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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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192話(神サイド) 生存戦争①②


「……あ?」


 ニカイキは花哉と共に獄犬を対処しながら眉を顰めた。

 その理由は宏人にある。

 それも当然で、宏人はニカイキの最大出力の『重力』を食らってから、一切動かなくなったのである。

 ニカイキは一瞬、ただ『重力』になすすべがないと思ったが……どうにもそういうわけではなさそうだ。


「……オイ花哉。こいつらは俺が一掃する。テメーは宏人ンところにいけ」


「め、珍しいですね。ニ、ニカイキさんが他人に大事なことを任せるのなんて」


「分かったらさっさといけ」


 ニカイキは深く深呼吸し──再度最大出力の『重力』ッ!


 広範囲に影響を及ぼす珍しい『能力』の前に、神の式神である獄犬でさえいとも簡単に消滅。

 それと同時に花哉は駆け出し、宏人のもとへ。


(あ、あと一回……!)


 花哉の『能力』、『壊魂』。

 『壊魂』の効果は、3回触れることによる対象の完全破壊。

 それは生物物体問わず、花哉に3回触れられてしまうと跡形もなく完全に破壊されてしまう超級異能。

 

 宏人が触れられたのは、2回──!


 花哉が文字通り宏人に王手をかけようとした瞬間──それを『重力』に阻害された。


「「!?」」


 花哉は顔から地に押し込まれ、声にならない悲鳴を挙げる。


「ニ、ニカイキさん!?ぼ、僕をだ、騙したんですか!?」


「おいおいおい、今のは俺じゃねェぞ……。まさか」


 ニカイキの嫌な予感が当たったとでも言うように、宏人はのっそりと起き上がった。

 それはまったく莫大な『重力』が降り注いでいるとは思えない、当たり前の動作。

 先程までとは打って変わって、虚な表情の宏人。


 何かが起こった。


 ニカイキがそう確信し一歩踏み出した瞬間。


「……ハハハ」


 宏人が、小さく笑った。

 そこから笑い声は段々と大きくなり、ついには両手を広げながら、狂った様に叫ぶ。


「アッハハハハハ!なんだこれ!すげェなオイ!」


 宏人の『変化』の白い能力結晶が、徐々に黒く染まっていく──。


 その色合いはニカイキの『重力』と同じよう……否、まったく同じものであった。


 およそ宏人とは思えない様子に、さすがのニカイキも警戒する。

 

「……いまさらキャラ変か?らしくねェなぁ。それとも『変化』で自分の性格も捻じ曲げたか?」


「アハハハハ!良い!確かに『変化』で人間の性格を変えるのは楽しそうだ!今度試してみよう」


「今度なんてあるとでも?テメーは今から俺に殺されるのによォ」


「やってみろ!お前には感謝しているからなぁ!なにせ──ニカイキ!お前のおかげで俺は『重力』を掴めたんだからなぁ!」


「あ──?」


 刹那。


 ニカイキを、ニカイキの『重力』が襲う!


「ッ!?」


 ニカイキはそのまま花哉と同様に地に埋もれ──る前に、瞬時に『重力』を発動。


 今回は他人の重力を調整するのではなく、自分の『重力』を調整するようにする。

 なぜかは知らないが、宏人が『重力』を使えている。

 これが意味することは──互いの『重力』は打ち消し合う。


「いいねェ。純粋な殴り合いといこうじゃねェか!」


「そうだなぁ!殴り合おうか!」


「ぼ、僕を忘れないでください!ニカイキさんッ!」


 すると花哉が珍しく強気で叫ぶ。

 だがニカイキはそんな花哉を気にすることなく、淡々と自分の『重力』も花哉に浴びせる。


「なッ!?──ァァァァァァァァァァ!」


 二人分の『重力』を受け、花哉の骨がギシギシと悲鳴を挙げる音が響く。

 そして、花哉を気にすることなく宏人とニカイキが対面し──ニカイキが駆け出す。


「オラァ!」


 本来の『重力』ではお互いに攻撃出来ない中、ニカイキは拳に『重力』を乗せて宏人に殴りかかる。

 だが宏人に到達する前に獄犬がそれを阻み、その隙に宏人は発動した。


「『バースホーシャ』ァ!」


「チッ──!」


 ニカイキに『バースホーシャ』が直撃。

 だが『重力』を乗せた拳で身を守ったためか、損害は左手が無くなっただけ。

 ニカイキを激しい痛みが襲うが、ニカイキは逆に笑みを深める。


「おもしれェな。ほんとお前。──で?今は『変化』は使えないって認識でいいか?」


「へぇ──正解だ。俺は今能力結晶を『重力』にしてるからなぁ!」


 宏人は足元に『エンブレム』を使用し、カナメと同じ様に爆速でニカイキのもとへ。

 ニカイキは咄嗟に反応するが、それよりも早く宏人は顔面に蹴りを叩き込んだ。

 ニカイキの顔から血が噴出するが、続けて宏人は蹴った足をそのままにかかと蹴り。

 ニカイキは一瞬意識を失うが、なんとか保ち──宏人の足を掴んで投げる。

 その際宏人の足の『エンブレム』で更に体が焼けるが、気にせず発動した。


「『重力』── 一点集中ッ!」


「──ッ!」


 途端、ニカイキと宏人の『重力』の均衡が崩れ、宏人は地に叩きつけられた。

 ニカイキは生存戦争全体に発動した『重力』を、宏人ただ一人に全て収縮し、ぶつけたためだ。

 今までの比じゃない『重力』に、宏人は顔を苦痛に歪ませ──笑う。


「ハハハ!──『ヴォルケーノ・インパクト』ッ!」


 すると、上空に信じられないほど大きな隕石が姿を現した。

 その隕石は、ニカイキただ一人を狙って落下してくる。


「えげつねェなぁ!」


 だがニカイキは『重力』を操る者。

 隕石なんて簡単に操作でき──。


(いや待て──!)

 

 ここでニカイキは先程の失態を思い出した。

 

 『重力』は対象を分けると、威力が盛大に半減する。


「……ッ!」


 ここでニカイキは宏人の想像を超えた行動を取った。

 この生存戦争の戦場全体を覆っていた『重力』を、そのまま『ヴォルケーノ・インパクト』にぶつかれば粉砕出来ただろう。


 だがニカイキは──!


「最後の勝負といこうぜ──向井宏人ォォォォォォ!」


「アッハハハハハ!最高かよお前!」


 ニカイキは、そのまま『重力』を宏人にぶつけ続けるッ!

 だが必然的に、『ヴォルケーノ・インパクト』は止まることなく着実とニカイキに落下していく。


 これは──ニカイキが『重力』で宏人を潰すのが先か、宏人の『ヴォルケーノ・インパクト』がニカイキに直撃するのが先かの戦い。


「「ウォォォォォォォォ!」」


 宏人の骨が軋む。

 臓器が悲鳴を挙げる。

 宏人も抵抗するために必死に『重力』で相殺しているが、いかんせん規模が違いすぎる。


 耐えて、耐えて──耐えて耐えて耐えて耐えて耐えた瞬間──!


 『ヴォルケーノ・インパクト』が、ニカイキを覆い尽くした。


 ──辺りには、先程までとは打って変わって、嘘みたいな静寂に包まれた。


「……けほっ」


 宏人の能力結晶は、色が抜け落ちるように白くなり、『重力』から『変化』に戻った。


「掴めた……けど、一度に二つは使えないのか」


 今、俺の中には『変化』と『重力』の二つの『能力』がある。

 『重力』を獲得出来た理由。

 それは偶然がいくつも重なり合った結果出来上がった、まさに奇跡の連続に恵まれたためである。

 まず、過去に俺の体内に『重力』の能力結晶があったこと。

 アスファスの『ルール』追加でその結晶は無くなったわけだが、俺が使っていたことは消えない。

 それで使い方を掴めていた。

 次に、ニカイキと戦ったこと。

 ニカイキの『重力』を使っていた俺が、ニカイキの『重力』を浴びたのだ。

 奥深く沈んだ『重力』の欠けらを掴むのに、そう苦労はしなかった。


 最後に──『変化』。


 本来能力結晶が他の『能力』に変わることなどあり得ないのだが、『変化』は違う。

 『変化』は、変化する『能力』。

 俺は無意識に『変化』は手だけに宿ると思っていたが、それは違う。


 『変化』は、想像次第でいくらでも『変化』出来る。


 いかに絶対、当然、必然、常識を捨てられるか、それが『変化』の強さに直結する。


 ……『重力』を使うと性格が変わるのは、おそらくニカイキの性格に引っ張られてしまうのだろう。

 はた迷惑な話だ。


「さて……最後はお前か──花哉」


「──赦しません……!」


 俺は静かに前を見る。


 そこには、完全に壊れている花哉が。


「こ、殺してやるっ。殺してやる。殺してやる……。殺してやる!殺してやる殺してやる殺してやる──殺してやる!」


「……俺、お前に何かした覚えはないんだが……」


 俺は軽く花哉に引きながら、手に『変化』を込めた。


「受けてたってやるよ」

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