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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十二章 生存戦争編
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182話(神サイド) 生存戦争②


 ザックゲインと戦った後、俺はこの『生存戦争』の地を調べていた。

 森林の中にいるため見渡す限り木なのだが、気をよじ登って上から見てみると、更地の周りを森林が囲むような土地となっている。


「……んで、あそこが場外か」


 外周が円形の森林の端は、崖だった。

 だが『者』級になった際についてくる『身体能力向上・特大』を使用すれば難なく飛び越えられそうな程度の崖である。

 だから、ルール5の『設定されている区画外に故意に出た場合、その者は神人との戦闘命令が下される』があるわけか。


「まあでも、来る神人がランダムだとしたら、いっそ……」


 俺はボソリとそんな事を呟き……ハッと我に帰る。

 神人を倒したらゲーム終了。

 だがあくまでこれは最終手段だ。

 現状ライザー以外の神人ならなんとかなるとはいえ……まあなんとかならない可能性の方が濃厚なのだが。

 俺はまずその崖を目指した。

 ど真ん中の更地に行ってもいいのだが、その辺りは森林。

 遠距離系の能力者がいた場合格好の的だ、危険過ぎる。

 仲間との合流が急がれるが、まあ時間ならあるのだ、ひとまず今は考えなくていいだろう。

 そんな事を考えているうちに、小一時間程経っており、目的地の崖に着いた。

 戦場の地なら大分狭いのだが、戦うのはたったの三十人。

 

「おお……まさかここまで簡単とは」


 俺は崖下を覗き込んで顔を引き攣らせながら笑う。

 崖は十分に深いのだが、間近で見てみると『身体能力向上』系統の能力を使わなくても飛び越えられる程のものだった。


「逃げるもんなら、勝てるもんならやってみろ、てか。やっぱそれだけ神人は理不尽ってことだな」


 それでも。


「──ダクネスなら……」


 *


「……おかしい」


 創也は辺りを散策し尽くしたあと、そう呟いた。

 ──人に会わな過ぎる。

 この土地は30人が戦うには広いくらいの大きさだが、だとしてもこの戦場自体は然程広くない。

 だが、人っ子一人見当たらない。

 

「うーん、やっぱ今回のループは異常だなぁ」


 創也は後頭部を掻きながら唸る。

 目指すは仲間との合流。

 創也は取り敢えず目立つ事にした。


「えぇぃ!」


 『勇者剣』を振り回し、辺りの木々を薙ぎ払う。

 これで上位七人が来れば一石二鳥というものだ。

 しばらくこの作業を繰り返す。

 確かここは更地を森林が囲んでいる構造をしていたはず。

 いっそのことここら一帯も更地にしてしまおうか……と思っていたところで、人の気配が。

 

「……」


 創也は慎重にその気配を見定め──楽し気に笑った。

 

「──『天使』」


「ようやく来てくれたね、上位七人──カルマ・ネーベル」


 突如創也を光の柱が包む。

 しかし創也が『勇者剣』を上に掲げると、逆に『勇者剣』が『光』を吸い込んでいく。

 『勇者剣』は魔を滅す光の剣。

 だがその実魔より光の方が耐性があり、吸収する。

 カルマは創也に『降光』が効かないと見るや否や、光の弓を形成、放つ。

 光の矢は三本に分かたれ創也を襲う。

 

「──『止眼』」


 瞬時に創也は『魔眼』を発動し、矢を止めゆっくりと歩いてその場から退く。

 やがて『魔眼』の効果が切れた矢はあらぬ方向へいってしまった。

 それを見て、カルマははぁとため息を吐いた。


「……ねぇ、あたしらってめっちゃ強いから蘇らせてもらったはずなんだけど、なんかアンタたちの方が強くない?」


「まあそうかもね。いや、本来ならきみたちの方が強いんだよねぇ」


 首を傾げるカルマに、創也はあははと笑う。


「ほら、僕って何回も『世界』ループして仲間を育ててるからさ。きみたちよりも強くなるのは当然なんだよね」


「……え?」


 カルマは口をあんぐり開けて固まった。

 やがてハッとカルマは我に返ると、あっ!と人差し指を立てなら言う。


「じゃあ『者』級から神人に成った七録カナメも育てたからなの?」


「そうだよ。結構大変だった」


 カルマは創也のあはーという間抜け面を見て、思う。


 ……これ、寝返った方がよくね?


「……んーと、取り敢えず歩きながら話そっか」


「いいよー」


 *


 チャン・ナンの生まれは韓国。

 孤児だったナンを拾ってくれたのが、神アスファス。

 今になって思えば、アスファスがナンを拾った理由は持っている珍しく、強力な『能力』──『転移』欲しさだったのだろう。

 だが当時のナンはそんな事知る由しもないわけで。


『私とともに戦ってくれないか?』


 何をして生き延びるか悩んでいたナンに、アスファスのその提案はキラキラと輝いていて──。


「……まさか、俺も参加することになるとハ……」


 ナンは呆然と立ちながら、そう呟いた。

 強者の集いである『生存戦争』に、まさか自分が参加するとは思っていなかったナンにとっては、これまで全く用意していなかったため不安でしかない。

 上位七人なんて化け物もいるらしいし……。


「これからどうすべきカ」


 ナンは思いため息を吐き、道なき道を進んでいく。

 目指すべきところが分からないが、取り敢えず仲間との合流を目的に歩幅を進める。

 道中、こちらの陣営の参加者を思い出してみる。

 ナンと同じ様に、『生存戦争』開始直前に体が光っていた者たちだ。

 宏人、創也、(ニーラグラ)、智也、傀羅、那種、アリウスクラウン、セバス、と確か……瑠璃。


「ッ」


 ナンは再度先程の光景を思い出し、あの際瑠璃が光っていた事を思い出した。

 宏人は直前に自分の名前を読んでいたことから、おそらく瑠璃も参加していることに気付いていないだろう。

 こちらの陣営の最高戦力は、カナメに鍛えられていた宏人、セバス、アリウスクラウンの三人と、吐夢狂弥の人格を植え付けられた太刀花創也。

 この四人に、いち早く合流し、自分と瑠璃を守ってもらわなければ……。


「──その前に、俺はアンタと戦わなければいけないのカ?」


「まあまあそう気張んな。俺は別にお前さんを狙っているわけじゃあない」


 ナンの前には、いつの間にか一人の男が。

 気配を一切感じさせず、まるで最初からいた様に、ただそこにいた。

 男は礼儀正しく一礼し、顔だけあげてニヤリと笑った。


「俺は垣胤藍津という。情報者を営んでいてな。どうだ?欲しい情報はないか?」


 *


 ──『生存戦争』が始まり一時間。

 さっそくの死者が出る。

 その死者の名は佐良空真。

 『能力』が『来風』という微弱な風を操る普通の能力だが、本人の戦闘能力の高さと能力を多様に応用した奇抜な戦い方に注目され、今回『生存戦争』に参加した。

 決して弱くない。

 まず、この場に弱者などいない。

 だが──強者の中にも、明確なレベルの違いが存在する。


「ふぅ……まずは一人目」


 ──セバスは深くため息を吐きながら、足元の死体と成った空真を見下ろし呟いた。

 セバスは鎌を肩にかけ、踵を返し、次の敵を探す。


 ──カナメくんが、『生存戦争』を理不尽なゲームだと言っていた。

 だけど、僕はそうは思わない。

 ちゃんと制限時間が設けられているから、このそれなりに広い大地で逃げに徹すればなんとかなる。

 そうすると15人の調整がネックになるけど、まあ多分それは杞憂に終わる。


 なぜなら──僕と同じ考えの人は多いと思うから。


「……まずは、上位七人を狩ろうか。カール」


「……了承した。セバス」


 セバスの影より、巨大な化け物が出現した。

 それは元、『死神』のカールデス・デスエンドの成れの果て。

 

 セバスと同じ考え──それは。


 ルール6箇条、6項目目。

 

 10人ゲームアウトさせた者は、その10人目の『能力』を獲得出来る(この効果はゲーム後も継続される)。

 

「ここで僕はもっと強くなって、アルドノイズ様が安心出来るように──僕が、神人を……」


 セバスはそう呟きながら、敵を探す。

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