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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十三章 神人迎撃編
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194話(神サイド) 激突


 俺はニカイキを倒したあと、そのまま花哉と戦っていた。

 

「──か、『壊魂』ッ!」


「なっ……!」


 花哉が地に手をつけそう叫ぶと、『獄廻界』が崩壊していく。

 おそらく式神自体に『壊魂』をぶつけたのだろう。

 俺は舌打ちをしながらも、冷静に対処し──


「……は?」


 ──ようとしたところ、途端に花哉が全力疾走。

 方向は俺とは真逆で……つまるところ。


「いや逃げんな!」


 俺はカナメのように『エンブレム』を足元で発動し爆速で花哉を追いかける。

 そして二秒とかからず花哉に追いつき、追撃を──花哉は、両手を合わせていた。


「ふ、ふひっ。式神展開」


「──!」



 花哉はここにきて式神を展開。

 俺は能力消費量の具合から敢えて対抗せず式神に呑み込まれる。


 完成したのは──式神展開『壊怖魂昏』


 ただただ不気味で、まるでソウマトウの式神を彷彿させられる『世界』──を。


 花哉は、一瞬でぶっ壊した。


「……は?」


 俺は何がなんやら訳が分からず、ポカンとしていたところ現実に戻った。

 

 ──今、自分のいる場所がどこか知らずに。


 そんな俺を嘲るように、気色悪く笑いながら花哉は言う。


「こ、ここは──生存戦争の、戦場外です」


「……まじか」


 呆然とする俺の前で、花哉は胸に手を置く。

 目的が報われたように、穏やかな笑みを浮かべて。

 

 目の前には凄まじい数の気が生い茂る森林。

 だがその光景の前に、ちょっとした崖がある。

 それはまるで境界線のようで、此処と彼処を遮る大きな扉。

 その扉を無理やり壊した者には、とあるルールが適用される。


 そう──神人が、襲いにくる。


「ありがとう、向井宏人」


「……?」


 花哉は胸に手を置いたまま、今までとは打って変わって流暢に喋り出す。

 そして、ありがとうという言葉。

 その意味を俺が問いただす前に、花哉は自ら答えた。


「強くあってくれて。僕はね、自分より上の人間が死ぬほど嫌いなんだ。でも自分より上だからそう簡単には殺せない。だから、他人の力を使うんだ」


「……その結果、お前が死ぬことになってもか?」


「──うん。当たり前だよ」


 花哉は満面の笑みで、朗らかに言った。


「だって、生きてた時もこうやって死んだからね」


 瞬間──。


 花哉は自らに『壊魂』を発動し、この世から消え去った。


 *


「……は?」


 場所は神の間に移り。

 カナメがポカンとしながらそう呟いたところ──ライザーが立ち上がった。


「オレが行こう」


 そのライザーの言葉に、カナメはハッとして反論する。


「いや俺が行く。ルールはあくまで神人との戦闘だったはずだ。俺が宏人ンとこ行ってぶん殴ってくる。それでいいだろ」


「えー。でもそれじゃつまんなくない?」


 そこで、アルベストがカナメとライザーの話に割って入った。

 カナメは舌打ちをしてアルベストを睨む。


「そんな怖い顔しないでよ……。いやね、僕的には。僕的にはだよ?ルールを破った奴は死ぬほど痛めつけられるか、それこそ死ぬかのどちらかしかないとないと思うんだよねぇ。そしてそれを実行しようとしているのがライザーで、それを阻止しようとしているのがカナメ。そ、こ、で、いいコト思いついたんだよね」


「……あ?」


 カナメとライザーが不審がるなか、アルベストは楽しそうに、その『いいコト』とやらを語った。

 

 ──ダクネスは、静かに笑う。


 *


「──なるほど……なるほどねぇ。そりゃ災難だったね、宏人」


「……お前には言ってないんだが」


 俺は敷地外に出てしまった後、足元で『エンブレム』を噴射しながら全速力でアスファスの元へ来ていた。

 アスファスにことの経緯をざっくりと説明したところ、付近で聞いていたザックゲインがうんうんと頷いた。


「じゃあ今から宏人を殺しに神人の誰かが来るんだ。カナメだといいね」


「……お前はどうするんだよ。俺は簡単に殺される気はないから逃げる一択だ。その間神人と戦えるチャンスだぜ?」


「ではお言葉に甘えて。宏人が死んでから動くよ」


「そうかよ」


 俺はザックゲインに踵を返し、アスファスと共に創弥の元へ──行こうとしたが、なぜかアスファスは動かない。


「……どうした?」


「ふん、どうしたもこうしたもないだろう。交わした約束は一つだけ。それもたった一度だけキサマらに協力するというものだ。契約が履行された以上、私がキサマらと馴れ合う必要はない。好きに生きさせてもらう」


「……そうかよ」


 俺はそのまま、一人で駆け出した。

 ……確かに、アスファスは味方ではない。

 だが、なぜか一緒に戦ってくれるものかと思っていた。

 全く根拠のない、ただの思い込みであったが、チラリと見たザックゲインとの戦いの際、常に己を優先するアスファスらしからぬ戦い方をしていたことに希望を見てしまったと言うべきか……。

 

 まあ、今はそんな事どうでもいい。


「ありがとうな。アリウスクラウン」


「別に。アスファス様についていけって言われただけよ」


 俺はアリウスクラウンと共に、創弥の元へ急いだ。


 *


 俺は前日まで創弥、黒夜、瑠璃、カルマ、シェリカと暮らしていた場所に赴くと、そこには創弥が……。


「……何してんの?」


「ああ、宏人ー。アリスもいるじゃん」


 創弥は嬉しそうにこちらを見て、作業を中断して俺たちの元まで駆け寄ってきた。

 その作業というのが、創弥がカルマの頭に『勇者剣』の柄を押しつけながら剣を回すというもの。

 その回転速度は尋常ではなく、カルマの頭から煙が立ち昇っている。

 それはスルーしておいて、俺は事の経緯を創弥に話した。


「……ごめん。僕のミスだ」


「過去のループでシェリカが裏切ったことはなかったのか?」


「うーん、正確に言うと、状況次第で人の性格って全く変わってくるから何とも言えないんだけど……。まあ特にそんな様子は無かったかな。まず上位七人自体出現率が稀だから曖昧だけど」


「なるほどなぁ……」


 肝心のシェリカは気付いた頃にはいなくなっていたらしい。

 まあ無理もない。

 先程までニカイキによりここら一体にとてつもないほどの『重力』がかかっていたのである。

 ……だからこそ、カルマが罰を受けていたらしいのだが。


「ひっどい!まじさいってー!あたし何もしてないのに!」


「……」


 宏人は少しカルマに同情するが、仕方ないとも思う。

 突如『重力』に襲われて、回復役のシェリカが消えたのだ。

 すると今度はカルマが……と思わないのは無理がある。

 今は開放してやったが、無論信じているわけではない。


「ところでセバスは?彼ってうちの主戦力じゃない。どこにいるの?」


 アリウスクラウンのもっともな質問に俺も頷く。

 セバスとは初日に会って以来それっきりだ。

 

「んー。それは僕も分からないだよね。まあ大丈夫でしょ」


「‥‥本当に?まああなたがいるなら大丈夫なのでしょうけど」

 

「まあ、それも含めた上でみんなで作戦会議しよっか。……まだ、少し時間はあるみたいだしね」


 *


「──まだ二週間早いけどさ、もう戦っちゃいなよ、二人とも」


 アルベストのいいコトの内容は、これだった。

 それを聞いたライザーが無言でカナメに視線を寄越す。

 無論、カナメとしては構わない。

 カナメは笑いながら言った。


「いいぜ、さっさとやっちゃおうか。無駄にもう二週間待つ必要もねぇもんな」


「まったくだな。ではさっそく戦おうか」


 カナメとライザーは楽しげに言い合う。

 アルベストはそれを楽しそうに見つめながら、パチンと指を鳴らした。


「じゃあ存分に戦ってきな──いってらっしゃい」


 アルベストがそう言った次の瞬間には、カナメとライザーは消えていた。

 やけにうるさい二人がいなくなり、神の間に静寂が訪れる。

 だが、それも一瞬。


「よしっ、あの二人が戦っている隙に私が宏人くんを殺してきまーす」


 カナメとライザーがいなくなった事をいい事に、ダクネスが声を大にして言う。


「ダメだダクネス。それは面白くない」


「……そういうのいいから。ね?ほら、私も外に出して」


「聞き分けをもったら?ダメって言われてるでしょうに」


「菜緒ちゃんー?あんたは黙ってろー?」


 ダクネスが静かに菜緒にブチギレた。

 ダクネスはそのまま菜緒の元へ歩いてき──その前に、菜緒がアルベストの方を指差した。

 不審に思ったダクネスはその方向を見やり──ブチンッと、血管が切れた音が。


「……あの神、マジでいつかぶっ殺す」


 アルベストは、いつの間にか消えていた。


 *


「──宏人ッ!」


 それは、突然だった。

 創弥とアリウスクラウン、カルマとともに隠れ家に入ろうとしたところ、俺の背後にはアルベストが。


「──!」


 そうか、アルベストはザックゲインと同じ光速──!

 俺が油断を悔い死を覚悟するなか、アルベストは何ともなさげに言った。


「神の間に招待してあげよう、向井宏人。なに、ただのゲームのお誘いだ」


 アルベストは、楽しそうに微笑んだ。


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