表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
192/301

184話(神サイド) 生存戦争④


 神の間。

 超級能力者の殺し合いである『生存戦争』の監督を任されている四人の神人と神の2柱が集められている場にて。


「ほーら宏人死ななかったじゃん。誰だよ死ぬぞとか言った奴」


 ……カナメはライザーをチラッチラ見ながら煽る。

 そんなカナメを、ライザーはバカバカしいと嘲笑う……のだが、やはり納得がいかなかったのか早口で訂正する。


「ハッ。事実向井宏人はザックゲインに負けただろう。結果死ななかったのはザックゲインの気まぐれに過ぎない」


「あーはいはい、了解了解」


 ライザーはカナメに適当にあしらわれると、ムッとした表情で言った。


「そんな舐めている態度を取れるのも今のうちだぞ七録カナメ。そろそろオマエのそのツラが恐怖に染まるだろうからな」


「アンタもそろそろ俺の部下になるんだ。給仕の勉強でもしといた方が身のためだよ」


 ライザーとの会話がひと段落すると、カナメは無言で生存戦争の展開を見る。

 まだ初日だと言うのに随分と人が殺されている。

 幸い今のところ仲間に被害はないが、それも時間の問題だ。

 もう、ザックゲインは七人殺している。


「さて……みんなはどうするのかな」


 *


「うーん、きみとは正直戦いたくないんだよなぁ……セバス・ブレスレット。強いって言うか、厄介って言うか」


 ザックゲインはため息を吐きながら、セバスに言った。

 ザックゲインは強者かどうか見分けるのに長けている。

 だがしかし、セバスに関しては分からない。

 纏うおどろおどろしいオーラに対して、自信が纏う気配は希薄だ。

 

「あなたの目的はなんですか?目的次第では見逃してあげますが」


「目的?変なこと聞くね。僕に次ぐぐらい人を殺しているきみがそんなことを気にするの?」


「そうですね、あなたに関しては興味があります。なにせ世界から認められた人なんですからね。どんな崇高な目的があるのだろうかと」


「……きみさぁ、絶対友達少ないでしょ?」


「まあ、否定はしませんが」


 セバスはザックゲインを観察しながら思考する。

 ザックゲインの『能力』である『適応』のストックは一つまで。

 これはカナメと宏人が戦い、カナメに至っては本人の口からも言われている。

 信用出来るとは言い切れないが、これに関しては今のところ危惧すべきではない。

 問題はどのように倒すか、だ。

 宏人の様に『適応』、『無味無臭』をする前に畳み掛けるのもいいが、先程宏人がしたばかりなので論外。


「──ねぇ」


 セバスが思考に耽っていると、ザックゲインが口を開いた。


「ここはお互い見逃さない?僕的にはザコ狩りでさっさと他人の『能力』奪いたいんだよね。『能力』奪えるの人数制限あるからさ、ね?」


「確かにそうですね……」


 セバスは少し考えた後、それもそうかと思い直す。

 時間はかなりあるのだ、急ぐ必要はない。


 だがしかし──。


「でも、やっぱあなたをほっとくのは危ないかなって」


「……バカだねぇ」


 セバスのその言葉に、ザックゲインはため息を吐きながら言った。

 そして瞬時に、両者とも武器を構える。

 セバスは死神の『鎌』を。

 ザックゲインは『勇者剣』を。


「それ、勇者剣ですよね。勇者剣は創也くんが持っているはずなんですが、偽物ですか?」


「いやいや、こっちもマジモンのモノホンさ。というかその創也って奴が持ってるのが偽物でしょ」


「……?仮にあなたが本物の勇者剣を持っていたとして、なぜあなたがそれを持っているんですか?」


「いや、だって僕が勇者だし」


「……」


 サラリと衝撃な発言をするザックゲインに、セバスは目を細める。

 これもまた仮に本当だとしたら、ザックゲインは八柱の神レベルの実力者だ。

 でも、それはセバスも同様であり。


「ごめん、質問ばっかりで。始めましょうか」


「いやいや、僕としては今は戦いたくなかったんだけどねぇ。やってやりますか。不意打ちしなかったことは褒めてあげる」


 そして──セバスとザックゲインがぶつかる。


 *


「……欲しい情報だト?」


 チャンは目の前の男に最大限の注意を払う。

 宏人たちが言っていた上位七人とは違うというのは分かる。

 藍津はそんなチャンを見越してか、軽く補足する。


「今さっきも言った通り、俺は何も怪しくないしがない情報屋さ。そう警戒すんな」


「じゃあお前のことについて教えてもらおうカ。『能力』はなんダ?」


「『必中』だぁ。すごいぜ?なんでも命中しちまう」


 藍津は試しに適当な木へ銃の弾丸に『必中』を付与し、数発放つ。

 するとその木に実っていたものがぼとぼとと落ちる。

 全てのきのみの中心には弾痕が。

 これは木の衝撃で落ちたわけではなく、一瞬で数個のきのみの中心を弾丸で撃ち抜いたということになる。

 チャンはゴクリと息を呑む。


「……お前は故人の選抜組カ?」


「ハハハ。確かに俺は強いからな、そう見えるんだろう。安心しろ。俺はちゃんと現代人だよ」


 藍津は戯けながら両手を挙げるが、チャンが信用した気配がなく力無く笑う。


「まあなんだ、なんか欲しい情報があったら俺を頼ってくれ。報酬限りじゃ力になるぜ」


 藍津は踵を返し、片手をひらひらと振りながら去っていった。


 *


「……あなたはこんなところで何をしているのですか」


「あ?」


 ニカイキが声のした方を向くと、そこにはマルフィットが呆れながらこちらを見ていた。

 だがニカイキはため息を吐くだけで特に何も言わず、再度座禅する。


「座禅……。何か邪念でもあるのですか?」


「邪念ねぇ……」


『きみなんかが向井宏人に勝てるわけないからじゃん』


 まず頭に浮かび続けるのは、昨日ザックゲインに言われた一言。

 腹が立つはずなのに、言い返せなかった。

 確かに、ニカイキは通算2回宏人に負けている。

 一度目は言わずもがな、生前の頃だ。

 2回目は上位七人として襲撃した際。

 あの時は明確に決着がついたわけではないが、ニカイキが絶対の自信を持つ『重力』から逃げられたのである。

 ニカイキにとって、これは敗北だ。


「まあ、ねぇとは言わねェよ。……帰れ。俺はもう少しここにいる」


「では私もここにいるとしましょう」


 マルフィットは言うやいなやニカイキの隣りに腰掛けた。

 ニカイキは怒鳴ろうとしたが……舌打ちを吐き、座禅に集中した。


 *


「ここはどこでしょう……?」


 シェリカはおどおどしていた。

 シェリカ・ロズワルドは上位七人の一人なのだが、『能力』は『全快』。

 対象の傷を治すだけでなく、病まで治す『能力』。

  当時は聖女として祀られていたシェリカだが、気が付けばこの『世界』にいた。

 シェリカは上位七人の中で唯一死んだ時の記憶がなく、かつ戦闘系統の『能力』ではないためあんま現状を把握していない。

 ザックゲインからは、


『んー、とりま僕らが怪我したら治して!』


 としか言われていない。

 シェリカは取り敢えず同じ場所を行ったり来たりし──ぽすんと座った。


「まあ、なんとかなりますよねぇ……」


 シェリカはそのまま地の草原に手を伸ばし、草冠を作る。

 花がないのは惜しいが、これをしていると落ち着くのだ。


「〜〜」


 鼻息を歌いながらシェリカは編んでいき……それを、瑠璃が見ていた。


「……。どうしましょ」


 瑠璃は平和な光景を目に映しながら、視界の端で『バースホーシャ』らしき爆炎が空を覆ったのを無視した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ