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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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190話(神サイド) 生存戦争⑩


 ──時は2月15日。

 生存戦争が始まり、およそ2週間。

 だと言うのに特にルールを破る者はいないため、監督者たる神人は暇なわけで。

 

「……上位七人。やっぱ過去の遺物ってことかな。まあ今ニカイキがエグいことやってるけど。でも現代人の方が強い」


「いやいや。これ絶対クソ狂弥が関係してるよー。マジでいつか殺す☆」


「クク。だがザックゲインだけは突出しているぞ。オイ菜緒、おそらくお前はこいつに勝てんぞ。七録カナメ、お前はどう思った。実際に戦ったんだろう?」


「んー。何といういうか、俺の時は『サンドライトニング』隠してたからよく分からなかったんだよね。ザックゲイン自体飄々としてるし。でもあの電撃、多分だけど最大出力で俺のガードを突破してた。やばい強くね?なあ、アルベストさんよ」


「はは。僕は彼と『契約』しただけだから何とも言えないぞ?というか、僕自身が純粋な戦闘能力ならこの『世界』で一番強いからね。そんな僕の『能力』を持っているんだ。ザックゲインは強くて当たり前だよ」


 菜緒、ダクネス、ライザー、カナメ、アルベストの順で話を交わす。

 生存戦争がもう半月が経っているが、『神の間』は時空が歪んでいるため苦痛ではない。

 他の神人がほぼ全ての戦場を見ている中、カナメだけは宏人たちを注視していた。

 

 だからだろうか──結果、視野が狭くなったからか、菜緒の怪しい動きに気付かなかった。


 加えて二日目にしてナンが死んだのも大きい。

 薄情に聞こえるかもしれないが、カナメは正直ナンなどどうでもいい。

 問題は宏人たちの精神状態だ。

 これからもっと大きな作戦が控えているなか、カナメとしても宏人たちに頑張ってもらわないと困る。


「みんなは誰がこの中で一番強いと思う?」


 ダクネスのそんな呑気な間伸びした声が響く。

 カナメは思わず苦笑する。

 生存戦争は今かなり荒立っているというのに、監督者たる神人と神の二柱目は高みの見物でおしゃべり中だ。

 

「オレは無論ザックゲインだな。『眼』の事も考えると向井宏人だろうが」


「私は向井宏人かな。彼すごく強くなったよ?昔私一瞬で気絶させた事あるけど、今はもう本気でやってギリギリ負けるくらいかな」


「俺も宏人だ。『変化』とかチートだろ。宏人に少しでも触れられたら一発即死。おまけにアルドトイズとニーラグラの『カミノミワザ』だ。しかもアルドノイズに至っては『契約』経緯じゃないから威力そのままだし」


「私はライザーと同じでザックゲインくんかなー?確かに宏人くんの『変化』は強いけど、ネタが割れている以上ザックゲインくんは絶対阻止する。戦闘経験豊富だし、光速だし、私たち神人相手にも十分通用するからねー」


「僕は──」


 最後にアルベストがそう呟き、カナメ以外が怪訝な顔をする。

 だがそれは当然だった。


 なにせ、その人物は既に死んでいるのだから。


 *


 ──俺は息を切らしながら走る。

 ニカイキの居場所なんて知らないが、より『重力』が重い方向へ走れば辿り着けるだろうという、浅はかな考え。

 でもそれはむやみやたらに走り回るよりよっぽど効率的で、効果的だ。

 先程までは立っていることさえ辛かったニカイキによる全方位『重力』。

 だが今は不恰好ながらも走れて、着々とニカイキがいると思われる方向へ歩みを進められている。

 これは──!


 程なくして、俺は『重力』の中心部に到着した。

 そこはこの森のなかでも一際豊かなきのみが生い茂っており、心なしか他の場所より空気が澄んでいるように感じる。

 俺は確信と共に不自然な洞窟へ足を向け──。


「……よお。俺から会いにきてやったぞ」


「ハッ、そりゃあ俺が誘ってやったからだろうが」


 ニカイキは俺に背中を向けたままそう大声で言い、よっこらせと立ち上がる。

 ニカイキは堂々と真正面からこちらへ歩いてき、俺と目と鼻の先までくると立ち止まった。


「正直、俺はお前が何をしたいのか分からない。全方位『重力』で参加者全員の動きを止めるのは分かる。だがなんでお前はここから動かなかった?」


「決まってンだろ──テメェと真っ正面から潰し合うためだ。外野はいないに越したことはない」


 ニカイキは数歩下り、構える。

 俺もニカイキがすると同時に戦闘態勢に入り、手に『変化』を込める。


 ……少し、嫌な予感がする。


 ニカイキの大範囲『重力』の理由が全くその通りなら、他にいくらでもやりようがある。


 俺はそれを念頭に置いた上で──両手を合わせる。


「──式神展開」


 『獄廻界』。

 俺を中心に、地獄が広がる。

 元いた『世界』が断絶され、ニカイキを新たな『世界』へと連れ込む。


「いいねぇ……!本気ってわけだ」


「当たり前だろ。自然現象を操れる系ってのは大体理不尽だからな」


 俺は淡々とそう言い、影から獄犬を生み出す。

 神特有の、無限に湧き出る式神。

 獄犬はみるみる数を増やし、その鋭利な牙でニカイキに襲い掛かる。


「舐めんなよなぁ!」


 ニカイキは俺に向かって駆け出し、獄犬をものともせず──!


「『重力』ッ!」


「──ッ」


 直後、恐ろしい重量が体にのしかかる。

 完全に先程より重く、とても動けそうにない。


「ッ!獄犬!」


 俺は地に這いつくばりながら獄犬を収集し── 一つに纏める。


「ウオォォォォォォォォン!」


 獄犬は一匹の大きな狼に。

 これはカナメ特訓で教えてもらった、エラメスの水妖をサカナにする技。

 

「的がデカくなったなあオイ」


 ニカイキは大狼に最大出力の『重力』ッ!

 大狼は悲鳴をあげ消滅し、ニカイキは不敵に微笑みながら宏人を──いない。


「ッ!?」


 次の瞬間、ニカイキは後頭部を蹴り飛ばされた。


「やっぱお前の『重力』、範囲によって威力変わるだろ」


 俺はそのまま淡々と『変化』をニカイキに──!


「──ざけんなァァァァァ!」


 ニカイキはまたもや最大出力の『重力』!

 俺は途端に地面にめり込まされるが──そんなことは想定済みなわけで。


「ッ!」


 俺が地面に落ちると同時、ニカイキを灼熱の炎が焼く。

 俺は『重力』を受ける直前、『変化』を込めてない方の手で『エンブレム』を発動していた。

 『バースホーシャ』なら既に決着が付いていただろうが、いかんせん大技のためタメがいる。

 『バースホーシャ』は威力こそそこまでないが、タメが一切なく、発動までノータイムというのが強みだ。


「……チ。いってえな」


「……ほんとにな」


 俺はズキズキと痛む顔を持ち上げると、額から血が垂れる。

 最大出力の『重力』は想定より相当強く、打ちどころが悪かった。

 俺は『変化』で治し、完全回復した状態でニカイキを見下ろす。


「……つえぇな。お前」


「……ああ。もっとも、これは俺だけの力じゃないんだけどな」


 自分で言っといてなんだが、本当にそうだなと思う。

 これは俺一人の力じゃない。

 アルドノイズ、ニーラグラ、狂弥。

 そして鍛えてくれた、凪とカナメ。


「終わりだ」


 俺はニカイキに向かって手を伸ばす。

 これでニカイキを殺すのは2回目だ。

 申し訳ないが、俺はもう引き下がれ──。


「──『壊魂』」


 俺がニカイキに触れる瞬間、背を誰かに触られ──体の内をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられるような感覚に襲われた。


「ッ!?」


 俺は振り向くと共に、背後の誰かに『バースホーシャ』を撃つ。

 命中する様に、なるべく広範囲に広がる。


「アアッ!」


 すると見事命中し、そいつは燃えながらのたうち回る。

 だがニカイキがそいつに『重力』をかけると、炎は鎮火された。

 火が無くなったことで、この人物の正体が露わとなる。


「……お前は確か、上位七人の」


 確か先日の襲撃の際にもいた。

 顔の半分が痛々しいほどに焼けているが……『バースホーシャ』を食らってそれだけで済んでいるのは、『能力』絡みか。


「は、花哉です」


 花哉と名乗った少年は、見たところ十代前半……つまり子供だ。

 だが俺は知っている──こんなガキが上位七人なんかに選ばれている時点で、普通じゃない。

 早急に、殺すべきだ。

 俺の思考と同じ様に、その花哉とやらは殺気を露わにする。


「こ、殺します。絶対に殺します。ち、地の果てに逃げようと、し、式神の中に逃げようと逃しはしません」


「……だそうだぜ?どうするよ向井宏人」


 ニカイキはクククと面白そうに笑う。


 ──だが。


 正直、俺は思う。


「お前らじゃ俺の相手にならない」


 俺のその言葉に、ニカイキと花哉がピシッと固まる。

 確かに、ニカイキの『重力』は理不尽で強く、花哉の体を弄るような得体の知れない『能力』は不気味で警戒している。

 だが、俺は知ってしまった。

 この『世界』のトップたちの力を。


「証明してやるよ──かかってこい」


 俺の言葉を皮切りに、ニカイキと花哉が動いた。

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