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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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187話(神サイド) 生存戦争⑦


「──ッ!?」


 刹那、ナンの『爆破』による大爆発が起こる。

 それをマルフィットは避けようとするが、不意打ちということもあり、足が逃げ遅れる。

 マルフィットの左足が宙を舞い、ボトッと地面に落ちた。


「フゥー!フゥー!」


 マルフィットは荒く息をしながら上体を起こし、ナンを睨んだ。


「──『創造』ッ!」


 マルフィットがそう叫ぶと、足元に義足が出現した。

 マルフィットはそれを急いで足に接続し、なんとか両足で立つ。

 ナンは容赦なく至るところに『爆破』を発動し、マルフィットにトドメを──!


「式神展開『機械仕掛』」


 マルフィットがそう呟くと共に、『世界』が構築された。

 ナンは初めて見る『式神展開』という『世界』に感動しながらも、警戒を強める。

 この『世界』は、名前そのものであり機械仕掛けだ。

 至るところに歯車が回転し、不気味な機械が常時動いている。

 そして注目すべきは──マルフィットの背後にある、いくつもの砲台。

 その砲台の前で、マルフィットは悠然と佇む。


「あなた、よくも私の足を奪ってくれましたね……死になさい」


 瞬間──。

 マルフィットの背後にある無数の砲台はマルフィットよりも高い位置に伸び、ナンに集中放火を開始。


「な!?」


 ナンは逃げ場を探すが、この『世界』は機械に満ちた一本道。

 逃げ場などおろか、人が隠れられるようなスペースさえ見つからない。

 そのためナンは── 一か八か、マルフィットに突っ込む!


「……ッ!イカれている……!」


 マルフィットは頬を引き攣らせながらも、勝利を確信する。

 ここでナンが七録カナメのように『式神』を扱えていたらどうなっていたか分からなかったが、マルフィットの『式神』は一撃必殺業。

 この攻撃から生きて帰りたければ、『式神』を展開しどうにかこの『世界』を上書きするしか方法はないのである。

 そんな『式神』に、ナンは──!


「『爆破』ァァァァァァァァァァ!」


 ナンは迫り来る弾丸を全て『爆破』!

 そうして一歩一歩と、着々とマルフィットの元へ進んでいく。


「う、嘘でしょう……?」


 マルフィットは冷や汗をかきながら、だんだんと近づいてくるナンを凝視する。

 かと言ってここでマルフィットが飛び出してももれなく砲台の餌食になるのは目に見えているし、『式神』を解除したとしてもその後にこれ以上の攻撃を与えるなんて出来るわけがない。


「……!クソ、クソッ!」


 マルフィットの目前までナンが迫ってき──ナンの拳が、マルフィットに炸裂した。


「ガッ!?」


 だがマルフィットはタダではやられず、脇に挟んでいた銃でナンの脇腹を撃つ。

 ナンがうめき声をあげている間に、砲台をナンに標準を合わせ──!


「カハッ……!」


 それより前に、ナンの蹴りがマルフィットの頭に直撃。

 マルフィットは一瞬意識を失いながら、後方へぶっ飛んだ。

 それと同時に、マルフィットの制御が切れ『式神』が崩壊。

 マルフィットは地面を転がり続け、なんとか意識を復活させ、忍ばせていたある機械を押した時には。

 ナンは痛む腹を抑えながらも、マルフィットの目の前にまで来ていた。

 マルフィットの顔が、悲痛に染まる。


「や、やめ──!」


「『爆破』」


 *

 

 マルフィットは、科学者だった。

 そのため己の『能力』である『創造』はとても便利であり、それで以ってよく実験を行っていた。


「だから私は天才なんですよ」


「そう……。で、これは何ー?」


 マルフィットが楽しそうに語る生前の歴史を、ザックゲインは耳をかっぽじりながら適当にあしらう。

 ……まあ、耳をかっぽじって聞いていたのならいいでしょうと無理やり納得し、マルフィットは答えた。


「これは簡単に言って通信機ですね」


「簡単に言って?他になんか機能あるの?生存戦争も直前に迫りつつあるなか作ったんだからそれたけじゃないでしょ」


「ご名答。まあ、恥ずかしながら私の保険です」


「マルフィットの保険?」


「はい。これも恥ずかしながら、私は戦闘センスがからっきしでして……。以前襲撃した際に確認しましたが、おそらく『メンバーズ』の主戦力と戦うことになれば私は手も足もでないでしょう。その時、これの出番です」


 マルフィットが机の上の『これ』を指し、ザックゲインは再度それを見た。

 何の変哲もない、ただの小さな石。

 だがその石をよくよく見てみると、表面にこれまた小さなボタンの様なものがあるのが分かった。


「これはただボタン機能を付けた石です。本当にただのボタンですので、押しても何もありません。どうぞやってみてください」


 ザックゲインは促されるまま朝のボタンを押してみる。

 すると、マルフィットの言う通り何も起こらない。

 本当にただの玩具だ。

 だが、マルフィットの『能力』は──!


「なるほどね。すごいな。要するに僕とマルフィットでこの石を一つずつ持っておいて、マルフィットはピンチになったらこの石を『創造』で通信機にして僕に連絡。それで僕がどうにか間に合う様に駆けつけるってわけだ」


「はい。……問題ないですか?かなりの負担を押し付けてしまう形になりますが」


「全然いいよー。あ、でももし呼び出された時に宏人やセバスとかと戦ってたら無理かな。一応上位七人のみんなに渡しておこうか」


 ザックゲインの提案に、マルフィットは勢いよく頭を下げた。


「ありがとうございます。感謝します」


「いやだからいいって。これあれば簡単に上位七人で集まれるしね。……まあ、そんな事しないだろうけど」


 ザックゲインははぁとため息を吐く。

 ニカイキや花哉、あと別の理由でシェリカも集合することはないだろう。


「ともかく、僕が来るまで耐えてね。出来るでしょ、マルフィットは戦闘センスがないだけで『能力』も『式神』も化け物なんだから」


「そうなのですが、やはり『式神』を展開している間は連絡取れそうにないので、呼ぶのはおそらく『式神』破壊後になってしまいます。なるべく自分の力で乗り切りたいので。出来そうですかね?」


「そんな無茶なー……って、普通の人だったら言うだろうけど。もちろんそれも問題ないさ。だって僕は電気の速度で移動出来るからね。光速さ。アルベスト様々だねー」


 マルフィットは未だ頭を下げたまま、小さく「あなたと仲間で良かったです」と呟く。

 そして顔を上げたマルフィットに、ザックゲインはサムズアップして言い放った。


「気軽に呼んでよ?必ず間に合ってみせるさ」


 *


「とは言ったものの……。うーん、現実は容赦ないね」


 ザックゲインの目の前には──死体と成ったマルフィットが。

 そして顔を上げると、状況的にマルフィットを殺したであろう、ナンが。


「……きみは確か『メンバーズ』の。あれ?非戦闘員じゃなかったっけ?」


「なぜか知らないがそんな俺が生存戦争のプレイヤーになっていてナ。すまんな、お前たちと違って現代人は非力なんだ」


「いやいや。ただきみが強いだけでしょー。というか、現代人めっちゃ強いよ?特に神人がなー。あの人たちの殺し方が想像つかないよ」


 ザックゲインは、静かにナンを見据え──剣を向けた。


「まあとにかく、殺すね?」


「……それは俺がマルフィットを殺したからカ……?」


「いや違う違う。ぶっちゃけマルフィットなんかどうでも──」


「あ……。ザックゲイン……?」


「ッ!?」


 そこで、マルフィットが焦点が合っていないながらも、目を開いた。


(生きていタ──!?)


 ナンはマルフィットを殺したあと、とてつもない気配を察知しその場から離れ、ザックゲインと対峙したのだ。

 死んだかどうか、確認しきれていなかった……!

 ナンはザックゲイン相手でもどうにか対処は出来ると考えていたが、そこにマルフィットも加わるともうなすすべがない。

 ナンが必死に思考を巡らせているのを面白そうにザックゲインは見つめ──マルフィットの心臓に、剣を突いた。


「は──?」


「……僕がマルフィットに駆けつけた理由は、マルフィットを殺せるくらい強い奴に会いたかっただけ。マルフィット救済はついでさ。まあ毎日おもしろい機械作ってくれるから生きててはほしかったけれども」


 ナンは何が起こっているのか理解出来なかった。


 だが──今はそんな事どうでもいい!


 ナンは今、上位七人のトップ、すなわち世界最強の『能力者』と対峙しているのだから。

 ナンは全神経を集中させ、隈なくザックゲインを注視する。

 ザックゲイン自体からそこまで強さを感じない──だからこそ、異様で異質。

 そのためナンは気を引き締めて──


「……カハッ」


 気づいたときには遅く、ナンは膝から崩れ落ちた。


「だめだよー。電気使い相手に構えるなんて。もう僕が動く前から防御しないと間に合わないからねー」


 ザックゲインはそう言い、淡々とナンの首を切った。

 パシャリと大量の血が顔を汚すが、一切気に止めることなく首を持ち上げ、懐にしまう。


「さて、これで宏人くんへの挑戦権獲得だね」


 ザックゲインは楽しげにそう言った。

 

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