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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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183話(神サイド) 生存戦争③


「取り敢えず、人を探すか」


 俺は崖を見終わった後、そう決めた。

 今のところ会ったのはザックゲインくらいだ。

 ……しかも開始早々。

 まあともかく、今言った様に人探しだ。

 味方でも、最悪敵でもいい。

 とにかく何かせねば。


「……いっちょ、賭けに出るか」


 俺は自分の発言ながらも顔を引き攣らせながら来た道を戻る。

 心臓がドクンドクンとうるさい。

 ザックゲインの剣筋をあそこまで正確に見切れたのは、俺の成長と狂弥の『眼』以外にも、ザックゲイン自身にあったと見ている。

 おそらく俺のような貴重な能力者の『能力』が欲しいのだろう。

 『生存戦争』で他人の『能力』が奪えるのは10人目に殺した場合のみ。

 自分以外を除くと参加者は29人のため最大二つの『能力』を獲得出来るが、まあ現実味はないだろう。

 仮にそれが出来る力を持っていたとしても、時間が経つほど参加者は減っていってしまう、不可能に近い。

 俺はやがて──森林のど真ん中の、更地へ到着した。


「さて……頼むから一人ぐらい味方いろよ?」


 俺は更地の中央へ。

 四方八方より視線が突き刺さる。

 やはりここは危険地帯。

 そんなことは誰もが百も承知。

 だからこそ、皆不自然に中央で立ちすくむ宏人を警戒せずにはいられない。

 だから敢えて──


「──『バースホーシャ』」


 俺は天に盛大に花火をぶちまける。

 すると、案の定と言うべきか。


「……敵、か」


「『岩石』」


 小さな呟き声と共に、俺の頭上には巨大な石が。


「いやこれは……岩じゃね?」


 そんな事を言っている間にも岩石が落下。

 俺は慌ててスライディング回避。

 だが今度は俺の行動を見計らっていたかの様な攻撃が。

 

「『爆炎』ッ!」


 炎の渦が俺を飲み込まんばかりに口を広げる。

 だが、俺はゆっくりと立ち上がりながらその炎に手を向ける。


「『エンブレム』」


 これはアルファブルームがアルドノイズに堕ち、『能力』の総量が少なくなったため、莫大な能力量を必要とする『バースホーシャ』を小規模にし能力量を抑えた『カミノミワザ』。

 だがやはり『カミノミワザ』であることに違いなく、『爆炎』はいともたやすく掻き消された。

 

「ッ……!」


 『爆炎』使いの男の顔が歪む。

 俺はその男に注意を向けつつ、更なる追撃を警戒する。

 どうやら『岩石』使いは逃げたようだ、気配がない。


「相手が悪かったな。生憎と俺は炎が得意なもんで」


 俺は手に『変化』を込めながら『爆炎』使いに近づく。

 

「ハッ、お前こそ俺の『爆炎』を凌いだからって調子に乗らないことだな。あれはまだ本気じゃなかったんだ」


「あっそ。ならさ、火力勝負しようぜ」


 俺は『爆炎』使いの返事を聞く前に『変化』を霧散させ、『爆炎』使いと程よい距離で手を向け──『バースホーシャ』を込める。

 

「ハハ……」


 我ながらなんと大人気ないことか。

 俺が自分に呆れていると、『爆炎』使いは自信満々な顔で「後悔すんなよ?」と言いながら用意する。

 彼が用意している間、俺はきちんと待つ。

 別に騎士道精神を重んじているわけではないが、アルドノイズならこうしただろう。

 一応『バースホーシャ』も借り物の力だ、極力アルドノイズの意に反さない使い方をしてやろうと思っている。

 ……まあ、そのアルドノイズは一ヶ月前からずっと音沙汰がないのだが。

 俺がそんな事を思考している間に、『爆炎』使いも威力を最大まで込められたのか、余裕に満ちた顔を見せてくる。


「……すごいな」


 思わず素直な賞賛が溢れた。

 彼の準備に準備を重ねた『爆炎』は、先程の『エンブレム』ぐらいの威力を想像させたから。


 『変化』しかなかった俺だったら、おそらく負けていただろう。


 それくらい強者。

 だが──それくらいの人間。


 この先も戦いは控えているのだ、今のうちに身体能力と防御力、攻撃力等を向上させておいた方が身のためだ。


「な、なんだよその姿……!」


 『爆炎』使いが悲鳴に似た声を挙げる。

 俺は『変化』を解き、『悪魔』に戻った。

 俺は最高品質の神の『器』であるが、アルドノイズに至っては取り込んだわけではなく、融合したという表現が正しいのだろうか。

 まあ、そんな事はともかく──


「それじゃあ、始めようか」


「バケモンがッ……!」


 そして──俺の炎が、名も知らぬ彼を焼き尽くした。


 *


「……ハハッ。さすが『カミノミワザ』」


 俺は乾いた笑い声を上げながらそう呟いた。

 自分でやっといて何だが、やっぱ人を殺すのは気分が悪い。

 まあ、慣れて何も思わなくなるよりは断然マシなのだが。


「さて……」


 俺は目を閉じ、集中する。

 ここ周辺の気配を探る。

 人が、一人、二人……三人。

 やはり『岩石』使いは見当たらない。

 だが一人猛烈な勢いでこちらに来ており──!


「ッ」


 瞬時に背後に気配を察知。

 俺は虚空より神剣『黒龍』を取り出し、迫り来る刃に反撃した。


「ッ……!あ、宏人くん!」


「な、セバス!?」


 なんとその正体はセバスだった。

 気配を消し背後から回復不可の死神の『鎌』で斬り掛かってくるとは……愛も変わらず殺意が高い。

 セバスはすぐさま『鎌』を肩にかけ直し、俺の首を掴む寸前だったカールを止める。


「あはは、ごめんね?なんかこの更地に花火が上がったからさ。こんな事するのは上位七人くらいしかいないと思って確認せず斬りかかっちゃったよ」


 セバスはうっかりうっかりと言いながら頭を掻いた。

 一歩間違えれば死んでいた身としては言いたい事がないわけではないが……まずは現状確認だ。


「セバス、聞きたいことがある。今までで何人殺したか、と他のみんなの居場所を知っているかを答えてほしい」


「うーん、殺したのは三人だね。みんなの居場所は知らないかな」


「了解だ。ああ、あと上位七人についてなんだが──」


 俺は開始早々戦ったザックゲインの戦い方について説明した。

 そう、あの電撃。

 ザックゲイン曰く、アルベストと『契約』して獲得した『カミノミワザ』。

 一通り説明すると、セバスは苦い顔をする。

 

「この後はどうする?一緒に戦うか?」


「ごめんだけど遠慮しておくよ。正直一人の方が効率いいしね。『能力』の奪取もそうだし、カールを鍛えたいんだ。宏人くんだって強いし、大丈夫だと思うけど……」


「分かった。気を付けろよ」


「うん、じゃあまたね」


 必要最低限の会話の後、セバスは駆け出して行った。

 

「……というか、セバスに説明して再確認したが、ザックゲインやばいな」


 相手の『能力』を完全に無効化する『適応』、『式神』を完全に破壊する『式神』である『無味無臭』、そして、神の2柱であるアルベストの『サンドライトニング』……。

 攻撃手段は不気味な剣と『サンドライトニング』のみだが、それに対応出来る能力を持っていたとしても『適応』に封じられてしまう。

 さすが世界に選ばれた超級能力者。

 隙のない、完璧な『能力』だ。


「だけど……俺なら勝てる」


 先程戦った際に、既に確信している。

 あの時、ザックゲインは紛れもなく本気を出していた。

 さすがにもう先程のコンボで勝てるとは思っていないが、それでも……!


 *


「さて、これで七人目っと」


 ザックゲインはまるでなんでもない様に人を切り捨てた。

 返り血がピシャリと顔に付き、うぇーっと舌を出す。

 

「お風呂とかどうするんだろ。僕剣手放すと雷撃しかないんだけど……」


 ザックゲインはそう呟き足元の死体を見下ろす。

 出会い頭に『サンドライトニング』を放ち、放電中に斬り殺す。

 まあでも、かれこれ5、6回これを繰り返し、もう確信している。

 電気に耐性のある能力者は、そうそういない。

 それは向井宏人も同じだ。

 現に向井宏人は不意打ちとはいえ『サンドライトニング』に耐えられなかった。

 『サンドライトニング』はギリギリまで隠す予定だったが、まさかまさか開始早々晒すことになるとは。

 情報が共有されている可能性がある以上、隠し続けるのはバカだ。


「待っててね向井宏人。きみは僕が殺すから」


 ザックゲインがそう呟いた瞬間──。


「不快ですね、順番を抜かさないでくれますか?」


「きみは……セバス・ブレスレットか」


 最高戦力同士が、邂逅した。

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