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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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188話(神サイド) 生存戦争⑧


「カルマ。どうぞ……よろしく?」


「……宏人だ。どうぞよろしく」


 創也と合流した後、俺はカルマと軽い自己紹介をした。

 創也曰く、意外とあっさり仲間になったとのことだが、正直信用し切れない。

 

「なあ創也。道中『メンバーズ』の誰かに合わなかったか?今ナンと瑠璃を探しているんだけど」


「会ってないよー。しかしナンと瑠璃ねぇ……。ナンはともかく、瑠璃が問題だね。急いで探そうか」


 そう言い、創也は笑顔でカルマの顔を見る。

 するとカルマは勢いよくぶんぶんと顔を横に振る。


「……どうした?」


「いやね、カルマの『能力』って『天使』なんだけど、なんと背中に翼が生えるんだよね」


「いや載せないよ?羽千切れるんですけど」


「えー。そこをなんとか」


「無理無理マジ無理」


 カルマは恐ろしい速度で首を振る。

 天使の羽で飛ぶ原理など知らないが、まあちっこい二対の羽で人二人を運ぶなんて無理な話だろう。


「創也、お前忘れたのか?俺に黒龍いること」


「あ、あー!完全に忘れてたよ。よしっ、黒龍に乗ろう」


「黒龍って?」


「まあ見とけって」


 俺はそう言うやいなや虚空より神剣『黒龍』を取り出し、天に掲げ、唱える。


「顕現──『黒龍』」


 すると剣が宙に浮き──真っ黒な霧に覆われる。

 そして。


「グギャアアアアアアアアアア!」


 神の使いである黒龍が、俺たちの上空に顕現した。

 黒龍は俺の思考を読んだかの様に、乗れとばかりに地上に着地し腰を下ろした。


「よし、乗ろうか」


「……」


 ポカンと呆然と突っ立ったままのカルマを創也が担ぎ、俺たちは黒龍に乗り空を飛んだ。


 *


「──って……。イヤァァァァァァァァ!?」


 黒龍に乗って空を飛んでいると、復活したらしいカルマが絶叫した。


「……いきなり近距離大声されると鼓膜が辛いんだが」


「あはは。敵?」


「いやごめんて……。あと創也はすぐあたしを敵にすんな!」


 カルマは半泣きでおそるおそる地上を見る。

 人探しということもあって高度は低めだが、カルマは吐きそうにうっぷと唸る。


「吐いたら敵だよ?」


「ざけんな──おろろろろろろ」


「……」


「グギャアアアアアアアアアア!?」


 カルマのキラキラが黒龍の背中に流れ、黒龍が悲鳴を上げる。

 初めてアルドノイズと戦った時の絶望感満載だった黒龍は、今となっては背中をゲロで汚されて可哀想な奴にしか思えないのは、立派な成長の証なのだろうか。

 俺がそんなバカな事を考えていると、背後の創也が「あっ!」と声を挙げた。


「ねぇみてみてー。あれって黒夜じゃない?」


「おぉほんとだ。あ、良かった瑠璃もいる」


「……あれシェリカじゃね」


 俺は黒龍に指示を出し、黒夜たちから離れた場所に着地させた。

 いかんせんこの巨大だ。

 黒夜たちが吹っ飛びかねない。

 創也と瑠璃が黒龍から降りるのを確認した後、俺は黒龍を『神剣』に戻して徒歩で向かう。

 空から見て適当に距離を測った弊害か、思ったより遠いところで着地した様だ。


「……いや遠過ぎじゃね?」


 俺と創也もそう思ってたところ、カルマが呟いた。

 

「……確かに明らかに遠過ぎだな。これ、考えられる可能性一つだろ」


「うん。宏人くんが遠近法を知らなかったってことだね」


「違う。絶対『能力』絡みだ」


 俺は創也の意見を真っ二つにし、辺りを見渡す。

 とはいえ、未だ『能力』案件だと確定していない以上、むやみに探して見つけ出せるものなのだろうか。

 ……これで見つからなかったら俺が相当バカ認定されかねないので勘弁願いたい。


「宏人。『能力』絡みだとしてもさ、ほっといてこのまま黒龍で飛んでいっちゃいましょ。別に対して強くない『能力』だからどーでもいいでしょ?」


「そうだけどなぁ……。でも厄介な『能力』に変わりはないわけで」


「じゃあ──ザックゲインにでも頼む?」


 そう言いカルマが懐から取り出したのは、なんの変哲もないただの石。

 ただその石にはボタンの様なものが付いており、どことなく違和感を覚える。


「……それは通信機か?」


「うん。まあでも使うには条件があってさ。ウチらのマルフィットって奴がピンチになってからじゃないと使えないんだ」


「マルフィットはいつも用心だねぇ。つまり、それはマルフィットの安全装置ってこと?」


「そうそう。マルフィットが『能力』を発動してはじめて使えるようになる。最初から使えるようにしてないのは、マルフィットの『能力』節約とこの戦争のルールに抵触しないためだね」


 通信機を持ってきてはいけないなんてルールはない。

 だが凪に用意してもらったスマホがいつの間にか無くなっていることから、おそらくそういう仕組みなんだろう。

 だがマルフィットの石は、マルフィットが『能力』を込めるまでただの石。

 まあ当然既に仕掛けが施されている石なのだろうが、それでもすごいことに変わりはない。


「まあ、その石のことはよく分かったが却下だ。ここにザックゲインを呼ぶなんて冗談じゃない」


「それは僕も賛成だ。僕と宏人で協力すればザックゲインなんて余裕だろうけど……僕たちには、やるべき事があるからね。こんなところで油を売る必要はない」


「あ、そう。ザックゲインなら意外とあんたたちに協力してくれるかもって思って言ってみただけだけど……あんまりザックゲインを舐めない方がいいわよ?まだあいつ『能力』隠してるし」


「電撃だろ?なんだったか……『サンドライトニング』だ」


「いや知ってんのかーい。えっ、あいつと戦ったの?」


「おう。生存戦争のスタート地点がほぼ同じ場所からだったからな」


 カルマは感心したように俺を見る。

 ……まあ、あのザックゲインは完全に本気じゃなかったから押し勝てただけだろうが。


「まあとにかく本題に戻るけど、やっぱ黒龍を使うべきだと僕も思うよ。あそこには黒夜もいたし、瑠璃とシェリカが吹っ飛んでもなんとかしてくれるさ」


 創也のその提案もあり、俺たちは再度黒龍に乗って黒夜たちの元へ向かう事に決めた。

 黒龍を顕現し、俺たちは空を飛んだ──瞬間。


「──『岩石』」


「ッ!?」


 黒龍の翼の真上に、突然岩が出現。

 これは──この戦場の中心部に行った時の。


「カルマ!」


 俺は何が起こったのか分からず、呆然としたまま落ちていく中、創也が叫んだ。


「はいはい!やればいいんでしょ──『天使』」


 カルマがそう叫ぶと、カルマの頭に天使の輪っか、両翼の羽、そして『眼』が金色に。

 『天使』と成ったカルマは飛び、それぞれの手で落下していく俺と創也をキャッチ。

 

「ギッ!」


「おお、今すごい音なったね」


「だ、大丈夫か……?」


 三人で不安定な形で空を飛んでいると、軌道を修正した黒龍が俺たちを背に乗せ、なんとかなった。


「あー!死ぬー!」


 カルマが肩で息をしながら四つん這いで叫んだ。

 創也がカルマを誉めている間、俺は今の『岩石』の能力者を探す。

 だが──またもや気配が掴めない。


「創也。今の岩の奴の気配を掴めるか?」


「いいや、これっぽっちも。相当気配を消すのが上手いね。……いや、でもこれは……」


 珍しく創也が熟考するのを気になっているところ、真下から聞き慣れた声が。


「宏人様ー!黒夜です!」


「宏人!こっちこっち!」


「ああ、分かってる分かってる。二人とも久しぶり」


 これで、俺は黒夜と瑠璃とも再会を果たした。

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