言葉にダクネスが被せて言った。


 ……つまり、こういうことか。


 俺がルールを破ってしまったため、神人の誰かが俺を殺さなくてはならない。

 だがその神人の内の一人であるカナメは俺の味方で、カナメが出撃すれば俺は特に何の罰も受けなくて済む。

 しかしただの興味で俺を殺したいライザーと、吐夢狂弥の力を引き継いでいる俺を殺したいダクネスがいるため、予定していたカナメとライザーの戦いを早め、勝敗によって俺の運命が左右されることにしたというもの。


「もちろん、カナメが勝てば宏人には何もしないと誓おう。だけどライザーが勝ったら、まあ想像に任せるよ。ちなみにこれはほぼ確定だろうけど、ライザーが勝ってもぼろっぼろだったらダクネスが動くよ」


「なるほどな……。今更だけど、俺らをここに呼んだのはなんでだ?」


「そりゃあ生死が賭かっているからね。自分の目で結果を見届けさせてあげようっていう粋な計らいさ。そこの黒夜たちに関しても同じ。別に宏人を守るためにみんなで神人レイドバトルをしても構わない。まあ勝率は絶望的だろうけど、出来なくはないさ。知らないけど」


 アルベストはクックックと笑い──毎度の如く、指を鳴らした。


「さァ──始めろ。神人」


 *


 ──両者とも、目を開くと景色が変わっていた。

 これは神の間にて八柱の純神のみが対象者と合意の上で使用出来る転移装置。


 つまり、これは戦いが始まる合図。


「……昨日ぶりだな、ライザー」


「ククッ。そうだな七録カナメ」


 カナメとライザーは互いに見合い、相手の一挙手一投足に注目する。

 だが両者に緊張はない。

 それは自分の力への絶対的自信が生み出すもの。

 カナメはエラメスから、ライザーは長年の経験からそれを取得していた。


「良い集中力だ。無駄なことは考えず、目の前のオレのことしか考えていない」


「いんや?俺は常に平常運転を心がけていてね。お前如きじゃ全然揺れないよ」


「それは残念だな。オレが今こんなに高揚しているというのに」


「だからお前の事なんか知らねーよ。俺は仕方なく相手してやってるだけだしな。さて、話は終わりだ。──こいよ。神人最強」


「ククッ。ではオレも遠慮なくいかせてもらおうか。その余裕が崩れ落ちる瞬間が楽しみだ」


 そして、両者とも互いを見つめ合いながら──両手を合わせた。


「「──式神展開」」


 刹那──莫大なエネルギーが両者から吹き荒れる。

 この生存戦争の上空は、一瞬で踏み入れるだけで消し飛ばされる魔鏡と化した。

 それを生存戦争の参加者たちは呆然と見つめることしか出来ない。

 生死問わず集結した超級『能力』を持つ彼らからしてみても、絶対に勝てないと思わせるほどの存在力。


 そう、カナメとライザーは、生存戦争の上空にて戦っていた。


「『消炎都市』」


「『虚構蒼穹』」


 カナメとライザーの式神が激突する。

 膨大なエネルギー同士の衝突はそれだけで空気を震撼させ、ビリビリと揺らぐ。

 やがて押し合いに勝ったのは──!


「『消炎都市』」


 ライザーの式神が崩壊し、世界がカナメの『世界』に切り替わる。


「ほう……短期間でここまで強度を強くしたか。さすがだな」


「ねえ、お前今の本気か?長年神人のトップ張ってるにしちゃ弱すぎるんだけど」


「言ってくれるな。ただオレは式神が不得手なだけだ」


 やがて『消炎都市』が完成し、カナメは上空に飛ぶ。

 カナメ自身の『能力』と組み合わせることで、一撃必殺の最強攻撃。

 それはいくら神人のライザーでも耐えられないであろうことから、ここでもう勝負は決したと言ってもいいだろう。

 カナメが上空でライザーを見下ろすと、ライザーは片手を上げてカナメを見上げていた。

 そして。


「『空間支配』」


 突如、カナメの式神が崩壊した。

 これがライザーの『能力』──『空間支配』。

 ありとあらゆる空間を操り、式神さえもそこに存在することを許さない、カミノミワザ。


「ッ……」


「では、仕切り直そう」


 ライザーが手をパンッと合わせると、次の瞬間には広大な青空に包まれた式神、『虚構蒼穹』が展開された。

 しかしライザーは何を思ったのか──式神を消した。

 これは式神が崩壊した際とは違う、そんな異様な光景に、カナメは目を細める。


「これ、崩壊じゃないよね」


「ああ。これは吸収だ。さっき言っただろう。俺は式神が苦手なものでな」


 *


「あはは。ライザーオリジナル技、『式神吸収』。展開した式神をそのまま体内で完結させる離れ業だよー」


 ダクネスはカナメとライザーの戦いを見ながら、そう俺に解説する。

 式神は基本的に展開するものだ。

 自分だけの『世界』を創造し、その世界のルールを相手に強制する力。

 だが式神は展開以外にも色々な応用がある……のだが、やはり展開の下位互換に過ぎないものばかり。

 式神の押し合いで負けた場合などによく用いられる式神降霊や、そのまま式神を呼び出して共に戦う式神顕現。

 

「ライザーはバトルマニアだからね。一時期式神についてめっちゃ研究してたんだよ。それで発見したのが、シンプルに式神の権能を使えるようにすること」


「それは普通の展開と何が違うんだ?別に威力が変わったりしないだろ」


「もちろん、威力とか性能はなんも変わんないよー。ただ── 一度展開して吸収すれば、もうずっと式神の能力を使い続けられるっていう利点があるけどね」


「まじかよ……」


 それはつまり、もうライザーは半永久に式神を使い続けられるということ。

 

 そう、もうカナメは、ライザーの式神を破壊することが出来ない……!


 それでも、カナメは静かにライザーを見つめていた。

 

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