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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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191話(神サイド) 生存戦争①①


 ──警戒すべきは、花哉。

 理由は、ここにいる理由と先程触られた時の不快感。

 ここは式神の中だ。

 なのに花哉は式神を展開して『バグ』を作らずにここにきた。

 自分の『式神』のなかだから大丈夫と油断していた俺も悪いが、前例にないのだから仕方がない。


「……」


 影が揺らめき、炎が飛び散る『獄廻界』。

 この『世界』でなら俺は──神だ。


「オラァ!」


「ふ、ふんっ!」


 ニカイキと花哉の拳が迫る。

 花哉はともかく、ニカイキはまさかの肉弾戦。

 俺は多少動揺しながらも、冷静に受け止め──


「ッ!?」


 ニカイキの拳を受け止めたはずの手が潰れ、花哉の拳を受け止めた手が、ぐちゃぐちゃに弄られた様な感覚に襲われた。

 俺は後方に飛ばされ、影より生み出した獄犬に受け止めてもらう。


「……なるほど」


 俺は『変化』で手を治し、冷静に今の現象を分析する。

 ニカイキの拳の種は単純明快、ただ拳に『重力』を乗せただけ。

 カナメの『衝撃』と同じ原理で、めちゃくちゃ高等技術。

 俺の手から生み出される『変化』とは大違、い……。


 ……あれ?


 俺はふと思った。

 

 いつから、『変化』は手に付与されると思い込んでたんだ?


「……」


 まあともかく、問題は──花哉の『能力』。


「オイオイ、もうくたばっちまったか向井宏人ォ!?」


「う、うるさいですニカイキ。しゅ、集中出来ません」


 二人が徐々に迫りつつある中、俺は思考を整理する。

 取り敢えず俺の『変化』の件は頭の隅に置くとして、花哉を凝視する。


 花哉に触られる度に襲われる不快感。

 簡単にまとめると、触れた相手に幻想を抱かせる系統。

 だが花哉は上位七人に選ばれた実力者。

 おそらく、その先がある。

 

「……花哉。多分だけど、お前の『能力』に何回も触れたらなんかあるだろ」


「お、お見事です……!で、でも、何回かは、お、教えられません。だって、あ、あなたは殺すので」


「そうか。まあ、そりゃそうだよな」


 俺と花哉の会話が途切れた瞬間──


「『重力』!」


 刹那、俺を有り得ない程のGが襲う。

 俺はなすすべもなく地面に叩きつけられ、ニカイキと花哉が俺の元へ今にも殺さんと駆け出す。

 そして獄犬が必死に二人に喰らいついているのを──俺はスローモーションで見ていた。


 重力。


 かつて俺も操っていたことのある、強力な『能力』。

 それを浴びながら、俺は──。


「……やっぱ、掴める」


 *


「ハハ。久しいな、ザックゲイン」


「こちらこそだよアスファス。会いたかったよ」


「そうか。もっとも私は、貴様には会いたくなかったがな」


 アスファスの言葉に、ザックゲインは小さく笑う。

 生前、ザックゲインはアスファスに「仲間にならないか?」と勧誘されていたのだ。

 まあザックゲインは誰かの下につくのを嫌う性格なので、首を縦に振ることはなかったのだが。


「ところでエラメスは?僕はきみよりエラメスと戦いたいんだけど。強いし」


「あいつは死んだぞ。全く、耄碌したものだな」


「……正直驚いたよ。今の時代にエラメスを殺せる奴がいるなんて」


「そうだな。まったく、世も末もいいところだ」


 アスファスはそう言って笑ってみせる。

 作り笑いもいいところだが、実際にアスファスはもう割り切っている。


「──フッ。無駄話しが過ぎた。さっそく殺し合おうか」


「もちろんいいよ。まあぶっちゃけ、きみが僕に勝つ未来なんて想像すら出来ないけど」


「言ってろ──『カオスリヴィエール』」


 突如、ザックゲインに巨大な水の渦が高速で迫る。

 だがザックゲインはいともたやすく斬り刻むと、アスファスに肉薄する。


「神剣『白龍』──顕現」


 アスファスは白龍を顕現させ、ザックゲインに突っ込ませる。

 しかしザックゲインはそれすらもやすやすと切り裂き、白龍は悲鳴を挙げる暇もなく真っ二つに。

 

「ハハッ」


 だがアスファスはそれを見越していたのか、真っ二つになった白龍のど真ん中を『カオスリヴィエール』が駆け抜けた。


「おぉぅ!?」


 これにはさすがのザックゲインも驚いたが──ザックゲインから眩い閃光が迸る。

 するとアスファスの『カオスリヴィエール』は呆気なく蒸発し、空気がビリビリと電気を帯びる。


「なるほど、それがアルベストの『カミノミワザ』か。……なかなか凄まじいな」


「うん。もう反則レベルに強いよね。ただでさえ強い僕に、アルベストの『カミノミワザ』。これで僕は、人間でありながら神人に匹敵する力を保有していることになる」


「少々思い上がりが過ぎるのではないか?ただの人間であるキサマが、我々神の領域に匹敵すると?不快で仕方がないのだが」


「あはは。僕からしたらきみがそんな事言ってるのはギャグだよ」


「ふん。貴様──死んだぞ?」


 途端──ザックゲインの体が無数に切り刻まれた。


「ッ」


 ザックゲインは大きく後退し、自身の体を眺める。


「いたた……。これが『凪』かな」


「ああ。正確に言うのなら、『凪』を無数に散らしたものだ」


「……なんで?普通に打ったらいいじゃん」


「私は絶対という言葉が好きでな。避けられる可能性があるそのままの『凪』より、力を分散してでも散らして絶対に当てた方が気持ちがいい」


「それはそれは。相変わらず雑魚の思考してるよね。じゃあ今度は──僕の番」


「──ッ」


 ザックゲインの言葉が終わる頃には、アスファスは貫かれていた。


「『サンドライトニング』」


「……ハッ」


 貫かれたのは──胸。

 心臓。

 神であるアスファスには何の支障もないが、今『器』にしているのはアリウスクラウン。


「体を借りているのでな。そう簡単に壊させはしない」


 アスファスは両手を合わせ──展開。


 式神展開『血花乱舞』


 血色の花が咲き乱れ、真っ赤に染まった不気味な『世界』。


「式神展開──『無味無臭』」


 だがそんな『世界』を一瞬でザックゲインは破壊した。

 ザックゲインはアスファスの胸から剣を抜き、バックステップで距離を取った。


 しかしそれは無駄な警戒だったらしく、アスファスは膝から崩れ落ちた。


 ──決着。


「……はあ」


 予想していた通り、あっさりとついた決着。

 まあほぼ確実に命中する『凪』には驚いたが、それだけ。

 ザックゲインは踵を返して、その場を後に──。


「へ?」


 思わず喉から出た間抜けな声。

 それは無理もない。


 なにせ──目の前にはアスファスが。


「ありのままの『凪』はな、こういう絶対に当たる時にしか使わん」


 アスファスがニヤッと笑った、次の瞬間。


 ザックゲインは、なすすべもなく切断された。

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