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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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195話(神サイド) 休暇


「そう警戒しないでくれよ、向井宏人」


 八柱の純神の二柱──アルベスト。

 アルベストは、背後よりそう言いながら笑う。

 俺が全く対応出来ないスピードで、そこにいた。

 ……ザックゲインと同じだ。


「……アルベスト。きみまで一体どうしたんだい?人間界にいるなんて珍しいじゃないか」


「お前は確か太刀花創弥。勇者のツレだった奴か。会うのは初めてだな」


「そんなことよりも僕の質問に答えてほしいな。……正直、今きみと敵対したくない」


 珍しく、創弥は引き攣った笑みで言う。

 創弥がここまで緊張しているということは、今戦っても負けるということだろう。

 現状の俺、創弥、黒夜、アリウスクラウン、カルマでも勝てない相手……なるほど、それは確かに神人を超えている。


「それは僕もだよ。いやー、まさかまさかきみらがここまで強くなるとは思わなかったよ。カナメが神人になった時は思わず固まっちゃったね。なにせ、能力者から神人への進化はお前以来だからね」


「そんなことはどうでもいいさ。それで?僕たちに何の用?」


 アルベストは楽しそうに、俺に視線を向けた。


「いんや、お前にもアリウスクラウンにも用はない。そこに隠れているカルマも黒夜も瑠璃にもだ」


「!」


 アルベストに指摘され、三人がおそるおそるこちらにくる。

 ……カルマはいつの間に隠れてたんだ。


「宏人。僕はお前に会いにきた」


「……ルールの件か?でもあれは神人が来るはずじゃ」


「そうなんだけどね。なにせお前だから。色々大変なことになったんだよ。で、そこでゲームってわけ」


「……そのゲームを、神の間でやるのか?あの、神格会議の会場で」


「そうか、お前は行ったことがあったな。そこの瑠璃も」


「ええ。それで?宏人はこれからどうしなければいけないのかしら?仮にも私たちの仲間の戦力でね。そうやすやすと長い間貸し出せないの」


「その心配は不要さ。お前らも来ていいからな。しかも早けりゃ今日中に返してやれる。もっとも、生き残れたの話だけどね」


「……聞こうか」


 俺は覚悟を決め、振り返りアルベストの目を見る。

 アスファスやアルトノイズ、ニーラグラといった成長途中の神々とは違う、ほぼほぼ完成した神。

 アルベストはの余裕そうな態度は、その力からあるのだろう。


 ……欲しい。


 ──こいつを、こいつの力を、俺の『器』の中に入れて、俺のモノにしたいッ……!


「俺は、何をすればいい?」


「……お前、何を考えて──まあ、いい。なに、さっきから言ってるようにただのゲームさ」


 そして、アルベストは言った。

 ルールの内容、それは──。


 カナメが勝つか、ライザーが勝つか。


 *


『オイ、アルベスト。なぜオレとカナメを遠ざけた?』


「そんな怒るなって、ライザー。ちょっと待っててほしいだけさ」


『ちょっとってどれくらいよ。俺今からやりあうもんだと思ってたから結構ムカついてるんだけど』


「一日かな、カナメ。二人には最高の舞台を用意してやるから──頼むぜ?」


 *


「──はぁぁぁぁぁ……」


 なんとか説得して、一日の猶予をもらった。

 一日といっても明日の朝には神の間に行かなければならないため、実質半日だ。

 そんなわけで、アルベストが去ったあと、俺たちは机に突っ伏して唸り声をあげていた。

 色々と情報が多いとか以前に、目と鼻の先にアルベストがいたということが疲労の原因の気がする。

 

「とにかく、せっかくもらった一日よ。有効的に使いましょう」


 そう言い、瑠璃はパンパンと手を叩き、俺たちを起こす。

 やっぱり、こういう時に瑠璃がいるのは助かる。

 瑠璃は紙に今日やるべきことを書き記していく。

 自分が生存戦争に巻き込まれる可能性をちゃんと考慮していて、食料や必要そうなものを予め服に忍ばせていたらしい。

 用意周到で、さすがとしか言えない。

 やがて瑠璃は描き終え、それを俺たちに見せる。


「時間がないから、役割分担をしましょう」


 黒夜と瑠璃でニーラグラの捜索。

 アリウスクラウンが、セバスの捜索。

 創弥が、とある下見。

 それで、俺が──。


「ともかく、これでいきましょう。では、さっそく始めましょうか」


 *


 俺は、夜道を一人で歩く。

 そして、初めて生存戦争で遭遇した時のように、淡々と言う。


「藍津」


「はいはーい。宏人さんという方が俺に何の用です?」


 藍津は音もなく、背後に現れた。

 俺はひとまず安心する。

 アルベストみたく、直前まで気付けないなんてことはなかった。


「ニカイキの件、クリアしたぞ。その報告ついでに話したいことがあってな」


「さっすが宏人さんですぅ。やっぱり他の方々とは違いますね。俺がわざとニカイキがめちゃくちゃ強くなるタイミングの日にマッチングさせたってのに、勝ってしまうんですから。それで?一体俺に何の用でしょ」


「……取り敢えず聞いておきたい。お前は──いや。お前と七録菜緒は、中立の立場の認識でいいんだよな?」


「ええ、ええ。俺たちは時と場合により誰にでも協力しますね。宏人さんはもちろん、ザックゲイン、アスファス、アルベストにも協力する日があるかもしれません」


「そうか。なら安心だ」


 そして、俺は本題を話す。

 今後の運命が定まる、とある作戦について。

 アルベストに神の間に招待されるという予想外の事態が起きたが、これだけは変わらない。

 それを藍津は──笑いながら、快く受け入れてくれた。


 *


 その後、俺らは一度合流し、また班分けしてニーラグラとセバスを探し回ったが……結局、見つからなかった。

 そして再度、俺たちは簡易基地の中で各々椅子に座りながら話し合いを始めることに。


「……正直、あの二人がいないのはとても痛いわね……」


 瑠璃は困った顔でむむむと唸る。

 明日の朝には神の間……そしてとある作戦を決行するのに、主戦力が俺と創弥、黒夜、アリウスクラウン、カルマというのは、少々心許ない。

 

「……ところでカルマは協力してくれるのか?」


 そこで俺は、ずっと疑問に思っていたことをカルマに聞いた。


「逆に協力しなくていいー……?ほら、あたしそこまで強くないし……」


「状況に応じて強くなったり弱くなったりするのやめないー?むかつく」


「ごめんなさい!協力するわ!」


 創弥の笑顔の圧力に、カルマはビビりながら平謝り。

 ついでに協力も得られたわけだが、まあ話半分に聞いておくことにする。

 正直まだ信用し切れていない相手だ。

 警戒し過ぎだと自分でも思うが、現状がこんなためだから仕方ない。


「宏人。あなたこの前藍津に生存戦争の参加者聞いたんでしょ?『メンバーズ』って他にいたかしら?」


「いいや。多分『超能力』で判定されてるから『呪術者』の二人はいなかったし、智也もいなかった」


 ……一人、『メンバーズ』ではないが少々気になる人物はいたが。

 それは今言うことではないだろう。

 こんな状況だ、もう死んでいるなんてこともザラにあるだろう。


「じゃあ、明日は頼む」


 俺は立ち上がり、皆んなに向かって頭を下げた。

 元より似たような作戦は決行するつもりであったが、俺のせいで予定が早まり、いくつもの不確定要素を生んでしまったのだ。

 そんな俺に、今まで黙っていた黒夜が声を上げた。


「宏人様は何も悪くないです!みんなが、全部全部宏人様に面倒ごとを押し付けたからですよ!もっとちゃんとニーラグラもセバスも予定通り動いていればっ……!」


「そうだよー。なんにせよ、何事も予定通りにはいかないってことだね。せちがらーい」


「私もあいつには過去に散々いじめられてきたから気にしてない。めっちゃ燃やしてやる!」


「……えっと、あたしも、なんかごめん。上位七人だし」


「まあ私は明日も直接戦わず、あなたたちを支えることしか出来ないわけだからなんとも言えないけど……気張りなさい」


 黒夜に続き、創弥、アリウスクラウン、カルマ、瑠璃と順にそう言ってくれた。

 こうして、俺らはその後も少し談笑をし──やがて。

 朝日が昇り、それと同時にこんこんと入り口のドアを叩く音が。

 このオーラはまさか……。

 俺は半ば確信気味で、警戒しながらドアを開けた。

 するとそこには、案の定というか。


「おはよー、宏人くん!」


「……朝から喧しいな──ダクネス」


 そう、今俺の目の前にはダクネスが。

 会うのはアスファスと戦った時以来か。

 

 ──まったく敵わなかった。


 あの時は『能力』が枯渇していたというのもあるが、ダクネスに最も容易く吹き飛ばされ、地に叩きつけられた。

 ……おそらく、ダクネスもいっさい『能力』を使用していなかっただろう。

 圧倒的戦力差が、俺たちの間にあった。

 でも──今は。


「ゲームの結果次第で私に嬲り殺される悲惨な運命背負ってるくせには元気だねぇ?」


「ああ、なんてったって、ゲームの結果次第であんたを嬲り殺せるんだからなぁ」


 ……今だって、俺たちの間には圧倒的に力の差がある。

 それは一月前と何も変わらない。

 でも、用意したんだ。


 とある作戦──ダクネスを倒す策を。


 俺とダクネスが数秒睨み合っていると、アルベストが姿を現した。


「なんかお互いに色々思うところがあるみたいだけど、気にせずいくぞ。それで?神の間にいくのは──お前ら5人でいいんだな?」


 俺たちが頷くと、アルベストはパチンと指を鳴らした。


 そして、神の間へ。

 

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