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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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185話(神サイド) 生存戦争⑤


 生存戦争が始まり、初めての夜。

 森ということもあって辺りは真っ暗であり、奇襲される心配もあまり無さそうだ。

 だが、だとしても油断は出来ないわけで。


「……気ぃ張りながら寝るのを一ヶ月続ける……?冗談じゃねえ」


 俺は悪態を吐いていた。

 ぐっすり寝ている間に殺されるのは真っ平ごめんだからな。


「っと。こんなもんか」


 だから俺は──!

 ざっと3時間ぐらいかけて、地面に簡素な部屋を作った。

 『変化』に『変化』を重ねての構築だ。

 地盤が固いところを掘ったため寝ている最中に土に埋もれるなんてことはない……と信じたい。


 そして翌朝、皮肉の様な良い天気のなか、俺は伸びとストレッチをする。

 意外とぐっすり寝れたため体調は万全。

 入り口は大きな石で隠しているからこの部屋がバレるなんてことはそうそうないだろう。

 だから生存戦争が終わる直前まで引きこもっているのが一番の安全策だが、体が鈍ると後が怖い。


「うーむ……」


 俺は屈伸しながら考える。

 この戦いの目玉といえば、やはり他人の『能力』の獲得だ。

 だが俺はもうかなり他人の『能力』を所持している以上、これ以上獲得しても使い切れる自信がない。


 だから俺がやるべきことは、もうこれしかない。


「──藍津」


「おほっ、バレてたか」


 藍津は後頭部を掻きながら苦笑いで木陰より出てきた。

 

「いやぁ、考え深いねぇ。2年前くらいのお前さんなら一瞬で殺せる自信があったのに、今じゃ苦労しそうだ」


「まるで今も勝てる様な言い方だな」


「まあ真正面から正々堂々となると勝てないわなぁ」


 俺は藍津の顔を静かに見つめながら、言った。


「欲しい『情報』がある」


「えっへぇ。なんでしょう」


「今回参加した『能力』者を全員教えろ」


「……大分デカいのがきたなぁ。まあいいけど──じゃあ、対価の話といきやしょうか」


 途端に藍津の顔が真面目なものになる。

 対価。

 情報屋の藍津が教える情報によって難易度が変わる、いわゆるミッション的なもの。

 おそらくカミルドに課せられた対価はアルドノイズを殺すこと。

 だがカミルドはそれ果たせなかった。

 だから、藍津に殺された。


「それを達成出来なかったら俺は殺されるのか?」


「まあそうだなぁ。キツイことに変わりはないでしょうが、こっちもそれなりの覚悟決めて情報屋やってるので」


「分かった──じゃあ、俺は何をすればいい?」


 俺のその言葉に、藍津の口が三日月の形になる。

 だが藍津が何を企んでいようが、俺は俺の目的を遂行するだけ。

 まず参加者を把握し、どいつが危険で、戦闘能力が低い仲間が参加していた場合はどうにか助けにいく。

 藍津は嬉しそうに左手を腹部に当て、右手を背に回し、辞儀をしながら言った。


「簡単簡単、俺が頼まなくてもいつか戦うであろう相手である──ニカイキ・ユナイテッドの殺害を、お願いしやす」


 *


「……テメェはいつまでいいにいるんだよ、マルフィット」


「ここは安全地帯ですからね。私は強いですが戦いを好んでいるわけではありません。ですからザックゲインや花哉さんは苦手です」


「あ?俺は入ってねェのかよ」


「当たり前ですよ。あなたは別に戦いが好きではない。自身の『能力』オタクなだけです」


「ッ……」


 ニカイキが答えに窮していると、マルフィットは小さくため息を吐き立ち上がった。

 

「ですがまあ、私も長生きしたいですしザックゲインたちの手伝いをすることにします。あなたもちゃんと貢献してくださいね?」


 歩いて去っていくマルフィットを見ながら、ニカイキは後頭部を掻き舌打ちした。

 その後、ニカイキは再度集中し目を閉じる。


 ──ニカイキは、ぶっちゃけ上位七人なんてどうでもいい。


 目の前で上位七人の誰かが殺されようと、何も思わない。

 まあこれは当たり前だ、ただ同じグループなだけで、別に仲間というわけではない。

 同じ使命を持っているただの他人。

 だから、別に巻き込んでもいいわけで。

 生存戦争が始まってからまだ一日しか経っていないためか、準備が完了するまでにまだまだ時間がかかりそうだ。

 だが、ニカイキはどうしても──


「さてェ……もうしばらく生かしといてやる。向井宏人……!」


 *


「……ニカイキねぇ」


 俺は藍津が去ってった後、ポツリと呟いた。

 藍津の行動はどうでもいいが、なぜここでニカイキが出てくるのかは気になるところ。

 俺はかつて生前のニカイキを殺したことがあるため、ニカイキから相当恨まれている。

 ……間違いなく、この間の件でそれに磨きがかかっていることだろう。


「まあでも、期限は一週間後からそれから二週間後までか。まさか始まる期限まで設けられているとはな」


 俺は取り敢えず森を探索する。

 まだ仲間と合流出来てないのが痛いところ。

 セバスはまだよく分からないしな。

 しかし生存戦争の期間は一ヶ月。

 そう焦ることもないだろう。

 初日は参加者皆んな気が立ってたいたあちらこちらで戦闘が行われていた気配がしたが、今日はあまりそんな感じはしない。

 だから、大丈夫と信じたい。

 藍津のミッションを始められるのが遅いこともあり、既に報酬は渡されている。


 ──ナンと瑠璃を、助ける。


「無事でいろよ……!」


 俺は駆け出し、二人を探す。

 広大な森の中を当てもなく走るのは愚策だと分かってはいるが、現状何も情報がない以上こうするしかない。

 藍津に頼みたかったが、さすがにミッションの掛け持ちは出来ないとのこと。


 だから、どうにかして探し出す!


 だが二人を探している間にも、頭の隅にチラつくことがある。


 この戦場にいる人間は、明らかに30人ではない。


 *


「まあ、こんなものだよねぇ……」


 ザックゲインはふぅーっと息を吹き、目を細めて足元を見つめる。

 ザックゲインの顔は珍しく不機嫌。

 その原因は、足元の死体にある。


「まさかまさか、その鎌だけで戦うなんて。奥の手を隠すため『能力』を使わずに死ぬなんて、とんだ間抜けだなぁ」


 その死体は──セバス。

 ザックゲインが言った通り、セバスは鎌だけで戦い、ザックゲインの電撃で麻痺したところを切り刻まれた。

 

「『死神』なんて大層なあだ名が付いているからどんな最強くんかと思えば……これじゃあ『Gottmord』の最高戦力はカナメを除けば宏人かな。もう『Gottmord』じゃないらしいけど」


 ザックゲインはそう一人呟いた後──セバスの死体に向けて最大出力の電撃を放ち、死体を消滅させた。


「よしっ、これで八人目っと。あと一人で宏人にいけるね」


 ザックゲインは踵を返し、目を閉じ集中する。

 森というのは、特定の個人を探すのは辛いが、適当な人間を探すのには苦労しない。

 静寂な森は、動物の気配、水の音、植物の呼吸といった色々なものに包まれている。

 だがその『森』とは違う、異端者、それが人間だ。

 ザックゲインは瞬時に付近の人間を察知し、気配を悟られずに背後から『サンドライトニング』。

 今ので、殺した人数は9人。

 これで──!


「あれ……?」


 ここで、ザックゲインも気付いた。

 いや、たった今確信したと言うべきか。

 自分が9人も殺したというのに、まだまだ人間の気配が途絶えていない。


 ──ここにいる人間は、30人どころではない。

 

 これは確信だ。


「ん……?」


 すると今『サンドライトニング』を浴びせた男がうめいた。

 まだ生きていたらしい。

 ザックゲインは淡々と切り刻もうとし……はたと思いついた。

 

「よしっ」


 ザックゲインは瀕死の男の首根っこを掴み、歩みを進め──範囲外へ投げ出した。

 殺さないように足元から着地するように投げた結果、男は尻もちを突きながらも無事範囲外へ脱出したことになる。

 これは生存戦争のルール6箇条の5項目に当てはまる行為、すなわち神人との強制戦闘。

 だが、まてどもまてども神人が来る様子はない。


「やっぱり、生存戦争のプレイヤー以外もこの戦場にいる……!」


 ザックゲインはそう確信し、その場から踵を返す。

 来た道を戻りながら、ふと思う。

 

 ──生存戦争の正規プレイヤーを正確に把握していないと、十人目に獲得出来る『能力』を誰に使うか選択出来ないのではないか、と。


 そしてすぐに思いつく。

 

 ──なら、把握し切っている奴らを9人殺すまで。


「さて、みんなはどこかなぁ」


 ザックゲインはそう呟きながら、危ない笑みを浮かべていた。

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